日本のレーベルLongLegsLongArms Recordsのコンピレーションアルバム。2017年に同レーベルからリリースされた。
参加しているアーティストと収録曲は以下の通り。(レーベルHPからコピペ。)
1. ILIAS - 存在と理由
2. The Donor - Kagerou
3. KUGURIDO - 桃源郷夜想曲
4. KLONNS - KNIVES
5. KLONNS - SODOM
6. SWARRRM - march
7. unfaded - 漆黒
8. PRIZE OF RUST - Decade
9. PRIZE OF RUST - Spectator
10. ENSLAVE - Killing Me Softly
11. Pterion - Schwein
12. ungodly - 蝕
13. Yvonxhe - Incessant Mournful Tale
14. Vertraft - MEMORIZE
すべて日本のバンドで、バンドの活動拠点は東京、関東にとどまらず関西・金沢・四国と様々。レーベルオーナーが実際にあったバンドからセレクトされている。
LongLegsLongArms Recordsは主にハードコアを取り扱うレーベルだが、主にネオクラストと呼ばれるジャンルをメインに紹介している。ハードコアのなかのサブジャンル、クラスト(コア)のさらにサブジャンルであるネオクラストだからまあ結構マニアックな音楽だと思う。このネオクラストというのが(個人的には)かなり難しいジャンルで説明するのが難しい。説明する時に「ブラッケンド」「激情」「クラスト」「エモ」「エモバイオレンス」なんかの単語を使うとうまくいくような気がする。そんなに歴史のあるジャンルではないと思うので、おそらく私だけでなく演奏する方も難しいな〜とは思っているのではなかろうか。というのも真性のネオクラストバンドというのはまだ日本にはそうそういないのではなかろうか。この音源だとネオクラストを自称している(=明確に指向している)バンドは多分姫路のKUGURIDOだけではなかろうか。その他のバンドはネオクラストという言葉が浸透する前にそういった音楽をやっていたバンド、要素としてネオクラストを取り込んでいるバンド、一聴したところ(ネオ)クラスト感のあまりなさそうなバンドなど。おそらくより浸透性のあるジャンルで言うと、ハードコア、ニュースクール、カオティック、グラインド、ブラックメタル、エモバイオレンス、激情などにカテゴライズされるのではなかろうか。要するにその中にネオクラストの影響(意図的なものと無意識的なもの、両方)を感じ取ったレーベルが、少なくとも日本では未だ黎明期にあるネオクラストシーンにこれだ!と押すのがこのコンピレーションなのではと個人的には思う。まだ良くも悪くも混沌としているネオクラストという概念をそれを取り巻く周辺含めてすくい取ったのがこの「ろくろ」という一つの音源なのではなかろうかと。
レーベルはサンプラーと称してそれに所属するバンドを紹介する音源を作ることがあるが、まさにこの「ろくろ」は紹介する意味合いが強い。(ただ既存の曲を集めたわけではないからサンプラーとは呼べないだろうが。)全部で4万字を超える各バンドへのインタビューもその紹介、もっというと収録するバンドを理解し、咀嚼してそれを第三者(リスナー)に伝えようというレーベル姿勢の表れと見て取ることができる。(私の感想は作品を理解しようという試みなので(つまり読書感想文と同じ一つの解釈にしかならないのです。)、こういった姿勢は非常に共感できるのです。)
収録されている音を聴いてみると前述のような状況なので統一感がありつつもバリエーションの有る個性的な音楽が矢継ぎ早に展開される。(おおむね1曲あたりの収録時間は短め。)ニュースクール・ハードコアに日本なりのハードコアの伝統を融合させた音、ブラックメタルの影響色濃いいわゆるブラッケンドと称されるハードコア、もはやブラックメタルにしか聞こえないブラックメタルなど。このオムニバスの面白いところのもう一つは全国から収録バンドを集めたこと。音楽を語る上で切っても切れないのが”シーン”という言葉だけど、これが横というか平面上で語られるのが地域で、もはや結線されてもいないネットで結ばれた社会では情報が均質化されるが、それでも地方ごとのシーンというものは健在であるようである。その地方ごとの特色がきっとバンドの出す音に表れているのであろう。一言に激情と言ってもテンプレート的な激情の影響を収録曲に見出すことは困難である。(バンドの個性なのかシーンの特色なのかはちょっと判断できないのだけど。)
レーベル名は足長手長(手長足長とも)という妖怪なので「ろくろ」ときくと「これはろくろっ首のことに違いない!」と早合点したのだが、どうも陶芸を作るときのろくろという意味もあるらしい。面白いと思ったのは新しいものを作る際にはたいてい土を捏ねる、という言い方をするが、ろくろはある程度形になっているものを整形するのに使う。多分日本でのネオクラストの土台はである程度出来上がったので、3LAとしてはそれを集めて形を整え、全国にお届けするよ、ということなのだろう。「ネオクラストはわしが育てた」という居丈高の態度ではないのが非常に謙虚だと思う。
まだこれからのジャンルだと思うので、耳が早いひとはチェックしてみると面白いのではなかろうか。降って湧いた進行ジャンルではなく、静かに進行した音楽的傾向を「ネオクラスト」としてすくい取ったイメージだ。なので妙な作為性や違和感は皆無である。
2017年10月11日水曜日
3LA-LongLegsLongArms Records-Presents『ろくろ』@新宿Nine Spices
よくあることなんだけど10月8日は面白そうなライブがかぶって困る日だった。そんな中でも足を運んだのはこちら。このライブは日本のLongLegsLongArms Recordsが主催するもので、先日リリースされたレーベル初めてのコンピレーションアルバムの発売を記念してのもの。アルバムに曲を提供しているアーティストが出演する。さすがにアルバム収録全アーティストとは行かないが、出演陣は下記の通り。
PRIZE OF RUST (茨城)
ungodly (香川)
unfaded (奈良)
SWARRRM (神戸)
ILIAS (神奈川)
ご覧の通り東京のバンドが一つしかない。奈良、神戸、京都、香川と普段はなかなか見れないような地域で活動しているバンドが名を連ねており、それならこの機会に見るべき!と思ったわけ。もちろんコンピレーションアルバム「ろくろ」の内容が素晴らしいことも理由の一つ。
この日会場のSEではHelmetが流れていた。アメリカのオルタナティブ・ロック(メタル)バンドである。この3LAというレーベルは一風変わったハードコアを世に紹介するレーベルで、もう一つの可能性という意味で「オルタナティブ」という言葉がよく似合う。その集大成の一つが日本全国からバンドを集めて作った「ろくろ」なわけで、それが眼前で見れるということで期待が高まる。
例によって道に迷ったので(馴染みのない駅を使うとかならずぜんぜん違う出口を選択するのが私)私がおっとり刀で会場にたどり着くとすでに一番手が始まっているところだった。
PRIZE OF RUST
茨城(いばらき)のハードコアバンド。この間見たときも同じ3LA企画でやはり同じ会場だった。4人組のバンドでコンピレーションアルバムでもお気に入りだったので二回目に見るのが楽しみだった。改めてライブで見るとニュースークール・ハードコア!という感じ。音が非常にゴツゴツしている。音が非常にメタリックで、ミュートを使った刻み込んでくるリフをあまり多様せず、滑らかにつややかなリフを弾きまくる。このリフが非常にメロディックで、ツインボーカルはシャウトしかしないのでその対比が本当に”叙情的”という感じ。低音低速で力任せにぶん回すモッシュパートみたいなのもあって非常に暴力的だが、歌詞は多分日本語で、モッシュ用ハードコア(それはそれで好きだけど)ではなくて訴えかける何かがある。マイクにかぶりつくように歌う様もそうだが、前のめりにメッセージ性がある感じは日本の激情系からの流れを感じさせる。個人的には日本ならではのニュースクール・ハードコアという感じで、どうしても悩みすぎている激情に比較すると、懊悩はあるけどアクセルを踏み切っているような潔さが魅力。重量感があるけど滑るようなメロディアスなリフを低音で急ブレーキ掛けるところが非常にかっこよかった。
ungodly (香川)
続いては香川のバンド3ピースでボーカルの方がボーカルを取る。「ろくろ」収録の曲しか知らないものでどんな音なのか?白塗りにしている動画があったようだしブラックメタルよりの(ブラッケンドな)ハードコアかな?と思っていたら、結構想像と違った。まずはリフの音の数が多い。刻みまくるような密度濃く詰め込んだリフは、相当テクニカルでかっちりしたスラッシュの影響色濃いデス/ブラックだった。トレモロにそこまで比重をおいているわけではないというか、印象ではもっと刻みまくっていたようなのでボーカルの喉に引っ掛けるようなイーヴィルなシャウト意外はわかりやすいブラックメタルの要素はないし、塊をぶん回すのがハードコアの真髄の一つだとするとそういった意味ではハードコア感はほぼない。ただ(間違っているかもだが)ドラムはツービート主体だったり、曲もアルペジオをなどを効果的に導入しつつ起伏に飛んでいるが、ダラダラ長くないし、あまり耽美/アーティステックな雰囲気もしないので終始殺伐としてて個人的にはそこが良かった。
unfaded (奈良)
つづいては奈良のバンドで、MCでいっていたのだが10年位は活動しているが県外でライブをするのは2回めで東京はこの日が初めてだったらしい。「ろくろ」ではとにかく攻撃的でメロディアスな楽曲がかっこよかったのでこの日楽しみだった。
スリーピースで基本的にギタリストの方がボーカルを取る。この日一番”激情”という感じだったのでなかろうか。内省的な歌詞をうずまきのような轟音にのせて送り出すあのスタイルである。ただいわゆる激情というよりはむしろエモバイオレンスという感じで、具体的には激情でありがちな静かなパートは必要最小限にとどめて勢いとスピードを殺さないように、そして飾らないシンプルさでほとばしる激情を披露していた。歌詞に関しては演奏の合間に吐き出す、というようなスタイルで演奏のよく練られた細やかさが感じられた。うるさいバンドだが、なんとなく寡黙でいぶし銀なスタイル。ギタリストの方はDeath SideのT-シャツを着ていたが、envyからの激情というよりはむしろジャパニーズ・ハードコアの流れを強く感じた。音源を購入したのだがシンプルだが力強い歌詞も勿体つけない音楽性とあいまってシンプルかつ力強いハードコアの進化系という方がしっくり来る。ドラムがやたらと印象的だった。
SWARRRM (神戸)
曲が始まってみるとこの日一番ブラックメタルだった、というか完全にブラックメタルだ。ギタリストの一人は多分7弦ギターで、ベーシストと三人で相当テクニカルなリフを矢継ぎ早に繰り出していく。ミュートも使いながらも主体となるのはブラックメタル然としたトレモロを主体としたリフで、不穏なアルペジオや低速パートを使いながら自らの持ち味である激速トレモロパートに持ち込んでいくスタイル。面白いのは「ろくろ」ではYvonxheなんかはアンダーグラウンドなブラックメタルだったが、このPterionに関しては曲に起伏があるし、ドラスティックな曲作りをしていて結構メジャー感というか、そういう感じがあって面白かった。多分メンバーはまだすごく若いと思うが、あまり動かないメンバーに対してボーカリストの人は声にバリエーションがあるし、動きも派手。面白かった。
KLONNS (東京)
つづいては唯一の東京のバンド。ライブを見るのは2回め。ブラッケンドとは距離をおいている的なインタビューが面白かったが、たしかに音源を聞いてみてもライブを見てもバンドの核はハードコアな感じ。メンバー全員が黒い服に身を包みスタイリッシュ。
ぬろぬろ動き回るベースがかっこいいのだが相当な轟音でとにかくやかましい。ドラムもとにかく叩きまくりで、ギターとボーカルには強烈なリバーブ効果がかけられており、特にギターは音がでかい。非常にノイジーだが、例えばノイズ専用の装置を使っていないところなどあくまでもハードコアで勝負という姿勢の現れだろうか。曲も基本的にはシンプルな構成で、たまにギターソロなどを挟むもののほぼ一直線で進行するオールドスクールスタイル。ボーカルも歌うというよりは要所要所に吐き捨てて置いていく、のような歌唱方法。ステージを降りてきて客席に突っ込むという場面もあり、この日一風変わったバンドが多い中で一番やかましく、一番肉体的だったのがこのKLONNSだったと思う。
ILIAS (神奈川)
トリを飾るのはコンピレーションの冒頭を飾るILIAS。ライブを見るのは初めて。専任ボーカルにギタリスト二人を擁する5人組。「存在と理由」というタイトルの1曲からはいわゆる激情系かとおもっていたが、ライブで見るともっと、というかだいぶかっちりとしたハードコアだった。ニュースクールや日本の激情を巻き込んだバランスの音で、ハードコアなりの強面感と叙情感を勢いを殺さずに取り込んでいる。曲によってはガッツガッツした暴れるパートとドラスティックと言っていいくらいのトレモロい叙情的なパートが奇妙に同居している両極端さが魅力的。この日のバンド概ねそうだが、このバンドも激情というよりは絵もバイオレンスという感じで、冗長とした感じは皆無。ボーカルの人のちょっとかすれた歌唱法もあって、場面によってはkhmerの新作がちらっと頭をよぎった。ブラッケンド感は皆無だし、一聴したところクラスト感もそこまで感じられないのだが、(MCでもあったが)あとからそのような流れを聴いて影響を受けたのかもしれない。
この日唯一のMCをちゃんとするバンドでポジティブなメッセージが印象的だった。
音楽を本当に好きな人は国や州、県、など地域で音楽を語り、そのときは所々の「シーン」という言葉が出てくる。今少なくとも日本を含めた先進国だとおおよそインターネットを通じて均等に音楽の昨今を知ることができるが、それでもやはり地方ごとのシーンが出来上がるのは面白い。(すべてが均質化されているならそもそもシーンと言う言葉がなくなるはずだ。)先輩からの伝統だったり、内輪での流行り廃りだったり、きっとそういうものが積み上がって地域ごとの差を生み出しているのだろう。別に全国からバンドを集めようというコンセプトではないだろうが、結果的に「ろくろ」というコンピレーションには相通じる要素を通して全国のバンドが名を連ねたわけで、この日はそんな各所のシーンを垣間見れて面白かった。出演者の皆様はわざわざ遠いところありがとうございました。
Prize of RustとUnfaded、それからungodlyの音源を買って帰宅。
PRIZE OF RUST (茨城)
ungodly (香川)
unfaded (奈良)
SWARRRM (神戸)
Pterion (京都)
KLONNS (東京)ILIAS (神奈川)
ご覧の通り東京のバンドが一つしかない。奈良、神戸、京都、香川と普段はなかなか見れないような地域で活動しているバンドが名を連ねており、それならこの機会に見るべき!と思ったわけ。もちろんコンピレーションアルバム「ろくろ」の内容が素晴らしいことも理由の一つ。
この日会場のSEではHelmetが流れていた。アメリカのオルタナティブ・ロック(メタル)バンドである。この3LAというレーベルは一風変わったハードコアを世に紹介するレーベルで、もう一つの可能性という意味で「オルタナティブ」という言葉がよく似合う。その集大成の一つが日本全国からバンドを集めて作った「ろくろ」なわけで、それが眼前で見れるということで期待が高まる。
例によって道に迷ったので(馴染みのない駅を使うとかならずぜんぜん違う出口を選択するのが私)私がおっとり刀で会場にたどり着くとすでに一番手が始まっているところだった。
PRIZE OF RUST
茨城(いばらき)のハードコアバンド。この間見たときも同じ3LA企画でやはり同じ会場だった。4人組のバンドでコンピレーションアルバムでもお気に入りだったので二回目に見るのが楽しみだった。改めてライブで見るとニュースークール・ハードコア!という感じ。音が非常にゴツゴツしている。音が非常にメタリックで、ミュートを使った刻み込んでくるリフをあまり多様せず、滑らかにつややかなリフを弾きまくる。このリフが非常にメロディックで、ツインボーカルはシャウトしかしないのでその対比が本当に”叙情的”という感じ。低音低速で力任せにぶん回すモッシュパートみたいなのもあって非常に暴力的だが、歌詞は多分日本語で、モッシュ用ハードコア(それはそれで好きだけど)ではなくて訴えかける何かがある。マイクにかぶりつくように歌う様もそうだが、前のめりにメッセージ性がある感じは日本の激情系からの流れを感じさせる。個人的には日本ならではのニュースクール・ハードコアという感じで、どうしても悩みすぎている激情に比較すると、懊悩はあるけどアクセルを踏み切っているような潔さが魅力。重量感があるけど滑るようなメロディアスなリフを低音で急ブレーキ掛けるところが非常にかっこよかった。
ungodly (香川)
続いては香川のバンド3ピースでボーカルの方がボーカルを取る。「ろくろ」収録の曲しか知らないものでどんな音なのか?白塗りにしている動画があったようだしブラックメタルよりの(ブラッケンドな)ハードコアかな?と思っていたら、結構想像と違った。まずはリフの音の数が多い。刻みまくるような密度濃く詰め込んだリフは、相当テクニカルでかっちりしたスラッシュの影響色濃いデス/ブラックだった。トレモロにそこまで比重をおいているわけではないというか、印象ではもっと刻みまくっていたようなのでボーカルの喉に引っ掛けるようなイーヴィルなシャウト意外はわかりやすいブラックメタルの要素はないし、塊をぶん回すのがハードコアの真髄の一つだとするとそういった意味ではハードコア感はほぼない。ただ(間違っているかもだが)ドラムはツービート主体だったり、曲もアルペジオをなどを効果的に導入しつつ起伏に飛んでいるが、ダラダラ長くないし、あまり耽美/アーティステックな雰囲気もしないので終始殺伐としてて個人的にはそこが良かった。
unfaded (奈良)
つづいては奈良のバンドで、MCでいっていたのだが10年位は活動しているが県外でライブをするのは2回めで東京はこの日が初めてだったらしい。「ろくろ」ではとにかく攻撃的でメロディアスな楽曲がかっこよかったのでこの日楽しみだった。
スリーピースで基本的にギタリストの方がボーカルを取る。この日一番”激情”という感じだったのでなかろうか。内省的な歌詞をうずまきのような轟音にのせて送り出すあのスタイルである。ただいわゆる激情というよりはむしろエモバイオレンスという感じで、具体的には激情でありがちな静かなパートは必要最小限にとどめて勢いとスピードを殺さないように、そして飾らないシンプルさでほとばしる激情を披露していた。歌詞に関しては演奏の合間に吐き出す、というようなスタイルで演奏のよく練られた細やかさが感じられた。うるさいバンドだが、なんとなく寡黙でいぶし銀なスタイル。ギタリストの方はDeath SideのT-シャツを着ていたが、envyからの激情というよりはむしろジャパニーズ・ハードコアの流れを強く感じた。音源を購入したのだがシンプルだが力強い歌詞も勿体つけない音楽性とあいまってシンプルかつ力強いハードコアの進化系という方がしっくり来る。ドラムがやたらと印象的だった。
SWARRRM (神戸)
続いては「カオス&グラインド」を掲げるSWARRRM。この日は冒頭から激速で一気に耳目を集め、そこから「幸あれ」、そしてkillieとのスプリット音源から「愛のうた」「あなたにだかれこわれはじめる」、ろくろ収録の「March」と大胆に歌を取り込んだバンドの昨今を披露していく。「カオス&グラインド」とは単なるスローガンではなく1曲に1回はブラストビートを入れる、という厳格なルールでもある。このバンドは常に何かに挑戦しているように個人的には感じられる。すべての曲はそれ自体完成品だが、同時に何かに対する一つの試行錯誤の結果に見れる。バンドとしての挑戦の結果が曲として残っているようなイメージだ。常に高みに、だから孤高のバンドと呼ばれるし、目下最新アルバム「Flower」以降での大胆な歌へのアプローチも単純なセルアウトとは絶対解釈されようがない。ルールと言うのは縛るものだが、他のバンドが良くも悪くもとどまり続けるフィールドを、SWARRRMはルールを使ってあっさり(はたからそう見えるだけで実際には苦労を重ねた末にだと思うが)乗り越えていく。ビリビリ震えた。
Pterion (京都)
つづいては京都のバンド。このコンピで初めて知ったのでバンドの情報については殆ど知らなかった。(結成は2017年ということもあり。)5人組でボーカルは専任。ボーカル以外は顔を白く塗っている。ボーカルがガッチリした体躯に編み上げブーツを履き込んで一人だけ素顔を晒している。他のメンバーは顔を塗っているものの服装は結構バラバラでなかなか作為が読み取りにくいスタイルで面白い。曲が始まってみるとこの日一番ブラックメタルだった、というか完全にブラックメタルだ。ギタリストの一人は多分7弦ギターで、ベーシストと三人で相当テクニカルなリフを矢継ぎ早に繰り出していく。ミュートも使いながらも主体となるのはブラックメタル然としたトレモロを主体としたリフで、不穏なアルペジオや低速パートを使いながら自らの持ち味である激速トレモロパートに持ち込んでいくスタイル。面白いのは「ろくろ」ではYvonxheなんかはアンダーグラウンドなブラックメタルだったが、このPterionに関しては曲に起伏があるし、ドラスティックな曲作りをしていて結構メジャー感というか、そういう感じがあって面白かった。多分メンバーはまだすごく若いと思うが、あまり動かないメンバーに対してボーカリストの人は声にバリエーションがあるし、動きも派手。面白かった。
KLONNS (東京)
つづいては唯一の東京のバンド。ライブを見るのは2回め。ブラッケンドとは距離をおいている的なインタビューが面白かったが、たしかに音源を聞いてみてもライブを見てもバンドの核はハードコアな感じ。メンバー全員が黒い服に身を包みスタイリッシュ。
ぬろぬろ動き回るベースがかっこいいのだが相当な轟音でとにかくやかましい。ドラムもとにかく叩きまくりで、ギターとボーカルには強烈なリバーブ効果がかけられており、特にギターは音がでかい。非常にノイジーだが、例えばノイズ専用の装置を使っていないところなどあくまでもハードコアで勝負という姿勢の現れだろうか。曲も基本的にはシンプルな構成で、たまにギターソロなどを挟むもののほぼ一直線で進行するオールドスクールスタイル。ボーカルも歌うというよりは要所要所に吐き捨てて置いていく、のような歌唱方法。ステージを降りてきて客席に突っ込むという場面もあり、この日一風変わったバンドが多い中で一番やかましく、一番肉体的だったのがこのKLONNSだったと思う。
ILIAS (神奈川)
トリを飾るのはコンピレーションの冒頭を飾るILIAS。ライブを見るのは初めて。専任ボーカルにギタリスト二人を擁する5人組。「存在と理由」というタイトルの1曲からはいわゆる激情系かとおもっていたが、ライブで見るともっと、というかだいぶかっちりとしたハードコアだった。ニュースクールや日本の激情を巻き込んだバランスの音で、ハードコアなりの強面感と叙情感を勢いを殺さずに取り込んでいる。曲によってはガッツガッツした暴れるパートとドラスティックと言っていいくらいのトレモロい叙情的なパートが奇妙に同居している両極端さが魅力的。この日のバンド概ねそうだが、このバンドも激情というよりは絵もバイオレンスという感じで、冗長とした感じは皆無。ボーカルの人のちょっとかすれた歌唱法もあって、場面によってはkhmerの新作がちらっと頭をよぎった。ブラッケンド感は皆無だし、一聴したところクラスト感もそこまで感じられないのだが、(MCでもあったが)あとからそのような流れを聴いて影響を受けたのかもしれない。
この日唯一のMCをちゃんとするバンドでポジティブなメッセージが印象的だった。
音楽を本当に好きな人は国や州、県、など地域で音楽を語り、そのときは所々の「シーン」という言葉が出てくる。今少なくとも日本を含めた先進国だとおおよそインターネットを通じて均等に音楽の昨今を知ることができるが、それでもやはり地方ごとのシーンが出来上がるのは面白い。(すべてが均質化されているならそもそもシーンと言う言葉がなくなるはずだ。)先輩からの伝統だったり、内輪での流行り廃りだったり、きっとそういうものが積み上がって地域ごとの差を生み出しているのだろう。別に全国からバンドを集めようというコンセプトではないだろうが、結果的に「ろくろ」というコンピレーションには相通じる要素を通して全国のバンドが名を連ねたわけで、この日はそんな各所のシーンを垣間見れて面白かった。出演者の皆様はわざわざ遠いところありがとうございました。
Prize of RustとUnfaded、それからungodlyの音源を買って帰宅。
2017年9月24日日曜日
Khmer/Larga sombra
スペインはマドリードのネオクラストバンドの2ndアルバム。
2017年に複数のレーベル、WOOAAARGH、Long Legs Long Arms、In My Heart Empire、Halo Of Flies、The Braves Recordsからリリースされた。
私が買ったのは日本盤のLPでこれはLong Legs Long Armsからリリースされている。この通称3LAというレーベルはこのKhmerというバンドに黎明期(バンドは2012年結成)から注目しており、ディスコグラフィー含めて幾つかの音源をリリースしている。前回のノルウェイのLivstidとのスプリットもそうだったが、今回も上質の紙を利用した二つ折りジャケットを使った特殊な装丁から始まり、スペイン語の歌詞とそれを日本語に訳した(曲名全てに邦題をつけている徹底ぶり)小冊子がついている。小冊子にはバンドのボーカリストMarioの手による絵が収録されている。ただ帯をつけて日本盤としてリリースするレーベルもあれば(これも発売してくれるという意味では有益だとは思うが)、こうやって手作りで物理的な距離と言語の相違を埋めようとしてバンド側の言わんことを日本人のリスナーに伝えようと奮闘するレーベルもあるものだ。
さて装丁も素晴らしいこの作品タイトルは「長い影」。聞いてみると結構難しいなと。内容がイマイチというのではなく内容は素晴らしく、ディスコグラフィーをこのタイミングで聞いてみると音の拡充ぶりがただならぬことになっており、その表現力には改めて驚かされるわけだが、このいわば拡大し、充実し、芳醇になったハードコアを一体なんと言ったらいいかわからなくなったのだ。「Khmerね、はいはい、ネオクラストっしょ。新作、いいね。」といってしまえば良いのだが、個人的にはこの作品を聞いてみてそもそも一体ネオクラストがなんなのかという問題に直面してしまった。正直今までの音源だとブラッケンドなクラスト・コアなんですかね〜くらいの認識でいたわけで、それがまあつまりネオクラストすっかね…という感じだったのだが、今作を聞いてみるとあまりブラッケンドな感じがしなくてちょっと驚いてしまったわけです。
ブラッケンドはそもそもブラック・メタルに特有な音的特徴を他のジャンルに持ち込んだもので、一番印象的なのは何と言ってもコールドなのにメロディアスなトレモロギターだろう。この要素は(もともとあったものだが)シューゲイザーやドリーム・ポップの方面にまで(ときにはAlcestのようにブラック・メタルを通過しつつ)その触手を伸ばしている。今回のKhmerの新作ではあまりこのトレモロを使っていない。Khmerはだいたいがその黎明期からあまりミュートを使った力強いメタリックなリフをメインの武器に数えてこなかったから、ノンストップで弾きまくるハードコアなリフがその持ち味であり、今作でもそれは多用しているのだが、あまりこう型にはまった美麗トレモロという感じではない。ギタリストは一人なので必要性から、そしておそらく目指している音の方向性から低音に特化して極端に重たくエフェクトをかけるやり方ではなく、低音から高音まで全域を贅沢に使って、アッタクの音も生々しくも非常に厚みのある(温かみのある)音に仕上げている。実際のところは分からないがコード感にあふれていて6つの弦すべてがなっている印象といえば伝わるのではなかろうか。音がギュッと詰まっていて、弾き方についても単にオルタネイトに弾きまくっていくトレモロとは違う。もっと余韻を活かしたひねりのあるもので、腕の振り方というのか程よく音を抜いていて緩急がついている。非常にメロディアスという意味ではブラッケンドに共通点があるが、メロディは別にブラック・メタルにしかない要素ではないので、これはもっと別の何かだろうと思う。あえていうならもっと色鮮やかな何かである。別に明るいわけではなく、むしろ確実に暗い方だと思うがその黒さは単に黒一色で塗りつぶすのではなく、無数の色彩が兼ねられているような印象だ。(レーベルでは「哀愁」といっててなるほど!と思う。)
慌てて過去作を聞き返してみると、やはり単純なブラッケンドとは明らかに一線を画す曲を展開していて、そういった意味では軸がぶれていない。私の聞き込みがあまかったというのと、黒と白の世界に大胆に色彩を持ち込んだかのような大胆な音の使い方を持ち込んだことでその異質さがより明確に現れたのがこの2ndアルバムなのでは。(特に1stと聴き比べてみると大変面白い。)たとえば曲にわかりやすいメロディ(流行したメタルコアのサビのような)を持ち込んだとしたらわかりやすく、そして感情的になるがそうではないところに美学を感じる。歌詞もそうだが、そうそうわかりやすくはなく、感情を溶かしてリフと曲に塗り込めている。それで書いたのがこの絵(アルバム)というわけだ。そういえばMario(デザイナー/グラフティアーティストとして活動している)のアートワークは完全にモノクロで構成されているのも面白い要素だと思う。
ちなみにMarioのボーカルは特徴的でしゃがれていて、やはり低音強くないので強いて言えばこの要素はブラック・メタル的だが、持って生まれた天性もあってこれだけでブラッケンドというのは個人的にはちょっと難しいかな〜という感じ。
個人的にはブラッケンド≒ネオクラストくらいの適当な感覚でいたもので、今回の音源はそういった意味では違うのか〜という驚きがあって面白かった。
歌詞を読むとかなり長さがある。多分あまりリフレインがないのだと思う。その世界観は抽象的だが読んでみるとかなり個人的であって驚く。まるで人の日記をこっそり読んでいるような感じがある。例えばラストの曲のタイトルは「孤独」という意味なのだが、歌詞はアルバム全般に渡って結構閉塞感がある。いわゆるハードコア的な歌詞(打ち倒せ、もしくはユナイトしろ)とは一線を画す。どうしてもTragedy以降という認識があるんだけど、歌詞の内容は明快にクラストだったそこからもう一歩進んだのがネオクラストなのだろうか。激情というと悩んでいる内省的な(歌詞)世界が曲に反映されているから似通っているところはやはりあるのではともおもう。
とにかく曲と音の充実ぶりに驚く新作。暗くもメロディアスな作風は日本人に結構あっているのではと思う。Khmer気になっていたけど、という人は是非今作からどうぞ。
2017年に複数のレーベル、WOOAAARGH、Long Legs Long Arms、In My Heart Empire、Halo Of Flies、The Braves Recordsからリリースされた。
私が買ったのは日本盤のLPでこれはLong Legs Long Armsからリリースされている。この通称3LAというレーベルはこのKhmerというバンドに黎明期(バンドは2012年結成)から注目しており、ディスコグラフィー含めて幾つかの音源をリリースしている。前回のノルウェイのLivstidとのスプリットもそうだったが、今回も上質の紙を利用した二つ折りジャケットを使った特殊な装丁から始まり、スペイン語の歌詞とそれを日本語に訳した(曲名全てに邦題をつけている徹底ぶり)小冊子がついている。小冊子にはバンドのボーカリストMarioの手による絵が収録されている。ただ帯をつけて日本盤としてリリースするレーベルもあれば(これも発売してくれるという意味では有益だとは思うが)、こうやって手作りで物理的な距離と言語の相違を埋めようとしてバンド側の言わんことを日本人のリスナーに伝えようと奮闘するレーベルもあるものだ。
さて装丁も素晴らしいこの作品タイトルは「長い影」。聞いてみると結構難しいなと。内容がイマイチというのではなく内容は素晴らしく、ディスコグラフィーをこのタイミングで聞いてみると音の拡充ぶりがただならぬことになっており、その表現力には改めて驚かされるわけだが、このいわば拡大し、充実し、芳醇になったハードコアを一体なんと言ったらいいかわからなくなったのだ。「Khmerね、はいはい、ネオクラストっしょ。新作、いいね。」といってしまえば良いのだが、個人的にはこの作品を聞いてみてそもそも一体ネオクラストがなんなのかという問題に直面してしまった。正直今までの音源だとブラッケンドなクラスト・コアなんですかね〜くらいの認識でいたわけで、それがまあつまりネオクラストすっかね…という感じだったのだが、今作を聞いてみるとあまりブラッケンドな感じがしなくてちょっと驚いてしまったわけです。
ブラッケンドはそもそもブラック・メタルに特有な音的特徴を他のジャンルに持ち込んだもので、一番印象的なのは何と言ってもコールドなのにメロディアスなトレモロギターだろう。この要素は(もともとあったものだが)シューゲイザーやドリーム・ポップの方面にまで(ときにはAlcestのようにブラック・メタルを通過しつつ)その触手を伸ばしている。今回のKhmerの新作ではあまりこのトレモロを使っていない。Khmerはだいたいがその黎明期からあまりミュートを使った力強いメタリックなリフをメインの武器に数えてこなかったから、ノンストップで弾きまくるハードコアなリフがその持ち味であり、今作でもそれは多用しているのだが、あまりこう型にはまった美麗トレモロという感じではない。ギタリストは一人なので必要性から、そしておそらく目指している音の方向性から低音に特化して極端に重たくエフェクトをかけるやり方ではなく、低音から高音まで全域を贅沢に使って、アッタクの音も生々しくも非常に厚みのある(温かみのある)音に仕上げている。実際のところは分からないがコード感にあふれていて6つの弦すべてがなっている印象といえば伝わるのではなかろうか。音がギュッと詰まっていて、弾き方についても単にオルタネイトに弾きまくっていくトレモロとは違う。もっと余韻を活かしたひねりのあるもので、腕の振り方というのか程よく音を抜いていて緩急がついている。非常にメロディアスという意味ではブラッケンドに共通点があるが、メロディは別にブラック・メタルにしかない要素ではないので、これはもっと別の何かだろうと思う。あえていうならもっと色鮮やかな何かである。別に明るいわけではなく、むしろ確実に暗い方だと思うがその黒さは単に黒一色で塗りつぶすのではなく、無数の色彩が兼ねられているような印象だ。(レーベルでは「哀愁」といっててなるほど!と思う。)
慌てて過去作を聞き返してみると、やはり単純なブラッケンドとは明らかに一線を画す曲を展開していて、そういった意味では軸がぶれていない。私の聞き込みがあまかったというのと、黒と白の世界に大胆に色彩を持ち込んだかのような大胆な音の使い方を持ち込んだことでその異質さがより明確に現れたのがこの2ndアルバムなのでは。(特に1stと聴き比べてみると大変面白い。)たとえば曲にわかりやすいメロディ(流行したメタルコアのサビのような)を持ち込んだとしたらわかりやすく、そして感情的になるがそうではないところに美学を感じる。歌詞もそうだが、そうそうわかりやすくはなく、感情を溶かしてリフと曲に塗り込めている。それで書いたのがこの絵(アルバム)というわけだ。そういえばMario(デザイナー/グラフティアーティストとして活動している)のアートワークは完全にモノクロで構成されているのも面白い要素だと思う。
ちなみにMarioのボーカルは特徴的でしゃがれていて、やはり低音強くないので強いて言えばこの要素はブラック・メタル的だが、持って生まれた天性もあってこれだけでブラッケンドというのは個人的にはちょっと難しいかな〜という感じ。
個人的にはブラッケンド≒ネオクラストくらいの適当な感覚でいたもので、今回の音源はそういった意味では違うのか〜という驚きがあって面白かった。
歌詞を読むとかなり長さがある。多分あまりリフレインがないのだと思う。その世界観は抽象的だが読んでみるとかなり個人的であって驚く。まるで人の日記をこっそり読んでいるような感じがある。例えばラストの曲のタイトルは「孤独」という意味なのだが、歌詞はアルバム全般に渡って結構閉塞感がある。いわゆるハードコア的な歌詞(打ち倒せ、もしくはユナイトしろ)とは一線を画す。どうしてもTragedy以降という認識があるんだけど、歌詞の内容は明快にクラストだったそこからもう一歩進んだのがネオクラストなのだろうか。激情というと悩んでいる内省的な(歌詞)世界が曲に反映されているから似通っているところはやはりあるのではともおもう。
とにかく曲と音の充実ぶりに驚く新作。暗くもメロディアスな作風は日本人に結構あっているのではと思う。Khmer気になっていたけど、という人は是非今作からどうぞ。
2016年12月11日日曜日
Downfall of Gaia/Atrophy
ドイツはハンブルグ、ベルリンのネオクラストバンドの4thアルバム。
2016年にMetal Blade Recordsよりリリースされた。
Downfall of Gaiaは2006年に結成され(2008年とされることもあるが、3laのインタビューでメンバーが発言。当初はバンド名が違った様だが。)たバンドで今まで3枚のアルバムをリリース。昨年来日経験も果たした。前回のアルバム「Aeon Unveils the Thrones of Decay」からドラムとギターのメンバーが入れ替わっている模様。
タイトルの「Atrophy」は「萎縮」という意味とのこと。
クラストを基調としならがブラックメタル、アトモスフェリック・スラッジ、ポストメタルなどさまざまな異種音楽をミックスした独特の音楽を鳴らしており、ネオクラストと紹介されることもある。
メンバーチェンジの影響からか、前作とは結構印象が違う出来になった。
ブラッケンド、つまりブラックメタルに影響されたクラスト・ハードコアという大きな音楽性自体はブレないものの、曲作りに関しては若干の変更が見られる。
10分にやや満たないくらいの長い尺は相変わらずだが、中身はひたすら大作志向だった前作に比べるとややシンプルになっている。静のパートと動のパートという基本はもちろん、曲の速さやリフなど1曲の中に色々ぎゅっと詰め込んでいたのが前作だとすると、今作はミニマルとまではいかないもの明確なテーマがあってそれを長い尺の中で繰り返すことで盛り上げていく様に作風がいくらか変わっている。
どちらがというのは個人の好みだろうが、私は今作の方が好きだ。やや難解だった前作は聴き処が明確に際立ちすぎていたが、さすがに聴き処以外は魅力なしというわけではないが、今作はあえて削ぎ落としてきていることで全編聴き処にすることができていると思う。つまりこのバンドの持ち味である、激しくも感情的に突っ走るトレモロリフが全編にわたって楽しめるからだ。端的に言えば魅力を10分弱聴かせることができているということじゃないだろうか。繰り返すがこの評価はこのバンドに何を求めるかでかわってくると思う。表層的にはかなりブラックメタルの要素が強いが、外に開いていく様な開放感(閉塞感だけにとらわれない)、そして明るいとまでは言えないものの光に向かう様な必死かつ温かみのあるリフに込められたメロディー(3曲め「Ephemerol」の美しさ!)を考えると(そしてまたインタビューでもパンクが出自という通り)その中身はブラックメタルとは違う何かを感じ取れる。
喚き声のボーカルに一切キャッチーさがない反面、疾走するトレモロリフがメロディアスを担う。「言葉にすると嘘になる」割とよく聞くフレーズだが、確かに言語化するとわかりやすくなる反面、意味が固定されてしまう。渦巻く感情をテーマにする場合は言語に頼らない、つまりそれ以外(別に音楽でなくても絵画とかでも)で表現するのは非常に理にかなっていると思う。ただ激しいだけでない、激情/ネオクラストと表現されるゆえの、悩みや不安、そして言葉にならない事事が反映されたDownfall of Gaiaの音楽がこの様な携帯を取るのは必然かもしれない。(そうなるとジャンルが先に来るのか、後に来るのかって問題があってこれをどう考えるかは非常に面白いと思う。)
長所をぎゅっと濃縮してきた新作。私はこの変化を非常に楽しめた。前作がやや難解だったという人も今作は楽しめるんではなかろうか。非常にオススメ。
2016年にMetal Blade Recordsよりリリースされた。
Downfall of Gaiaは2006年に結成され(2008年とされることもあるが、3laのインタビューでメンバーが発言。当初はバンド名が違った様だが。)たバンドで今まで3枚のアルバムをリリース。昨年来日経験も果たした。前回のアルバム「Aeon Unveils the Thrones of Decay」からドラムとギターのメンバーが入れ替わっている模様。
タイトルの「Atrophy」は「萎縮」という意味とのこと。
クラストを基調としならがブラックメタル、アトモスフェリック・スラッジ、ポストメタルなどさまざまな異種音楽をミックスした独特の音楽を鳴らしており、ネオクラストと紹介されることもある。
メンバーチェンジの影響からか、前作とは結構印象が違う出来になった。
ブラッケンド、つまりブラックメタルに影響されたクラスト・ハードコアという大きな音楽性自体はブレないものの、曲作りに関しては若干の変更が見られる。
10分にやや満たないくらいの長い尺は相変わらずだが、中身はひたすら大作志向だった前作に比べるとややシンプルになっている。静のパートと動のパートという基本はもちろん、曲の速さやリフなど1曲の中に色々ぎゅっと詰め込んでいたのが前作だとすると、今作はミニマルとまではいかないもの明確なテーマがあってそれを長い尺の中で繰り返すことで盛り上げていく様に作風がいくらか変わっている。
どちらがというのは個人の好みだろうが、私は今作の方が好きだ。やや難解だった前作は聴き処が明確に際立ちすぎていたが、さすがに聴き処以外は魅力なしというわけではないが、今作はあえて削ぎ落としてきていることで全編聴き処にすることができていると思う。つまりこのバンドの持ち味である、激しくも感情的に突っ走るトレモロリフが全編にわたって楽しめるからだ。端的に言えば魅力を10分弱聴かせることができているということじゃないだろうか。繰り返すがこの評価はこのバンドに何を求めるかでかわってくると思う。表層的にはかなりブラックメタルの要素が強いが、外に開いていく様な開放感(閉塞感だけにとらわれない)、そして明るいとまでは言えないものの光に向かう様な必死かつ温かみのあるリフに込められたメロディー(3曲め「Ephemerol」の美しさ!)を考えると(そしてまたインタビューでもパンクが出自という通り)その中身はブラックメタルとは違う何かを感じ取れる。
喚き声のボーカルに一切キャッチーさがない反面、疾走するトレモロリフがメロディアスを担う。「言葉にすると嘘になる」割とよく聞くフレーズだが、確かに言語化するとわかりやすくなる反面、意味が固定されてしまう。渦巻く感情をテーマにする場合は言語に頼らない、つまりそれ以外(別に音楽でなくても絵画とかでも)で表現するのは非常に理にかなっていると思う。ただ激しいだけでない、激情/ネオクラストと表現されるゆえの、悩みや不安、そして言葉にならない事事が反映されたDownfall of Gaiaの音楽がこの様な携帯を取るのは必然かもしれない。(そうなるとジャンルが先に来るのか、後に来るのかって問題があってこれをどう考えるかは非常に面白いと思う。)
長所をぎゅっと濃縮してきた新作。私はこの変化を非常に楽しめた。前作がやや難解だったという人も今作は楽しめるんではなかろうか。非常にオススメ。
2016年5月8日日曜日
sekien/sekien
日本は兵庫県姫路市のハードコアバンドの1stアルバム。
2016年に日本のLongLegsLongArms Recordsからリリースされた。
2010年に結成された3人組のバンドで幾つかのデモをリリースして後の待望のフルアルバム。比較的新しいジャンルであろうネオクラストを日本から発信する数少ない(唯一かどうかはわからない)バンドで激烈な音とライブの凄まじさでもって界隈では割となの知れたバンドなのだと思う。バンド名はsekienで漢字で書くと赤煙ということで中々意味深である。血の通った狼煙たるべし、という気概の現れだろうか。
私は先日のKhmerの来日ライブで初めてその勇姿を見れたのだが(CDもそのとき購入)、話題になるのが頷けるほどの内容だった。
クラストというのは音楽の一カテゴリであるけど単に音楽性でもって語られることの出来ないジャンルであると思う。(ハードコアという一大ジャンルは特にその傾向が強く感じる。)その中のさらに細かいカテゴリであるネオクラストに関しても激情をさらに発展させたその先、ブラッケンドされた真っ黒いハードコアという曖昧な共通点はあるもののすべてのバンドがそうである訳でも無し(現在進行中のジャンルということもあるだろうし)、その音は出すバンドによって様々。
このバンドsekienに関してはハードコアの荒々しさがその成分の大半を締めていてブラック感はあまり感じられない。哀愁のメロディで激走するギターはトレモロ感はあるものの冷たいブラックというよりは熱気で加速して暴走している様があって、やはりもっとハードコア(激情)っぽい。捨て鉢のする短いギターソロもパンクっぽさを感じさせる。
ボーカルは掠れまくった低音で唸る様な咆哮でかなり独特。歌詞は日本語でブックレットのようにガリガリ削って彫り込まれた様な勢いでもって突き刺さる。
曲はほぼ2分台だが結構ボーカルが入っていないパートがふんだんにとられていて、ここがまたすごいカッコいい。疾走パートではとにかく前述のギターがメロいわけだし、速度の遅いパートだとベースのガツンとくる衝撃がカッコいい。タメのある間奏パートでは暴れられるし。かなりメリハリが利いている。6曲目「開花」は完全にインストナンバーでここにこのバンドの激情さが一つの形として結実していて自分はもの凄い好きですね。多分このアルバムで一番キャッチーなナンバーではなかろうか。無骨な音楽性の内面が非常に上手く表現されていると思う。
ライブを見て特に思ったのはその媚びなさ。キャッチーなメロディがある訳でもないし、音も荒々しくまさにrawなもの。タトゥーだらけのメンバーは厳つく、MCもほとんどしない。同じステージに経った同じジャンルのKhmerは苛烈な音楽性に反して終始和やかなライブだったのだが、一方のsekienの立ち居振る舞いは無愛想・無骨を通り越して観客を殺しにかかってくる様な殺伐としたもの。その過激で攻撃的なアティチュードはCDの音にも閉じ込められている。なんというかこうしちゃいられない!という感じの焦燥感、突っ走らずにはいられない闇雲さ、そんな感情がネオクラストの音楽に結晶化している。攻撃的であるが、多分に内省的でまっちょいハードコアなんかとは明らかに一線を画す。
拍手でというよりは振り上げた拳で迎え入れられるハードコアだと思う。殺気と熱気を感じたい人は是非どうぞ。非常にオススメ。
2016年に日本のLongLegsLongArms Recordsからリリースされた。
2010年に結成された3人組のバンドで幾つかのデモをリリースして後の待望のフルアルバム。比較的新しいジャンルであろうネオクラストを日本から発信する数少ない(唯一かどうかはわからない)バンドで激烈な音とライブの凄まじさでもって界隈では割となの知れたバンドなのだと思う。バンド名はsekienで漢字で書くと赤煙ということで中々意味深である。血の通った狼煙たるべし、という気概の現れだろうか。
私は先日のKhmerの来日ライブで初めてその勇姿を見れたのだが(CDもそのとき購入)、話題になるのが頷けるほどの内容だった。
クラストというのは音楽の一カテゴリであるけど単に音楽性でもって語られることの出来ないジャンルであると思う。(ハードコアという一大ジャンルは特にその傾向が強く感じる。)その中のさらに細かいカテゴリであるネオクラストに関しても激情をさらに発展させたその先、ブラッケンドされた真っ黒いハードコアという曖昧な共通点はあるもののすべてのバンドがそうである訳でも無し(現在進行中のジャンルということもあるだろうし)、その音は出すバンドによって様々。
このバンドsekienに関してはハードコアの荒々しさがその成分の大半を締めていてブラック感はあまり感じられない。哀愁のメロディで激走するギターはトレモロ感はあるものの冷たいブラックというよりは熱気で加速して暴走している様があって、やはりもっとハードコア(激情)っぽい。捨て鉢のする短いギターソロもパンクっぽさを感じさせる。
ボーカルは掠れまくった低音で唸る様な咆哮でかなり独特。歌詞は日本語でブックレットのようにガリガリ削って彫り込まれた様な勢いでもって突き刺さる。
曲はほぼ2分台だが結構ボーカルが入っていないパートがふんだんにとられていて、ここがまたすごいカッコいい。疾走パートではとにかく前述のギターがメロいわけだし、速度の遅いパートだとベースのガツンとくる衝撃がカッコいい。タメのある間奏パートでは暴れられるし。かなりメリハリが利いている。6曲目「開花」は完全にインストナンバーでここにこのバンドの激情さが一つの形として結実していて自分はもの凄い好きですね。多分このアルバムで一番キャッチーなナンバーではなかろうか。無骨な音楽性の内面が非常に上手く表現されていると思う。
ライブを見て特に思ったのはその媚びなさ。キャッチーなメロディがある訳でもないし、音も荒々しくまさにrawなもの。タトゥーだらけのメンバーは厳つく、MCもほとんどしない。同じステージに経った同じジャンルのKhmerは苛烈な音楽性に反して終始和やかなライブだったのだが、一方のsekienの立ち居振る舞いは無愛想・無骨を通り越して観客を殺しにかかってくる様な殺伐としたもの。その過激で攻撃的なアティチュードはCDの音にも閉じ込められている。なんというかこうしちゃいられない!という感じの焦燥感、突っ走らずにはいられない闇雲さ、そんな感情がネオクラストの音楽に結晶化している。攻撃的であるが、多分に内省的でまっちょいハードコアなんかとは明らかに一線を画す。
拍手でというよりは振り上げた拳で迎え入れられるハードコアだと思う。殺気と熱気を感じたい人は是非どうぞ。非常にオススメ。
2016年3月26日土曜日
Khmer & Livstid/Khmer & Livstid split
スペインのネオクラストバンドKhmerとノルウェーのクラストバンドLivstidのスプリット音源。
2016年にノルウェーのDisiplin Media、アメリカのHalo of Files、そして日本のLong Legs Long Armsからリリースされた。私が買ったのは3LAがリリースする日本仕様のレコードでダウンロードクーポンがついている。
まずはこの日本國限定版と銘打たれたEPの作り手の気合いの入れように驚かされる。印象的なアートワークはKhmerのMarioの手によるもの(Redsheerの「Eternity」のアートワークも彼の手によるのは有名な話)。パンクバンドなので歌詞は勿論非常に重要なファクターだが、それぞれのバンドの本国の言葉(スペイン語とノルウェー語)はもちろん、世界を標準にリリースされている事もあり英訳、それから日本盤には日本語の訳がついている。ちなみに日本盤は曲のタイトルも和訳されている。例えばKhmerの「himno a las llamas」は「灼讃歌」である。熱すぎるぜ〜。
Khmerは10分の曲1曲のみ。
終始ストイックで劇的である。掠れ声で吐き捨て型のボーカルとその長い尺のなかに静と動を内包した展開を組み込んでいる事でやはりどうしてもブラックメタルとの関係について考えてしまうが、よくよく聴いてみるとどちらかというとポストハードコアというか、もっというと非常にハードコア的である事に気がつく。ポストハードコアというと例えばenvyのようにアルペジオや分厚い弦楽隊による美しくかつミニマリズムなどを導入した知的なアンサンブルが頭をよぎる。はっきりいってその美しさはこのKhmerというバンドからはあまり感じられなくて、なんならもっと粗野であるし、かっちり考え抜かれた構成は(粗野感といったのに矛盾しそうだが実は全然普通に両立する概念だと思う)様式美を高度な技術で実現しようとするメタルに通じるところがある(のでよりブラックメタル感というのが演出されているのだと思うのだ)けど、コールドという言葉で形容される事の多いブラックメタルにはない決定的な熱さがあってそれは非常にハードコア的だと思う。例えば中盤テンポが落ちるところから勢いを盛り返すところなどは鳥肌ものだ。手数を増やして(個人的にはキンキンいうシンバルの乱打に目が無い)加速して行くところは非常に肉感的な印象で、つまるところハードコアの野性味とメタルの表現力を両立させ手いるバンドなのだと思った。
対するB面、LivstidはこれはまたKhmerとは結構雰囲気も音楽性も違って驚く。同じくクラストと行っても自らを「Crusty d-beat punk attack」と称する彼らはもっと分かりやすくかつどこまでも直球ストレートである。のどに引っ掛ける様な掠れたボーカルは通じるものがあるが、メタルを通過したギターの音はより直感的・現実的に重たい。曲はほぼほぼ1分台でとにかく突っ走りまくる。うえ〜〜!?と驚いていると2曲目で滅茶苦茶おとこくさくかつキャッチーなコーラスワークが耳に突き刺さってくる。思わず笑ってしまうのだが、これは非常にカッコいい。馬鹿みたいに速い訳ではないけど、それでもスピードを一切落とさず終始走りっぱなし。かなりの恐もてなのだが、前述のコーラス(まさに必殺というかんじ)、さらにギターのラインが非常にメロディアスで思ったよりずっと聴きやすい。私かなり好きですね。
結構音楽性が違うバンドのスプリットなのでこれは中々難しいと思った。共通点を求めて歌詞を見てみると、Livstidは全くぶれない単純明快かつメッセージ性の強いパンク調のもの。一方のKhmerは何回とまでは言わないが抽象的な概念もつづられていて自戒的な意味合いも読み取れるから共通点というのはやはり一筋縄では行かない。恐らくこの空隙を違和感無く埋めているのが両者のバンドに共通する熱量では無いのだろうかと思うのだ。それはレーベルオーナー水谷さんがやはり熱量高くぶち上げた激情という要素なのかもしれないな…と思った次第。
趣を異にするバンドをひとまとめのスプリットにして両方カッコいいのだから、クラスト、それからハードコアというのは懐の広いジャンルだなと思う。
Khmerは来る4月に遂に来日という事もあって気になっている人は是非どうぞ。オススメです。
2016年にノルウェーのDisiplin Media、アメリカのHalo of Files、そして日本のLong Legs Long Armsからリリースされた。私が買ったのは3LAがリリースする日本仕様のレコードでダウンロードクーポンがついている。
まずはこの日本國限定版と銘打たれたEPの作り手の気合いの入れように驚かされる。印象的なアートワークはKhmerのMarioの手によるもの(Redsheerの「Eternity」のアートワークも彼の手によるのは有名な話)。パンクバンドなので歌詞は勿論非常に重要なファクターだが、それぞれのバンドの本国の言葉(スペイン語とノルウェー語)はもちろん、世界を標準にリリースされている事もあり英訳、それから日本盤には日本語の訳がついている。ちなみに日本盤は曲のタイトルも和訳されている。例えばKhmerの「himno a las llamas」は「灼讃歌」である。熱すぎるぜ〜。
Khmerは10分の曲1曲のみ。
終始ストイックで劇的である。掠れ声で吐き捨て型のボーカルとその長い尺のなかに静と動を内包した展開を組み込んでいる事でやはりどうしてもブラックメタルとの関係について考えてしまうが、よくよく聴いてみるとどちらかというとポストハードコアというか、もっというと非常にハードコア的である事に気がつく。ポストハードコアというと例えばenvyのようにアルペジオや分厚い弦楽隊による美しくかつミニマリズムなどを導入した知的なアンサンブルが頭をよぎる。はっきりいってその美しさはこのKhmerというバンドからはあまり感じられなくて、なんならもっと粗野であるし、かっちり考え抜かれた構成は(粗野感といったのに矛盾しそうだが実は全然普通に両立する概念だと思う)様式美を高度な技術で実現しようとするメタルに通じるところがある(のでよりブラックメタル感というのが演出されているのだと思うのだ)けど、コールドという言葉で形容される事の多いブラックメタルにはない決定的な熱さがあってそれは非常にハードコア的だと思う。例えば中盤テンポが落ちるところから勢いを盛り返すところなどは鳥肌ものだ。手数を増やして(個人的にはキンキンいうシンバルの乱打に目が無い)加速して行くところは非常に肉感的な印象で、つまるところハードコアの野性味とメタルの表現力を両立させ手いるバンドなのだと思った。
対するB面、LivstidはこれはまたKhmerとは結構雰囲気も音楽性も違って驚く。同じくクラストと行っても自らを「Crusty d-beat punk attack」と称する彼らはもっと分かりやすくかつどこまでも直球ストレートである。のどに引っ掛ける様な掠れたボーカルは通じるものがあるが、メタルを通過したギターの音はより直感的・現実的に重たい。曲はほぼほぼ1分台でとにかく突っ走りまくる。うえ〜〜!?と驚いていると2曲目で滅茶苦茶おとこくさくかつキャッチーなコーラスワークが耳に突き刺さってくる。思わず笑ってしまうのだが、これは非常にカッコいい。馬鹿みたいに速い訳ではないけど、それでもスピードを一切落とさず終始走りっぱなし。かなりの恐もてなのだが、前述のコーラス(まさに必殺というかんじ)、さらにギターのラインが非常にメロディアスで思ったよりずっと聴きやすい。私かなり好きですね。
結構音楽性が違うバンドのスプリットなのでこれは中々難しいと思った。共通点を求めて歌詞を見てみると、Livstidは全くぶれない単純明快かつメッセージ性の強いパンク調のもの。一方のKhmerは何回とまでは言わないが抽象的な概念もつづられていて自戒的な意味合いも読み取れるから共通点というのはやはり一筋縄では行かない。恐らくこの空隙を違和感無く埋めているのが両者のバンドに共通する熱量では無いのだろうかと思うのだ。それはレーベルオーナー水谷さんがやはり熱量高くぶち上げた激情という要素なのかもしれないな…と思った次第。
趣を異にするバンドをひとまとめのスプリットにして両方カッコいいのだから、クラスト、それからハードコアというのは懐の広いジャンルだなと思う。
Khmerは来る4月に遂に来日という事もあって気になっている人は是非どうぞ。オススメです。
2016年1月31日日曜日
Anopheli/The ache of want
アメリカはカリフォルニア州オークランドのネオクラストバンドの2ndアルバム。
2015年にAlerta Antifascistaからリリースされた。
私が買ったのはデジタル版でこちらは現時点ではBandcampでname your priceになっている。
元Light BearerのAlexが新しく始めたバンド。
メンバー構成が変わっていて6人編成でオーソドックスな楽器陣に加えてチェロ担当とアコースティックギター担当が一人ずついる。ロックだろうがメタルだろうがストリングスをバンドサウンドに導入する事自体は珍しくないだろうが、あくまでも追加のアレンジという感じで選任の奏者がいるのはあまり聴かない。(名前は忘れたけどバイオリン担当がいるパンクバンドがいた様な気がするな…)アコースティックギターに関してもギタリストが兼任というのが通常だろうが、このバンドでは選任。
オフィシャルではエモクラストと名乗っていて、全く知らない人に説明するにはこちらの方が音楽性が分かりやすいかもしれない。クラストというと苛烈な音楽性を想像するが前述の楽器陣も加わって非常に表情豊かな音楽をならしている。勿論なんといってもクラストなので激しさもあるのだが。
全6曲収録されていて、アコースティックギターが美しいインストをのぞき後の5曲はすべてだいたい7分台。スラッジの要素は勿論あるのだが牛歩っぽい遅鈍さはなく、どちらかというと練られた曲展開で激しくも聴かせるハードコアといった趣。インテリジェンスというとどうしてもメタリックで頭でっかちのイメージもあるのだが、個人的には非常に知性的な音楽だなと思った。こういうとき出自ハードコアがだから技巧自慢にならないのがとにかく好印象だ。同じ事をメタルバンドがやったら曲の長さは倍になるんじゃないかな。(勿論それはそれでカッコいいのだろうが)
いかにもクラストな男臭いだみ声ボーカルにギャアギャアしたボーカルが絡むツインボーカルは飽きさせない要素だが、歌のメロディ性はどちらかというとそこまで強くない。ボーカルも楽器の一つという感じで曲全体で聴かせるイメージ。アンサンブル全体で突っ走るのがカタルシスだが、常に全開で突っ走っている訳ではなく緩急をつけて高低を付けている。ためる様なアンビエントパートの後の疾走はこみ上げてくるように熱い。アンビエントパートはアコースティックギターを押し出したりしていてポスト感の影響も色濃いが、そちらのジャンルに比較すると短めで良い意味で凝っている訳ではない。静からの動はなるほど威力強めだが、なんといってもチェロがこのバンドの叙情性を飛躍的に高めてくる。とにかく伸びやかでまろやかな輪郭の、太く暖かい音がバンドの外郭をぶわっと一枚分厚く覆っている様なイメージで、こいつがエモーショナルさを倍加させている。弦楽隊のメタリックでエレクトリックな音とは好対照だし、チェロというのは(弾き方もあると思うけど)出す音が連続していて、途切れる事無くその音色を変えていくから、ドラムやギターなどの緩急を意識して旧譜やミュートがある弾き方と対照的なんだよね。ベースっぽいけどやはり途切れる事もあるそれとは一線を画す。
エモーショナルというのは感情的という意味だけど、このバンドの場合は激しさでもって一つの感情に特化したというよりは、複雑な感情をバンドアンサンブルとチェロなどで表現しようとしているように感じた。クラストの持つ激しさがにじんで(こう書くと悪く聴こえるかもだけどここでは良い意味で使っています)、色んな感情が溶け出しているようだ。抽象的になっているのかもしれないが、その分激しさだけでは得れない境地で訴えかけてくる。
乗り遅れた感じ聴いてみたが話題になるのも納得の出来。まだの人は是非どうぞ。
2015年にAlerta Antifascistaからリリースされた。
私が買ったのはデジタル版でこちらは現時点ではBandcampでname your priceになっている。
元Light BearerのAlexが新しく始めたバンド。
メンバー構成が変わっていて6人編成でオーソドックスな楽器陣に加えてチェロ担当とアコースティックギター担当が一人ずついる。ロックだろうがメタルだろうがストリングスをバンドサウンドに導入する事自体は珍しくないだろうが、あくまでも追加のアレンジという感じで選任の奏者がいるのはあまり聴かない。(名前は忘れたけどバイオリン担当がいるパンクバンドがいた様な気がするな…)アコースティックギターに関してもギタリストが兼任というのが通常だろうが、このバンドでは選任。
オフィシャルではエモクラストと名乗っていて、全く知らない人に説明するにはこちらの方が音楽性が分かりやすいかもしれない。クラストというと苛烈な音楽性を想像するが前述の楽器陣も加わって非常に表情豊かな音楽をならしている。勿論なんといってもクラストなので激しさもあるのだが。
全6曲収録されていて、アコースティックギターが美しいインストをのぞき後の5曲はすべてだいたい7分台。スラッジの要素は勿論あるのだが牛歩っぽい遅鈍さはなく、どちらかというと練られた曲展開で激しくも聴かせるハードコアといった趣。インテリジェンスというとどうしてもメタリックで頭でっかちのイメージもあるのだが、個人的には非常に知性的な音楽だなと思った。こういうとき出自ハードコアがだから技巧自慢にならないのがとにかく好印象だ。同じ事をメタルバンドがやったら曲の長さは倍になるんじゃないかな。(勿論それはそれでカッコいいのだろうが)
いかにもクラストな男臭いだみ声ボーカルにギャアギャアしたボーカルが絡むツインボーカルは飽きさせない要素だが、歌のメロディ性はどちらかというとそこまで強くない。ボーカルも楽器の一つという感じで曲全体で聴かせるイメージ。アンサンブル全体で突っ走るのがカタルシスだが、常に全開で突っ走っている訳ではなく緩急をつけて高低を付けている。ためる様なアンビエントパートの後の疾走はこみ上げてくるように熱い。アンビエントパートはアコースティックギターを押し出したりしていてポスト感の影響も色濃いが、そちらのジャンルに比較すると短めで良い意味で凝っている訳ではない。静からの動はなるほど威力強めだが、なんといってもチェロがこのバンドの叙情性を飛躍的に高めてくる。とにかく伸びやかでまろやかな輪郭の、太く暖かい音がバンドの外郭をぶわっと一枚分厚く覆っている様なイメージで、こいつがエモーショナルさを倍加させている。弦楽隊のメタリックでエレクトリックな音とは好対照だし、チェロというのは(弾き方もあると思うけど)出す音が連続していて、途切れる事無くその音色を変えていくから、ドラムやギターなどの緩急を意識して旧譜やミュートがある弾き方と対照的なんだよね。ベースっぽいけどやはり途切れる事もあるそれとは一線を画す。
エモーショナルというのは感情的という意味だけど、このバンドの場合は激しさでもって一つの感情に特化したというよりは、複雑な感情をバンドアンサンブルとチェロなどで表現しようとしているように感じた。クラストの持つ激しさがにじんで(こう書くと悪く聴こえるかもだけどここでは良い意味で使っています)、色んな感情が溶け出しているようだ。抽象的になっているのかもしれないが、その分激しさだけでは得れない境地で訴えかけてくる。
乗り遅れた感じ聴いてみたが話題になるのも納得の出来。まだの人は是非どうぞ。
2015年9月6日日曜日
Downfall of Gaia/Aeon Unveils the Thrones of Decay
ドイツはハンブルク、ベルリンそしてアメリカはニューヨークのメンバーが在籍するネオクラストバンドの3rdアルバム。
2014年にMetal Blade Recordsからリリースされた。
発売は去年だしネオクラストと言えばマイナー界隈では良く目にするジャンルでなんで今更という感じだが、このバンド日本のTokyo Jupiter RecordsとLongLegsLongArmsという二つのレーベルが共同でぶちあげた来る11月に開催されるその名もTJLA Festのヘッドライナーで来日する事が決まっており、慌てふためいて買って来たのが私なのである。完全に後追いも良いところで恐縮です。
さてこのバンドは2008年に結成されてメンバーチェンジがありつつも現在は四人体制でやっているという事。「アイオーンが腐敗の王を暴く」と中々物々しいタイトルでもってどちらかというとデスメタル感さえ漂う。
いざ再生ボタンを押すと結構驚いた。ネオクラストというと私はほとんど素人であるからどうしても最近聴いたKhmerだったり、同郷のAlpinistだったりをなんとなく頭に浮かべていた訳なのだが、それれのバンドとは共通点はありつつも相違点がデカく、そこに圧倒されたのであった。まず曲の尺が極めて長い。インタールード的な曲をのぞけばだいたい8分から11分くらい。ハードコアでこれだけの長さとなると真っ先に曲の速度を著しく落としたスラッジが頭に浮かぶし、(Metallumでもアトモスフェリックスラッジと称されている)なるほど速度を落としたスラッジパートも盛り込んでいる。ただアトモスフェリックという形容詞があるように汚いズルズルとしたスラッジ感というよりはポストロック、ポストハードコアを通過した轟音の中にも寂寥とした荘厳な美しさを感じさせる、そっちの方の要素が強い。そしてそのスラッジパートもあくまでもパートとしてなので全編低速で無声な訳ではない。要するに曲がドラマチックなのだ。展開が複雑という意味である。前述の通りポストハードコア感が強いのだが、しょっちゅう出てくる荒々しさは確かにクラストのもの。激情という言葉が上手く彼らのイメージを補完する訳なのだが、私はその荒々しさの先頭に立つ様なボーカルの恐ろしさにビックリしてしまったのである。掠れまくったそれはブラックメタル感を感じさせつつもそこにとどまらない異様な存在感を放っている訳で、一言で言うならおっかないな、という感じでただただ圧倒されたのだった。
ところがむむむという感じでイマイチ掴みきれなかったこの音源も、2回3回と聴いていくとその本当の姿がやっと見えて来た。それは徹底的に荒廃しつつもどこかしら幻想的な雰囲気のある音風景である。まったく制約があってのアートワークは今や中の音楽と完全に一体となっている様な気がするのだが、印象的なジャケットは良くこのバンドの音楽を表現している。暗くて荒涼としているがどこかしら詩情のある風景だ。何と行ってもこのバンドは演奏が劇的。ドラマチックという言葉がぴったり。同じネオクラストでもLight Bearer方面。(ネオクラストとか全然知らない頃に「Lapsus」を買った。)あくまでもバンドサウンドの形でしかも暗くて重い方に完全に舵を切っているのによくもここまで豊かな曲を作れるものだと思う。それこそポスト感の漂う停滞した様なスラッジパート。クリーンな余韻がたまらないアルペジオ。一点ブラックメタルそこのけのトレモロの嵐感。静と動はやはりこの手のジャンルのお家芸だが、クラストバンドがそのフォーマットでポスト感を完全に飲み込んでしまうとは結構な驚きである。(ポスト感横溢しているもののあくまでもクラストフォーマットに則っている様な。)個人的にはドラムが回すように勇壮なマーチっぽいリズムを刻んで2本のギターが切ないトレモロを奏でる2曲目の最終部分は白眉。
良い意味で予想と違った内容で驚いた作品。とにかく荒々しく劇的。来日するわけだしこの機会にまだの人は是非どうぞ。オススメです。
2014年にMetal Blade Recordsからリリースされた。
発売は去年だしネオクラストと言えばマイナー界隈では良く目にするジャンルでなんで今更という感じだが、このバンド日本のTokyo Jupiter RecordsとLongLegsLongArmsという二つのレーベルが共同でぶちあげた来る11月に開催されるその名もTJLA Festのヘッドライナーで来日する事が決まっており、慌てふためいて買って来たのが私なのである。完全に後追いも良いところで恐縮です。
さてこのバンドは2008年に結成されてメンバーチェンジがありつつも現在は四人体制でやっているという事。「アイオーンが腐敗の王を暴く」と中々物々しいタイトルでもってどちらかというとデスメタル感さえ漂う。
いざ再生ボタンを押すと結構驚いた。ネオクラストというと私はほとんど素人であるからどうしても最近聴いたKhmerだったり、同郷のAlpinistだったりをなんとなく頭に浮かべていた訳なのだが、それれのバンドとは共通点はありつつも相違点がデカく、そこに圧倒されたのであった。まず曲の尺が極めて長い。インタールード的な曲をのぞけばだいたい8分から11分くらい。ハードコアでこれだけの長さとなると真っ先に曲の速度を著しく落としたスラッジが頭に浮かぶし、(Metallumでもアトモスフェリックスラッジと称されている)なるほど速度を落としたスラッジパートも盛り込んでいる。ただアトモスフェリックという形容詞があるように汚いズルズルとしたスラッジ感というよりはポストロック、ポストハードコアを通過した轟音の中にも寂寥とした荘厳な美しさを感じさせる、そっちの方の要素が強い。そしてそのスラッジパートもあくまでもパートとしてなので全編低速で無声な訳ではない。要するに曲がドラマチックなのだ。展開が複雑という意味である。前述の通りポストハードコア感が強いのだが、しょっちゅう出てくる荒々しさは確かにクラストのもの。激情という言葉が上手く彼らのイメージを補完する訳なのだが、私はその荒々しさの先頭に立つ様なボーカルの恐ろしさにビックリしてしまったのである。掠れまくったそれはブラックメタル感を感じさせつつもそこにとどまらない異様な存在感を放っている訳で、一言で言うならおっかないな、という感じでただただ圧倒されたのだった。
ところがむむむという感じでイマイチ掴みきれなかったこの音源も、2回3回と聴いていくとその本当の姿がやっと見えて来た。それは徹底的に荒廃しつつもどこかしら幻想的な雰囲気のある音風景である。まったく制約があってのアートワークは今や中の音楽と完全に一体となっている様な気がするのだが、印象的なジャケットは良くこのバンドの音楽を表現している。暗くて荒涼としているがどこかしら詩情のある風景だ。何と行ってもこのバンドは演奏が劇的。ドラマチックという言葉がぴったり。同じネオクラストでもLight Bearer方面。(ネオクラストとか全然知らない頃に「Lapsus」を買った。)あくまでもバンドサウンドの形でしかも暗くて重い方に完全に舵を切っているのによくもここまで豊かな曲を作れるものだと思う。それこそポスト感の漂う停滞した様なスラッジパート。クリーンな余韻がたまらないアルペジオ。一点ブラックメタルそこのけのトレモロの嵐感。静と動はやはりこの手のジャンルのお家芸だが、クラストバンドがそのフォーマットでポスト感を完全に飲み込んでしまうとは結構な驚きである。(ポスト感横溢しているもののあくまでもクラストフォーマットに則っている様な。)個人的にはドラムが回すように勇壮なマーチっぽいリズムを刻んで2本のギターが切ないトレモロを奏でる2曲目の最終部分は白眉。
良い意味で予想と違った内容で驚いた作品。とにかく荒々しく劇的。来日するわけだしこの機会にまだの人は是非どうぞ。オススメです。
2015年8月16日日曜日
Alpinist/Lichtlaerm/Minus.Mensch
ドイツのミュンスターのネオクラストバンドの1stアルバムと2ndアルバムをくっつけた編集版。
2011年にSouthern Lord Record Recordingsからリリースされた。
2000枚限定で私が持っているのは999番。ぞろ目でなんか嬉しいです。
バンドは2007年結成。ネオクラストの文脈で語られるバンドで私は完全に後追いですがディストロの紹介で視聴したらかっこ良かったもので購入。
2ndアルバムLichtlaerm(2010)は「明るい騒音」1stアルバムMinus.Mensch(2009)は「マイナス。人間」という感じではっきりとはしていないもののなんとなーく彼らの姿勢というが見える様な気が。このアルバム2枚目が頭の面白い構造(普通は時系列に並べるのかな?と思います)なんですが、スパンが1年という事もあり路線も同じなのでそんなに違和感無く聴けます。
FBのジャンルには重たく低く速く遅く暗いハードコアと書かれており、この説明だけでだいたい好きなヤツだなと分かりますね。
クラストを土台にした呵責の無いハードコアなんだが、同時に滅茶苦茶ドラマティックで爆発寸前の激情っぷりに涙がちょちょぎれるタイプの叙情性を持っている。終始喧しいのにここまで感情込められるのが不思議なくらい。
空間を真っ黒に塗りつぶすタイプのハードコアで徹頭徹尾容赦ないが弦楽器が奏でるメロディが疾走感と相まって非常に気持ちがよい。
ドラムはハードコアっぽくズダズダ突進するタイプだが、結構転がすようにタムを回したりして手数は多め。
ギターが暴れる分低音を一手に担っているのかとにかくベースがごろごろ存在感を出してくる。
ギターはどっしり重たい低音で嵐のように左官屋のように塗り籠めてくる塗り壁タイプで、不協和音っぽい高音だったりアルペジオだったり、遅いパートては単音つま弾いたりでで雰囲気だしてくる。とにかくメロディアスに弾き倒してくるのでボーカル以上にギターが歌っている印象。低音リフからの高音トレモロが泣ける。
ボーカルは激情系な絶叫タイプが主体で終始シャウトしっぱなし。血管切れないのだろうかとこっちが心配になってくる。たまに出てくる低音ボーカルも彩りを添えて大変良い。
スローパーともふんだんに取り込んでいるものの基本は疾走するハードコア。かなり極端なジャンルには間違いないのだが、なぜこんなにも感情豊かなのか。ストイックさ、そして全身全霊さ。一番最後の曲、1stアルバムの「Outro」を聴けば分かるのだが、このイントロの曲の中には荒々しさの中にもポストロックを彷彿とさせる空間的な広がりと、音の厚みが重なって作られるアンサンブルが強く意識されている。ボーカルなしのただのアウトロと侮るなかれの魅力がぎゅっと詰まっていて、ここにこのバンドのすごさをかいま見た。小器用さ、ひけらかしとは無縁のバンドだが、無骨な音楽性をささえる圧倒的な表現力の豊かさがギラリと光る。彼らの言葉は血が通っている故に聞き手に対して説得力があるのだろうと思った。
ある程度聴いていると結構なれてくるのだが、曲の終わり引きずる様なフィードバックノイズでこのビリビリ震える様な重低音を再認識する様な感じでまさに圧倒的な余韻。
2000枚限定でBandcampはあるもののデジタル販売はやっていない様なので気になる人は速めにゲットしておくのが良いかと。
2011年にSouthern Lord Record Recordingsからリリースされた。
2000枚限定で私が持っているのは999番。ぞろ目でなんか嬉しいです。
バンドは2007年結成。ネオクラストの文脈で語られるバンドで私は完全に後追いですがディストロの紹介で視聴したらかっこ良かったもので購入。
2ndアルバムLichtlaerm(2010)は「明るい騒音」1stアルバムMinus.Mensch(2009)は「マイナス。人間」という感じではっきりとはしていないもののなんとなーく彼らの姿勢というが見える様な気が。このアルバム2枚目が頭の面白い構造(普通は時系列に並べるのかな?と思います)なんですが、スパンが1年という事もあり路線も同じなのでそんなに違和感無く聴けます。
FBのジャンルには重たく低く速く遅く暗いハードコアと書かれており、この説明だけでだいたい好きなヤツだなと分かりますね。
クラストを土台にした呵責の無いハードコアなんだが、同時に滅茶苦茶ドラマティックで爆発寸前の激情っぷりに涙がちょちょぎれるタイプの叙情性を持っている。終始喧しいのにここまで感情込められるのが不思議なくらい。
空間を真っ黒に塗りつぶすタイプのハードコアで徹頭徹尾容赦ないが弦楽器が奏でるメロディが疾走感と相まって非常に気持ちがよい。
ドラムはハードコアっぽくズダズダ突進するタイプだが、結構転がすようにタムを回したりして手数は多め。
ギターが暴れる分低音を一手に担っているのかとにかくベースがごろごろ存在感を出してくる。
ギターはどっしり重たい低音で嵐のように左官屋のように塗り籠めてくる塗り壁タイプで、不協和音っぽい高音だったりアルペジオだったり、遅いパートては単音つま弾いたりでで雰囲気だしてくる。とにかくメロディアスに弾き倒してくるのでボーカル以上にギターが歌っている印象。低音リフからの高音トレモロが泣ける。
ボーカルは激情系な絶叫タイプが主体で終始シャウトしっぱなし。血管切れないのだろうかとこっちが心配になってくる。たまに出てくる低音ボーカルも彩りを添えて大変良い。
スローパーともふんだんに取り込んでいるものの基本は疾走するハードコア。かなり極端なジャンルには間違いないのだが、なぜこんなにも感情豊かなのか。ストイックさ、そして全身全霊さ。一番最後の曲、1stアルバムの「Outro」を聴けば分かるのだが、このイントロの曲の中には荒々しさの中にもポストロックを彷彿とさせる空間的な広がりと、音の厚みが重なって作られるアンサンブルが強く意識されている。ボーカルなしのただのアウトロと侮るなかれの魅力がぎゅっと詰まっていて、ここにこのバンドのすごさをかいま見た。小器用さ、ひけらかしとは無縁のバンドだが、無骨な音楽性をささえる圧倒的な表現力の豊かさがギラリと光る。彼らの言葉は血が通っている故に聞き手に対して説得力があるのだろうと思った。
ある程度聴いていると結構なれてくるのだが、曲の終わり引きずる様なフィードバックノイズでこのビリビリ震える様な重低音を再認識する様な感じでまさに圧倒的な余韻。
2000枚限定でBandcampはあるもののデジタル販売はやっていない様なので気になる人は速めにゲットしておくのが良いかと。
2015年5月24日日曜日
End of All/Same Shit But Different
スウェーデンのハードコアバンドの1stアルバム。
2007年にCrime Against Humanity Recordsからリリースされた。
Wolfebrigadeというバンドのメンバーによって結成されたらしいのだが、前身のバンドもこのバンドも詳細はよくわからない。このアルバムを作った時はメンバーは4人。この後2ndアルバムを2008年に、さらに2009年に音源を出して以来しばらく音沙汰がないようだ。オフィシャルサイトも確認できず。活動休止中なのかも。3LAレコードのラスイチお知らせで視聴したら良かったので買ってみた。
ジャンルとしてはクラストになるのだと思う。Last.fmだとネオクラストのタグも付けられている。ただしメタリックなハードコアという感じでブラッケンド感はあまり感じられず。後述するがボーカル(の片方)くらいかな。かなり男臭く熱い感じ。
曲は2分台がほとんど。速さは底までではない感じ。いわゆるD-Beatのズッタズッタした速さと重厚感のあるドラムに、かなり硬質なベースが乗っかり(ベースはボーカルも兼任)、これまた硬質でギラっとした質感のあるメタリックな重いギターが乗っかる(ギター2人で片方がボーカルをとる)スタイル。今でこそConvergeのKurt Ballouだったりの活躍で隆盛を見せているメタリックな質感を持つハードコアバンドが増えて来たけど、こちらは流行以前から一戦で活動して来たいぶし銀な雰囲気を持つバンド。決して派手ではないのだけど、どっしりとしたかっこよさがある。
一つ目はボーカル。これはかなりドスが利いている男らしい声なんだけど、やっぱりメタル系譜のデス声とは明らかに一線を画す。やはりハードコアを感じさせる。ただ激情のような内省的な雰囲気は無くて、外に向けてフラストレーションをまき散らすタイプ。これは熱い。たまに出てくるもう一人の声は若干ブラックメタルを感じさせるわめき声タイプでこれが良い対比になっている。
二つ目はギターの表情豊かさ。基本黒く塗りつぶす様な重たいリフで突っ走るのだが、たまに短くもバラエティに富んだリフやソロパートが飛び出して来て、曲を豊かなもにしている。バックが黙ってボーカルがそろになる静のパートなどでは、フィードバックノイズも効果的に用いている。
三つ目は2つ目の要素もあるのだけど、曲がメロディックなこと。といってもボーカルは奉公しまくりなので、クリーンパートを導入したりはしていない。ギターが歌うようにメロディアスな旋律を奏でるのと、曲全体に強靭ながらも哀愁のあるメロディラインがあってその二つの要素が相まって独特の詩情を醸し出す事に成功している。この飾らないメロディアスさがクラストコアのアングラな荒々しさと見事に調和していて大変格好いい。
イントロに哀愁のあるアコギを入れてくる、そこから突っ走るのような展開はもはやあざといくらいだが、全体的にハードコアの飾らない誠実さがあって、そこがかっこい。起こっているもののやはり邪悪ではないんだよね。
非常にカッコいいっす。2ndアルバムも是非欲しいんだけど3LAでは売り切れているし、デジタル音源も売っていないようだ。残念。
みつけたら買っておくくらいの気持ちで御願いします。
2007年にCrime Against Humanity Recordsからリリースされた。
Wolfebrigadeというバンドのメンバーによって結成されたらしいのだが、前身のバンドもこのバンドも詳細はよくわからない。このアルバムを作った時はメンバーは4人。この後2ndアルバムを2008年に、さらに2009年に音源を出して以来しばらく音沙汰がないようだ。オフィシャルサイトも確認できず。活動休止中なのかも。3LAレコードのラスイチお知らせで視聴したら良かったので買ってみた。
ジャンルとしてはクラストになるのだと思う。Last.fmだとネオクラストのタグも付けられている。ただしメタリックなハードコアという感じでブラッケンド感はあまり感じられず。後述するがボーカル(の片方)くらいかな。かなり男臭く熱い感じ。
曲は2分台がほとんど。速さは底までではない感じ。いわゆるD-Beatのズッタズッタした速さと重厚感のあるドラムに、かなり硬質なベースが乗っかり(ベースはボーカルも兼任)、これまた硬質でギラっとした質感のあるメタリックな重いギターが乗っかる(ギター2人で片方がボーカルをとる)スタイル。今でこそConvergeのKurt Ballouだったりの活躍で隆盛を見せているメタリックな質感を持つハードコアバンドが増えて来たけど、こちらは流行以前から一戦で活動して来たいぶし銀な雰囲気を持つバンド。決して派手ではないのだけど、どっしりとしたかっこよさがある。
一つ目はボーカル。これはかなりドスが利いている男らしい声なんだけど、やっぱりメタル系譜のデス声とは明らかに一線を画す。やはりハードコアを感じさせる。ただ激情のような内省的な雰囲気は無くて、外に向けてフラストレーションをまき散らすタイプ。これは熱い。たまに出てくるもう一人の声は若干ブラックメタルを感じさせるわめき声タイプでこれが良い対比になっている。
二つ目はギターの表情豊かさ。基本黒く塗りつぶす様な重たいリフで突っ走るのだが、たまに短くもバラエティに富んだリフやソロパートが飛び出して来て、曲を豊かなもにしている。バックが黙ってボーカルがそろになる静のパートなどでは、フィードバックノイズも効果的に用いている。
三つ目は2つ目の要素もあるのだけど、曲がメロディックなこと。といってもボーカルは奉公しまくりなので、クリーンパートを導入したりはしていない。ギターが歌うようにメロディアスな旋律を奏でるのと、曲全体に強靭ながらも哀愁のあるメロディラインがあってその二つの要素が相まって独特の詩情を醸し出す事に成功している。この飾らないメロディアスさがクラストコアのアングラな荒々しさと見事に調和していて大変格好いい。
イントロに哀愁のあるアコギを入れてくる、そこから突っ走るのような展開はもはやあざといくらいだが、全体的にハードコアの飾らない誠実さがあって、そこがかっこい。起こっているもののやはり邪悪ではないんだよね。
非常にカッコいいっす。2ndアルバムも是非欲しいんだけど3LAでは売り切れているし、デジタル音源も売っていないようだ。残念。
みつけたら買っておくくらいの気持ちで御願いします。
2015年5月10日日曜日
Khmer/Nubes que anuncian tormenta
スペインはマドリードのネオクラストバンドのEP。
2014年にHalo of Flies Records、Tupatutupa、KTC Domestic Productions、Long Legs Long Armsという複数のレーベルから共同でリリースされた。
私が購入したのは日本のLong Legs Long ArmsからリリースされたLPフォーマットのもので、LP自体は茶色に黒のスプラッターが施されたもの。DLクーポンの他にポスターとスペイン語の歌詞とその英訳とさらに和訳がついている。(3LAの並々ならぬ思い入れが感じられる。Khmer結成当時からのレーベルの熱いサポート体制については是非3LAをご覧ください。)
Khmerは4人組のバンドでスペインの伝説的なネオクラストバンドIctus、それから同国でメロデスバンドをやっていたメンバーによって結成されたとの事。結成自体は2012年でいままでにデモとスプリットを1枚ずつリリースしているようだ。
全10曲でEPとはいかにという感じだが、新録音の音源は前半5曲で、後半5曲は前述のデモ音源の再録ということ。当然というかデモはすでに品切れ状態なので嬉しい再録。
タイトル「nubes que anuncian tormenta」はGoogleにぶち込むと「嵐の雲が発表します」。むむむ。ポスターをみると「風雲宣嵐」と書いてある。ジャケットは海の上に付きが浮かぶ荒涼としながらも美しいものだが、付きの周りでは雲が渦巻いている。なるほど。
中身の音の方も嵐の様な出来になっている。ネオクラストということで身構えていたのだが、実際聴いてみると音楽的な区分としてはKhmerはブラッケンドハードコアにとても近いようだ。ブラッケンドハードコアというとその名の通りブラックメタル成分を飲み込んだハードコアで昨今わりと隆盛を見せているジャンルではなかろうか。ただ例えば以前紹介したYoung and in the Wayなんかもこのジャンルだが、それに比べると一線を画す。まずもっとハードコア感が強い。もっというとクラスト感か。クラストは殻とかかさぶたとか言う意味でここで言うクラスト感は身も蓋もない言い方だが粗い感じである。洗練された今風の音というよりはより生々しい音といったらよいだろうか。音質が悪い訳ではなくて、派手な音色や調整でごまかす様なところは感じられない。
のどから絞り出すようにギャアギャアわめくボーカルはなどるほど確かに多分にブラックメタル的である。またトレモロを多用したギターもブラックメタル的ではある。ギュラギュラしたギターリフはメタリックだがメロディアスで嵐のように刻むリフから爆速でトレモロになだれ込むさまがたまらなくカッコいい。ドラムは手数が多くて気持ちよい。デモと最新曲だとスネアの音が結構違う。デモのよりポコポコした音も個人的には気持ちよくて好き。
面白いのはそれらが組み合わさるとブラックメタルの影響は隠しきれなくもありつつ、完全にハードコア然としている。思うに決して明るい楽曲ではないしストイックではあるけど全体的にブラックメタルのイーヴィルさが無い事。音がカラリとしているところがその秘訣ではと。コールドというよりは激情的な熱さがうねっている印象。
さてネオクラストなのでクラストである。ハードコアですよということで勿論音楽を聴いて楽しいのは良いのだが、当然バンドの主義主張というのがどうしても気になってくるもの。そこで嬉しいのが歌詞対訳である。読んでみると特定のだれそれを名指しでどうこうという歌詞からは明確に異なる雰囲気が感じ取れる。それはシンプルな詩情に富んだ極めてストイックなもので、安直な「おまえ」みたいな要素はあまり無い。「俺」を通して個のあり方を問うてくるような男臭いスタイルでまさにハードコアな世界観。
早々に予約完売ってことで(出遅れた私はユニオンで買ったっす。)この界隈では有名な音源なので聴いている人は多いかもですがまだでしたらどうぞ。私もようやっとという感じでネオクラストに足を踏み入れたんだが、中々どうして楽しいジャンルの予感。
2014年にHalo of Flies Records、Tupatutupa、KTC Domestic Productions、Long Legs Long Armsという複数のレーベルから共同でリリースされた。
私が購入したのは日本のLong Legs Long ArmsからリリースされたLPフォーマットのもので、LP自体は茶色に黒のスプラッターが施されたもの。DLクーポンの他にポスターとスペイン語の歌詞とその英訳とさらに和訳がついている。(3LAの並々ならぬ思い入れが感じられる。Khmer結成当時からのレーベルの熱いサポート体制については是非3LAをご覧ください。)
Khmerは4人組のバンドでスペインの伝説的なネオクラストバンドIctus、それから同国でメロデスバンドをやっていたメンバーによって結成されたとの事。結成自体は2012年でいままでにデモとスプリットを1枚ずつリリースしているようだ。
全10曲でEPとはいかにという感じだが、新録音の音源は前半5曲で、後半5曲は前述のデモ音源の再録ということ。当然というかデモはすでに品切れ状態なので嬉しい再録。
タイトル「nubes que anuncian tormenta」はGoogleにぶち込むと「嵐の雲が発表します」。むむむ。ポスターをみると「風雲宣嵐」と書いてある。ジャケットは海の上に付きが浮かぶ荒涼としながらも美しいものだが、付きの周りでは雲が渦巻いている。なるほど。
中身の音の方も嵐の様な出来になっている。ネオクラストということで身構えていたのだが、実際聴いてみると音楽的な区分としてはKhmerはブラッケンドハードコアにとても近いようだ。ブラッケンドハードコアというとその名の通りブラックメタル成分を飲み込んだハードコアで昨今わりと隆盛を見せているジャンルではなかろうか。ただ例えば以前紹介したYoung and in the Wayなんかもこのジャンルだが、それに比べると一線を画す。まずもっとハードコア感が強い。もっというとクラスト感か。クラストは殻とかかさぶたとか言う意味でここで言うクラスト感は身も蓋もない言い方だが粗い感じである。洗練された今風の音というよりはより生々しい音といったらよいだろうか。音質が悪い訳ではなくて、派手な音色や調整でごまかす様なところは感じられない。
のどから絞り出すようにギャアギャアわめくボーカルはなどるほど確かに多分にブラックメタル的である。またトレモロを多用したギターもブラックメタル的ではある。ギュラギュラしたギターリフはメタリックだがメロディアスで嵐のように刻むリフから爆速でトレモロになだれ込むさまがたまらなくカッコいい。ドラムは手数が多くて気持ちよい。デモと最新曲だとスネアの音が結構違う。デモのよりポコポコした音も個人的には気持ちよくて好き。
面白いのはそれらが組み合わさるとブラックメタルの影響は隠しきれなくもありつつ、完全にハードコア然としている。思うに決して明るい楽曲ではないしストイックではあるけど全体的にブラックメタルのイーヴィルさが無い事。音がカラリとしているところがその秘訣ではと。コールドというよりは激情的な熱さがうねっている印象。
さてネオクラストなのでクラストである。ハードコアですよということで勿論音楽を聴いて楽しいのは良いのだが、当然バンドの主義主張というのがどうしても気になってくるもの。そこで嬉しいのが歌詞対訳である。読んでみると特定のだれそれを名指しでどうこうという歌詞からは明確に異なる雰囲気が感じ取れる。それはシンプルな詩情に富んだ極めてストイックなもので、安直な「おまえ」みたいな要素はあまり無い。「俺」を通して個のあり方を問うてくるような男臭いスタイルでまさにハードコアな世界観。
早々に予約完売ってことで(出遅れた私はユニオンで買ったっす。)この界隈では有名な音源なので聴いている人は多いかもですがまだでしたらどうぞ。私もようやっとという感じでネオクラストに足を踏み入れたんだが、中々どうして楽しいジャンルの予感。
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