2016年5月8日日曜日

sekien/sekien

日本は兵庫県姫路市のハードコアバンドの1stアルバム。
2016年に日本のLongLegsLongArms Recordsからリリースされた。
2010年に結成された3人組のバンドで幾つかのデモをリリースして後の待望のフルアルバム。比較的新しいジャンルであろうネオクラストを日本から発信する数少ない(唯一かどうかはわからない)バンドで激烈な音とライブの凄まじさでもって界隈では割となの知れたバンドなのだと思う。バンド名はsekienで漢字で書くと赤煙ということで中々意味深である。血の通った狼煙たるべし、という気概の現れだろうか。
私は先日のKhmerの来日ライブで初めてその勇姿を見れたのだが(CDもそのとき購入)、話題になるのが頷けるほどの内容だった。

クラストというのは音楽の一カテゴリであるけど単に音楽性でもって語られることの出来ないジャンルであると思う。(ハードコアという一大ジャンルは特にその傾向が強く感じる。)その中のさらに細かいカテゴリであるネオクラストに関しても激情をさらに発展させたその先、ブラッケンドされた真っ黒いハードコアという曖昧な共通点はあるもののすべてのバンドがそうである訳でも無し(現在進行中のジャンルということもあるだろうし)、その音は出すバンドによって様々。
このバンドsekienに関してはハードコアの荒々しさがその成分の大半を締めていてブラック感はあまり感じられない。哀愁のメロディで激走するギターはトレモロ感はあるものの冷たいブラックというよりは熱気で加速して暴走している様があって、やはりもっとハードコア(激情)っぽい。捨て鉢のする短いギターソロもパンクっぽさを感じさせる。
ボーカルは掠れまくった低音で唸る様な咆哮でかなり独特。歌詞は日本語でブックレットのようにガリガリ削って彫り込まれた様な勢いでもって突き刺さる。
曲はほぼ2分台だが結構ボーカルが入っていないパートがふんだんにとられていて、ここがまたすごいカッコいい。疾走パートではとにかく前述のギターがメロいわけだし、速度の遅いパートだとベースのガツンとくる衝撃がカッコいい。タメのある間奏パートでは暴れられるし。かなりメリハリが利いている。6曲目「開花」は完全にインストナンバーでここにこのバンドの激情さが一つの形として結実していて自分はもの凄い好きですね。多分このアルバムで一番キャッチーなナンバーではなかろうか。無骨な音楽性の内面が非常に上手く表現されていると思う。
ライブを見て特に思ったのはその媚びなさ。キャッチーなメロディがある訳でもないし、音も荒々しくまさにrawなもの。タトゥーだらけのメンバーは厳つく、MCもほとんどしない。同じステージに経った同じジャンルのKhmerは苛烈な音楽性に反して終始和やかなライブだったのだが、一方のsekienの立ち居振る舞いは無愛想・無骨を通り越して観客を殺しにかかってくる様な殺伐としたもの。その過激で攻撃的なアティチュードはCDの音にも閉じ込められている。なんというかこうしちゃいられない!という感じの焦燥感、突っ走らずにはいられない闇雲さ、そんな感情がネオクラストの音楽に結晶化している。攻撃的であるが、多分に内省的でまっちょいハードコアなんかとは明らかに一線を画す。

拍手でというよりは振り上げた拳で迎え入れられるハードコアだと思う。殺気と熱気を感じたい人は是非どうぞ。非常にオススメ。

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