2013年7月28日日曜日

Black Ganion/Second

本邦名古屋発のスーパーメタモルフォシスグラインダーの名前の通り2ndアルバムです。
2013年に
名古屋のJukebox Recordsから発売されました。
私は買ったのはDVDや何とも不気味なポスターが付属している、特殊な紙Boxバージョンでした。ぱこっと外れます。

Hip-Hop界隈では有名なDj Bakuさん主催のイベントに参加してたりして名前は知っていたのですが聴いたことなかったバンド。前々から気になっていたのでこの機会に買ってみました。何となく、クロスオーバーなオシャレ感漂うバンドかなと勝手に思っていたのですが、全然違いました。
激アツな内省的な雰囲気とドゥームメタルの要素を持ったグラインドコアです。
ドラムはたたきまくり、ベースはうねりまくり、ギターは結構めまぐるしくメタリックなリフを奏でます。曲はだいたい1分台から2分くらい。ノイジーに疾走しまくるスタイルの曲の比重が多いですが、短い曲の中にもブレイクパートや放心したような静寂のパートを入れたりしてなかなか飽きさせない作りです。ドゥームやダブの要素もふんだんに取り込んだと説明されていることが多くて気になっていたのですが、なるほど1曲8分の名が尺の曲があるのですが、叩き付けるような遅いリフに悲鳴のような方向が絡みまくりの地獄のようなドゥームっぷりを発揮しています。長い中にも疾走パートを取り入れて飽きさせないのもグッド。劇音がぼやんぼやん反響し合ってぶつかり酔うなぐわんぐわんするところがあって、ここら辺がダブっぽいのだと思います。これが非常に気持ちいい。
面白いのはアルバムを通して結構実験的ですらあると感じるのですが、確信犯的ではないというかこれが俺たちのスタイルです!といわんばかりの素直さ。非常にストレート何です。グラインドコアなんですけど、私は何となく聴いてすぐにハードコアっぽいなと思いました。一番それらしいのはボーカルのスタイルで、デス声やわめき声とは違いますね。私はあんまりそちら方面明るくないのであれなのですが、ハードコアパンクっぽいと思いました。Terrorizerのボーカルにもちょっと通じるのですが、どちらかというと同じく日本のハードコアパンクバンドDiscloseの川上さんのような感じです。男臭くて力強い。ドスの利いたシャウトというのでしょうか。これがなかなかに説得力があって良いのです。漢字とカタカナで記された歌詞を読むと、内省的であるもののやっぱりパンクのアティテュードを感じました。

メタル純度の高いグラインドコアを期待するとちょっと吃驚するかもしれませんが、激しさの中にもどこかしら和の雰囲気を感じさせる面白いバンドです。
素直なんだけどかわっているその音楽性、なるほどスーパーメタモルフォシスグラインダーというのもうなずける作品でした。
おすすめ!

2013年7月21日日曜日

J・G・バラード/沈んだ世界

イギリスの作家によるSF小説。
1962年に発表され、1968年に邦訳された。

近しい未来、太陽の活動が不安定になり、地球の電離層の外層が消滅したことにより、太陽熱の直射が地球の温度をあげていった。溶けた氷河は表土とともに流れ出し、地球の表層は大きく変わった。海の面積は狭まった一方で主要な都市はことごとく水没し、赤道付近の気温は80度を超えた。人類はその数を大きく減らし、南と北の極地にその生活圏を追いやられた。
生物学者のケランズは水没した年を巡り、激変した動植物の形態を調査していたが、ある時不思議な夢を見て…

ここのところ警察小説ばかり読んでいたので、久しぶりにSF読みたいなと思い購入。
バラードの本は「結晶世界」「楽園への疾走」に続き3作目。
どの本もそうだが、この本もSFといっても所謂ハードSFとは結構趣を異にする作風。実は発表された当時はニューウェーブと称され文字通り、SFの新機軸だったらしい。私はこの辺の事情には明るくないのでよくわからないが、あとがきにはバラードの言葉が引用されている。曰く「人間が探求しなければいけないのは、外宇宙(アウタースペース)ではなく、内宇宙(インナースペース)だ」と。前者の宇宙がそれまでのSF、後者の宇宙がバラード代表する新しい波の表現しようとしたSFなのかもしれない。
極端にいってしまうとSFといってもその世界観だけで、その世界で起こる出来事はあまりSF的ではない。登場人物の数も極端に少なく、SF的なガジェットも出てこない。主人公の内面の描写が多く、内容も抽象的で内省的だったりする。特殊な状況下で人間がどうなるかを描写するというやり方は、ある種古典的だが、この小説が面白いのはそこに一つ特異な要素が意図的に挿入されているからだと思う。その要素を持ってこの小説はある種の超常小説だといえる。
人類が衰退し、原始的なジャングルが覇権を奪還しイグアナやワニなどの爬虫類が猖獗を極める破滅的な未来が舞台の、冒険小説ともとれる。ただし面白いのは主人公を始めとする登場人物たちで、端的に言うと滅び行く人間社会を体現するよう少しずつおかしくなっている。それこそ燃え盛る太陽に焼かれて、徐々に狂気に陥っていくようだ。
文明対自然だとすると、後者に軍配が上がる世界で次第に太陽の鼓動に浮かされて反文明化する主人公は、文明に所属する私たちからしたら狂人かもしれないが、進化の観点からしたら正しいのかもしれない。意図的に二元論的な対立構造が多く書かれているが、最終的な正誤の判断は付けられず、また結局すべてが無駄であるような破滅的な諦観に満ちている。
人間にとっての世界と、そして主人公のケランズは果たしてどこに行くのか。それは分からない。燃え盛るような太陽の下、歩み去っていく彼の姿が陽炎のように揺らいで見える、そんな小説。

夏に読むのがぴったりの小説。ただし爽快感はないのでご注意を。

2013年7月15日月曜日

冬のフロスト/R・D・ウィングフィールド


フロスト警部シリーズ第5弾。
丁度はまったタイミングで新刊が東京創元社からリリースされて嬉しい限り。
解説はなんと養老孟司さんが書いております。

イギリス郊外の町デントンはまたも連続する犯罪の災禍に見舞われていた。
8歳の少女が失踪し、売春婦たちが拷問されレイプされた後に殺害される。怪盗枕カバーが暗躍し、バス満載のフーリガンが暴れ回る。フロスト警部は重い腰を上げて事件に取り組むが…

話の筋的にはモジュラー型で兎に角事件が頻発しまくります。
事件の陰惨さのレベルは前作かそれ以上で、軽口と下品なジョークのオブラートに包まれていますが、今回も社会的弱者である子供と売春婦を狙った卑劣かつ凶悪な事件が話の軸になります。
スタイルは今までのシリーズを踏襲していますが、今回は相棒が面白い。ワンダーウーマン、リズ・モードは引き続き登場しますが、今回フロストの相棒を務めるのはタフィ(芋にいちゃん)ことモーガン刑事。こいつは口は達者なんだが、ねっからの女好きで遅刻魔、怠け者でへまばかりこくという、いわば小フロストともいうべき駄目人間です。フロストの場合はそれでも経験による勘と鋭い観察眼による推理と考察がありますが、こいつは兎に角ヘマばかり。それでもフロスト親父はこいつを決して見捨てません。妙に保護者みたいになってしまって、いつもみたいにぐうたらしてられない訳です。ここが新しくて面白いです。5作目ともなるとある程度マンネリ化してきてしまうところを、こうした新しい要素を入れることで新鮮さを保っていますね。

今回はフロスト警部かなり追い込まれます。
前の記事にも書いたけど、このシリーズは所謂警察小説は一線を画します。捜査というのがかなり他の小説とは異なる訳です。フロストの捜査は簡単で、事件の周辺にそれらしい怪しいやつがいたらとりあえず署に引っぱり、尋問する。証拠はあとから見つけるか、でっちあげれば良い。こうやって書くととんでもない不良警官ですが、フロスト警部は事件の解決が一番。証拠やアリバイを超越するのが、自身の勘です。こいつが犯人に違いないと思ったら、どんな妨害や反証があってもそいつに食らいついて話さないのがフロストのスタイル。今回はそのある種ずさんな前近代的な捜査スタイルが徹底的に糾弾されることになります。マレットの嫌らしさはいよいよ増してきて味方どころか捜査の一番の敵になります。ある出来事から疑心暗鬼に陥るフロスト。自身の捜査方針が勘というとても危うい根拠に由来していることを勿論本人は自覚しています。自分が間違っているのではないか?と常に自問するフロスト。そして予想を裏切らず空振りに終わる捜査。手に汗握る展開。フロストのやり方は正しいのか?間違っているのか?フロストは主人公ですが、作者は今回あえてこういう書き方をすることで読者に問いかけているように思いました。

しかし毎回思うのだが芹澤恵さんの翻訳は素晴らしいですね。この作品はジョークにあふれていますが、よく考えたらジョークを訳すのってとてつもなく難しいんじゃなかろうか。「ふとんがふっとんだ」なんて英訳したら「blanket is blown away」(適当です!)じゃないか。まったく意味が分からない。こんなにするっと読めてしまうのだから、相当すごい。

相変わらずの面白さで満足。
残り1タイトルかあ。

2013年7月14日日曜日

Bell Witch/Longing

アメリカはワシントン州シアトルの2人組ドゥームメタルバンドの1stアルバム。
2013年Profound Lore Recordsから。
レーベルがレーベルなのでその音楽性はともかく、まあ普通ではないのだろうなと想像がつくと思います。
面白いのはバンド名でBell WitchまたはBell Witch Hauntingというのは19世紀にアメリカの南部テネシー州で起きたとされる一連の幽霊事件にちなむそうです。1800年代始めに農家を営むBell家で発生したポルターガイスト現象とその他の怪奇現象をBell Witchというそうな。面白いのは魔女はあくまでもその実体を表さないそうです。ものが動いたり声がしたりするのだけど、姿は見えない。怖いです。恐らくアルバムのジャケットものその伝説をモチーフにしているのかと。
バンドロゴはちょっとサイケデリックな感じ。

音の方はというとベーシストとドラムのデュオで音の数は少なめで曲は長め。
ギター(多分ベースだけじゃないと思うんだけど…)と6弦ベースがつま弾かれ、ドラムが重々しくビート(として成り立っていないんじゃないかってくらい遅い)を刻み、怪しいボーカルが入るスタイル。盛り上げるパートでは弦楽器が叩き潰すような重いスタイルになります。激しさ一辺倒ではなくて、途方もないような、突き放したような、真っ黒い底の見えない井戸を覗き込んだようなアンビエンスを感じさせる「間」があります。デスメタルを始めとした音楽において憎悪だったり狂気だったりという負の感情は激しい演奏スタイルで表現されることが多いですが、ある種の諦観めいた絶望というのはこういったむしろ静寂といったような音楽性がよく似合うなと思います。

ひたすら重苦しく、ずーんずーんと繰り返す様はまさに地獄絵図としか言いようがないろくでもない音楽です。私のような人間にはたまらん。真っ黒いそのスタイルはちょっとSunn O)))に似ているかなと思いましたが、ドラムもあるしもうちょっと普通の曲として聴けます。フューネラルドゥームっぽい雰囲気がありますね。ブラックメタルっぽさはないのですが。
このバンドで面白いのは何と言ってもボーカルでしょう。グロウルのような低い低いデス声はある種こういった曲調には王道のパターンですが、それに加えて悲鳴のようなわめき声、さらに朗々と歌い上げる妙に怪しい雰囲気のある歌声、日本のお経のようなぼそぼそとした恨み節とかなり多彩なボーカルスタイルが一曲の中に混在しておりまして、極端な音楽性のため単調になりがちな曲をかなり起伏のあるものにすることに成功しております。始めは取っ付きにくいけど、よく聴くとあららなんだか格好良いんじゃあありませんか、となる強面なのに話してみると意外にいいやつ的なアルバム。ただし頭はちょっとおかしいです。

万人にお勧めできるアルバムではないですが、好きな人にはたまらないんじゃないでしょうか。俺は暗い音楽が好きだぜ!という方はちょっとまあ聴いてみてください。気に入ること請け合いです。
↓意外に聴かせるでしょ。

Mouth of the Architect/Dawning


アメリカはオハイオ州デイトンのポストメタル/アトモスフェリック・スラッジメタルバンドの4thアルバム。
2013年にTranslation Loss Recordsからリリースされた。
Neurosis直系のポストメタルバンド。自分で書いといてあれだが、アトモスフェリックってなんだろう?うまく説明できないです。辞書で調べると「雰囲気のある〜」とある。まあ兎に角聴いてくよ、というのは不親切だから、ちょっと自分なりに彼らの音楽性を説明してみると、

  1. 曲の長さはだいたい10分前後と長く、速度は比較的遅め。
  2. ギター、ベースの音は重々しく、間違いなくヘヴィミュージックのそれ。
  3. ボーカルは方向のようなデス声とクリーンな歌声をいいあんばいに混ぜている。
  4. 曲の展開が複雑でメタル然とした激しいパートと静かなパートが渾然一体となっている。
  5. キーボードやシンセサイザーが取り入れられている。

こんな感じ。書いてて思ったがこれだけだとこのバンドだけでなく、この界隈のバンドだいたいすべてのバンドに当てはまっちゃうかもしれない…
それならこのバンドならではの色は?というと「灰色」である。これは私が最初に聴いた彼らのアルバム「Quietly」(3rd)イメージが強い。ジャケットからしてぼやけた灰色一色だったんだけど、その中身の音楽性もこれは見事に灰色の音楽でござった。十分に激しいのに真っ黒じゃない、静かなパートもすばらしいのに真っ白でない。まるで晴れたことのない曇天のような、(私の大好きな)憂いを帯びた、激しい中にもどこかしら寂しさの横溢した素晴らしいものでした。
ここら辺がひょっとしたらアトモスフェリックといわれる由縁かもしれない。ISISにも通じるのだが、結構アートっぽいというか感情剥き出しな割に実は何考えているか分からない、というちょっとひねくれた困った奴らなのである。

さて名作の前作「Quietly」からEP 「Violence Beneath」を挟んでリリースされた今作は、前述のアトモスフェリック感がさらに濃く打ち出されている。だいたいジャケットをみてくれ。明らかにメタルバンドのそれではないではないか。おまけにタイトルは「夜明け」であるからして今回もまた一筋縄ではいかない訳である。
まず全体を通してクリーンボーカルの比重が増えたようだ。日和ったんかい!というとそんなイメージではない。曲は相変わらずのスラッジメタル全開である。じゃあ何よ?というとおそらく曲のクオリティである。もっというと幅である。こういう音楽は一点を突き詰めると研ぎすまされる反面(非常に先鋭化した分)、非常に幅が狭まってしまう。下手すればファンからしても全部同じ曲に聴こえてしまう始末。こうならないよう各バンドが切磋琢磨、苦心惨憺する訳なのだが、このバンドは無理せず(無難という意味ではございません!)非常にナチュラルにクリーンなパートを曲の中に取り込んだのではあるまいか。元々彼らは激しさ一辺倒でならしたバンドではない。激しさと妙に放心したような静けさを同じ曲の中で奏でるという、いうのは簡単だがとても難しい繊細なバランス感覚を持ったバンドであるから、ある意味の水準を次の高見まで引き上げたのである。
バンドが持っている激しさはそのままに、諦観めいた空白・余白が強調されて一曲の中でも見事なコントラスト、そして混じり具合である。前にも書いたが、私は複数の感情が混ざり合ったような気持ちを換気させるような創造物が大好きである。ある種ピュア(単一)ではないのだろうが、現実にあう分(現実が単一の感情で表されることはあり得ないと思う)私の心にびしびし刺さるのである。

この全体に通じる言葉にできない感じは何だろうか。前述した灰色の感じである。はたと思いついた。そうこれは夜明けである。夜が朝になる、あの時間帯である。夜でも朝でもある、そしてどちらでもない、そう反する両者が溶け合った時間である。なるほど!と膝を打った。これは彼らにしか出せない音楽なのだ。

劇的におすすめアルバム。
なかでも私のお気に入り、混沌とした中にも希望を感じさせるような1曲をご紹介。是非聴いてね。

しかし最近は買う音源がことごとく素晴らしくて非常に嬉しいな〜。もっと時間が欲しいよ〜。

Birushanah/ヒニミシゴロナヤココロノトモシビ

日本は大阪のトライバルスラッジメタルバンド、Birushanahの2ndアルバム。
2013年に自身のレーベルScumzoneからリリース。
Birushanahは2002年に結成されたバンド。バンド名の由来は毘盧遮那で毘盧遮那仏とも。大日如来という仏様のお名前です。基本はサイケデリック要素のあるスラッジメタルですが、比較的長い尺の曲の中では時にゆっくり、時に速く、かなり複雑な展開をもった曲が特徴。ここまではほかのバンドでもならせる範疇かもしれませんが、このバンドはここにメタルパーカッションと和音階という二つの得意な要素を取り込むことでその音楽性を唯一無二なもの足らしめています。

メタルパーカッションは文字通り鉄をたたいて音出しており、キンキンという独特の金属音、ドラム缶をたたいているようなからっとしたぱらぱら音、同じ打楽器にしてもやはりドラムとは一線を画すグシャっとした重い打撃音、これらがバンドにほかのバンドにはない重々しさを加えています。聴く分にはすごい格好いいのですがその衝撃たるや凄まじく、オフィシャルサイトでギターボーカルのIsoさんはこう書いています。「響きはいいが、ただ鉄を叩くその破裂音の振動は脳を揺さぶり骨まで軋ませる。そのせいかとにかく俺の記憶力は特に最近は劣化が激しい。」物理的破壊力を持った恐ろしい楽器ですね!

私は彼らの1stアルバム「赤い闇」を買って好きになり、アメリカのハードコアバンドDrain the Skyとのスプリット収録の「窖(あなぐら)」で完全に打ちのめされたものです。多分後者はリリースされた2009年一番聴いた曲だと思います。女性の混成アカペラから始まる18分のスラッジ絵巻に虜になったものです。

この作品は2010年から2011年に録音されたものだったのですが、バンドの創始者にしてベーシストでリーダーであったSougyoさんが脱退してしまったためお蔵入りになっていたのですが、2013年になってからめでたく発売されることになったそうです。本当にもう待ちわびたリリースです。不思議なタイトルは歌詞カードによると「日に見し頃なや、心の灯火」。
Sougyoさんはフレットレースベースを使っているらしく、ぶおーんという特徴的な音使いが非常に格好いい。じゃららんとまるでギターのようにも弾いて、兎に角多彩かつ巧みなので脱退は非常に残念…。

全4曲で3曲目「受戒」が17分弱と長い尺ですが、ほかの曲は5分、7分、3分と今までの彼らからしたら少し短いですね。

1曲目「人的欲求」
金属の上を滑らすようなメタルパーカッションの乱打でスタート。ドラムは一撃が非常に重く、バスドラムはマシンガンのよう。重々しいギターがバンド特有のリフを奏でるのですが、イントロだけでBirushanah節が全開。ちょっと聴いただけですぐにKoreHaBirushanahDa!とすぐわかるのがすごい。あやしい裏声っぽい叫び声にぶおんぶおんうなるベースがたまらない。
2曲目「数え歌」
ぐまぐましたベースからの日本の伝統的音楽のような節回しのぐにゃっとしたボーカルでスタート。この曲は全編ギターボーカルのIsoさんの魅力がふんだんに詰め込まれております。Isoさんの叫び声はまさに絶叫という感じで個人的に大好き。変な言い方なのだけどすごい必死な感じがあって訴えかけてくる感じが半端ない。すごみがあるのに時に懇願するようで強さと弱さが同居したような独特の声。中盤からはもうカオスで極楽浄土につれていかけること必至。
3曲目「受戒」
混成男声、和笛を大胆に取り入れた実験的な曲で、テクニカルなベース、キンキンしたメタルパーカッション、生々しいギターのフィードバックノイズが素晴らしい一大スラッジ地獄絵図。過去の曲にもあった静と動の対比が強調されていてるのだけど、今回は曲の後半の静かなパートが今までにないプログレッシブな感じから一転、急に伝統的な和笛が入ってくるところがすげー。
4曲目「小松」
3分弱のコンパクトな曲で、アウトロっぽい役割なのかな?揺れるような跳ねるようなリズムが高揚されるようなボーカルと相まって気持ちいいです。

かなりかわった異形の音楽であることは間違いないです。しかしこの堂々とした様はどうだろう。卑屈なところはいっさいない、正面から正々堂々歌い上げる(まさに歌だと思います。)素直な音楽性であると思います。Sougyoさん脱退は悲しいけど、早くも次の音源が楽しみでならないなー。どのくらい先になるか分からないですけど、活動を続けてくれるだけで嬉しい。

素晴らしいですね。期待の遥か上をいく素晴らしさでした。私の言葉で彼らの音楽のすごさがちっともうまく伝えられないのがもどかしいです。兎に角たくさんの人に聴いていただきたい。これを機会に是非聴いてみてください。

2013年7月6日土曜日

Locrian/Return to Annihilation

アメリカはイリノイ州シカゴのバンドLocrianの新作。2013年エクストリームメタルレーベルRelapse Recordsからリリース。その音楽性も含めて結構謎なバンドですが、CDのクレジットをみるとメンバーは3人です。

私は2010年発表のJ.G.バラードの「結晶世界」(この本も素晴らしいのでおすすめですよ。)に影響を受けたアルバム「The Crystal World」を聴いてその衝撃で吹っ飛ばされて以来のファンです。今回は「絶滅への回帰」というタイトル通り、かなり派手かつ破滅的なないようになっています。始めに書いちゃうけど劇的おすすめアルバム。

灰色のアートワークはスティーブン・キング原作の映画「ミスト」(これもまた素晴らしい映画でした、体力削られすぎて何度もみれないんだけど。)を思わせるぼんやりとしたもの。あの霧の先には何があるんでしょうか。全く視界の効かない世界です。
2011年の「The Clearing/The Final Epoc」やMamifferとのコラボ作は彼らの持つ実験的なドローンミュージックの側面が強調されていて、それはそれは地獄のような荒廃した風景が眼前にて展開されたものでした。
今回のアルバムは彼らの持つロックよりのアプローチがかなり強く反映されており、前述の作品群に比べるとかなり分かりやすいものになっていると思います。
ドラム担当の新しいメンバーが加入したことで(Wikiをみるとその人をのぞいた2人がメンバーとして記述されているのでおそらく)、ドラムの導入されている曲が多く、曲にメリハリがついているので、鈍痛がゆっくり続く生き地獄(こっちも大好きです。)要素が減退したのかと思います。じゃあ曲がぬるくなったのかというとそんなことは全くないのでご安心を。相変わらずの地獄絵図がこれでもかというくらいCDが終わるまで続きます。あなたがこの音楽を聴くと時間と引き換えにあなたは絶滅されます。
ロック要素が強めなので(といっても勿論通常のロックミュージックにはなっておりませんが。)静と動の要素がかなり強く発揮としている印象です。静寂のパートはドローンとしたノイズ(バリエーションがあってすごくイイネ!)やスペーシーなシンセ音、忘れたようにつま弾かれるギターの音色。まさに霧のようにもやもやと空間を不穏な音で埋め尽くしていきます。このバンドのすごいところは曲の統一感を保ちつつ音がそれぞれバラバラに聴こえるのですよ。気味が悪い(勿論褒め言葉。)。悪い知らせを不安な心持ちで待っているようです。気づくと霧に包まれている。
そこにドラムが何食わぬ顔ですっと入ってきます。霧の向こう側から。始めは控えめですが、段々と存在感を増してきて、爆発!ノイズとしかいえないような轟音パートに移行。ギターのフィードバックノイズも5割増くらい、独特の叫び声がエコーを伴って不吉なサイレンの様に響き渡ります。曲のテンポはゆっくりしているのでたっぷりと終わらない地獄を味わえるという寸法です。

メンバーの3人に惜しみない拍手を送りたい位の傑作。
リリース前の視聴で1曲目の「Eternal Return」を聴いてその音楽性にぶっ飛んで、リリースを一日千秋の思いで待ちわびましたが、ふたを開けてみたらやっぱり大傑作でした。
素晴らしすぎてCD岳では飽き足らずレコードの方も買ってしまったくらい。
私的には全人類必携のアルバムなのですが!
暗い音楽が好きな人は手に取って損はないでしょう。
↓是非まず聴いてみてください。

Converge/Caring and Killing

アメリカのハードコアバンドConvergeのコンピレーションアルバム。
元々はヨーロッパのレーベルLost & Found Recordsから発売された。ただしメンバーはこのレーベルのやり方に不満を持っていたようで(Wikipediaより)、その後元ISISのアーロン・ターナーが自身のレーベルHydra Head Recordsから再度リリースした。それが1997年のこと。しかしその後廃盤に。
2013年もう一度リリースされることになり、リマスターしてさらに1曲を追加。アートワークを前述のアーロンが手がけたデザインで一新。日本ではDaymare Recoringsからリリースされた。ちなみにCDパッケージは日本のここのレーベルからのみリリースとのことです。
コンピレーション版なのでいろんな音源から楽曲がとられています。
内訳は1stアルバム「Halo on Haystack」から8曲(オリジナルは10曲収録。)、完全未発表曲が5曲、スプリットから1曲、デモから2曲。
メンバーも今とは違って、ボーカルのジェイコブとギター(と今や売れっ子プロデューサー)のカートは一緒だけど、ほかのパートは今のメンバーとは別人です。

私は彼らの2ndアルバム「Petitioning the Empty Sky」(いいタイトル。)は持ってます。初めて買ったのが「Jane Doe」だったからイメージが大分違って驚いたのを覚えています。「エモいな!」とおもったものです。でもリリースが1996年だから、所謂その頃(2000年くらいかなあ)はやっていたエモ(やスクリーモ)のむしろ源泉となっているアルバムだったんですね。順序が逆です。その頃流行のバンドがConvergeやその他のオリジネイターたちの影響を受けていたのですね。

さてこのアルバムはさらにその前のアルバムですから、聴いてみるとやはり若いです。
なんならちょっと青い感じです。
音楽性は前述の「Petitioning〜」に通じるところがあります。メタリックな音質のギター
が一般的なハードコアと比べると複雑すぎるリフを奏で、ギロギロしたこれまたメタリックなベースがうねるように絡んできます。ドラムは乾いた音質で重すぎず、曲が完全にメタルっぽくならないようにしているイメージです。ジェイコブのボーカルは悲鳴のようなわめき声でかなり特徴的ですが、中期のカオティック全盛期に比べるとかなり丁寧に歌っています。全体的にかなり叙情的でかなりエモーショナルです。前のめりなギターがメタルバンドにはないラフさがあって、彼らをメタルとハードコアのちょうどバランスのいい狭間に位置させているのだと思います。曲のクオリティは高く、展開も豊富ですがカオスというよりは結構聴かせる印象です。勢い一辺倒でも歌もの一辺倒にもならないあたりがさすがという感じ。

このバンドが今はもう貫禄十分の現Convergeに進化するのかと思うと、ちょっとにわかには信じられないくらいですが、よくよく聴いてみるとなるほど過激で攻撃的な音楽性の中にもきわめてパーソナル感情を込めているのがわかります。個人的には彼らの一番の持ち味は独特の憂いの感情を持っていることだと思います。激烈な音楽性に見て取れる激しさも、どちらかというと前述の悲しみや寂しさといった感情に由来する分、他のバンドにはない説得力が備わっているのではと考えています。「Jane Doe」は本当に捨て曲がない驚異的なアルバムですが、中でも最後のタイトルトラックの威力が凄まじかった。また7thアルバム「Axe to Fall」収録の「Wretched World」も独特の憂いが瘴気のように濃縮された恐ろしいキラーチューンでした。このアルバムではまだまだそれらの楽曲にある濃密さはないですが、繊細ともいえる、ある種強さが強調されるハードコアの中でも異質な要素が要所要所にちりばめられています。

現在の彼らの音楽性を期待すると吃驚すると思いますが、彼らのファンの方々には文句なしでお勧めできるアルバムです。