2016年5月15日日曜日

Dälek/Asphalt for Eden

アメリカはニュージャージー州ユニオンシティのエクスペリメンタルヒップホップユニットの7thアルバム。
2016年にProfound Lore Recordsからリリースされた。一風変わっているメタルを聴いている人ならお?とくるレーベルである。Proufound Loreといったらブラックだったりデスだったりとマニアックなカテゴリの中のさらに尖ったバンドの音源を多数リリースするレーベルだからだ。ヒップホップといってもやはりかなり特徴的な音を出すに違いないだろうな、と思って気になり視聴してかっこ良かったのでデジタル版を購入。因に調べてみると以前のアルバムは”あの”マイク・パットンの運営するIpecacからリリースしていたみたいでなるほどな〜という感じである。

Dälekの作品を聴くのはこれが初めて。結成は1998年で一回の解散を経ての地裁結成して活動しているようだ。何回かメンバーチェンジはあったようだがMCを勤めるMC Dälekは結成当時からオリジナルメンバーのようだ。
その音楽性は独特でなんとたびたびMy Bloody Valentineを引き合いに出して説明される。ヒップホップがなんたるかを語れるほど詳しくないのだが、ことヒップホップという音楽ジャンルとなるとサンプリング文化に根付いた、比較的音の少ないトラックの上に執拗に韻を踏んでいくラップをのせていくもの、ということになるだろうか。
Dälekの場合も韻を踏んでいくラップは確かに伝統的なヒップホップの手法に乗っ取っている。しかしその背後でなるトラックがかなり独特である。サンプリングという手法がとられているかどうかは不明なのだが(多分違うんじゃないかなと思うんだが、どうだろうか)、ヒップホップに特有の歯切れの良い音のぶった切り(パーカッシブな音野津買い方)では全く構成されておらず、概してもっと浮遊感のある、かなりの厚みがある、そして途切れのない音が多く使われている。なるほどギターの轟音を壁のようにそそり立たせるMy Bloody Valentineが引き合いに出されるのもわかる音作りである。さすがにロックミュージックほどのラウドさはないものの、明らかにちまたのヒップホップと一線を画すその音は、ドリーミィであり、また暗く内省的だ。ただし、ヒップホップの肝であるリズミカルな要素は一切オミットされておらず、カッチリとしたドラムが刻みだすビート、そこにのる太く中音が強調された声で滑るように紡がれるラップが乗る。そうすると変幻自在にその形を刻一刻と変えていくノイジーなトラックが、寄せ手は返す波の様な効果を持って聞き手はゆったりと深く誘われるように深海に沈み込んでいく。この気持ちよさはなるほど、シューゲイザー的であり、かつそれらを使う一般的なロックバンドが生み出す音風景はまた異なったものだ。

シューゲイザーというとどうしてもロック的な音像を思い浮かべてしまうし、結果的にロックにアプローチしたミクスチャーの要素のあるヒップホップというのがなんとなくの先入観だったのだが、果たして実際聴いてみると完全にシューゲイザーなヒップホップであり、全く持って嬉しい期待への裏切りだった。なるほど今となっては色々な形のヒップホップが世にあふれている訳だが、その中でもこのDälekは相当変わった音を出しているように思う。似た音というのは知らないし、なんせ98年から活動しているのだから。
内省的で物語性に富んだヒップホップというと日本の降神を思い浮かべてしまうが、あれとは全く違った音で底のところも面白い。
不穏さ、というあまりヒップホップでは表現されない感情に深く切り込んだ内容で大変カッコいい。是非どうぞのオススメアルバムです。

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