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2019年2月17日日曜日

leave them all behind 2019@渋谷O-east

CONVERGEとNEUROSISが来日。これは行くだろう。
私なんて妙に焦って会社から抽選申し込んだくらい。そしてあっという間に当日が来るのだ。
開演後、ロッカーに荷物を入れるのももどかしいくらい逸る気持ちでステージ前に。

Self Deconstruction
久しぶりに見たが他に類を観ないバンドだなと改めて思った。
グラインドコア、パワーバイオレンス、似たようにうるさくて早い音を出すバンドはたくさんいるけど、よくよくこのバンドを目前にするとその特異さがすぐに分かる。
大きい特徴はほぼリフレインがない。メタル(ハードコア)はリフの音楽だというが、ほとんどはいくつかのリフによって楽曲が組まれている。いくつかの(多すぎない)コードがポピュラー音楽の楽曲を形作っているように。
ところがSelf Deconstructionは違う。リフを惜しみなく使い捨てていく。一回使ったリフはもう出てこない。(ように聞こえた。)まさに究極の贅沢。これって特にエクストリーム・ミュージック界隈ではかなり難易度が高いことに思える。尖れば尖るほどバリエーションを出しにくくなる界隈でお約束的なリフを使い回すことができないのだから。つまり弾き手の引き出しの多さが試されている。Self Deconstructionの楽曲をそういう観点で聴いてみると、ギターは確かに低音を貴重としながらも指板を文字通り縦横に行き来する相当フリーでフリーキーな弾き方をしている。すごい。グラインドコア、パワーバイオレンスに仕上げている、といってもその中身は相当異次元だよ。途中で「Concubine」のカバーを披露していたと思うけど、あのぶっきらぼうな曲ですらリフレインがあり、あきらかにセットリストで浮いていたもの。(もちろんとてもかっこよかった。)単に弾きまくるわけではなく、しっかりキャッチーなリフも挟んでいく。
3つのバラバラの個性がかっちりあっているからまた格好良い。お互いほぼ見ることないのに、決めるところはきっちり合わせてくる。

ENDON
昨年後半にリリースされた最新作「Boy Meets Girl」は明らかにそれまでの文脈とは異なる問題作だったと思う。そういった意味でも最新の形のライブを見たかった。
のっけからCONVERGEのKurt Ballouがプロデュースそた「Through the Mirror」のキラーチューン「Your Ghost is Dead」でぶっ飛ばす。いつものENDONだ。ところがライブが進むとどうも様子がおかしい。特に新曲群が異常だ。表面上はメンバー2人が垂れ流す激音ノイズがうるさいエクストリーム・ミュージックなのだが、なんだか…あれ?楽しい?すごく楽しい。なんじゃこれと思ったら、ドラムだ。豪腕だがリズムが明確ではっきりしたロックドラムだ。ミニマルなリズムがむしろロックを通り越してダンス・ミュージックに聞こえ始める。言語外のボーカルの存在感は一旦おいておく。そうなるとその他の音の出し方が非常に巧みだ。程よく重たくないギターは言わずもがな。しかしなんといってもこのバンドの主役ノイズの使い方だ。たしかにうるさい。でもいつもハーシュノイズが爆音で流れているわけではない。ときには音を小さく。時には完全に止め。また時にはハーシュノイズではなく、鍵盤から流れ出るような美麗な音も出てくる。これらの音のON/OFF。つまりビートを基調にそこに音を重ねていくやり方は確かにテクノ、ダンス・ミュージックのやり口ではないか?
「Boy Meets Girl」は単に逆に切った奇をてらうだけの飛び道具ではなかった。彼らはとっくに新しい未知を模索し、そして大胆に舵をとっている。かっこいいぜ〜。
初めてこんな広い会場で見たが、この広さの似合うこと。汚く狭い地下室(大好きだ)とは違う高い天井、その余白がなんだか異常にENDONにあっていた。

CONVERGE
続いてはいよいよ今日の主役の片方。ハードコアの街ボストンでジャンルを更新し続けるバンド。もはやその影響は語るまでもないでしょう。観客の期待度も半端なく、前に前にの圧がすごい。ドラマーのBen Kollerが肘の怪我でお休みのためRough Francisというバンドでドラムを担当するUrian Hackneyが急遽代役に。MCによるとほとんど練習する時間もなかったらしい。重たいカーテンがいよいよ開けられるとそこにいたのはCONVERGEだった。
初めて目前で見るとCONVERGEの異様さに気がつく。なんだろうこのハードコアは。完全にハードコアだけどエモーションが溢れすぎている。それはハードコアにしては複雑な楽曲(とくにKurtのギターは低音から高音まで隔てなく用いるリフはもちろんタッピング、ギターソロなど技巧的にも複雑だ。)、そこに内包される特に新作では顕著な(クリーンで歌われることもある)メロディライン。これらの要素は個別ではあるいでは複合でももはやハードコアのシーンでは珍しくない。ただこれらは諸刃の剣で、これらを多用すると音のヘヴィさとは別の「重たさ」が生じて、ハードコアから距離が離れてしまう。とたえばDeathwishならCult LeaderやOathbreaker、日本なら独自の激情系など。ところがCONVERGEに関して言えば表現力が他の追随を許さないくらい豊富なのに、どこまでいってもハードコアなのだ。どうなってんだ。
様々な楽曲の随所に仕込まれているシンガロングパート。乗車率200%のギュウギュウのおしくらまんじゅう状態で拳を振り上げ叫んだ。
Jacob Bannonはとにかく華があるシンガーで、特徴的な歌い方も初めて見るとちゃんと歌っているし(これはセットリストの関係もあるかもしれない)、細身で長身な体をよく動かす。マイクをぶん回してキャッチする、マイクに覆いかぶさるようにシャウトする、水を頭にぶっかける、両手を大きく広げて観客を煽る、どれもすごく画になる。MCは暖かく、またリラックスもしている。
その他のメンバーもさすがのベテランなので落ち着いているが、決して弛緩することはなく、ただ勢いだけではない楽曲、というよりは勢いがありつつ複雑な曲をがっちり合わせてくる。
クラウドサーフが結構発生していて、ステージと客席に隙間があるのでJacobはちょうどサーフ後に落ちた観客にマイクで歌わせていた。みんなすごい笑顔だった!
本当に時間がすぎるのがあっという間でラストの「Concubine」。なんとSelf Deconstructionのボーカリストの方と共演。すごかったなあ。

NEUROSIS
ラストはいよいよNEUROSIS。結成34年。様々なバンドに影響を与えたバンド。私が初めて知ったのはTVKのビデオ星人で流れたライブ動画。さっぱり何がなんだかわからなかったです。あれから20年位経っていまライブをようやく見れるのは感慨深い。
中核メンバー3人は全員髪の毛やひげに白いものが混じり(というかほぼ白い)ロマンスグレーな感じ。Scott Kellyは体格もよく、アメリカの田舎の偏屈おじさんのようで見た目からして怖い。(ギターよりチェーンソーなどが似合いそうだな…とちょっと思った。)
大阪名古屋の感想を見ると絶賛する人が多数。いざ目の当たりにするとたしかにすごい。どのくらいすごいかというと結構ずっと鳥肌立っていた。いやもう「神だな」って終わりにしたいのだが、なんとかそ(れらの音楽や本)の凄さを言語化したくて始めたのがこのブログなのだった。
分厚い音で静と動を大胆に取り入れた楽曲を演奏。実はそんな奇をてらったことはしていない。音はたしかにでかい、轟音と言っても良い。ただし音量やバランスはきちんとコントロールされていて耳に痛いということはまったくない。そして音もどこまで行ってもオーガニック。経年によって水分が抜けた頑丈の木材のような音だ。分厚いが温かみがある。
またスラッジといっても不吉なフィードバックノイズを必要以上に撒き散らすことはしない。むしろたっぷりと空間系のエフェクターを繋いで出した浮遊感のある音を曲中や曲間のつなぎに使っている。特にベースは結構曲中でも独特の音を出していたようだ。
かといって強面の大人がやっているゆるふわ系ポストメタルではまったくない。楽曲から見えるのは30年以上に及ぶ試行錯誤の歴史である。
たっぷりと時間と間をとった楽曲だが、引きずるようなドゥームさはなく、明快に区切られた音はやはりハードコア由来のスラッジだろうと思う。そこにアタックが強いが非常に明確にリズミカルでよく回転する、つまり重量感がありつつも跳ねるドラムが加わる。
原始的と言っていいようなシンプルで強靭なリズム、弦楽器のときにアンビエント、ときにラウドなアンサンブル、立体的なサウンドで時間をかけて楽曲を織り上げていく。トライバルだ。トライバルな呪文のようだ。
「Times of Grace」の「The Last You'll Know」。セットリストに入っていることは知っていたが、ライブで聞くのはやはり別格だ。私はこの楽曲が好きなんだ。厚みのある轟音が私の体にじんわり染み込んでいく。涙が出そうに。


終演後「Times of Grace」のパッチ、(オタクだから)2つ買ってこ!と思ってたら見事に売り切れだった。前の方に行きたかったから開演前に物販に並べなかったのだ。仕方ない。
個人的にとても思い入れのある2つのバンド、いっぺんに見れて幸せ。やっぱり別格だなと思いつつも、日本から迎え撃った2つのバンドも只者ではなかった。楽しかった。

2018年11月4日日曜日

Your Dream is Our Nightmare@鶯谷What's Up

この日もよいライブが被る週末だったが、私は鶯谷へ。大阪のZyanoseが来るからだ。音源が格好良かったからぜひぜひライブが見たかった。
ホテルと無料案内所に挟まれて神社の下にあるのがWhat's Up。建物の上に神社のあの寄付した人の名前が入っている柵(?)がついている。18時開場で概ねその時間に着いたら人がズラーっと並んでいる。なんと。ボヤーっと並んでいると演者の方が私のあたりに並んでいるクラスティーズに「お前らもう入れねえぞ」と声をかける。なんと。でもなんとか入ることが出来ました。お店の人がのちにツイートしていたが、この日お店至上一番人が入ったとのこと。大きさ的には横浜にあるEl Puenteより大きく荻窪にあるPit Barより小さいくらい。ここは縦にやや長い。天井が高く鉄筋が組んである上にスピーカーが載っている。ステージは本当に狭くて演者のバンドが4人いればもうステージに乗れないのだ。Pit Barと違ってこちらは一階である。防音扉もないので音漏れがえぐいことになるのではなかろうか。ホテル街だからあまり騎乗がこないのかもしれない。面白いとライブハウスだ。(一応バーということになっている。)そこに人がパンパンに入っている。本当パンパン。というのもZyanoseは活動休止をアナウンスしており、おそらく少なくとも東京でのライブは最後だということだ。

System Fucker
一番てはSystem Fucker。見るのは二度目。ラスタな風貌だったベーシストがいなくなり、代わりに短髪なのに後ろ髪だけを伸ばした新メンバーが加入。この方は非常に若いそうだが、なかなか堂々として格好良かった。ボーカルの方は前は長いモヒカンだったが、今はサイドもある感じ。周りの人がボーカルの方を指して俳優みたいだねと言っていた。始まってみれば見た目もそうだしパフォーマンスも非常に華がある。
見た目はクラスティーズなんだが、微妙に日本特有のヤンキー文化と融合しているような趣があり、面白い。音は明快なクラストコアだが、反抗心を燃やす粗野さにジャパニーズ・ハードコアの要素を持ち込みかなり叙情的に。短く速いギターソロで哀愁を充填するスタイル。歌詞はおそらく日本語で、「バカヤロー」「このヤロー」と飾らない言葉で強烈に語りかけてくる。(語りかけてくるというのはなんとなくジャパニーズ・ハードコアっぽい気がする。)メンバーは冷静だが、ボーカルはどんどん客席に向かって突っ込んでくる。パンパンなんでこれはやべえなという感じがあってこれが最高。
中盤ではかなりストレートなラブソング(なんせ音がでかいのでちゃんと聞き取れているか怪しいのだけれど)も披露。歌詞が結構びっくりするのだけど、普通に歌う(というより叫ぶだが)ってしまうボーカルの方はやはり格好良い。この人ちょっと独特の世界観があってしっくり理解できるというのではないけどなんとなくその世界観に惹かれてしまうという意味ではTMGEのチバユウスケさんに似ているかもな、なんて思ったりした。

LiFE
続いてはLiFE。大変有名なバンドだが私は見るのは初めて。一応最近リリースされたEPだけ持っている。選任ボーカルにギターが二人という五人組。ギターは役割分担がはっきりされていて一人が明確な輪郭なかっちりとしたリフを弾き、もう一人がかなりノイジーな輪郭が曖昧な音を出す。前者はかなりメタリックで音もでかいのでこれはもう一方がきこえないかも?なんて思ったが始まってみればそんなことはなかった。Eyehategod顔負けの高音フィードバックノイズがえらいカッコい良いのだ。
メンバーものちに振り返っていたがかなり問題続出のライブで、結果的にはギタリストのアンプが二つとも音が出なくなる。(片方は壊れたらしく交換した。)ギタリストの方のシールドが切れる。ベーシストの方がかなり激しく流血する。なかなかないです。というのも非常に狭いライブハウス、狭いステージなのにメンバがー動く動く。特にベーシストの方は縦横無尽に動き、落ちたり転んだりしておりました。危ない。
こちらは完全にクラストコア。それもかなり無骨でおそらく曲も短い。(セットリストを見ると多分30曲くらいやる感じ。)音は思った以上にメタリックではなく、本当にもっと汚いし、とにかくノイジー。耳を突き刺すようなノイズギターが非常に良い。良い!System Fuckerと比べると聴きやすさのとっかかりは非常に希薄に思えるが、曲によっては単音リフで組み立てたようなものがあったりして表現方法もかなり豊か。
私がびっくりしたのドラム。D-beatを中心に組み立てられたプレイで例えば手数が多いか、ブラストビートだとかではない(ただし基本めちゃ速い)のだが、妙に引き込まれる。これはグルーヴ感というやつなのだろうか。とにかく歯切れの良い音がカチカチ決まっていってそれだけですぐに持ってかれる感覚。めちゃくちゃ気持ちが良い。こうなるともはやメロディなどもはや不要で、そういった意味では全体のアンサンブルが肉体的。フロアもえらいことになっていて、さながらぎゅうぎゅうすし詰め状態の満員電車が巨大な力で揺さぶられているようだ。そんな荒々しさのど真ん中でみんな笑顔なのがさらに輪をかけてすごかった。

Zyanose
続いては大阪のノイズコアバンド。Insane Noise Raid!
こちらもギターが二人いる五人組。全体的に完全にクラスティーズなのだが、ギタリストの一人はロンドンな感じのパンクファッションに身を包んでいる。
始まって見るととにかくうるさい。ただ思っていたよりほぼノイズです、という感じでもない。耳がバカになって悟りを開いたのかもしれないが、なんとなく結構曲が判別できるような気がする。音源を聴いているといやーノイズですなーとか思っていたが、ライブで見ると違う。これはクラストコアだ。ちゃんと曲になっている。ただ異常にでかい音で演奏しているだけで。つまりノイズに逃げていない。全く抽象的ではない。音をどんどんでかくしたらこんなことになった、という趣でとにかく元はハードコアなのだ。轟音をつんざく嗄れ声の吐き捨て型のボーカルが非常に格好良いのだ。ギタリスト、ベーシストもコーラスを入れるのだが、これはもう「うぎゃー」と叫んでいるようにしか聞こえない。もう最高。LiFEと異なるのは音の出し方と時間軸に対するその埋め型で、あちらはノイズの中にも緩急をつけて隙間を開けていたが、Zyanoseはもう病的なまでに最初っから最後まで轟音で塗りつぶしていく。さながらブルドーザーのように全てを巻き込んで雪崩のように駆け抜けていく。
フロアの方は一体感というか、こっちも負けてられないくらいの対抗意識で盛り上がっていく感じで大荒れ。
やばい、頭おかしい、病的というのは簡単なんだけど、クラストコアはそうじゃないんだよな。音がでかいからそう思いがちだけど、もっと現実的な闘争だなと改めて思った。


いい気持ちで物販に向かったらすでにZyanoseの音源とT-シャツは売り切れていたのだった…。これはもう慟哭するくらい後悔したのだった。開演前にかっとけばよかった。
まあでも私が買えなかったということは他の誰かが買えたということなのだ。
楽しかったなあ。

2018年10月28日日曜日

Enodn/Boy Meets Girl

日本は東京のノイズバンドの3rdアルバム。
2018年にBlack Smoker Recordからリリースされた。Black SmokerといえばThink Tankのメンバーが運営する日本(主に)ヒップホップの作品をリリースするレーベルなのでかなり意外だ。DJ NOBUというアーティストとBlack Smokerがコラボしていくつか音源を生産するラインを作ったらしく、その第一弾がこのアルバム。
前作「Through the Mirror」で話題をさらったバンドがKurt Ballou順番待ちの列に並ぶことなく、Boriのメンバーとさっさと新作を作ってしまったわけだ。その間たった1年。

バンドがアナウンスしたところだと、このアルバムの楽曲はいきなりライブでプレイしないそうだ。それくらい過去作品とは趣が異なる。
事前に作られたMVを見ればわかるが、ギターがストラトタイプのものからGibsonのSGタイプのものに変更されている。要するにギターの音が変わっている。バンドが作品によってギターを変えることなど珍しくもなかろうが、Endonの場合は少し違う。ノイズから始まったバンドだから、そことぶつからないようにギターの音はあえて軽くて乾いたサウンドで設定されていた。前作ではそれが滑らかに動いてメロディアスさ=わかりやすさを曲に付加していたけど、今作ではギターがうるさい。バッチリ低音が出てていてディストーションをかけたベースのような役割になっている。かと思えばめちゃくちゃロックなリフが出てきて曲を導いたりもする。(6曲目「Final Acting Out」)
さらにこれは一番大きいかもしれないが、今作では曲によっては歌詞がある。ラストの「Not for You」に関していえば日本語の歌詞がかなりはっきり聞き取れる。結構事件でバンドの根底を揺さぶるような大きな変化じゃないかと思う。(あとで述べる。)
Endonを始め知った時そのバンド名(〜ドン)、ボーカリストの坊主頭と振る舞い(出血していたこともあったと思う。)、出音からなんて恐竜的(野蛮な動物的な意味合いで)なバンドなんだろうなと思ったものだ。その明確に認識が変わったのが前作であり、ノイズをバンドアンサンブルでやることでその向こう側、ポストノイズの地平線が見えるようなこれは全く革命的なアルバムだった。また積極的にバンドがわが色々なメディアで発信したメッセージもこちらを煽りながらも、色々な意図や主張を垣間見せる知的なものだった。バンドに憧れたノイジャンたちがいよいよバンド化した、というのはだからわかりやすいストーリーだった。例えるなら手のつかない不良がいよいよ更生した、みたいなイメージだろうか。今作におけるギターの音の変化や貸しの導入もおおよそその流れもあると捉えることもできる。MVやアートワークも極彩色で空電する白黒ノイズが色を手に入れた感もある。Endonはセルアウトしたのか?コマーシャル化したのか?音楽を金に変えるゲームにいよいよ本腰を入れ出したのだろうか。私はどうしても否だろうなと答える。部分的には分かりやすさがあっても、「Boy Meets Girl」全体で見れば非常に混沌としているからだ。このアルバムをわかりやすいハードコアバンドのアルバムです、と形容するのは無理がある。曲順を追ってドラマティックに展開していく「Through the Mirror」に比較すると圧倒的に整理されていない。雰囲気的には「MAMA」やもっと遡って「Acme.Apathy.Amok.」に通じるところがある。原点回帰ではなくて、随所に歴史の重みを感じさせる技巧がみれるが、全体的にはやはり拡散していくように自由で不規則だ。鏡を抜けた先に家を焼いて見せたあの光景はなんだったのか、という唖然とした気持ちだ。ここにあるのは野生だ。短い曲はさらに早く短く、ロック的な鋭角さを持ち合わせ、長い曲はさらに遅くなった。(1曲しかないのだが、存在感があって個人的には「Acme.Apathy.Amok.」を一番彷彿とする。)ただメロディに代表されるキャッチーさは(またもや)意図的に配され、全体的にはノイズバンドの面目を躍如する出来である。

今作では前作と違ってあまりバンド側からのステートメントがないので、そちら方面からこのアルバムの意図を見ることができない。個人的にはあえて前作に唾棄するような意図があるように思えるし、その過激さこそ変わらないバンドの本質のようにも思う。だとするとバンドとしては全くぶれていないわけだし、勝手にバンドに思い入れしていた私の頬をこのアルバムが叩いたわけだ。呆然としつつニヤニヤしてしまうのはきっと私だけではないと思う。いいね。いいね。
あとは来年のライブを見ればまたこのアルバムを立体的に考えることができるだろうなと思っている。みんなかって聞いたのかな?感想を知りたいですね。

2018年9月9日日曜日

Transient + Bastard Noizet/Sources of Human Satisfaction

アメリカ合衆国はオレゴン州ポートランドのグラインドコアバンドのBastard Noiseとのコラボレーションアルバム。2018年にSix Weeks Recordsからリリースされた。
Transientは2008年に結成されたグラインドコアバンド。一方のBastard Noiseは言わずと知れたMan is the Bastardのメンバーによるノイズグループ。

このアルバムは二つのバンドのコラボレーションだが、TransientのグラインドコアをベースにBastard Noiseがノイズを追加しているという趣。主体はグラインドコアなのでそこまで実験的ではなくて聴きやすい感じ。この手のコラボだとパッと思いつくのはFull of HellとMerzbowのコラボレーション。こちらも主体はFull of Hellのパワーバイオレンスでそこにノイズを追加するというやり方だった。メタルやハードコアなどのいわゆるバンドサウンドに比べるとノイズは抽象的だ。それらの暴力性を倍加するビデオゲームでいうバフみたいな使われ方をするのもなんとなく納得できる。ノイズとは魔法だ。
グラインドコアといってもいろいろな種類がある。このTransientに関していえばデスメタリックな成分は少なめで、音の作り方や自然体で装飾性のあまりない楽曲はハードコアに近い。よく回転するドラムに低音は出ているものの程よく抜けが良いギターが乗っかる。ハードコア色は強めだが、パワーバイオレンスというには音は重たく、また速度の両極端をいったりきたりもしない。曲も短いながらも自暴自棄なファストコアというよりは、よくよく聞くときちんとリフが練られていてメリハリがついたグラインドコアだということがわかる。ミュートの使い方がメタリックなのだが、音の作り方が巧みであまり重々しく聞こえない。ここら辺は好みかもしれないが、私は好きだ。もともとハードコアからスタートしたしたグラインドコアというジャンルのピュアな血統に属するバンドと言えるかもしれない。
Bastard NoiseももともとメンバーがやっていたMan is the Bastardは(ハードコアのサブジャンルである)パワーバイオレンスの始祖と呼ばれる(パワーバイオレンスという言葉を生み出したのがEric Woodというこのバンドのメンバーだった)こともあって親和性は抜群。乾いて明快な楽曲に存在感のあるノイズが乗る。過激なバンド名だが単にハーシュノイズを撒き散らしているわけではなく、Transientの音が最大限生かされるように配慮している。ガチガチのハーシュノイズは冒頭において、いざグラインドコアが開始されれば音域が被らないように、高音域の不吉な運命を告げるトランペットかサイレンのようなノイズを鳴らしたり、フィードバックノイズのような焼けこげたようにチリチリするノイズを出したりして、メタルではなかなか表現し得ない不穏さを演出している。存在感のある音がぶつかった結果よくわからん、という変な抽象性に逃げるのではなく、ちゃんとコラボレーションとして化学反応することを考えている。もはや円熟の極みという感じだろうか。
ハードコアを感じるのは19分のリアルな質感であり、(デス)メタリックな重厚な物語感も良いが、あくまでも地に足についた反骨精神が清々しい。

2018年8月18日土曜日

Sonic Mania2018@幕張メッセ

誰にでも特別なバンドやミュージシャンがいるものだ。新旧とかジャンルとかは一切関係ない。ただ自分にとって格別な思い入れのあるバンドが。私にとってはnine inch nailsがそれだ。中学生の頃に「The Fragile」を手に取ってからずっとそうだ。

仕事がまたもや忙しくなっていた。私たちがトラブルに遭うのではない。トラブルが私たちを見つけるのだ。仕事が阿呆ほどあって、つまりそれは概ね悪いことであるが、さらにいいことと悪いことがあった。悪いのはQueens of the Stoneageのライブに行けなかったこと。良いことはこんな状態を見越してチケットを買わなかったが、結果的には買っても行けなかったから良い判断だった。炎上中の案件を会議室にこもって対応中に別の案件をやってのけるという図太さを見せつつある私は、8月17日しかつめらしい顔で何かをすごく私にいっている会社の違う部署の人に「大丈夫ですんで」と呟いて会社を立ち去った。(経験のある人ならわかるだろうが全く大丈夫ではない。私を見つめる上司の顔には独特の哀愁がある。)向かうは幕張メッセである。nine inch nailsが私を待っている。Trent Reznorは比較的よくいう。曰く「Nothing can stop me now」

いわゆるフェスに来たのは高校2年生以来ぶりだろうか。そういえばSummer Sonicだった。Marilyn MansonをヘッドライナーにSlipknotも帯同する。日本からはMad Capsule Marketsが堂々と向かい打つ。今思うと隔世の感があるラインナップだ。元気だったから朝一からスタジアムに行って最後までいた。
あれから20年くらい。着いた時点で既にしんどい。22時過ぎ。体が重たい。(会社のPCが入っているリュックを背負っているから。)そしてフェス慣れした元気そうな人々がなんとなくしんどい。普段は小さいライブハウスにばかり行っているから異なるレベルで人が多いのもしんどい。金には常に苦しまされているが、優れた解決方法でもある。私はプラチナチケットなるものを購入してなるべく列に並ぶという行為を排除することにしていた。物販でninのグッズを購入し、実際の重量以上にクソ重たい社会性(会社のPC)をクロークに預けて、とりあえずビールを飲み、軽くご飯を食べる。マウンテンステージという4つあるステージで一番大きいものに向かう。コーネリアスというバンドがやっている。申し訳ないが耳に入ってはくるもののあまり印象がない。ninのことを考えていたから。プラチナチケットだと専用のエリアがあるが、正面から外れている。私は普通のエリアの比較的前の方に陣取った。コーネリアスがはけ、転換が始まる。薄汚い巨大な布状のものが下げられ、いくつもの照明がステージの脇にセットされる。私の興奮は静かに確実に高まっていた。労働で濁った目でステージを見上げる。腫れたように重たい脳で祈るように思う。どこか別の場所に連れて行ってくれ。転換が完了し、大量のスモークが噴射された。いよいよだった。スモークの向こうには別世界がある。

nine inch nails
三部作の1本目Not Actual Eventsから「Branches/Bones」を冒頭に持って来て巨大な地響きのような衝撃を巻き起こし、浮いた観客の体を間髪を容れずに「Wish」「Less Than」「March of the Pigs」で強烈に揺さぶる。隙間なく埋まったステージ前方はここの力が好き勝手に暴れて分子のようにそれぞれがいろんな方向からシェイクされる様相。こりゃやべえな、と笑いがとまらない浮かれた頭のなかに意味のない風のような思考が流れていく。とすると「Piggy」でトーンダウン。基本的に観客はみんなすごく歌う。
そこからは最近の作品からを中心にした曲を続けて披露。いいね、すごくいいね。私はninには単純な暴力性を求めてはいないのだ。激しい曲は素晴らしいが、そうでない曲だって全く同じに素晴らしい。Trentの声をききながら思った。人間が砂のように分子でできているなら一旦崩して再構築できれば良いのに。気持ち良い音が耳からだけでなく全身から入ってそんな原子を揺らしているような感じがして来た。「死と破壊」なんて形容されることもあったけど、nine inch nailsはそんな感じでもない。もっ違う何かだ。なんだか勝手に荒んでた心が、全く違う衝撃で揺らされてめちゃくちゃ感動した。
中盤で「Closer」が披露される。冷静になって思うとやっぱり最近のninはすごい。結構この頃とは曲のつくりが異なる。ロックを電子音で補強したり、一部を入れ替えたりしていた初期に比べると、今は電子音で曲を作ってそこにロック的なアプローチを作り上げている。出来上がった音楽は有機的だが、底流と表層という意味でも多層的な構造になっている。あくまでも歌が中心になっているからすっと受け入れちゃうけど、こうやって新旧の曲を織り交ぜて、そして今の体で再現するライブを体験すると曲の違いが明確に意識される。「Copy of A」もすごく盛り上がる。曲はシンプルといっていいほど音を削ぎ落としたデジタル的な音像だが、リズムが明確だしとても肉体的だ。明るいとは言えない曲だが、実は過去作からすると風通しはとんでもなく良いし抜群に気持ち良い。鬱屈してないわけではないのだが、それを飲み込んで全身する動きがあるよな、とつくづく思う、最近のTrentには。敬愛するDavid Bowieのカバー(Trentがストーカー役でPVに出ている曲)を披露。その後The Fragile大好きマンなので「Even Deeper」で私が発火。こんなの余裕で歌えるぜ!音が持ったりしていてこれはこれでやはり最高。ケタケタ笑っていると次は「Gave Up」じゃん。高校生の頃この歌詞を事業中にノートに書き付けていた私に死角はない。全部歌える。(My Steady Sysmatic Diclineって一番かっこいい英語じゃんって思ってた。今でもそう。)この曲は音源もいいけど、ライブでも後半また別の良さがある。その後「The Hands That Feeds」から「Head Like a Hole」、そしてラスト「Hurt」でしめ。
どの楽器も非常にバランスが良く、曲によってはギターに関しては本当に抑えられているというかロック的なダイナミズムが潔くカットされている。電子音に関しても例えば異常な存在感があるノイズ、とかでもなく全体の統制が意識されている。ただし「Hurt」のギターの音、それから最後の最後のドラム(ここが好きすぎる)などでは音の少ない分存在感がある。相対的な音作りがされているように感じた。
言われているように音は小さめだった。確かに個人的にはもっともっと大きい音で出して欲しかったな、という気持ちもある。だが曲の良さは全く減じられていなかった。オーディエンスのリアクションにもTrentは満足だったらしい(MCは結構してました。)し、またすぐ来て欲しいな。
お客さんは外国の方も非常に多く、私のように人生に忸怩たる思いを抱えていそうな中年男性もふんだんにいたが女性も非常に多かった。

演奏中に日付が変わっていたが、昨日もそしてもう今日も終了だ。私の目的は果たされた。情報量と思い入れが強すぎて完全にハングアップしている。この後は続けてマウンテンステージでMy Bloody Valentineだったが離脱。服がびちゃびちゃだったのでクロークで荷物をうけとり(プラチナだと出し入れ何回でもOK、利用自体も無料)、着替える。飲み物を買ってSpace RainbowまでThudercatを見に。

Thundercat
途中からだし、かなり放心状態だったので全然ちゃんと見れてない。6弦ベースを抱えたフロントマン(Thundercatさん)と鍵盤、ドラムの編成。かなりフリーキーな歌ありなジャズ。超絶技巧で歌があれば結構ダンサブルに聞けちゃうのだが、途中の掛け合いではかなりエグいことに。特にドラムはもはや手数が多くて拍子が把握できない。これはもうジャズを通り越して踊れないのではと心配になる程。私はドラムの連打は超好きなのですごく気持ちよきけた。ベースはいわゆるベースの音ではなくてほぼギター。リズムからメロディから全部自分でやっちゃう多才ぶりで、オルガンみたいに丸っこい音であっちいったりこっちいったりする。詳しくなので印象だけど曲によっては音の感じからもフュージョンっぽいなと思う。技巧を売りにすごくてもどうしてもハードルが高くなってしまうこともあると思うのだけど、Thundercatの場合はここでまるやかな歌が入るので印象が全然違う。格式高いジャズというよりももっと愛嬌のあるやつで、ベースだけでなくこちらの方も丸っこい。音源買ってないけどちゃんと聞いてみよう。

Flying Lotus
そのままSpace rainbowに居座り、次のFLYLOに。事前に3Dメガネが配られる。どうも視覚効果をかなり使うらしい。そう言えば初監督作品がしばらく前から日本でも公開されている。その名も「KUSO」。これは否が応でも期待値が上がらざるを得ない。
「 3Dグラスをつけろ!」というアナウンスがあってからライブがスタート。ステージ中央にセットされたShit(いうまでもなくKUSOのことだ)を模した卓でおそらく音と映像をコントロールしているのだろう。暗くてよく見えなかったが、ドラゴンボールのサイヤ人の戦闘服を着ていたようだ。(ちなみにThundecatも同じで、確かに「Gokuu」とかすごくいっていた。「俺はドラゴンボールが好きなんだ!」ともたしか。)
とにかくサイケデリックな視覚効果に目が奪われる。風邪をひいて熱を出した時に見る抽象的な悪夢のようだ。幾何学模様が姿をぐにゃぐにゃ変えていく。球体関節人形が出てくる。妙に日本的な動物たちがその姿を変えていく。クラゲのような生物。人間のスケルトン、などなど。さすが映画も取る人物だなー、こりゃ見るドラッグだーと感動しているのだが、ふと気が付いた。音がやばい。音量もでかかったが、問題はそこじゃない。映像は非常にアバンギャルドだし、恍惚感を催すが音はバリバリにソリッドだ。わかりやすい酩酊感は全然ないぞ?ハーシュノイズも少なめ(1曲あった)だし、ドローン的な音づかいはほぼ皆無。全編ほぼバッキバッキの金属質なビートで曲を作っていく。リズムが明確だし、非常にリアルだ。この目がさめるような鋭い音でトリップ感を演出するなんて一体何事だろうか。澁澤龍彦さんが幻想文学は朦朧とした文体で書いたらダメよといっていたのを何と無く思い出した。FLYLOはソリッドな音を使って全くの異空間を深夜の幕張に現出させた。
Kendrick Lammarネタで客席を大いに沸かせつつ、Twin Peaksのメインテーマから間断なく攻殻機動隊イノセンスネタを挟んでくる。マニアックさとか日本びいきというより単にてらいなく好きなものを取り込んでいるという感じで面白かった。

電気グルーヴもみようと思っていたが疲労感と虚脱感が半端なかったので帰宅。プラチナチケットは入場、物販、クロークが別列(ほぼ並んでいない)で使えるので快適だった。
フェスといえばご飯なので色々食べるぞ!と思ったけど結果的にほとんど食べてなかった…。フェスの雰囲気は楽しいけど、やっぱりある程度小さいライブハウスの方が自分にはあっているような気もした。人とくればまたちがうのだろう。
とにかくNINを見ることができて私は完全に満足である。ありがとうございました。

2018年7月8日日曜日

vein/errorzone

アメリカ合衆国はマサチューセッツ州ボストンのハードコアバンドの1stアルバム。
2018年にClose Casket Recordsからリリースされた。
veinは専任ボーカルにギター二人の5人組。結成がいつなのかはわからないが2015年には音源をリリースしている。
私はyoutubeのライブ動画(hate5sixのどれか)から知ってEPを購入。たぶん同時期には日本の人たちも含めて話題になり出し、いいタイミングで初めてのフルレングスがリリースされた感じだろうか。

同郷の巨人Convergeに強く影響を受けていたEPとは結構趣が異なって面白い。元々ニューメタルに影響を受けた、という評判であったが強くそれを押し出してきたという形だろうか。ただよくよく聞いてみると単に全編ニューメタルをハードコアで再現したというのとは違うような気もしてきた。元々かなり個性的な音をしていたが、それらの個性を強く打ち出してきた感じ。そういう意味ではおそらく意識的に特徴付けており、キャッチーである。この時キャッチーというのはメロディアスなパートが多いからそうであるというのではなく、確固たる特徴があるので外部からがこれについて語る時、とっかかり(わかりやすいのはニューメタル的、という表現)があってわかりやすいということだ。マイナーなジャンルでも数多くのバンドがひしめき合っている中で、わかりやすい特徴があるというのは良い選択かもしれない。(私はveinが有名になるためにその音楽性を柔軟に変えていると言いたいわけではないし、例えそうでも別に悪いことだと思わない。)
そもそも何を持ってニューメタルとするかというところなのだけど、個人的にはリフかなあと思う。一番わかりやすいのははっきりとサビめいたメロディアスなクリーンボーカルパートを導入することだ。でも私はバッチリニューメタル世でしっかりはまった人間だけど当時のバンド達はキャッチーであったけどそもそも音楽的には激しい演奏での歌、だったわけでスクリームとクリーンサビというのはどちらかというとその後隆盛したオーバーグランドのメタルコアじゃないか?と思う。初期のSlipknotにしてもはっきりとしたその対比があるのは「My Plague」くらいじゃないだろうか?メロディが重要なジャンルであったが表現方法はちょっとが違う気がする。(メロディアスという意味ではニューメタル的だが表現方法はちょっと違うのではと。)
veinに戻って一方で1曲めのイントロのリフ、低音でミュートを使わない結構動きのあるフレーズを弾いていくあたりの方が個人的にはニューメタル感がある。ここら辺はkornの1stからの伝統、という感じ。ずっとこの手のリフが続くのかと思いきや同じ曲の後半ではもうミュートを使ったハードコアなリフに移行している。アルバムを通して聞けばわかるけど、ニューメタル的であるのは単に一個の要素としてそれを取り込んでいるに過ぎない。元々veinが特徴的だった(キャッチーな要素)というのは二つあって、一つはノイズの導入に抵抗がないこと。今回もブレイクコアめいたドラムパターンのサンプリングなども導入している。もう一つは結構オリジナリティがある「キューー」と絞るような高音の出し方。ニュースクール・ハードコアのハーモニクスを使った高音の使い方に似ているけどもっとそれを伸ばしたような感じで、飛び道具といえば飛び道具だが、EPの時点で非常に効果的に使っていた。今回のアルバムでももちろん健在である。表現的には器用なバンドで「その他」の新しさに果敢に挑戦する強さがある。人によってはカメレオン的あるいは鵺的で芯が無い、という気持ちもあるかもしれない。私はニューメタル世代というのはあるかもしれないけど、前述の通り素直にニューメタルリバイバルだとは思わないし、一番キャッチーである(ここら辺のグルーミーな感じはDeftonesに通じるかも)7曲め「doomtech」にしても同時にきっちりとハードコアを抑えてきていてすごく好きだ。確かに仕上がりがよけりゃなんでも良いのか?というのはあるかもしれないが、芳醇になった(最近はハードコアは盛り上がっているのかな?)ジャンルが生み出した次の世代の萌芽という形で、伝統を誇示するバンドがいる一方である意味健康的な動きでは、と思ってしまう。

調べてみるとアヴァンギャルドと称されているようだし、意図的な問題作だと思う。それも含めて全体的にキャッチーである。キャッチーとはわかりやすさだ。それは時に嫌われることはわかるど、個人的にはこの「errorzone」 とても好きです。

2018年6月24日日曜日

Struggle for Pride/WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE.

日本のハードコアバンドの2ndアルバム。
2018年にAWDR/LR2(Spaceshower TVのレーベルとのこと)、WDSoundsからリリースされた。2017年に行われたライブ音源が別ディスクでついた2枚組のアルバム。
当時高校生だったメンバーらで結成され、途中で一時期活動停止状態になり、メンバーチェンジを経て再始動。前作「You Bark,We Bite」から12年ぶりの新しいアルバムのリリースになった。

クラストコアとも一線を画す、ほぼハーシュノイズとかした弦楽隊に極端に音量を下げたボーカルを乗せるという独自のハードコアスタイルを貫くバンドで、今作もなるほどそのアプローチは変わっていないのだが、アルバムトータルで見ると音楽性はかなり拡張されている。もともと前作からゲストを招くことにためらいのないバンドだったが、今作ではコラボレーションはもちろん、ほぼ楽曲丸ごとゲストがプレイ仕切っているものも数多くある。トラックメイカーが作ったインストが4曲。他のアーティストのカバーが2曲。
自分たちの自己紹介的なアルバムではなく、自分たちの周りの世界を丸ごとパッケージしているような、そんな趣がある。そういった意味ではとても文化的だなと思う。当然ほとんどの人はあるバンドの音源を買うときは彼らの楽曲を期待するわけだからかなり思い切った手法だと思う。当初からクラブシーン、カルチャーに接近したバンドと称されていたし、なるほど前作ではカヒミカリイはじめとするクラブ、ヒップホップ界隈の方々がゲストとして多数参加していた。ただし彼らの使い方(というとちょっと失礼になるのだけど)というのは曲の頭に彼らのスタイルで参加してもらいそれが終わるとバンド側が曲を始めるという、いわばSE的な趣が強かったと思うのだけれど、今作では(そのやり方もあるけど)そうではない。むしろゲストが積極的に「WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE.」というアルバムの構成要素になっている。バンド側はもう完全に彼らに任せてしまっている(とはいえインタビューを読むと歌詞はバンド側が用意しているしかなりディレクションはしているみたい)感じすらあってその懐の広さというのはなかなかない。
Struggle for Prideというバンドの音楽は非常に肉体的だから、享楽的と言えるのかな?と思っていた部分もあって、なのでクラブカルチャーの接近に関しても、ほとんど聞き取れない歌詞というのもそういった文脈にあるのかと思ったいたのだが、今作きいてそうじゃないなと。一つはライブ音源なのだけどこの音源はボーカルが音源よりは生々しく聞こえる。(ライブ聴いて生々しいってバカみたいだけど)まさに絶叫という感じでかなり余裕がない。殺してやるぜという気迫もあるんだけど、窮鼠的な俺が死ぬみたいな逼迫した感じがあってヒリヒリしている。そういった意味では今回のアルバム名、ひいてはバンド名にしても最初から闘争のことを歌っているのであり、今まで明確なメッセージはその音以外にあまり用いてこなかったバンドだと思う。今作では例えば「SING FOR PRISONER」などは特に非常に明確にわかりやすいメッセージが込められているのが一つ。(それを穏やかなカントリー調に乗せるというのも皮肉が効いたやり方だ。)それからあえてアルバムの音楽性を拡散させることで、よりバンドの楽曲のブルータルさ、というとちょっと格好付けなのでハードコアバンドとしての本質というか出自がくっきりしてきた。新作発売に伴うインタビューの中の一つでボーカリストは明確に「パーティは終わった」といっている。これらの楽曲の全てが反抗の歌だった。曲によって程よく弛緩しているのはなるほど事実だが。そもそも私がハードコアが好きな理由は「生活感」だ。よく言われる「ストリートな」感じにちょっと通じるものがあるかもしれない。(私のいう生活感はもうちょっとこう格好悪いものだ。)楽しいことがあれば、どうしようもないくらいに腹立つこともある。それらをストレートな楽曲、それから普段から遊んでいる(つまりバンド側の毎日)友人や尊敬する人に歌ってもらった色々な相の楽曲に込めたんだろうという感じがして私はこのアルバムのわい雑さが好きである。

2018年6月17日日曜日

Struggle for Pride/You Bark,We Bite.

日本は東京のハードコアバンドの1stアルバム。
2006年にTAD Sound/Tearbrigadeからリリースされた。それが12年ぶりにCutting Edgeから再発されたのが私が買ったもの。
Struggle for Prideは1993年に幼馴染の面々(当時高校生)で結成された4人組のバンドで、このアルバムを出してしばらく後に活動休止。メンバーを変えて最近また活動を再開している。ライブもやれば新しいアルバムもリリースされる。そのタイミングで廃盤になっていたこのアルバムの再発となったようだ。
当時からいろいろと人の耳目を集めるバンドであり、以上にやかましい楽器隊に比較してボーカルの音量は意図的に下げているという独特のスタイルで、私の記憶だとハードコアだがカヒミ・カリィらをゲストに迎え、ライブハウスだけでなくクラブでもライブをするとか、かなり過激ないくつかの出来事がまことしやかにネットに書き込まれていたと思う。
完全に後追いだったので、「Change the Mood EP」と後いくつかのスプリットやEPを手に入れた。中でもギターウルフとのスプリットの2曲は超お気に入り。(見つけたら絶対買ったほうが良い。)この1stアルバムはさっさと廃盤になっており、今回個人的には待望の再発だった。
再発に当たり、リマスタリングが施されてるほかいくつかの追加や変更が加えられているとのこと。またボーカリストによるライナーも追加されている。

音楽やその他の芸術を評する際に唯一無二という言葉を使うのはありふれている。つまりたと違うことが優れた点になる。私も何回もそんな言葉を使ってきたが、このStruggle for Prideに関しても他に似たようなやり方をしているバンドというのはあまり思いつかない。極端にノイジーにしたギターとベースにボリュームを下げたボーカルという手法。とはいえもともとハードコアとノイズは結構接近していて、昨今のハードコアとハーシュノイズのクロスオーバー(Full of Hellや本邦のEndon、Friendshipなど)もそうだし、もっと古くからノイズコアというサブジャンルが存在している。Chaos UKや日本ではDisclose、Zayanoseなどなど。どちらかというとクラストコアの流れにある音(とカルチャー)だと思う。SFPに関してはやり方と音に関してはクラストコア寄りだと思うのだけど、逆に音以外にその要素は少なめ。(そもそもクラストはボーカルのレベルは下げない。)格好もそうだし曲も結構違う。D-beatでドタドタというよりはもっとシンプルで早いリズムに乗っかって攻め立ててくる。じゃあモダンなハードコアかというとそうでもない。曲は短く結構シンプルだし、複雑な速度のコントロールはしなし、何よりニュースクール以降の重たくメタリックで複雑なリフはほとんど見られない。(おそらく分厚いノイズの多いを取ってみても中身のリフはそれらと一線を画すのではと思う。)そういった意味ではどちらかというとオールドスクール・ハードコアに近いのかもしれない。ザクザクのリフでモッシーな空間を作っていく、というタイプの音ではないのだがライブは以上に盛り上がる。それも納得の感で音源で聴いているだけでなんかこう暴れたくなるような、そんな原始的な感情に訴えかけてくるものがある。決して反復の要素を持ったリズミカルさはないのだが、なんとなく肉体的に作用する音楽という意味では確かにクラブカルチャーに接近していったのはわかるような気がする。カヒミカリイやMSCのMC漢をゲストに招いているのは結果であって、もともと共鳴するので自然に彼らが参加したということだろうか。ゲスト陣に関しても溶け合うというよりはメタルバンドのSEのような使い方で住み分けがはっきりされている。表層状にラップを取り入れたり、ブレイクビーツを用いたりするような表層的なミクスチャー感は皆無。
よくよく聞かなくても空間をノイズで埋め尽くしていくような、いわばある意味偏執的な音の作りなのだが、うちにこもらない外向的なポジティブさがあるのがとにかく不思議だ。マニアックなジャンルにありがちなマニアックなジレンマに陥っていない感じ。もちろん迫力のある、うるさく、エネルギッシュで残酷な音楽ではあるのだが。このバンドは歌詞を公開していない(し叫んでいるし、なんせボーカルのボリュームが小さいので聞き取れない)のだが、冒頭の「REFLECTOR」でカヒミカリイが何をいっているかというとこれはどうも恋人に向けて書いた手紙を読んでいるようである。クラストコアと一線を画す要素というのはここにもあって、これは私の予想だがもっと身近な物事に関してきっとこのバンドは歌っている(叫んでいる)のだろうと思う。

今までEPしか持っていなかったけどやっとフルアルバムで聴けた。やっぱりかっこいい。新アルバムと合わせて是非どうぞ。

2018年6月3日日曜日

Fairy Social Press presents Boys Don't Cry#6@初台Wall

someoneはsometimes言う。曰く地獄とはこの地上のことだった。いや正しくは地獄は仕事のことなのだ、私は言うだろう、特に最近のバージョンの私がだ。職場が地獄で不味かった。終わることがないような業務時間もそうだ。仕事は大体つまらないものだが、そのなかでも特に気が重い類のものがある。今回はそれがしんどい。深夜2時に翌日(当日)朝7時に偉い方々(どうして彼らは総じて早起きなのだろうか)に自分が詰められるための資料を作成するというのはなかなかどうしてテンションが上がりようのない仕事だ。空いた時間を寝て過ごすいうのも良い選択肢だが、寝て何かが発生することはない。私の人生に何もなくなるという恐怖感からライブに行くことにした。

Kruelty
昨今話題の東京のDepressive Hardcore。ちゃっかりでも音源は購入したのだが生で見たことはないので楽しみだった。爽やかな初夏なのに4人のメンバー全員が目出し帽を被るという容赦のないスタイル。始まってみればこれはデスメタルでは。ざっくざく刻むギター、地の底から響くような低音ボーカル、重苦しいリズムはドゥーミィなデスメタル。ただただ呆然とするのだが耳が慣れているとデスメタルにしては異常にシンプルじゃないか?と気がつく。偏執的に隙間を埋めるようなテクニカルなリフ。つんざくような高音ソロ。そのような装飾性がほとんどない。ひたすらミニマルにリフを刻んで行く。1分はどうしたって60秒だ。駆けぬけようが牛歩だろうが同じ60秒だ。Krueltyはこの空間をリフで分割して行く。なるほど執拗な正確さで等間隔に刻んで行く様はメタリックだがあまりにそっけない。引っ掛けるように進んで行くそれを聞いて思う「これはハードコアだな…」。そうこのつんのめるようなリズムはまさしくハードコア。モッシュパートを切り出してそれで曲を作りましたという態。まさしく邪悪。音的には大阪のsecond to noneに似ているが、こちらがもっとシンプルだ。その分執拗でなるほどDepressive。こうやって演奏中にこちらが気が付いていくようなバンド、良いですよね。

Runner
続いては大阪/京都のRunner。恥ずかしながらバンド名も知らない始末。
こちらも抜けの良い軽めのスネアが軽快な瞬間風速系ブラストビートがキレッキレのパワーバイオレンスバンド。落とすパートの頻度が非常に高く、ほぼほぼモッシュパートの合間合間にボーカルが入るのでは、というくらいのエゲツなさ。バンド名はまさに名を体を表すかのごとく遅いパートもしつこくなくてあっという間に駆け抜けていく。
ひたすら筋肉質そのスタイルから Fight it Otuに似ているかなと思ったが、日本語の歌詞や遅くも早くもないパートにジャパニーズスタイルのハードコアを感じてしまう。パワーバイオレンスというのはふざけているか、おっかないか、あるいはその両方なんだけど、このRunnerはシリアスでありつつもまっすぐな暑苦しさもあってそこがこういったジャンルでは結構珍しいのではと思った。やはり関西のバンドというのは独特のオリジナリティを持っているなあと再実感。

leech
続いては船橋パワーバイオレンス、leech。見るのは2回目か。ボーカルの方が丸坊主になっていて厳つさが増していた。
ギターが2本だがノイズ感がすごい。曲が始まる前からフィードバックノイズが垂れ流しでこちらも脳汁がドボドボ溢れてくる。曲が始まると流石に低音が目立つのだが、よくよく聞いているとその低音の裏には高音ノイズが渦を巻いている。(片方のギタリストはひたすら高音に徹しているのかもしれない。)いわば高音域と低音域を同時に抑えている音の厚みがあって、それが音の壁になっていてフロアにぶち当たってくる。気持ちが良いよ。もちろんコントロールはしているはずだが、このleechというバンドは全部の楽器を最大音量で鳴らしているかのような感じがしてひたすら煩い。楽器隊VSボーカルみたいになってそこの相克も面白い。ただし一つ前のRunnerに比べると圧倒的にこちらのが陰湿。高速から低速に移ってもいわゆるモッシュパートとは違う、もっとスラッジっぽい放心したような気怠い感じがしてもはや手の施しようの無い感じ。わかられてたまるかという病んだ雰囲気が不健康ですき。

Fight it Out
後半戦トップバッターは横浜パワーバイオレンスFight it Out。始まる前からフロアに緊張感漂ってきてすごいバンドだなあと。
ライブハウスの特徴なのかもしれないけどこの日は前見たときよりドラムより弦楽隊の音が前に出ているイメージ。(私がいた位置の関係もあるだろう。)このバンドは速度のコントロールがすごいと思っているので、今日はまたもっと混沌としたイメージで聴けて面白かった。とにかくなんでもありなジャンルの中でくっきりとした音のイメージを提供するバンドだなと改めて思った。とことん研ぎ澄まされた曲というのは、余計なパートが無いということだ。速いか遅いか、その中間はバッサリ切り捨てる。ただし短いながらも余韻を残すようなパートがあってそれがまた格好良い。ひたすら筋肉質で無骨だが、その分たまにある短いシンガロングパートが映えてくる。あえて誤解を恐れずにいうと非常にわかりやすいんだと思う。馴れ合いというわけではなくてわかる奴は乗ってこい、的な。そうなればフロアも当然盛り上がってくるわけで。短いMCにもそんな姿勢が表れているようでひたすらカッコよかった。

she luv it
続いては大阪のバンド。音源の数は少ないのだが結構その名を聞く機会が多く気になっていた。なかなか見れない関西のバンドということでこの日の目当てでもあった。
ステージにはギタリストが2人、それからベーシストが2人(一人はボーカル兼任)、ドラムが一人(この方は他のバンドの時からずっとフロアで楽しそうに踊っておりました。)という変則体制。
セッティングが終わった時点でフィードバックノイズがすごいよ。人もぎゅうぎゅう。曲が始まってみると大変ですよ。満員電車が急停車した時のような人の動き。さらには恐らくビールが飛んでくる。モッシャー同時多発テロなお祭り騒ぎなわけで、それもそのはずだって曲が全編モッシュパートなんだもの。ひたすら刻んできて、そこに低いボーカルが乗る。そういった意味では一番手Krueltyに似ているところがある。確かにデスメタリックなところもある。ただ形式は似ていても音の印象は結構違う。一つはこちらがハーシュノイズも生々しいロウさ(生々しさ)を備えていること。内側に掘り進めていくようなDepressiveさはこちらには無い。陰湿だが内向的というよりは外向的で外に外に放射していくような動きがある。ひどくブルータルだが、フロアは湧きに湧きモッシュは自然発生的。

Nervous Light of Sunday
最後は大森のハードコアバンド。最近出た2枚のEPがとにかくよかったので是非とも見たかった。ドラム、ベース、ギター2本に専任ボーカルという5人組。
前の5つのバンドに関してはスタイルは違えどだいぶ逸脱していたのだなとわかるな、というかっちりしたサウンド。メタリックさはサウンドの重たさ、ミュートを用いた弾き方によくよく表れている。リフの中での低音と高音の対比が目がさめるようにくっきりしている。これはニュースクールハードコアだ。メタリックなサウンドでもKrueltyとは異なって、重量感があっても突進力がある。ボーカルはほぼシャウトだがたまに呟くような歌い方をしていてそこが日本っぽい。ただメロディ性は皆無でそこらへんはギターリフで補う。といっても例えばトレモロのようなわかりやすいメロディ感はなくてかっちりとしたリフの中にエモさを感じ取るというマニアックさ。しかしリズミカルに構築されたガッチリしたリフに感情を見出すことのできる奇特な人たちもいるものだ。

この日6つのバンドが出演し、そのどれもがハードコアのバンドだった。それぞれに共通点がありながらも結果出ている音は全然異なり、聞けば聴くほどにわからなくなるのがハードコアなのかと思った。耳が爆音でやられているのが快感だ。完全にやられた感のあるshe luv itのT-シャツを買った。音に似合わずかわいい。
電波の届かない地下から出ると仕事関係のチャットが何件も届いていた。これが私の選んだ毎日なのだった。耳鳴りを引きずって京王線に乗る。ドアの開閉をアナウンスする徹底的に無機質な女性の声が、私は好きなのだった。楽しい時間でした。

2018年1月2日火曜日

Tho Body & Full of Hell/Ascending A Mountain of Heavy Light

アメリカ合衆国オレゴン州ポートランドのドゥーム・デュオThe Bodyと同じく合衆国メリーランド州オークランドのパワーバイオレンスバンドFull of Hellとのコラボレーションアルバム第2弾。
2017年にThrill Jockey Recordsからリリースされた。LP盤を購入。
私は前作「One Day You will Ache Like I Ache」(タイトルが最高)が大変気に入っているアルバムなので今作も非常に楽しみだった。
幸いなことに2017年Full of Hellの最新作「Trumepting Ecstacy」のリリースに合わせた日本公演で両者のステージングを見れたのは良かった。どちらのバンドからも凄まじいエネルギーが感じられたし、バンドの今を確認できた。

激しく、そして先鋭的な音楽を演奏している2つのバンドだが、微妙にやっているジャンルは異なり、普通に考えればそのコラボというのはちょっと異質だと思うのだが、その先入観をふっ飛ばしたのが前作で、それはもうパワーバイオレンスとドゥームをノイズ、低速という共通項でもって一つに繋いだ、というかもう完全に融合した一つの別個の生命体だった。停滞する厭世感と爆発起動するヘイトを併せ持つ、不安定な物質としての純粋なニトログリセリンのように危険なやつだ。ハードコアにはなかなか出せない淀んだ停滞を強烈に全面に打ち出したその音楽性は個人的にとてもツボである。
今作も基本的に両者がっぷり四つの出来だが、前作とはやや音楽性が異なる。The BodyはFull of Hellだけでなく、Hexan Cloak、ThouやKrieg、日本のVampilliaなど多様なバンドとの合作を行っており、とくにFull of Hellとの2作に関してはどちらかというと主導権を握っているのはThe Bodyなのではと思う。はじめに聞いたところではさらにThe Body化が進んだのかと思ったのだが、来日公演で見たThe Bodyを思い出して微妙にそうではないことに気づいた。The Bodyの音楽性の変遷がこの共作にも影響を与えているのだ。来日公演ではThe Bodyの二人はドラムとギターを利用せず、ほぼ目の前にセットされた卓をいじることで音を出していた。なるほどノイズの要素は大きかったが、個人的に驚いたのはテクノ然としたはっきりとしたビートの導入だった。おそらくアナログシンセとビートマシンを用いているのだろう、凝った音というよりは実直でシンプルな音で驚いた覚えがある。
この共作でも電子音に対する愛着とこだわりが散りばめられている。前作ではまだ披露されていた速さという爽快感が徹底的にオミットされている。遅鈍さにDylan Walkerの強烈に喉に引っ掛けるような低音ボーカルが乗ってくる。垂れ流し系のズルズル演奏はスラッジを通り越した過剰装飾性すら感じさせるが、さらにそれを冷徹で重たいインダストリアルなビートがぐるっと一巻きにしているのだから明らかにやりすぎである。2つのバンドをつなぐ共通項がノイズ(単にハーシュノイズを用いた楽曲を制作するという意味ではなく、うるさい音へのアプローチとして)だったので、出来上がった音がうるさいのはわかりやすいのだが、冷徹なビートを用いるというところが面白い。もちろん単に今ハマっているから、という説明だけで充分なのだが(そもそも作り手側に説明を求めるのはお門違いであるが)、なんとなく意図が気になってしまうのが私だ。ミニマルなビートで陶酔させると言うにはあまりに曲の出来がカオティックで情報が多すぎる。そうなると垂れ流しに拍を導入することで引き締めるというのが一つあると思う。(逆に5曲目「Our Love Conducted with Shields Aloft」は生ドラムを叩きまくり徹底的にやりたい放題やっているのも興味深い。)うねりがあった前作に比較すると今回は曲の中で相克があって、抑圧感が半端ない。それがストレスに感じられる人もいるだろうが、個人的には「Didn't the Night End」「Farewell,Man」(邦訳すると「さよなら人類」になってたま感が半端ない。)の2曲はもうビートがおもすぎて最高。

Full of Hellの最新作のようなヘイトに満ちたデスメタリックなハードコアを期待すると、もったりと停滞したドゥームな世界観に驚くだろうが、根底にあるのはこの世に対する恨みつらみなのでそういった意味では全くぶれていない。バンド名知っているという時点で買って間違いない。今更速いとか遅いとかの話ではない。

2017年12月3日日曜日

Gnaw/Cutting Pieces

アメリカ合衆国はニューヨーク州ニューヨークシティのドローン・ドゥーム/ノイズバンドの3rdアルバム。
2017年にTranslation Loss Recordsからりリリースされた。
私はすでに解散済みのKhanateというバンドが大好き。メンバーはギタリストにSunn O)))などで活躍中のStephen O'Malleyに、ベースとしてアーティストだけでなくエンジニアとしても活動するJames Plotkin、ドラム担当がPlotkinとO.L.D.というバンドを組んでいたTim Wyskida、そしてボーカルがAlan Dubinである。
Khanate解散後Alanが始めたのがこのGnaw。Khanateはトーチャースラッジとして始まり、初期はそれこそGriefを叩きのめしたようなサウンドにハードコアというよりはメタル的案猟奇的な世界観をぶち込んだバンドで、後期になるに従いドローンやフリー・ジャズのようなアバンギャルドな要素の色を濃く打ち出していった。Sunn O)))はドローンの要素を色濃くKhanateから引き継いでいるが結果的に世界観は結構違う。GnawはよりわかりやすくKhanateの要素を受け継ぐバンドというイメージ。

O'MalleyとPlotkinという重量級の弦楽隊はなくなったものの、その空隙をうまく活かし、代わりにいやらしく這い回るノイズ分を充当している。Khanateも1stからノイズの要素が強かったのでそこも含めて違和感のない移行といえる。バンドアンサンブルに加えて専門のマニュピュレイターもメンバーに数える力の入れよう。
そんな最新作、基本的に前作・全前作からの流れを踏襲するものだが後半に流れるにしたがい、少しずつ音の形を変えてきているように感じる。具体的には音の数が減らされてきているように思う。1stアルバムだととにかく「Vacant」が好きなのだがこの曲はノイズが実態の重量を持って這い回るどころか屍衣のように曲を覆い尽くす、まさに重たさの塊みたいだった。今回はノイズ成分をうまくコントロールし、偏執病的に空隙をノイズで埋めていく、という作業からは幾分開放されている。khanateも活動時期の後半でも重たさ、重苦しさを別の次元に求めていたから同じような動きがこのGnawでも辿られているようだ。khanateは強烈な個性のぶつかり合いがせめぎあうバンドだった。スラッジから始まってもその範疇にとどまらないくらい(つまり文脈的にはハードコアというよりはメタル的な物語を感じさせるように)陰湿だった。猟奇的だった。病んでいた。この手のジャンルでは生命線である、”強くあること”という衣を剥ぎ取り、ソフトかつ捻くれて醜い中身をさらけ出していた。(ただスラッジは自己評価が低く、自己卑下が強い傾向にあると思う。)高い声で絶叫するAlanは、卑屈に笑みを浮かべる一見無害なやつだが、その実シリアル・キラーという物語/個性を打ち出しており、khanateもその魅力の一つとしてをそこに頼むところが大きかったように思う。その世界観をAlanは変わらず持ち続け、このバンドでも打ち出してきている。ベッドの下にばらばらになった死体を隠し持つように、透明人間が誰にも見られず溺死するように、今度のバンドでも誰かをバラバラに刻もうとしている。Alanの声にはなんとも言えない”弱さ”がある。(念のため言っているがAlan Dubinが現実的に弱い男であるというのでは断じてない。)体力で勝てない弱さ、自分の暗い欲望に屈してしまう弱さ、そんな強い世界(音楽という仮面のために作られた偽りの世界でもあることも往々にある。)では唾棄すべき弱さ、病的な性質がここではたちの悪い粘菌類のようにはびこっており、私にようなじめじめといじけた卑屈な人間はそういった場所こそが居場所がいいのだった。
壁にもたれかかり、猟奇的な夢想にふけるように、耽美な腐敗(現実ではありえない)が妙に時間を引き伸ばされているように、ぐーっと視界と思考の奥に伸びていく、そんな風景があえて音の重さを引き抜くことでもたらされている。質の悪い悪夢に囚われたような無力感に抵抗するすべもないような、どこかしら投げやりな客観性が獲得されつつあるように思える。「This can't be the right」「This must be the wrong place」と歌うように、現実に対する絶望的な違和感と、そこに育まれる正しくない感情の萌芽がこのGnawのテーマの一つではなかろうか。

思春期にサイコパス、シリアル・キラーの文献、ネットを読み漁ったような人なら確実にこの世界観にハマるのではなかろうか。拗けて間違っているが、だからこそ居心地が良いのだ。やはりAlan Dubinはかっこいい。おすすめ。

2017年10月15日日曜日

Ben Frost/The Centre Cannot Hold

オーストラリアのメルボルン出身で今はアイスランドのレイキャビークを活動の拠点としているアーティストの5thアルバム。
2017年にMuteからリリースされた。
前作「A U R O R A」から3年ぶりのリリース。間には英国の作家イアン・バンクスによる小説「蜂工場」に影響を受けたコンセプトアルバム「The Wasp Factory」をリリースしているが、これは戯曲というか大胆にボーカルをフィーチャーした異色作になっている。今回はSteve Albiniがレーコでィングを担当している。アルバムに先立ち「Threshold of Faith」というEPもリリースしている。

私は前作「A U R O R A」から入った口で容赦のないノイズに同居する美しさ、いわば荘厳なノイズに痛く感動したものだった。今作もそんな彼の特色が遺憾なく発揮されているが、個人的には前作ほどわかり易い内容にはなっていないと思う。前作の路線を踏襲しつつ、より曖昧に抽象的になったのが今作という感じだろうか。ビリビリ震えながら流動的にその姿を変えていく、いわば生きている轟音、ハーシュノイズを中心に据えながら、黒い絵の具のように排他的ですべてをただ”ノイズ”一色に染め上げてしまう強烈なパワーを制御しつつ、別の要素を主役たるノイズの魅力を減じさせることなく同居させるのが彼の強みで、前作収録の「Nolan」などはノイズとほぼ融合したような凍てつくような美麗なメロディがガリガリとその実体感を増していく素晴らしい楽曲で、まさに魔術師たるBen Frostの魅力がつまりまくった曲だった。今作でもノイズ以外の要素に力を割いており、わかりやすいのはビートの導入、それからノイズにかぶさるメロディ、リフ、ぶれない輪郭を持った明確でソリッドの音使いなど。ノイズアーティストながらどこかしら透明感のあるような美しい風景を作り出してくる。それがあざといくらいの美しさ、メロディとは距離をおいたやはりどこか北の方の極寒の厳しさを同時にはらむコールドなもの、というところがまた良い。コールドかつ背後の美メロという意味ではやはりブラックメタルに通じるところがあるかもしれない。
今作は中盤を過ぎたあたりからノイズの登場頻度と言うか、使い方がちょっと変わってきて、ボリュームレベルを下げて底流に這わせるような使い方をしている。いわばノイズの氷塊がとけだしてそれ以外の要素が顕になっているわけで、そこにあるのは非常に繊細かつアンビエントな曖昧な世界であった。てっきりノイズがなければ美しさが残るかと思えば、果たしてそこにあったのはもっと曖昧ななにかであった。ドローンめいた、僅かな光のような。相反するものをぶつけることがBen Frostの醍醐味かと勝手に解釈していたが、どうやらそれは違うらしく、この人は足し算というよりは掛け算で曲を作っているのだろう。

今作では緩急をつけることでまた新しいことをやっている。とにかくうるさいのがノイズでしょ〜というとちょっと驚くかもしれないが、一旦自分の曲をバラバラにして要素を一つ一つ吟味した上で再構築しているような、チャレンジ精神を感じる。そういった意味ではやや実験的な内容になっているかもしれない。曲単位で見れば彼の醍醐味が遺憾なく発揮されている曲もあるので、前作が気に入った人なら大丈夫だと思う。

2017年8月28日月曜日

FULL OF HELL/THE BODY/FRIENDSHIP Japan Tour 2017@新代田Fever


まずはこの動画を見てほしい。

演奏しているのはアメリカ合衆国のFull of Hellというバンドである。ハードコアの極北パワーバイオレンスにノイズを混ぜ込んだ激烈な音楽をやっている。そんなFull of Hellが新作「Trumpeting Ecstasy」のリリースに合わせて来日するという。それなら問答無用で行くしかない。Full of Hellは日本のノイズ神Merzbowとコラボレーションを行なったことがあり2014年にも来日経験があるのだが私はいっていないため今回見るのが初めてである。Full of Hellともコラボレーション作品をリリースしている(今年もさらに1作品リリース予定)厭世ノイズ・スラッジデュオThe Bodyも帯同するのだからさらに嬉しい限りである。
典型的なオタクなので弱い言葉がいくつかある。その一つが「限定版」だ。今回FoHの新作の限定版LPがあるというので勇んでいったのだが残念ながら売り切れ。開演前にT-シャツとピンズとパッチを購入。ボーカルの方が物販にいらっしゃいましたよ。とてもにこやかでした。

Friendship
一番手は日本から若い身空で刺青びっしり親不孝アウトローたちによる重低音ハードコア。今回の来日ツアーに帯同している。彼らが今年リリースした待望の1st「Haetred」も形式は異なるもののノイズを意識した強烈なハードコアをやっており、いわば一つの潮流としてのハードコア+ノイズに対する日本の回答なのであります。
いろんなイベントで目にする彼ら。いつもとにかくセットは少ないが音のデカさとタフに持続する正確性で強烈な個性を放つドラムに目が釘付けになってしまうので、今日はそこ以外をしっかり注目という気持ち。セルフブランディングもあってかとにかく強面、タフなバンドというイメージが強い(実際タフです)が轟音に負けないようによくよく聞いて見ると曲がよく練られていることに気がつく。ドラムに目が行きがちだが、ベースとギターは非常にうまくでかい音で空間と時間を区切っている。とにかくミュートの使い方がうまく、体を揺らせるでかいビートをバンドアンサンブル全体で生み出している。ただ速い、ただ遅いではなくきちんとつんのめるようなハードコアのリズムをものにしている。
そしてまさに豪腕という感じで、膂力でテンポをぶった切るように変えて行く。「ぎゅドン!」という感じで乗せたスピード一瞬で殺してくる。これにはやはり積み上げたアンプによる非常にボリュームの大きい音が効果的だと思う。
ボーカルはフロアに降りてきて暴れる。単にステージとその下で映える、というだけでなく放っておいたら何をするかわからない、2秒後にはこっちに体を低くして突っ込んでくるのでは(実際突っ込みます)という危機感もあって目が離せない。非常に華のあるボーカルだと思う。暴れすぎてマイクが物理的に断線。MC一切なし、客に拍手する隙すら与えない孤高のステージングだった。

Endzweck
続いては1999年から活動を続ける日本のハードコアバンド、Endzweck。ライブを見るのは初めてで実はこの日とても楽しみだった。ドラムの方はとにかくいろいろな国内外のハードコアのライブに関わっているようで、お名前を見ることがとても多い。ボーカルの方はバンドと並行してきちんと社会人やれるよ!という記事がついこの間話題になった。私も読ませていただいたが非常に面白く、また社会人として感銘を受けた。なんでもやろうと思えばできるのだ。
Friendshipから一点ライトをつけた明るいステージで丁寧なMCも間に挟んで行く。演奏するのは紛れもないハードコアで明確に良い意味で流行とははっきり距離を置いた堅実なもの。基本的に速度は早めでテンポチェンジも派手には行わない。速度を落として暴れさせるようなある種の”わかりやすさ”もなし。ひたすら突っ走る。途中でマイクから音が出ないトラブルもあったが、むしろ後ろで鳴っている演奏が聴けて私的には良かった。(その後すぐにマイクは復帰した。)終始叫んでいるボーカルと対をなすように演奏はとても饒舌。日本あるギターは両方とも勢いがあるが、表現力がとても豊かで厚みのあるリフに絡みつくような中音〜高音がよく出たトレモロや単音がとにかくかっこいい。じんわりと体の奥に火をつけるような”熱さ”を感じるのは曲に感情豊かに奏でられるメロディがあるからだろうか。
ボーカルの方のバンドから一歩出たインタビューも、明るいステージングも、背中を押すような曲も、動き回るメンバーも、全てが赤裸々だ。Friendshipはベールをうまく使うバンドだが(中身がないというわけでは断じてない)、Endzweckは包み隠さずに胸を開いて感情を出して行く。とてもかっこよかった。この日むしろ異質な音楽性だけど、それゆえひときわまっすぐ輝いていた。もう途中で絶対音源買って帰ろうと思った。(実際買って帰りました。)

Endon
続いてはやはり日本からハードコアとノイズをミックスして強烈に放射しているバンド、Endon。ただしこのバンドに関しては出自がノイズではっきりとしたバンドサウンドが前に出てきたのはConvergeのKurt Ballouとがっちり手を組んだ最新作「Through the Mirror」からではなかろうか。
1曲めてっきりとニューアルバムの冒頭を飾る「Nerve Rain」かと思ったら違う。とにかく音の分離が良くて、ノイズもきっちりギターと別れて(このバンドギターは重低音で潰すのではなく、ジャキジャキした艶のあるサウンドにしていることもある)綺麗に聞こえる。とてもバンドっぽいぞ、と驚く。そういえば昨今のライブのお供である強烈な白い光を放つプロジェクターがない。なになにバンドサウンドで勝負かと思いきや、曲が進むについれてノイズ成分を強めてくる。「Your Ghost is Dead」で速くノイジーな真骨頂はその頂点を迎え、そこから一点強烈に速度を落としたスラッジノイズ地獄へ。いろいろな楽曲を連続性を持って変遷して行く様はまさにノイズそのもので、このバンドの出自を意識させる。変幻自在だがどれも強烈にEndonであるのは、このバンドの本質が曲の型にあるわけではない、ということを露骨に証明していると思う。ボーカルの方は相変わらずひたすら感情的に叫んでいる。Endonは言葉に頼らないバンドなので(抽象的であるということにこだわりがあるのではと思うが)、きっとどこの国に行っても通じるだろうなと思う。もやの中を異世界の巨獣がが悠然と歩いているような様から、ノイズはそのままにギターが物悲しいアルペジオを奏でるアルバム終盤の流れに。ここで一回放棄した理性がまた違う形で戻ってくる。落差もあって非常にドラスティック(劇的)でドラマチックだ。ビリビリ震える空気の中で、感動で身も震えた。

The Body
続いてはアメリカからの刺客、The BodyがまずはFull of Hellのつゆ払いをば。The Bodyといえば底意地の悪い、とにかく厭世感に満ちたノイズスラッジが印象的だがこの日はなんとドラムもギターもなし。メンバーの二人がそれぞれノイズ機材にがっつり向き合う特別編成のライブ。普段ならギター/ボーカルのChip Kingもインパクトがあるが、頭をがっつり剃って(長髪のイメージだったものでびっくり)EmperorのロンTに身を包んだドラム担当のLee Bufordもヒゲのせいか陰気なフィリップ・アンセルモ的な危ない空気を放射していた。怖い!
おそらくその場でアナログ音源をいじって音を出しているのだと思うが、ぶちぶちいうノイズを垂れ流す。概ねビートが入っているため思った以上に聴きやすい。しかし重たいそれはダブやテクノという観念からあまりに距離がある陰鬱さ。シンプルかつミニマルなビートにゴロゴロ唸る重低音ノイズが乗る。その上にグリッチめいたノイズが飛び回る。音はでかいし、一部はドローン的に垂れ流されるのだが、音の種類と数は極限まで削られていて、きっちりとエレクトロ方面としての質が担保されている。不穏な人の声のサンプリングも非常に効果的でこれはめちゃかっこいいし、Chip Kingの巨体とは似つかわしくない高いボーカルもバッチリ頻度高めに登場するし、これは確かにThe Body。Endonもそうだが、バンドの本質がどこにあるのか、というのがはっきりしていると多少形を変えても全く軽薄な感じがしない。結構即興的な部分もあったのか、二人のメンバーの間に緊張感があり、それがビリビリ中間で帯電しているような不穏さを生んでいた。

Full of Hell
そしていよいよFull of Hell。ああついにこの日が来たのかとすでに感動と期待でステージを見上げる視線にも熱がこもる。
ボーカルのDylanが卓に据えられた機材のつまみをいじるとヒュンヒュンノイズが飛び回る。彼がマイクを握ってからほんの数秒、そこにマジで本当にわたし的には一番期待感のこもった至福の時があったと思う。まるで爆発したかのような推進力。止まらないブラスト、ギターとベースはかなり運指の激しい複雑なリフを奏でる。そしてそこに乗るボーカル。這いずり回るような低音から耳をつんざくような高音まで、バックの演奏御構い無しに寸断なく移行する。吠えまくる。まるでツインボーカルのように隙間がない。この人は高音と低音をまるで同時に出すように、高音から一転嘔吐するようなえげつない低音に連続性を持って変遷して吐き出してくる。Endonと違ってなんとなく言葉っぽいなとわかるのだが、あまりに早くて、そして異形すぎてこの人にしかわからない言葉を喋っている異星からやって来た人みたいだ。私たちと生きている速度が違うんじゃないのというズレ感。上背のあるからだを独特のやり方で(冒頭の動画を参照ください)動かしまくる。やばい。情報量が多すぎて全く脳が追いつかない。全て別々にすごいスピードで、止まったり爆速で動いたりを繰り返しているように思う。この日どのバンドも非常に極端なハードコアを演奏したが、明らかにFull of Hellが一番振り幅がでかい。Full of Hellはハードコアというよりはやはりパワーバイオレンスだ。それも今風の爆速と低速の間を全力でシャトルランするタイプの。パワーバイオレンスはその極端さからどうしても感情が研ぎ澄まされたピュアになってしまうのだけど、Full of Hellの場合はボーカルの多彩さとそれから何よりノイズに良い意味で”雑念”というか”逆巻く感情”を込めているので、さらに情報量が多く、そしてそれがバンドサウンドのニトロのように作用している。
途中ソロめいたパートもあったがドラムがブラストしまくりで、相当ややこしいことをできているのはこの人の豪腕があってこそなのかもしれない。ごまかしのきかない凄み。この時間が終わらないでくれーと思いつつ轟音に身をまかせる気持ちの良さ。私の言いたくて言えなかったことを全部言ってくれるような、心中の感情が体の外に出ていくような快感。

念願のFull of Hellはもちろん期待のはるか上方をいく凄まじさだったし、意表を突かれたThe Bodyもむしろすげーもん見れたという感じ。一方で相対する日本勢もどのバンドも一歩も引かない堂々たる演奏で本当出てくるバンドがどれもかっこよかった。ハードコア+ノイズでもこんなに多様なバンドがいて一堂に会してそれぞれ異なる音を鳴らすってすごい。主催の方々には本当ありがとうございますという気持ち。
終演後Chip KingからT-シャツを買ったらとっても丁寧で、フィットさせてもらうと「Good!」と言って指を立てて微笑んでくれたのだけど、(Full of Hellもそうだけど)この柔和な笑顔の背後にとてつもない厭世感と断崖絶壁のような感情が渦巻いているのかと思うとなんだかゾクゾクしますね!!長生きして地獄のような音楽を作り続けて欲しいです。
最後にFull of HellのDylan(開演前も終演後も物販にいてニコニコ対応してくれました)に「日本に来てくれてありがとう」と伝えることができて(伝わったか怪しいんだけど)とてもよかった。すごく距離がある極東の異国にはるばるこうやって来てくれるのは本当嬉しいです。
というわけで非常に良いライブでした。寝るとこの感動を忘れそうなのでとにかく今日のうちに書きたかった。
Full of Hellはもう一つ公演が公式にアナウンスされたので行ける人は是非!!!!

2017年7月17日月曜日

LOSTTRIP@新宿ロフト

日本のハードコアバンドVVORLDのドラマーチンウィルさんの企画。
真夏の新宿ロフトで全17バンドが出演するハードコアパンクのお祭り。
見たいバンドがいくつかあったのとの興味のあるけどほとんど聞いたことがないジャパニーズ・ハードコアを1日でいくつも聴けるのは良いな!と思っていってきた。
このあいだのVVORLDのリリースパーティ@新代田Feverと同じようにステージとバースペースで二つの舞台を作って交互にバンドが演奏してくスタイル。このやり方だと転換の間の待ち時間がなくなるわけです。最終的にはちょっと両方のステージが被りだしたけどほぼ押さなくて時間通りだったと思う。
新宿ロフトは広いし、トイレにも余裕があるので良いなと思いましたよ。

本当は12時開場の13時開演なのだが、私は余裕の重役出勤をかましついたらちょうどWrenchが終わるところ。Wrenchはいろんなイベントに呼ばれている気がする。当時はミクスチャーバンドという文脈だったと思うけど、いろんな音楽のイベントにハマるというのはミクスチャーなんだな〜と。

Fuck You Heroes@バースペース
とりあえずじゃあというわけでバースペースの方に移動すると超満員でかなり後ろの方から見る。メンバーが何人かもわからない。若さが何かは知らないが、サウンドを聞く限りは若い!という感じの音で、基本早めのビートにコーラスワークの爽やかなパンクという印象。場面によっては非常にメロディアスだった。

Black Ganion@ステージ
続いては愛知県名古屋のハードコア/グラインドコアバンドBlack Ganion!お目当の一つ。ハードコアというにはひねりすぎている凝った悪夢的なアートワーク(2ndその名も「Second」は非常に凝った装丁の特殊ジャケット仕様。)が象徴するように誰にも似ていいない音を鳴らすバンドなので一度ライブを見たかった。メンバーの立ち居振る舞いは完全にハードコアで、特にギタリストの方の顔というか表情が尋常じゃなくて恐ろしい。ジャニーズのライブに行く女の子じゃないんだけどライブ中に目があったような気がしたんだけど怖すぎました。
まず思ったのがスネアの音が徹底的にカラカラに乾いていてグラインドコア、ゴアグラインドっぽい。そしてブラストしまくり。指弾きベースはあくまでも不穏なのに対してギターのとは金属質であえて重量をある程度削ぎ落としたカミソリサウンド。そこに不明瞭に呻くボーカルが乗っかるという地獄仕様。ただ激しい一辺倒ではなく例えばアルペジオも入れてくるような起伏を曲に持ち込んでいるが、美麗なポスト感皆無でひたすら不気味。ソリッドなギターもともするとエフェクターのつまみをいじって異常なノイズを発生させていた。耳が慣れてくると楽器の音がそれぞれバランスよく聞こえてまさに音を浴びている状態。気持ちよかった。

ELMO@バースペース
お次はおそらく東京?のハードコアバンドELMOで前回のVVORLDのリリースパーティの時には異常に尖りまくっていたのでまた見たかった。こちらのバンドもお目当の一つ。
前回同様VVORLDのギタリストの方がギターのヘルプ。高音のノイズを異常に放出しまくる一目で危ないサウンドでワクワクが止まらない。前回見たときは異常に怒りまくっている感じだったが、今回は他のアーティストに対するリスペクトを言葉にしていた。とはいえ音の方はというと非常に凶悪な耳を痛める系でエフェクト過剰でほぼノイズになったリフの中を高音ボーカルが絶叫。高速パートもさることながら、ノイズがひゅんひゅん飛びまくる低速パートが個人的にはたまらん。怒りの感情をストレートでない歪んだ形で表現しているところがかっこいい。ただあくまでも感情的でちょっとメランコリック。もっと長いこと見たいものだと思ってしまう。
「Still Remains...」しか持ってなかったので「Change But True」とT-シャツ付きのThirty Joyとのスプリットもゲット!音に反してメンバーの人は丁寧な方でした。

Warhead@ステージ
古都京都の1990年結成のハードコアバンド。ボーカルの人は刺青びっしりに真っ赤なモヒカン頭という清く正しいジャパニーズ・ハードコバンンド。
「Fuck Off!」という絶叫から幕開けるステージは正しく反抗するという意味でパンクだった。しゃがれ声でシャウトするボーカルは一体何回「Fuck Off!」と叫んだのやらわからない。声質がジョニー・ロットンに似ている。円熟味もあるんだけどやんちゃな感じがしてよかった。曲はシンプルなハードコア・パンク様式だが相当速いスピードで駆け抜ける。コーラスはあるんだけどメロディアスさはあまりなく、本当掛け声という感じで高揚感はあるが曲自体はかなりハードコアだと思う。
曲が終わるたびに次やる曲の名前をコールし、一体どういったメッセージが込められているか(概ね曲名がそのメッセージを代表するワードで構成されているみたい)をぶっきらぼうな言葉で語って行く。これが全くもって自分たちの言葉という感じでまさにパンクスだった。ステージの強烈なライトの逆光に生えるモヒカンがかっこよかった。

kamomekamome@パースペース
Warheadを最後まで見終えてさては次はkamomekamomeだな〜と思ってバースペースに向かうとすでに人がパンパンでした…。完全に油断していた。新代田Feverで見たライブがとてもよかったので前の方で見たいなと思っていたのだが、そういえばあのときもすごく前の方はぎゅうぎゅうだったのだった。それでは!という感じで後ろで見たのだけど、もはやこの界隈のアイドルかってくらいの人気というか愛されようで、人が暴れる暴れる。ハードコア的な殺伐さではなくて笑顔で人がポンポン飛んでいる感じ。kamomekamomeは複雑な楽曲にメロディアスなパートがある曲が多いんだけど、メロディアスなところはみんな歌う。本当に後ろから見てそれと分かるくらい合唱。激しいだけだともっと殺伐とするし、メロディアスすぎたらもっとしっとりしてしまうし、両極端の要素を楽曲に融合させている本当にすごいバンドなんだな…と後ろの方から思ったりした。当たり前にかっこよかった。

EX-C@ステージ
続いては大阪のハードコアバンド。みるのも聞くのも初めてで名前も知らなかった。メンバーの方の様子から見てオールドスクールなハードコアバンドかなと思ったら全然違った。明らかにタフなバンドだった。基本的にボーカルの方がぎゅっと結んだバンダナが勇ましいレイジングなハードコアなのだが、曲にボーカルの入らないモッシュパートがあって、曲の速度がガクッと落ちる。するとフロアでは運動会が開催されるといった激しさ。一個前のkamomekamomeとはまた違った激しさでこちらはとにかく肉体的で拳やら足が振り回さられる剣呑なもの。といっても曲自体はストレートで勇ましいもので負の要素は皆無。もちろん前の方に行かなければ暴れなくてもライブを楽しめる。よく聞いてみると楽曲自体はただ暴れるための、というよりはツインのギターが叙情的なメロディを奏でたりとよくよく練られているものだったのが面白い。

Forward@バースペース
続いては東京のハードコアバンド。Death Sideという大変有名なハードコアバンドのボーカリストのIshiyaさんという方が今やっているバンドで、私はForwardもどちらも聞いたことがなかったのだが、Ishiyaさんのコラムを面白く読んでいたりしたので是非一度見たかった。見事に立ったモヒカンもあっていかついバンドかと思っていたし、実際相当いかついのだけど楽曲はちょっと思ってたのと違ってもっと温かみのあるものだった。メロディアスさはあまりない掛け声コーラスが雄々しいオールドスクールなハードコアなんだけど、Motorheadのようなロックなギターソロが結構入るのと、日本語歌詞を噛み含めるように独特の節でシャウトすると歌うの中間くらいで発生するボーカルで思ってたのよりもっと親しみやすい。速度もそんなに速くないのでギリギリ歌詞の短編が聞き取れるくらい。
お酒が飲めなくなったMCもそうだけどタイトな楽曲とシリアスさの中に柔和な一面があって、それがすごくよかった。個人的にはこの日とてもよかったバンドの一つ。また見たいです。

ENDON@ステージ
この日Wrenchとともに異色なバンドだったのではなかろうか。この日は結果的に出している音は違ってもハードコアバンドが集う日だったけど、ENDONの場合はバンドフォーマットを取っているけど出自がノイズで憧れからハードコアに接近した経緯があるから、そういった意味では明確に異色の人選だったのではと。
さすがの貫禄で全く動じずマイペースに最新アルバムの冒頭「Nerve Rain」からスタート。プロジェクターから放射される強烈な光が印象的で、チカチカ点滅するとメンバーの動きがコマ送りのように飛び飛びのように見える。ENDONの音楽は抽象的だが実際には物語性が明確にある。アルバムと同時に展開されたメンバーによる小説作品はオフィシャルでありながら、解釈でもあると思う。無数の解釈はあるのだが詳らかにされることを拒否しているようでもある。パンクスがやるハードコアは物語というよりはメッセージ(という物語である、ということもできるが。)だから、単に音楽以上の隔たりがあるかもしれない。そんなことを明滅するライトの白さに思ったりした。かっこよかった。

KiM@バースペース
続いて京都のバンド。このバンドはウッドベースがいるというのはなんとなく知っていたので一体どんな音になるのか気になっていた。さすがにウッドベースの存在感は半端ない。バーのステージは決して広くないのだが、くるっと回したり、掲げたりしていた。(重くないのだろうか。)
パンクスはメッセージだと思ったけどこのバンドはそのメッセージが強烈だった。そして音的には非常にタフ。不良を通り越して怖いです。”男らしさ”というのが強烈に意識されていて、それを曲に落とし込んでいる。わかりやすいモッシュパートがあるわけではないが、全編フロアが危険なことになっていた。バチバチ、カチカチなるウッドベースはさすがのかっこよさ。ロカビリー感というのはそこまでなかったけどシンプルかつ力強いハードコアサウンドに独自な音を追加していてかっこよかった。とにかくタフな男のハードコア、怖かった。

九狼吽@ステージ
続いて名古屋のハードコアバンド九狼吽。「クラウン」とよむ。ボーカルの人は巨躯でモヒカン頭、両目を横断するように黒い線を引いている。ベースの人は金髪リーゼントに鋲を打ちまくった革ジャンを着込んでいた。この日革ジャンを着込んでいたのはこの人だけかな?冷房効いているとはいえ暑かろうに。とてもかっこよかった。
ジャパニーズ・ハードコアスタイルだが、ボーカルがダミ声。曲の速度はWarheadよりは遅いかな?Forwardと同じくらいでおそらく日本語の歌詞が聞き取れるかな?くらい。コーラスワークが「お〜お〜」とメロディをなぞるように入ったりするから見た目に圧倒されるけど楽曲自体は結構聴きやすく、ライブハウスでは一体感が出る。あくまでもハードコアの音で中域をブーストしたどっしりとした温かみのある音で、Motorheadのようなロックンロールなリフや一点刻みまくるようなリフなど、ギタリストの方は豊かな表現力で曲に多彩な表情があるのが印象的。Warheadのようにメッセージを自分の言葉で(借りてきた言葉感ないのが良い)不器用ながらにもきちんと語ってそこから曲に流れ込むスタイル。まずはメッセージありきのパンクバンドだと思う。

ここでちょっとお休み。バーステージではMeaningが演奏中だが漏れてくる音を聴きつつ休憩。

Fight it Out@ステージ
トリは横浜のパワーバイオレンスバンドFight it Out。休憩中はステージの方にいたんだけ
ど出している音が凶悪でこの日見たどのバンドにも似ていない。
幕が上がってボーカルのYoungさんがフロアから柵に手をついてヒョイっと乗り越える様がかっこよかった。(結構高さがあるのを軽々飛び越えた。)
Black Ganionに似たソリッドな音だけどもっと厚みがある強烈な音で音質だけならかなりメタリック。ベースもガッチガチした音で、バンド全体で音響のせいか分離が良く、フロアに向けて放射される音に埋もれる感じ。始まってみればフロアではでかいピットが出来上がり。ボーカルの人はほぼステージから降りてフロアに。タフなんだけどKiMの盛り上がりとはちょっと違う感じ。こちらの方がもっと混沌としているのはパワーバイオレンスというジャンル故だろうか。高速と低速を行ったり来たりするめまぐるしい楽曲が次々と繰り出されていく。激烈な曲の中にもちゃんと決めどころがあって結構場所によってはみんな歌う(というか叫ぶ)。 例えば速すぎたりして曲が激烈だとなかなか乗りにくかったりするのだけど、Fight it Outはとても乗りやすいからすごい。最後にふさわしい盛り上がりだった。

ハードコアといってもやはり色々な種類があるな、と当たり前ながら思った次第。そういった意味でハードコアというところを共通点に全国のバンドを1日で見れてしまうとても良いイベントだった。ライブハウスの音響も良かったと思う。特にステージの方は。気になっていたバンドを見ることができたし、実際に見てみると色々自分の好みについても言語化できたりして面白い。
ありがとうございました。

2017年7月9日日曜日

エレファントノイズカシマシ V.S. KLONNS@新宿Hill Valley Studio

日本のノイズバンド、エレファントノイズカシマシと東京のブラッケンドハードコアバンドのKlonnsがライブをやるらしいということで行ってきた。実は両方のバンドとも名前は知っているけど聞いたことがない。そもそも何回か名前を見て覚えているなら気になっているということに違いないので、良い機会だと思って行って見た。スタジオライブというのも初めてで面白そうだったので。場所は新宿にあるHill Valley Studio同じ通りにある老舗のライブハウスAntiknockが経営しているらしい。入ってみると白い内装がとても綺麗なスタジオだった。本当にスタジオ。そのスタジオの結構広い一室を使ってライブがされる。結構広いと行ってもスタジオはスタジオなので非常に近い距離でバンドとその演奏を見ることになる。とても楽しそうだ。

エレファントノイズカシマシ
一番手はエレファントノイズカシマシ。そもそもエレファントカシマシだって聞いたことない、ノイズならなおさらである。トイレ工事とコラボしたりしている変わったバンドらしい。
この日メンバーは5人で、ギターとベースはいる、バンドなので。ドラムのところにいる人は結局ドラムを叩かなかった。代わりに金属でできたデジリドゥ?みたいなのを吹いてた?手の動きが怪しかったのでテルミンかもしれない。あと金属を叩く人でこの人は螺旋状になった細い金属をやはり叩いたりしていた。(どれも自作の楽器だろう。)それから配線でごちゃごちゃになった卓をいじる人で、その卓の上にはエフェクターだけでなくおもちゃみたいな鍵盤やバット状の何かに配線とライトを取り付けたものなど、色々とよくわからないものが乗っている。
ノイズというとともすると高尚になってくるがこのバンドは結構くだけた雰囲気でホッとする。まずは小さめのノイズが少しずつ音の数を増やしつつうねっていく。まるで予兆のような出だしである。普通のバンドだと予兆と本編はだいたい区別されていることが多いのだが、ノイズだと予兆が連続して本編に移行していく(つまり区別がない)ところが面白い。次第にテンションとそして音圧を上げていく。ハイ・ボルテージという言葉がぴったりくる。気がつくと様々なノイズがビュンビュン飛び回り、ギターの人のフレーズは溶解して変な音(まさにノイズ)になっている。ベースの人はなぜか缶コーヒーのようなものでベースを引き出し、言葉にできない感情をマイクに叫んでいる。螺旋状の金属は金属の棒で叩かれていて、これが仮のビートを生み出しているが、すでにノイズは成長しているのでビートで制御するのは難しい状態。野放図に出しているかと思いきや、きちんとフロントマンの男性(卓の前にいる方)が手振りでアンサンブルをコントロールしている。指の数と動きでバンドを制御する様はさながら(実際)指揮者のようであり、落とすところではきっちり抑制されている。見た目と編成、それからバンド名で受けを狙ったバンド(ただユーモアという意識がとても大きいバンドだと思うが)かと思いきや新しいノイズを生み出すという気概に満ちた迫力に満ちた音楽。最終的には耳が痛くなるほどの大音量でノイズを浴びせかける。見た目にも、特に光に気を使っており、卓上ライト(勉強机についているような)や小さく鋭い光を放つライト、きわめつけはメンバーの前に据えられた小さいミラーボールのようなものを曲のクライマックスで一斉に点灯。毒々しい光は結構チープなのだが、シニカルなユーモアがある殺伐としたノイズに不思議と調和して非常に格好良かった。

KLONNS
続いては東京のKLONNS。何度か耳にするバンドでいよいよ聞けるなという気持ち。こちらは4人組の、ボーカル、ギター、ベース、ドラムの完全なバンド形式。
おしゃれなBandcampのイメージから勝手にモダンなブラッケンドかな…と思っていたのだが、どう聞いてもこれハードコアじゃないかなと。それもかなりハードなハードコアだ。攻撃力というかアグレッションがすごい。というのもほぼボーカルの人の迫力に当てられてしまった感がある。(のできちんと曲を聴いてみようと思っている。)MerzbowのT-シャツに黒い手袋、短パンを履き、腰の後ろに手を置くスタイルで狭いスタジオの中を動き回る。客にぶつかる、むしろぶつかりにいく。吐き捨て型のボーカルは(若干イーヴィル感もあるけど)昨今のブラッケンドにありがちなおしゃれ感がゼロ。非常に粗暴な立ち居振る舞いはまさにハードコア。
こうなると演奏が気になってくるわけなのだけど、まずギターでこれはなるほど結構トレモロを使っている。不穏な高音フレーズ、短めのソロなどはブラックメタル的だった。ただ美麗なトレモロやなきのフレーズという感じはゼロ。展開は結構曲中であるようだが、一つ一つの単位で見ると結構ハードコアっぽいシンプルなコード進行が目立ったように思う。ドラムとベースはかなりハードコアでこれも弾き方が結構バリエーションがある(そういった意味ではハードコアとブラックメタルの要素から良いところを引っ張ってこようという意識はあるのかもしれない)が基本的にはDビートだったり硬質でアタック感の強いベースの弾き方はハードコア要素が強いと思った。ハードコアといってもモダンなそれではなく結構オールドスクール感があり、最終的な音の感じは違うのだが、なんとなくリバイバルのハードコアをやっているProtesterなんかに似ているんじゃないかな?と思った。全然知らないでいったら良い驚きだった。ブラッケンドというとモダンなイメージがあるけど、むしろオールドスクール感があってすごくかっこよかった。

結構異質な組み合わせの2バンドだったけど、既定路線から外れて独自の路線を追求する(アヴァンギャルドなのかも)という点では共通していると思った。スタジオライブゆえの近さもよかった。エフェファントノイズカシマシの音源を買って帰った。

2017年7月1日土曜日

SUMAC Japan Tour 2017@小岩Bush Bash

アメリカとカナダの混成バンドSUMACが来日するという。
SUMACは元ISISでHydra Head Recordsを運営するAaron Tuner、BaptistsのNick Yacyshyn、Russian Circlesで元BotchのBrian Cookによるスラッジメタルバンド。輝かしい歴史を持ち、知名度の高い3人が結成したスーパーグループと言える。昨年リリースしたアルバム「What One Becomes」は日本でも非常に好調だったのではないだろうか。私が普段目にしているレビューサイトやtwitterでもその評価は概ね好調(というか絶賛)だった。私もおっとり刀で購入し、これはすげえなと思ったもの。ただ感想を書く際に思ったのは何かに似てそうで似てないから結構描きにくい。重量級のスラッジバンドなら珍しくもなかろう。もはや一つのやり方として確立すらされていると思うが、このバンドはなんかちょっとこう違和感があるな、と思っていた。いわばまだ掴みきれないな、という消化不良を抱えていたわけで、来日と聞いてこれをひょっとしたら解明できるかも、と。

ツアー初日は小岩。Bush Bashは小さめのライブハウスである。平日の小岩はすでに雨も上がっていた。私が会場に着いたのは20時過ぎ。この日はFriendshipと黒電話666が日本からは出演。特に一人ハーシュノイズユニット黒電話666に関しては今年リリースした音源が非常にカッコよかったのでお目当の一つだったのだが、会場に着くともう本当に終盤のところしか見れなかった。

黒電話666
複雑に絡み合った様々なノイズが一つの太く巨大な奔流を形作り、生き物のように蠢いている。先般の音源ではただ垂れ流されるのではなく、きちんと曲にメリハリをつけた展開が印象的だったが、この日もそれは健在でうるささの中にもテンションがあり、私が最後耳にした終盤では離陸前のジェット機のように轟音がその頭をもたげ、テンションはどんどん張り詰めていき、不穏さと音量は次第にその勢力を強めていっていた。クライマックスではガラリと音の様相を変え(これはノイズでやるのは相当困難なことだろうと思うが、バッチリはまっていた)、一層ハードで攻撃的なノイズ地獄に展開していた。金属質の暗黒の太陽のように集まった人々をそのギラギラした光で強烈に照らしてる。ため息の出るようなノイズ。
これはきちんと全部また見なければならない。

SUMAC
続いてもうとりのSUMACである。ちなみにこの時点でもうひとはぎゅうぎゅう詰め。上背のあるメンバー3人は寡黙な感じでステージへ。Bush Bashはステージとフロアが同じ高さである。(そのため背が低い人はフロアの後ろの方だとよく見えないってことにもなるんだけど。)迫力が半端ない。黙々とセッティングを始めるのだが、ほとんどこの時点では音を出さない。転換はとてもスムーズ。黒電話666がバンド編成でないこともあるだろうが、それにしても機材と音のチェックは本当にあまり時間をかけていなかった。来日しているバンドの方々はニコニコされていることも多いが、SUMACの場合はドラムのNickは終始柔和な表情だった(メガネもよく似合う人でとてもハードコアバンドのメンバーとは思えない、タトゥーはあるけど)のに対し、AaronとBrianは別に無愛想というわけではないが、表情は読み取りにくく淡々とした印象。さっさとセッティングを終えてネック(金属でできているみたいに見えた)を両手で抱えて静かに待つBrian Cookの姿はその体躯もあって印象的だった。これからえらいものが見れるぞ…とテンションが上がる。
SUMACというとどうしても轟音という考えで思考が塗りつぶされているのだが、まずこれは間違いだったと思う。ひたすら低音に特化してただただすりつぶしていくようなスラッジとは明らかに異なる。これだけは覚えていただきたい。(私の印象です。)確かにミニマムな編成で高音を出せるはずのギターはほとんどそれらの音を出さないが、実際はただ低音をずらずら引いているわけではない。最小限のバンドなので役割は決まっていて、Aaronは低音以外にも色々な音やリフを駆使している。伸びやかなリフ、キャラキャラした音、ワウ(といっていいのか)を異常に噛ませためちゃくちゃ分厚いソロなど。ボーカルの登場頻度は低く、これは楽器の一つに過ぎない。まずはこの多彩さに驚くが、次に驚くのが曲である。曲!これが曲者だったのだとわかった。(気がしている、今は。)SUMACの曲は異常に複雑なのだ。反復の要素があるのだが、リフを中心にした短い(といっても長尺のスラッジをやるのでそれなりにはある)パックを単位として、それを次々に転換していく。だから耳で聞いたものに頭が追いつかないのだ!記憶と予想で次はこれだな〜と乗るわけだけど、SUMACはもう次のフェーズに写って全く違うことをしているのだもの!!もちろんアルバムの曲を今聞いてもそうなのだけど、強烈にライブでこれが意識されて、私は一人で「うお〜〜〜」とめっちゃ変な感じにテンションが上がってしまっていた。
この日は曲をやる、インプロゼーションめいたセッション、そこからスムーズに次の曲へ、という流れでこれでSUMACというバンドが少しわかる。ここでこのバンドの変幻自在(つまり尋常ではない引き出しの多さ)が明らかになり、素晴らしくヘヴィーなフリージャズのような面が強調されていた。Aaronのキャラキャラしたギターは後期khanateのようだった。かと思えば多彩なエフェクトでほぼハーシュノイズのような音も出していた。
驚くのはNickのドラミングで、この人が一番へんで一番すごいかも。前述の通り展開が変わる中でもこの人はどんどん叩き方を変えてくる。最近ハードコアを聴いていてテンポチェンジがただ速度の変化だろ〜?とくらいにたかをくくっていたがとんでもない。この人何者なの。リズムが非常にかっちりとしているのに変わり過ぎてこちらがリズムを取れない!この人のドラムに注目しているとただただすごくてすごく楽しい。
SUMACはそういった意味だと非常にプログレッシブだが、サイケデリックはない。というのも反復の要素が非常に特徴的で少ないし、音が明確に正確すぎて恍惚としたサイケデリアが形成されないのだ。だって強靭な筋肉とそこから生まれる正確性で曲が形成されているのだもの。知っての通り筋肉は重く飛ぶどころか水にも浮かびにくい。いわば非常ん現実的であり、聞き手に夢を見ることを許さない非情な音楽なのだ。こう書くと頭でっかちな音楽に思われそうだが、実際には違う。複雑な拍にわざと穴を設けてメリハリをつけているし(これは拍を変えているのか、拍に穴を開けているかどっちか、あるいは両方?)、音楽の音(リフ)と構成という根源的な質の高さ、一転して激情を迸らせるAaron、対照的に淡々と職人のように刻んでくるBrian、Nickの超人的ドラムと、聞きどころと、さらにライブなら見所満載で楽しいことこの上ない。

MC一切なしのライブが終わると会場は鳴り止まない拍手で包まれた。
すごかったな〜。私的にはSUMACというすごいバンドのすごさがちょっとわかったかなと思って非常に楽しかった。
来日ツアーはこれからなので迷っている人は是非足を運んで見て下さい。

2017年6月25日日曜日

Cavernlight/As We Cup Our Hands and Drink From the Stream of Our Ache

アメリカ合衆国はウィスコンシン州オシュコシュのドゥームメタルバンドの1stアルバム。
2017年にGilead Media(Thouとかドゥーム/スラッジ系のリリースが多いようだ。)からリリースされた。
2006年に結成された4人組のバンドとのこと。バンド名は「洞窟光」だろうか。アルバムのタイトルは「手でカップを作って(両手を合わせるあれね)私たちの痛みの流れからそれを掬い、飲む」というような感じだろうか。よろしくないですね。曲名も軒並み長くて嫌な感じ。

全5曲で35分40秒、1曲だいたい7分前後だ。ドゥームにしてはバカみたいに長いわけではないが、アルバムを一通り聞けばこれが程よい長さだとわかるだろう。これ以上長いとこちらが死ぬからだ。いわゆるトーチャースラッジとは異なる地獄感のある音楽を鳴らしている。
粒度の荒いジメッと質量のあるギターが圧殺リフを奏でていく。ひたすら遅く爽快感のある疾走とは無縁の世界で真綿で絞め殺されるような展開が続いていく。何かよくないことが最近あったのに違いないボーカルが共感しないし、共感されることを拒否しているかのような世捨て人スタイルで吐き出していく。
これだけだと確実に真っ暗でしかないのだが、このバンドはこの地獄の中にそれこそ芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のように、カンダタに降ろされた一本のか細い蜘蛛の糸のような救いが、例えば妙に冷たくありながらも人間的な、ただし非常に単調でメロディ性のわずかな残り香が感じられるようなシンセ音に託されている。これがまた良い。蜘蛛の糸が結局千切れることでカンダタをもう一度地獄に突き落としたかのように、逆説的に希望がその周りの地獄感を際立たせるからだ。これはえげつない。なんてひどい。
実は感情的でありそういった意味ではフューネラルドゥームさを感じる。強烈な音楽性の中にも寂とした自傷的なデプレッションを表現するあの感じには通じるものがある。そう思ってよくよく聞くとコード進行なんかは結構温かみのあるメランコリックな人間性が感じられるから面白い。女性ボーカルの導入、曲中のメリハリのある展開、贅沢な尺の使い方など結構ポスト感のある構造をしているのだが、それを持ち前の黒さで半ば塗りつぶしてしまっている。結構そういった意味では意図的なバンドで、だから底意地の悪い音楽がよく映えている。二律背反というよりは時の黒さを目立たせる暖色の使い方がやはり非常に巧みだ。

地獄のような音楽が好きなろくでなしは涙を流して聞けるのではなかろうか。非常にこれは良い音楽ですよ。この世には希望なんかないんだというあなたにはきっと薬のように作用するのではなかろうか。さあ是非どうぞ。

khost/Governance

イギリスはイングランド、バーミンガムのインダストリアル/ドゥームメタルユニットの3rdアルバム。
2017年にCold Spring Recordsからリリースされた。
khostは2013年にJustin K BroadrickといくつかのpロジェクトをやったこともあるAndy SwanとDamian Bennettによって結成されたバンド。最近では日本の林田球さんの漫画「ドロヘドロ」のコンピレーションにも参加している。私はこのコンピレーションから興味を持って2nd「Corrosive Shroud」を購入した次第。
Sunn O)))に影響を受けたような垂れ流しの重低音に、エクスペリメンタルなインダストリアル要素とある意味よりとっつきの良いドゥームメタル要素をぶち込んだ楽曲を披露しており、モダンにアップデートしたGodfleshとも例えられるようなどっしりとした音楽だった。とても気に入ったので今回の新作も購入。

基本的な路線というか土台は同じで、一撃の重たい重低音を引きずるように垂れ流す。すでにリフは溶解しており、パワードローンといった趣すらある。そこにやけに金属的なドラムを絡めてくる。金属板をぶっ叩いて出しているかのようなキンキンした音は無人で動き続ける非人間的かつディストピア的な未来の工場で録音された騒音のようだ。ギターが奏でる重低音の響と、重低音〜金属的な高音まで抑えたドラムの相性はあいも変わらずバッチリ。そこに乗るボーカルはしゃがれたデス声でこれは妙に感情が抜けていて、明らかに焦点の合わない目で空虚にボソボソと呟かれている。デスメタルなんかは非常に感情的な音楽であるのに、激烈な音楽性を保ちつつそこを放棄しているのが面白い。一方妙に怪しい節のある「のわ〜〜」とした詠唱のような歌声も頻繁に使ってきてひじょに”リチュアル感”がある怪しい世界を構築している。ここまでは基本的に前回と同じ世界観であり、「ドロヘドロ」コンピレーションに提供した1曲目「Redacted Repressed Recalcitant」何はそのkhostの要素がぎゅっと詰まったキラーチューンと言える。ところが2曲目「Subliminal Chloroform Violation」では大胆に我が国の民謡「さくらさくら」をフィーチャー。khost流のインダストリアルに侵されて感情が抜けて腐敗している歌声が何とも恐ろしくそして虚無的で、退廃的である。いわば攻撃性から軸をずらしてもう少し別の地平を目指した音を作り出そうとしている姿勢が見られる。この曲以外でも「Low Oxygen Silo」では管楽器(トランペットかサックスかと思うが)がメインを張っているし、その他の曲でもアンビエント、女性ボーカルの導入(どれも感情が抜けている)、アコースティックギターなどなど、いわゆるヘヴィと称される音楽性では通常用いない要素、アイテムを大胆に取り込んで唯一無二の音楽を構築している。いわばデスメタル的な力自慢から明確に一歩退いて独自の音楽性を模索しているわけだけど、もともとインダストリアル成分と、程よく隙間の空いたドゥームメタルのフォーマットは新要素を持ち込むのは適していたのだろう。また過去作品でkhostの重低音は完成されていたわけだから、それを土台に次の武器を探しにいった過程がこのアルバム、といっても良いかもしれない。
「エクスペリメンタル」というのは今結構曖昧な意味でメタル界隈では使われているが、このように多様な音楽性を取り込みながらも唯一無二音を鳴らしているバンドには非常にしっくりくる形容詞だと思う。「Governance」では”非人間的な虚無さ”という統一されたテーマでまとめ上げられているため、異なる角度が全て円の中に収まっているように感じる。

2ndから大きく化けたんだけどこれが非常にかっこいいわ。こうなるために前作があったのかというようなぢ続き感もあってあるべきところにきっちりはまった感じ。インダストリアル好きは人は是非どうぞ。徹頭徹尾不穏で楽しい。金属的な響きにはその余韻に妙に寂しさがあると思うが、その余韻をひしひしと感じられるとても良いアルバム。非常におすすめ。

2017年6月4日日曜日

The Endless Blockade/Primitive

カナダはトロントのパワーバイオレンスバンドの2ndアルバム。
2008年に20 Buck Spinからリリースされた。
The Endless Blockadeは2003年に結成されたバンドで残念なことに2010年には活動を終えてしまった。確か今Sete Star Septでドラムを叩いている人がメンバーとして在籍していたことがあったのではないかな。パワーバイオレンス(ハードコア)バンドということでスプリット含めてそれなりの数の音源を残している。私はBastard Noiseとのスプリット「The Red List」のみ持っている。なんとなしにデジタル版でこのアルバムを買ってみた。ミックスはPig Destroyerなどで活躍するScott Hullが手がけたようだ。

全12曲を21分で走り抜ける正しいパワーバイオレンスバンド。だいたい1分くらいの短い曲の中を高速〜低速をストップアンドゴーを交えてめまぐるしくシャトルランして行く。基本はしゃがれた高音喚きボーカルでたまに低音ハードコア喚きボーカルが乗る。ややぎろんぎろんした太くて主張の強いベースがMan is the BastardやSpazzを思わせる。ミュートを多用しないギターも非常にハードコア的である。ドラムも速い時は速いが音が軽くて抜けが良い。疾走感というよりは早回ししているような痙攣的で不自然な速さが、いつのまにかトーンダウンして停滞しだす。ストップアンドゴーと言っても速度の止め方というところにこのジャンルの面白さがあると思うけど、このバンドはそこらへんが非常に巧みで短い曲でもあっという間にテンポを転換させて行く。
割と伝統的なパワーバイオレンスを軸にこのバンドのすごいところはさらにノイズの要素をぶち込んできている。不穏なSEはともかく、明らかにハーシュノイズを曲に持ち込んでいる。イントロ的に使う場合もあるが、スラッジ成分を強調した長い尺の曲(基本2分台くらいだがラストは7分40秒ある)ではノイズの登場頻度も増してくる。ハーシュノイズは流動的かつミルフィーユのように多重構造だが、その層をいくつか剥がしてきてハードコアの表面に貼り付けている。(あるいは足元に滞留させている。)分厚いハーシュノイズをそのまま使えば個性の強すぎるノイズゆえにノイズにしかならないだろうから、心得た使い方だと思う。

ハードコア(パワーバイオレンス)にノイズの要素を追加するのが昨今の一つの流れ(Full of HellやCode Orangeあたり。日本のEndonはノイズがバンドサウンドに憧れから接近したとしたらちょっと違うかな。)だと思うけど、この流れは何も今に始まったことではないなと改めて実感。いうまでもないが「The Red List」で共演しているBastard Noiseはパワーバイオレンスの元祖とされることもある元Man is the Bastardのメンバーが始めたバンドであるから、別に今の潮流が単なるリバイバルとは全く思わないけど、きちんとこういうった土壌があるところから最近のバンドがすくすく育っているんだな〜という感じ。
そんなわけで最近のFull of Hellなんかが好きな人たちはバッチリハマると思うので是非どうぞ。個人的には大変かっこよく楽しめた。おすすめ。

2017年4月16日日曜日

CRZKNY/MERIDIAN

日本は広島のジュークプロデューサーによる3rdアルバム。
2017年にGOODWEATHERからリリースされた。
3枚組の重厚なアルバムでジャケット(沖縄のアーティストの手によるものだそうな)に惹かれて視聴すると格好良かったので本当になんとなく買ってみた。
みんなジュークって知っているかな?クラブで超流行っている音楽なんだけど…。ちなみに私は全然わかんない。このアルバムの説明で知ったもんね。ちなみにクラブで流行っているというのは適当だからね。本当は知らないです。ジュークというのはシカゴハウス(ってそもそもわかんないんだけど)から生まれたジャンルで重低音を効かせたビートでBPMが同じ曲中に急にそして大きく変わる。ダンサーがそのビートに合わせて足技に比重を置いたダンスを披露するらしい。だからジューク/フットワークというセットで呼ばれることも多いとか。音楽的には既存の曲のサンプリングを大胆に行い、ビートの調整をプロデューサーが行うみたい。

3枚組なので1枚目から聴くのは当然である。ノイズにまみれた中人の声が何かを喋る(裸絵札の人に似ている声でちょっとびっくりした)1曲目から、ブツブツしたグリッチノイズが入る2曲目。3曲目。4曲目。あれれ?CDがおかしいか?と思うくらいグリッチノイズである。一応曲が進むと背後に不穏なベースライン、ドローンめいた不協和音などの他の音が追加されていくが基本的にはずっとノイズ。グリッチをリズムと捉えることもできなくはないが、これを楽しめるのは相当な上級者かもしれない。ノイズにしても音が少ないので。青い顔で2枚目を再生するとビートが登場するので一安心。なんせ帯には「踊るか、叩き割るか、燃やせ」という煽りが入っているくらいだ。しかしやはりわかりやすい音とは言えない。ビートは明確でわかりやすく、音の数が少ない分一撃が重くなるように重低音が強調されている。それがミニマルに続いていく。あまりBPMの大胆な調整に関しては意識しなくて良いと思う。そこに明らかに存在感のあるノイズが上物として乗っていく。クラブミュージックにしては陰鬱すぎると思う。つまり音楽としてはめちゃかっこいい。流行りのジャンルにしてもこの人はちょっと立ち位置特殊なのではなかろうか。この不穏さはどうだ。ヒット曲を大胆にサンプリングすることもあるらしいジャンルなのだが、CRZKNYの場合はそのようなことはなく単体だとノイズにしか聞こえない音をうまく切りはりしてクラブミュージックを作っている。
ちょっと調べるとこの人はもともとMerzbowの影響でノイズをやっていたこともあるらしい。数年は作ったというからおそらくというか絶対その時の経験が生きているのだろう。なるほどしっとりとしたクラブミュージックとして見事に成立しているのだろうと思う。ビートが明確でとにかくかっこいいからオタクでも思わず体が動き出してくる。しかしただおしゃれなわけでなく、むしろオシャレとしては絶対成立しないようなノイズを曲に大胆に取り組んでいるところがすごい。時には音数の少ないインダストリアルミュージックにすら聞こえる。音の数を少なくすることで聴きやすさと踊りやすさを獲得していると思う。反響を効かせた空間的な音づかいは音数が少ないところで異常な魅力を放つ。それは空洞の音である。正確には空洞で起こる何かの運動の私はこの手の音には目がない。
個人的にはやはり2枚目のかっこよさが非常に良い。情報量の多いメタル/ハードコアで疲れた脳の隙間にリズムが麻薬のように入り込んでいくようで非常に快である。

ノイズやインダストリアルに興味がある、耐性がある人は結構ロック界隈に多いと思うが、そんな人なら結構バッチリはまるのではなかろうか。クラブで流行というとうーむ、となってしまう人でもまずは視聴してみると良いかもしれない。おすすめです。