品性のなさというのが魅力になることもある。
そこでは暴力的であればあるほどよく、下品であればあるほど崇められる。たとえそれがハイプであっても。詰まりはそういった物語が退屈した(ある程度)金のある人達にとっては娯楽になりうるのである。
老人たちがロックを、手垢のついたX0年代をリバイバルしたり、あるいは同窓会的に再結成したりしてこねくり回している間に、ヒップホップはその歴史のなさ(短さ)を活かして進歩し続けているように思う。私は老人の一人としてイマイチ乗り切れずにいたのだ。若いラッパーは全身を入れ墨だらけにしてスキャンダルの数だけ札束を積み上げている。なかにはロックの代名詞である「ダイ・ヤング」を体現して死んでいったものもいる。しかしトラップの流れをくむそれらは私にはあまりピンとこず、どうもまったりしてしまう。中にはオルタナティブ・ロックをラップで再現しているかのような音楽もあり、それはそれで面白いのだが、ヒップホップのリズムが激しくオミットされているためやはり老年の鼓膜を叩くことはなかった。
City MorgueはNYのヒップホップユニットだ。ベイショア出身のZilaKamiとハーレム出身のSousMulaの二人に加えてトラックメイカーのThraxxで構成されている。ユニット名で検索すればおおよそ彼らの人となりがわかるだろう。タトゥーに覆われた表皮にグリルの入った歯茎。ハイブランドに身を包み、手には銃器を持っている。ピストルからグレネードランチャーのようなものまで。要するにおつむの空っぽのギャングスタが金を手にした、そんなある意味もはや陳腐なストリートの物語を体現したような若者である。
こいつらはしかし面白いヒップホップをやっている。かつてはギャングスタでも真面目にレコードの山を掘り返しては曲をサンプリングという手法で発明したものである。元ネタはジャズからR&B、カントリー、そして音楽的な語彙をもつディガーは際限なくその裾野を広げていった。City Morgueに比べれば大変上品かつ交渉に聞こえるから不思議だ。(ただし彼らの何割かは本当のギャングスタでもあった。)
一方City Morgueにはそんなお上品さはなく、ディストーションのかかったギターを派手にサンプリングし、逸脱したノイジーなトラックを量産している。イントロのフレーズに犬が吠えるようなスクラッチ音、露悪的な笑い声のサンプリングというマンネリズムを大胆にアルバムの中で何度も披露しているのはネタの使い回しというよりは単に好きだから、という理由なのではないか。曲名から察するにスラング、スケート、ビデオゲームなんでもござれのごった煮。
ところがこれが非常に格好良い。なるほどブーンバップのあくまでも洗練された美学は皆無だろうが、かといってひたすら雰囲気重視のトラップとは明らかに違う。うるさすぎるし、やはりなんと行っても品がない。強いて言えば90年代後半に隆盛を極めたニューメタルのごった煮感、(シーンのごく一部の)ポリシーのない享楽的な雰囲気を体現したかのような往時のミクスチャー感がある。ちょうどその次代をすり抜けた私の耳にはだからこそ刺さったのかもしれない。
でかいケツのお姉ちゃん(私からしたらだいぶ年下だろうけど)、輝くグリル、ぶっといネックレス、跳ねるローライダー、札束、山なす重火器、薬物といった伝統を抑えつつ、クラストっぽいパンツ(ズボン)が出てきたりして面白い。
音楽とファッション(ここでは服装)は切っても切れない関係だが、若いヒップホップ・ミュージシャンは格好が奇抜かつゴージャスでおっさんからするとフィクション(コスプレ)めいた感じがあり、その原色を散りばめたような露骨な派手さ(いうまでもなく成功の証、という意味では極めてストリート上がりのヒップホップ的)が面白く映る。存在そのものが饒舌である。彼らが本物のギャングスタなのかハイプ(あるいはヒップスター)なのかはしらないし、どちらでも良い。彼らが誇らしげに掲げる銃も決して誰かに向かって撃たれることがないと良いと思う。(彼らがSNSにその類の写真を上げるというだけで有害だとは思うが。)私は老人なので。ただ音楽を聞いて良いと思うから良いのである。
2018年12月24日月曜日
2018年11月11日日曜日
BROCKHAMPTON/Iridescence
アメリカ合衆国はテキサス州サンマルコスで結成され今はカリフォルニアを拠点とするヒップホップ集団の4thアルバム。
2018年に自主レーベルとRCAからリリースされた。
BROCKHAMPTONは2015年にKevin Abstract(若干22歳)が中心になり、ウェブ上のフォーラムでメンバーを募集する形で結成された。メンバーは10人以上。自らをしてボーイ・バンドと称しており、また全ての制作物やライブをDIYでやっているそうだ。
2017年に「Saturation」シリーズをアルバム3枚分リリースしている。個人的には「SaturationⅡ」がとても好きだ。そんなわけで新作を購入した。
ヒップホップといえば集団である。横のつながりといっても良い。客演も多い。Wu-Tang Clanは文字通り一門である。そんな中でも10人を超える集団というのは珍しいのかもしれない。(私がしれないだけも。)この数の多さを武器にマイクリレーしまくる。性別や人種を超えてとにかくいろいろな声が入り乱れ、また曲もそんな個性を生かせるように非常に多彩でそこが面白いのだ。
ジャズなどの元ネタをサンプリングしてそれをループさせる。全身これビートといった隠しようもなく、と言うよりはラッパーにとっては隠れようもない赤裸々なその上にラップを乗っける。バースがあってフックが来る。そんな形ですら、もはやBROCKHAMPTONは置いていっているくらい意識しない。矢継ぎ早に言いたいことを乗って来る。トラックがしっくり来なければ曲の途中でも大胆に雰囲気を変える。逆にただただ奇をてらっているわけでもなく、とにかくメロディアスなサビを乗っけるわけでもない。これはしっくり来る、と言うマインドで作っているように感じられ、その自由さがこちらにも心地が良いのだ。ゆったりとした曲、張り詰めた曲。ヒップホップ強めの曲、R&Bをおもわせる歌声が印象的な曲。この最新アルバムではギターの音も大胆に使われているし、その他の楽器もよく使われている。どうやら製作陣もかなりメンバーの層が厚いようで、数の多さがそのまま楽曲の豊かさに繋がっているのではないか、と思う。このごった煮感はまさに人種のるつぼアメリカなんでは?と思う。だったら異なる人たちが集まって一つの音楽を作ると言うのは素晴らしいことだ。
個人的には露骨に導入されるテクノパートみたいなのが好きで、このアルバムだと「WEIGHT」は素晴らしい。ビープ音が不穏な「DISTRICT」も無理やりかぶさる歌が良いし、女性の声が金属のように艶かしい。
若いだけあって今の時代をしっかり捉えていると思う。一つは極力(新作はソニー系のレーベルと契約しているようだ)中間業者を挟まない、作り手⇄市場(客)の関係を構築していること。売上と分配の問題と言うよりは速さと質の保っているように私には思える。それから次々ラッパー/シンガーが入れ替わると言う曲の構成も、たった5秒の広告が物を言う「気に入らなければ次へ」の精神が大きく反映されているように思う。つまり初っ端でぐっとつかんでくるわかりやすさがある。非常にキャッチーな作りをしている。
ブログを見ていただければわかるが私はヒップホップには(別に他のジャンルにも詳しいと言うことではないんだけど)詳しくないので、よくよくヒップホップを聴いているフリークの人たちがこの新しい集団をどう考えているのかと言うのが知りたいところだ。ひょっとして苦い顔で見ているのだろうか。そんなことがあってもそれはそれで痛快で面白いね。
2018年に自主レーベルとRCAからリリースされた。
BROCKHAMPTONは2015年にKevin Abstract(若干22歳)が中心になり、ウェブ上のフォーラムでメンバーを募集する形で結成された。メンバーは10人以上。自らをしてボーイ・バンドと称しており、また全ての制作物やライブをDIYでやっているそうだ。
2017年に「Saturation」シリーズをアルバム3枚分リリースしている。個人的には「SaturationⅡ」がとても好きだ。そんなわけで新作を購入した。
ヒップホップといえば集団である。横のつながりといっても良い。客演も多い。Wu-Tang Clanは文字通り一門である。そんな中でも10人を超える集団というのは珍しいのかもしれない。(私がしれないだけも。)この数の多さを武器にマイクリレーしまくる。性別や人種を超えてとにかくいろいろな声が入り乱れ、また曲もそんな個性を生かせるように非常に多彩でそこが面白いのだ。
ジャズなどの元ネタをサンプリングしてそれをループさせる。全身これビートといった隠しようもなく、と言うよりはラッパーにとっては隠れようもない赤裸々なその上にラップを乗っける。バースがあってフックが来る。そんな形ですら、もはやBROCKHAMPTONは置いていっているくらい意識しない。矢継ぎ早に言いたいことを乗って来る。トラックがしっくり来なければ曲の途中でも大胆に雰囲気を変える。逆にただただ奇をてらっているわけでもなく、とにかくメロディアスなサビを乗っけるわけでもない。これはしっくり来る、と言うマインドで作っているように感じられ、その自由さがこちらにも心地が良いのだ。ゆったりとした曲、張り詰めた曲。ヒップホップ強めの曲、R&Bをおもわせる歌声が印象的な曲。この最新アルバムではギターの音も大胆に使われているし、その他の楽器もよく使われている。どうやら製作陣もかなりメンバーの層が厚いようで、数の多さがそのまま楽曲の豊かさに繋がっているのではないか、と思う。このごった煮感はまさに人種のるつぼアメリカなんでは?と思う。だったら異なる人たちが集まって一つの音楽を作ると言うのは素晴らしいことだ。
個人的には露骨に導入されるテクノパートみたいなのが好きで、このアルバムだと「WEIGHT」は素晴らしい。ビープ音が不穏な「DISTRICT」も無理やりかぶさる歌が良いし、女性の声が金属のように艶かしい。
若いだけあって今の時代をしっかり捉えていると思う。一つは極力(新作はソニー系のレーベルと契約しているようだ)中間業者を挟まない、作り手⇄市場(客)の関係を構築していること。売上と分配の問題と言うよりは速さと質の保っているように私には思える。それから次々ラッパー/シンガーが入れ替わると言う曲の構成も、たった5秒の広告が物を言う「気に入らなければ次へ」の精神が大きく反映されているように思う。つまり初っ端でぐっとつかんでくるわかりやすさがある。非常にキャッチーな作りをしている。
ブログを見ていただければわかるが私はヒップホップには(別に他のジャンルにも詳しいと言うことではないんだけど)詳しくないので、よくよくヒップホップを聴いているフリークの人たちがこの新しい集団をどう考えているのかと言うのが知りたいところだ。ひょっとして苦い顔で見ているのだろうか。そんなことがあってもそれはそれで痛快で面白いね。
ラベル:
BROCKHAMPTON,
アメリカ,
ヒップホップ,
音楽
2018年10月20日土曜日
志人・玉兎/映世観-うつせみ-
日本は東京を拠点に活動する?(まだ高田馬場にアジトがあるのだろうか)ラッパー/詩人のアルバム。
2018年にTemple ATSからリリースされた。
近年色々なアーティストとのコラボレーション作がリリースされていたが、今作は久しぶりの単独作品。志人はヒップホップデュオの降神のメンバー。確か高校生の頃にタワレコでアルバムを買ったっけ。当時はニューメタルばっかり聴いていて、友達に貸してもらった2Pacもピンとこなかったんだけど、降神のアルバムは両方よく聴いていた。MSCのメンバーが客演として参加していた1stから独自の世界観を打ち出していたが、2ndでそれが開花。完全に他に類を見ない存在感を示していたように思う。
2nd以降はラッパー二人は各々作品を発表しだした。(ライブはやっていたと思う。行った事ないのだけれど。)ソロ1作目その名も「メルヘントリップス」から幻想的なヒップホップを打ち出していったなのるなもない。対して志人は「Heaven's恋文」であまりリフレインがない、浮遊感はあるがあくまでも生活に根ざした感じのあるヒップホップを展開していた。二人とも俺対何か、というヒップホップ(やその他の若者が支持する)文化から一歩以上は脱却しているところ、またアンビエントな楽曲という意味では共通していたが、各々異なった世界があり面白い。
志人作品は熱心に追いかけているわけではないので聞くのはDJ Dolbeeとの共作「杣道EP」以来だろうか。相変わらずブレてない。アンビエントで浮遊感すらあるトラックの上にわかりやすいリフレインを排した独特のリリックが乗る。これはまさしく詩であり、tだし詩にしてはやけに具体的であり同時に現実からある程度遊離している。(なので具体的表現であっても詩なのだ。)例えばこうだ。隣に住んでいる顔だけ知っている人が失踪した。業を煮やした大家はその人物の部屋の荷物を撤去。あなたは乱雑に投げ捨てられたその男のノートをなんとなく手に取った。そんな感じだ。志人の書く詩は物語的だ。それゆえ長く、そして始まりから終わりを目指して続いていく。(多くの歌詞は繰り返す形態をとっている。)韻をふむという縛りを逆に応用したような飛躍した言葉の羅列は美しく、幻想的であるが、なのるなもないとは異なり、やはり志人の根底には現実世界の生活がある。そこから始まり、思考は広がり空想となりながらも足は現実の地についているのだ。だから彼の詩は土っぽく、暖かい。まるでブルースだ。
ヒップホップでこれを再現となると難しいのだろうけど、志人とOntodaはじめとするアーティストたちはことも無げにやってのけている。あまりにスムーズなので本当違和感がない。しかし明確に上物は確かに浮遊感のあるアンビエントでも、ビートはしっかりヒップホップだ。(ただし明確に低音を強調することはしない。)この温度差がよくよく彼の書く物語/詩にあっている。志人のラップは抑揚をつけて勢いで進んでいくタイプではなく、ポエトリーリーディングの趣もあって淡々としかし決して遅くはないスピード(これかなりよく口が回ると思うくらい)で流れるように続いていく。こうなると俄然ビートが、その決してわかりやすくないラップの背中を押していて、こちらとしてはビートに乗って詩が頭に入ってくる。拡散していく前衛性というよりは、実はかなりかっちりとした音楽だ。「線香花火-Short Liverd-」などはかすかなメロディのイントロをそのままずっと引きずっていく曲で、このテーマが全体を支配している。メロディの欠如というヒップホップの特性(当然弱点ではない)をかなり大胆に補填している。直線的なリリックを円環に閉じ込めたみたいな、ここでもそう言った二重構造があるように思う。
バックトラックのアンビエンスもあって息遣いすら聞こえてきそうなラップ。ビートを手に入れて非常にエネルギッシュだ。表面を撫でて優しい音楽なんて言ってはいけない。なるほど音はうるさくはないが、かと言ってエネルギーがないなんてことにはならない。むしろ生々しい呼吸がそのままパッケージされているかのようだ。「Heaven's恋文」には「交差点の動力」という曲があったかと思うが、今回もそんな生々しい生活の音がその背後にある喜怒哀楽をよくよく表現している。一体この偶然出会った不思議なノートが日記なのか、想像の世界なのかは判別がつかない。とても好きだ。
2017年12月3日日曜日
FAIRLYSOCIALPRESS presents [BOYS DON`T CRY 5]@初台WALL
たまにあることだけど12月2日(土)のライブイベントのかぶり方と行ったら豪華という水準を高く通り越し、もはや残酷だった。スケートパークで轟音に浸るというのも一興だし、killieの凄まじいライブをもう一度みたいというのもある。しかし自分は何回かライブを見たSaigan Terrorというバンドがよく消化できなかったのでその音源欲しさに初台に行くことにした。この日はSaigan TerrorとFight It Outのスプリット7インチのレコ発なのだ。日本のヒップホップのアーティストも名を連ねているので、ヒップホップのライブも見てみたいな、という気持ちもあったので。
ライブハウスにつくとすでにもうかなりの客が入っていてかなりキュウキュウだった。WALLは入り口に「〇〇(多分バンドなのだろう)の☓☓とヴィジュアル系出入り禁止」みたいな張り紙がしてあり、私はどうみてもヴィジュアル系ではないがなんというかハードコアな雰囲気がしてちょっと怖いと思う。(実際怖めの人が多かったし、私のようなオタクっぽい人がいなくてさらに怖いというのがあります。)
ステージの前が不気味に人がいなくて不穏であり、これを見るとハードコアのライブに来てしまった…という感じがする。
Super Structure
一発目はSuper Structure。私は何回か見ているけど見るたびに好きになる、このバンドに関しては。この日もかなりとんがった音を出していた。後のFriendship、Fight It Outはとにかくパワーと音量がでかい。Super Structureも音はでかいのだが曲の方はもっとカオティックだ。別にプログレッシヴだ、カオティック・ハードコアだというのではないが、もっと混沌としている。変な言い方だがどの楽器もフルスピードで鳴らしまくった音が重なると奇跡的に曲に聞こえる、みたいな雰囲気がある。この日共演するバンドと比べると音はもっとざらつき、音の数は多い。パワーバイオレンスといっても流行とは一線を画す内容でもっとラフだ。例えば地獄のようなスラッジパートがあるわけでもない。甲高い、と評しても良いボーカルが激しく細かく忙しないバンドアンサンブルにさらにカオス感を注入している。バンド名は(あとから知ったのだけど)USのニュースクール・ハードコアバンドFall Silentの2ndアルバムからとっていることもあり、ルーツとなっているのがそういった音楽なので、パワーバイオレンスたろうとするパワーバイオレンスバンドとは明確に違う音に仕上がっているのではなかろうか。まさしく鉄砲玉、それも恐ろしく命中率が悪く乱射しまくるような凶悪なバンドで、ラストにやった「Despair」(だと思う。唯一気軽に聴けるこのバンドの音源でもある。)には中盤にギターの高音を響かせる地獄のようなモッシュパートがある。非常に格好いいのだ。私がお金持ちだったら最高の環境で音源を録音してもらうのにな、といつも思う。(音源出してほしいです。)
Friendship
続いてはFriendship。今年アルバムが出てからはみたっけな?結構見る回数が多いのは色んなイベントに招かれているからだろう。全くフレンドリーではないが、普通の意味とは違うキャッチーさがあって、それがわかりやすく”ハードコア”なので少しジャンルをまたぐようなイベントに引っ張りだこになるのかな、と思う。
Super Structureの直後ということもあって両者の違いが明確になる。こちらも非常にやかましいが音の数はぐっと減る。数というか密度だろうか。とにかくキチンと音を抜くことで重苦しいのに閉塞感から適度に脱しており、過密のコントロールが上手いのか、その結果ある意味ハードコアの枠組みだけ残したみたいな音楽になるのだが、それが非常に頑強で非常に暴れられる。初めてFriendshipを見た人でも絶対すぐに「のれ」ると思う。相変わらず一切MCはなく、ボーカルはほぼフロアに降りて歌う。毎回すごいと思うのは一切一体感は演出しない。シンガロングパートはもちろんないし、フロアに降りるボーカルも急に回りの客に向けてタックルを仕掛けてくる。みんなで楽しくモッシュ!って感じでもない。曲もそうだし、こういった姿勢の作り方というのも非常によく考えられている。「策士だね〜」というのではなくて、茨の道を我が物顔で進むな〜という感心の気持ちのほうが勝ってきた。若手、というのだけでなく、例えば私のような門外漢にとってのハードコアのゲートウェイになっていてそういった意味でもすごいバンドだ。
CENJU from DMC
続いては日本は東京のラッパー。実はヒップホップのライブを見るのは初めてかな?結構楽しみにしていた。CENJUはがっしりとした高身長と体躯に恵まれた大男でかなり迫力がある。低音のラップパートを同期させてそこにラップを被せていくように進む。これは合唱で言う下のパートってことだろうか。ヒップホップのライブは(他のラッパーは違うかもだけど)こうなんだな!と面白かった。強面なのは外見だけでなく、かなりハードな内容を噛み砕いた言葉でリリックにしたためるアーティストらしく、(ストリートのなんたるかを知らない私が言うのもちょっとおかしいのだけど)”ストリート感”のあるラップを披露する。つまりリアルでアンダーグラウンドな世界観である。悪いのだ。音の洪水を通り越し、もはや壁(WALLというライブハウスの名前は非常に格好いいと思う。)になっているハードコアとは全然ちがう音の数だ。とにかくシンプルに限界まで削ぎ落としたトラックが鋭い。そして鋭いだけでなく、煙たい、ダルいを表現する。これが良い。よくヒップホップのラップでは「スキル」という言葉が浮き彫りになるが、一人でステージに立つ(そうでない場合も多いが基本的にラップをするときは一人だ。)ラッパーは露骨にその出来にごまかしが効かない。タフな役回りだ。(それ故かっこいい。)CENJUは韻を踏みつつ結構フリーに煽ってくるタイプで客席を大いに沸かせていた。見た目に反して声は少し甘い感じがあるのが個人的には良かった。
Fight It Out
危ないことになるから後ろに下がったんだけど結局ダメでした…。
続いては横浜シティのパワーバイオレンスバンドFight it Out。この日の主役の片方でもある。バイオレンスを音にしたらこうなりました、というバンドで今年発売された3rdアルバムは私のようなオタクも聞いていると何か自分が強くなったように錯覚するようなブルータルなアルバムだった。ライブはモッシュ天国(普通の基準で考えればなぜ金を払ってそんなことを?と思わずにはいられない地獄)になるのは何回か見てことがあるので私は後ろに下がった 。WALLは後ろに長いライブハウスなのだが結果から言うとこの長さを活かした縦長のピットができて、だいたいほぼほぼ安全地帯がなし。全員が当事者に。
音の作り方はFriendshipと似ているモダンで金属的で良い感じに音の数を落としたものだが、こちらはもうモッシュに特化していると言っても良いかもしれない音で、Friendshipのような黒いヴェールのようなものもない粗野な音像。激速と激遅(げきおそ)を行ったり来たりするくせに神経症的な痙攣という病的な感じではなく、暴力性の発露のような運動性が特徴。そういった意味では健康的なのだろうか。あっという間にフロアにヘイトが感染して凶悪なモッシュパートが出来上がる。ボーカルの人はほぼフロアにいたのはFriendshipと同様だが、こちらはシンプルながらシンガロングできるパートがあったりしてモッシュピットに一定の法則、というよりは一つの指向性があったように思えた。腕を振り回す人、足を振り回す人、タックルをかます人、マイクを取りに(一緒に歌おうとしてね)行く人、サーフする人(カオスなのであまり長く上に居続けられない)、もみくちゃで後ろの方にもピットの動きが人を通して伝わってくる。ライブと音源の違い、というの一つのテーマに対する回答を明確にFight It Outが示し、そしてライブ(ともするとライブのみ)がリアルである、というのもうべなるかな、という状況でした。
ILL-TEE
つづいてはILL-TEE。DJの他にもう一人ラッパー、多分MASS-HOLEという人かな?がステージに立つ三人体制。トラックの内外とわず自由にやるCENJUに比べるとこの二人のラッパーはかなりかっちりタイトにトラックにリリックをはめ込んでくる。小節頭に言葉の喋りだしが噛み合ってこれはこれで非常に格好いい。やはりリアルな感じのするリリックだったと思うけど(固くて低い声質もあってCENJUに比べるとやや聞き取りにくい場面もあった。)、もう少し言葉遊びと陰陽の陽にあたるようなリリックもあってヒップホップの楽しさ、というのがわかりやすくそして最大限に発表されるようなステージングだった。ある意味淡々と韻を踏んでいくスタイルではじめは聞き惚れるような感じなのだけど、トラックとのかみ合わせが非常に良くてどんどん気持ちよくなってくる。フックのようなものもあってわかりやすい。ハードコアという明確に違うフィールドで徐々にヒップホップの楽しさ、というのがじわじわ浸透してくるようなライブでやはりもう最終的にはかなり前の方は盛り上がっていた。トラックがシンプルでビートが強いので実は乗りやすい、というのはあると思う。真面目と言っていいほどしっかりしていて格好良かった。
Saigan Terror
続いては東京高円寺のハードコアバンドで結成は1997年(素晴らしいインタビューより)。クロスオーバー、つまりこの場合はハードコアに刻みまくるスラッシュ・メタルをかけ合わせた音楽で私は何回かライブを見たかな?格好いいんだけど言語化するのが難しいな(音源もいまでは廃盤状態なので。)と思っていた。本日はスプリット発売の主役で堂々のトリ。
改めてライブを見るとこんなに重かったっけ?となったブラストビートが冴えまくり、ブラストビートに乗って突っ走るさまはもはやTerrorizerでは!?と思うくらい凄まじかった。よくよく聴いてみるとなるほど確かにグラインドコアというには音が良い感じに抜けていて、より疾走感が強調されているけどそれでも軽薄ということはまったくない。ブラストビートにすべてを掛ける、という音楽性でもなく、シンプルな2ビートが土台を作りそこに凝ってはいるが決してスピード感を減じさせない”刻み”のスラッシュリフが乗る。この日ドラムとともにすごいなと思ったのはベースで、おそらくエフェクターを噛ませて幾つかの音をコントロールしているのだが、かなり硬質で刻みのリフと相対するようなガーンとアタックしたあとミュートしない弾き方が、硬い地面に金属が跳ね返るような強烈さで非常に格好良かった。この日前の3つのバンドは共通点があってそれはとにかく突っ走るときは突っ走る、ということだったが、Saigan Terrorは速度はあってもミュートを用いたリフにはつんのめるような独特の粘りのあるコシが生まれているところが明確に異なる。つまり何が言いたいかというと他のバンドにはない「グルーヴィ」さが生まれていた。これはとにかくピットに反映されていて、Fight It Outの殺伐としてたピットと比べると同じことをやってい人はいるのだけど、もう少し多様性があり、ステップを踏む人やそれこそ女性の人もいた。そして沢山の人が笑顔だったのが一番印象的だった。危なくないわけではないけど、それを圧倒的に上回る楽しさ。ギタリストの方のキャラクターやMCもそんな雰囲気を作り出していくことに大いに寄与していると思う。 20年の貫禄がバチバチ発揮されていた唯一無二のサウンドだった。
もちろんスプリット音源(とZine)を購入してほうほうの体で帰宅。終始激しかったけど楽しかった。ライブを見に行く醍醐味に知らないバンドを知れる、というのがあると思うがそういった意味ではハードコアとヒップホップとクロスオーバーなイベントで知らないジャンルを垣間見れてよかった。
ライブハウスにつくとすでにもうかなりの客が入っていてかなりキュウキュウだった。WALLは入り口に「〇〇(多分バンドなのだろう)の☓☓とヴィジュアル系出入り禁止」みたいな張り紙がしてあり、私はどうみてもヴィジュアル系ではないがなんというかハードコアな雰囲気がしてちょっと怖いと思う。(実際怖めの人が多かったし、私のようなオタクっぽい人がいなくてさらに怖いというのがあります。)
ステージの前が不気味に人がいなくて不穏であり、これを見るとハードコアのライブに来てしまった…という感じがする。
Super Structure
一発目はSuper Structure。私は何回か見ているけど見るたびに好きになる、このバンドに関しては。この日もかなりとんがった音を出していた。後のFriendship、Fight It Outはとにかくパワーと音量がでかい。Super Structureも音はでかいのだが曲の方はもっとカオティックだ。別にプログレッシヴだ、カオティック・ハードコアだというのではないが、もっと混沌としている。変な言い方だがどの楽器もフルスピードで鳴らしまくった音が重なると奇跡的に曲に聞こえる、みたいな雰囲気がある。この日共演するバンドと比べると音はもっとざらつき、音の数は多い。パワーバイオレンスといっても流行とは一線を画す内容でもっとラフだ。例えば地獄のようなスラッジパートがあるわけでもない。甲高い、と評しても良いボーカルが激しく細かく忙しないバンドアンサンブルにさらにカオス感を注入している。バンド名は(あとから知ったのだけど)USのニュースクール・ハードコアバンドFall Silentの2ndアルバムからとっていることもあり、ルーツとなっているのがそういった音楽なので、パワーバイオレンスたろうとするパワーバイオレンスバンドとは明確に違う音に仕上がっているのではなかろうか。まさしく鉄砲玉、それも恐ろしく命中率が悪く乱射しまくるような凶悪なバンドで、ラストにやった「Despair」(だと思う。唯一気軽に聴けるこのバンドの音源でもある。)には中盤にギターの高音を響かせる地獄のようなモッシュパートがある。非常に格好いいのだ。私がお金持ちだったら最高の環境で音源を録音してもらうのにな、といつも思う。(音源出してほしいです。)
Friendship
続いてはFriendship。今年アルバムが出てからはみたっけな?結構見る回数が多いのは色んなイベントに招かれているからだろう。全くフレンドリーではないが、普通の意味とは違うキャッチーさがあって、それがわかりやすく”ハードコア”なので少しジャンルをまたぐようなイベントに引っ張りだこになるのかな、と思う。
Super Structureの直後ということもあって両者の違いが明確になる。こちらも非常にやかましいが音の数はぐっと減る。数というか密度だろうか。とにかくキチンと音を抜くことで重苦しいのに閉塞感から適度に脱しており、過密のコントロールが上手いのか、その結果ある意味ハードコアの枠組みだけ残したみたいな音楽になるのだが、それが非常に頑強で非常に暴れられる。初めてFriendshipを見た人でも絶対すぐに「のれ」ると思う。相変わらず一切MCはなく、ボーカルはほぼフロアに降りて歌う。毎回すごいと思うのは一切一体感は演出しない。シンガロングパートはもちろんないし、フロアに降りるボーカルも急に回りの客に向けてタックルを仕掛けてくる。みんなで楽しくモッシュ!って感じでもない。曲もそうだし、こういった姿勢の作り方というのも非常によく考えられている。「策士だね〜」というのではなくて、茨の道を我が物顔で進むな〜という感心の気持ちのほうが勝ってきた。若手、というのだけでなく、例えば私のような門外漢にとってのハードコアのゲートウェイになっていてそういった意味でもすごいバンドだ。
CENJU from DMC
続いては日本は東京のラッパー。実はヒップホップのライブを見るのは初めてかな?結構楽しみにしていた。CENJUはがっしりとした高身長と体躯に恵まれた大男でかなり迫力がある。低音のラップパートを同期させてそこにラップを被せていくように進む。これは合唱で言う下のパートってことだろうか。ヒップホップのライブは(他のラッパーは違うかもだけど)こうなんだな!と面白かった。強面なのは外見だけでなく、かなりハードな内容を噛み砕いた言葉でリリックにしたためるアーティストらしく、(ストリートのなんたるかを知らない私が言うのもちょっとおかしいのだけど)”ストリート感”のあるラップを披露する。つまりリアルでアンダーグラウンドな世界観である。悪いのだ。音の洪水を通り越し、もはや壁(WALLというライブハウスの名前は非常に格好いいと思う。)になっているハードコアとは全然ちがう音の数だ。とにかくシンプルに限界まで削ぎ落としたトラックが鋭い。そして鋭いだけでなく、煙たい、ダルいを表現する。これが良い。よくヒップホップのラップでは「スキル」という言葉が浮き彫りになるが、一人でステージに立つ(そうでない場合も多いが基本的にラップをするときは一人だ。)ラッパーは露骨にその出来にごまかしが効かない。タフな役回りだ。(それ故かっこいい。)CENJUは韻を踏みつつ結構フリーに煽ってくるタイプで客席を大いに沸かせていた。見た目に反して声は少し甘い感じがあるのが個人的には良かった。
Fight It Out
危ないことになるから後ろに下がったんだけど結局ダメでした…。
続いては横浜シティのパワーバイオレンスバンドFight it Out。この日の主役の片方でもある。バイオレンスを音にしたらこうなりました、というバンドで今年発売された3rdアルバムは私のようなオタクも聞いていると何か自分が強くなったように錯覚するようなブルータルなアルバムだった。ライブはモッシュ天国(普通の基準で考えればなぜ金を払ってそんなことを?と思わずにはいられない地獄)になるのは何回か見てことがあるので私は後ろに下がった 。WALLは後ろに長いライブハウスなのだが結果から言うとこの長さを活かした縦長のピットができて、だいたいほぼほぼ安全地帯がなし。全員が当事者に。
音の作り方はFriendshipと似ているモダンで金属的で良い感じに音の数を落としたものだが、こちらはもうモッシュに特化していると言っても良いかもしれない音で、Friendshipのような黒いヴェールのようなものもない粗野な音像。激速と激遅(げきおそ)を行ったり来たりするくせに神経症的な痙攣という病的な感じではなく、暴力性の発露のような運動性が特徴。そういった意味では健康的なのだろうか。あっという間にフロアにヘイトが感染して凶悪なモッシュパートが出来上がる。ボーカルの人はほぼフロアにいたのはFriendshipと同様だが、こちらはシンプルながらシンガロングできるパートがあったりしてモッシュピットに一定の法則、というよりは一つの指向性があったように思えた。腕を振り回す人、足を振り回す人、タックルをかます人、マイクを取りに(一緒に歌おうとしてね)行く人、サーフする人(カオスなのであまり長く上に居続けられない)、もみくちゃで後ろの方にもピットの動きが人を通して伝わってくる。ライブと音源の違い、というの一つのテーマに対する回答を明確にFight It Outが示し、そしてライブ(ともするとライブのみ)がリアルである、というのもうべなるかな、という状況でした。
ILL-TEE
つづいてはILL-TEE。DJの他にもう一人ラッパー、多分MASS-HOLEという人かな?がステージに立つ三人体制。トラックの内外とわず自由にやるCENJUに比べるとこの二人のラッパーはかなりかっちりタイトにトラックにリリックをはめ込んでくる。小節頭に言葉の喋りだしが噛み合ってこれはこれで非常に格好いい。やはりリアルな感じのするリリックだったと思うけど(固くて低い声質もあってCENJUに比べるとやや聞き取りにくい場面もあった。)、もう少し言葉遊びと陰陽の陽にあたるようなリリックもあってヒップホップの楽しさ、というのがわかりやすくそして最大限に発表されるようなステージングだった。ある意味淡々と韻を踏んでいくスタイルではじめは聞き惚れるような感じなのだけど、トラックとのかみ合わせが非常に良くてどんどん気持ちよくなってくる。フックのようなものもあってわかりやすい。ハードコアという明確に違うフィールドで徐々にヒップホップの楽しさ、というのがじわじわ浸透してくるようなライブでやはりもう最終的にはかなり前の方は盛り上がっていた。トラックがシンプルでビートが強いので実は乗りやすい、というのはあると思う。真面目と言っていいほどしっかりしていて格好良かった。
Saigan Terror
続いては東京高円寺のハードコアバンドで結成は1997年(素晴らしいインタビューより)。クロスオーバー、つまりこの場合はハードコアに刻みまくるスラッシュ・メタルをかけ合わせた音楽で私は何回かライブを見たかな?格好いいんだけど言語化するのが難しいな(音源もいまでは廃盤状態なので。)と思っていた。本日はスプリット発売の主役で堂々のトリ。
改めてライブを見るとこんなに重かったっけ?となったブラストビートが冴えまくり、ブラストビートに乗って突っ走るさまはもはやTerrorizerでは!?と思うくらい凄まじかった。よくよく聴いてみるとなるほど確かにグラインドコアというには音が良い感じに抜けていて、より疾走感が強調されているけどそれでも軽薄ということはまったくない。ブラストビートにすべてを掛ける、という音楽性でもなく、シンプルな2ビートが土台を作りそこに凝ってはいるが決してスピード感を減じさせない”刻み”のスラッシュリフが乗る。この日ドラムとともにすごいなと思ったのはベースで、おそらくエフェクターを噛ませて幾つかの音をコントロールしているのだが、かなり硬質で刻みのリフと相対するようなガーンとアタックしたあとミュートしない弾き方が、硬い地面に金属が跳ね返るような強烈さで非常に格好良かった。この日前の3つのバンドは共通点があってそれはとにかく突っ走るときは突っ走る、ということだったが、Saigan Terrorは速度はあってもミュートを用いたリフにはつんのめるような独特の粘りのあるコシが生まれているところが明確に異なる。つまり何が言いたいかというと他のバンドにはない「グルーヴィ」さが生まれていた。これはとにかくピットに反映されていて、Fight It Outの殺伐としてたピットと比べると同じことをやってい人はいるのだけど、もう少し多様性があり、ステップを踏む人やそれこそ女性の人もいた。そして沢山の人が笑顔だったのが一番印象的だった。危なくないわけではないけど、それを圧倒的に上回る楽しさ。ギタリストの方のキャラクターやMCもそんな雰囲気を作り出していくことに大いに寄与していると思う。 20年の貫禄がバチバチ発揮されていた唯一無二のサウンドだった。
もちろんスプリット音源(とZine)を購入してほうほうの体で帰宅。終始激しかったけど楽しかった。ライブを見に行く醍醐味に知らないバンドを知れる、というのがあると思うがそういった意味ではハードコアとヒップホップとクロスオーバーなイベントで知らないジャンルを垣間見れてよかった。
2017年10月21日土曜日
skillkills presents 「The Shape of Dope to Come Release Tour Final」@Club Asia
この日ありがちなことにライブがかぶっていたが、私が行ったのはこのライブ。
Zazen Boysのライブが見たいというのが第一で、Skillkillsはよく目にするものの訊いたことも見たこともないバンドなのでこれは良い機会と思ったわけ。この日はSkillkillsの新作のリリースツアーのファイナル日。
なんとか仕事を放り出して会場に当日券で文字通り潜り込むと、Zazen Boysのライブがまさに始まったところだった。
Zazen Boys
ベーシストの吉田が今年限りで脱退することがアナウンスされたが、ステージングは落ち着いたものだった。照明をほぼ全開にしたステージは明るくそしてあけっぴろげであった。
私は30を半ばなのだから、思春期に洋楽の洗礼を受けてもNumber GirlとスーパーカーはOKという謎の方程式により、よくよくNumber Girlの音楽を聞いていた。(こういう輩は多いのでは。)初めて接したときの印象が強いのは音というよりMutomaJapanでみたフロントマン向井による手書きのMVの漫画テイストだったんだが。
このZazen Boysというのは完全に周囲とは隔たった音楽を追求するバンドで、私はこの手のジャンルに詳しくないのでよくわからないが、ロックをベースにプログレやファンクやジャズなどが引き合いに出されるようだ。(要するにNumber Girlとは異なる音楽性でそれ故私は少し敬遠していた。)
複雑ってことなのだが、音源聞いても分かる通り非常に肉体的な音楽だ。楽曲全体がリズムでできているようになっていて、相当ややこしいのだが私のような音楽的な知識がない輩でも踊りたくなっちゃうような音楽だ。生で見て思うのはとにかくZazen Boysの音楽は身軽である。難解になると技術の鎧がどんどん分厚くなるが、このバンドは音をどんどん抜いていっている。結果的に難解なリズムの骨組みのみが残っている。音の数は決して多くないが、余計に間が重要になってきてそしてそれらがとにかくきっちりあってくる。ドラム一つとっても今拍子はなんだろう?ってくらいで、楽器隊がそれぞれ別に何かやっているのが、何かわからんが偶然合っちゃって曲ができているような感じすらする。めちゃくちゃ緊張感があるのだが、ユーモアを交えたゆるさ(演奏以外の)があって、高尚な音楽にならずにあくまでも楽しい音楽にとどまり続ける。私が音源で聞いている曲も一回ばらばらにして再構築しているように、もはや別の曲では?というくらいの再現度。即興性も取り入れつつ、コールアンドレスポンスを取り込んだり(「Whisky&Unbubore」という曲、途中なんとなくNumber Girlの「Eight Beater」を彷彿とさせる)、酩酊の楽しさがにじみ出るようなステージングを進めていく。ステージの後ろの方でゆらゆら体をしているのが楽しかった。次はもっと前でみたいな。
Killer-Bong
続いてはBlack Smokerの首魁Killer-Bong。見るのは2回めで前回はコントラバス奏者とのコラボレーションだったので、単独を見るのは今回が初めて。
卓の上に据えられたサンプラー(?)2台位とマイクのみ。照明は落とされているが、プロジェクターを使った強烈な光線が暗闇を線上に切り裂いていく。この日のVJはENDONのライブでもおなじみのロカペニス。
このKiller-Bongという人はおそらく即興をやる方で、予めサンプラーに閉じ込めた膨大な料の元ネタをその場で曲に組み立てて、それにラップを載せていく。いわばその場でつくるヒップホップだ。(ただし既存の曲も演奏する。)ヒップホップというカルチャーで言うまでもなくサンプリングは重要な要素だから、実は基本に忠実なラップミュージックをプレイしているのだが、あまりこういうやり方を演る人というのは聞いたことが無い。元ネタはキックやハイハットなど単発のビートの部品、ジャズなどから引っ張ったピアノやホーンなどのリフなん小節か。これを組み合わせてあっという間にトラックを作っていく。Killer-Bongは低音の聞いた独特の声質をしていて、それが言葉の継ぎ目をあえて明確にしない、唸るようなラップをやっているものだから、おそらくリリックは日本語なのだろうが、よく聞こえない。ただ一本調子に呻吟するのではなく、節回しのようなラップも披露して、めっぽう格好良い。どうも酩酊しているようなトリップ感がある。そして自分の声すらその場でサンプリングしてオーバーダブを繰り返していく。ヒューマンビートボックスほど明快に音楽化されていないので、相当前衛的な仕上がりのトラックになる。この日は「うわあ〜、よんよんよん」みたいな叫び声をサンプリングして繰り返し流していた。
始まっていきなり卓をひっくり返すKiller-Bong。卓の上にはなみなみと注がれた飲み物があったのだが、機材と一緒にグチャー。スタッフが袖から何人も集まってきて必死に直しているのだが、本人は気にした様子もなくいま出る音で演奏し続ける。機材が壊れるのでは…とハラハラするが、本人はあまりそこら辺に頓着がないようだ。(なんかのインタビューで自分の部屋にものがほとんど何もない、と言っていたと思う。)マイクから音が出なければ叫び出す、というはっちゃけぶり。とにかく余裕のある人でトラブル感まったくなく、機材が元通りになってからも言葉を拾いながら演奏を続けていく。最後の方ではSimi LabのトラックメイカーHi'Specとの共作「やくそくのうた」を披露。リリックは変えてくるが、繰り返される「歌うんじゃねえ、ただ歌うんだ〜」というフレーズが即興的な自分のスタイルを象徴しているように思う。かっこよかった。
Skillkills
最後はこの日主役のSkillkills。名前はよく耳にするけど聴いたことないバンド。ドラム、ベース、ラップからなる三人組で、生音のヒップホップを演奏する。とにかくベーシストががっしりとした体躯に、横を刈り込んだ爆発頭にサングラスという出で立ちでよく目立つな〜と思った。見た目にパワーが有る。
三人のバンドだが、ビートの上に上モノを同期させる。”ラップ”ミュージックというくらいだから、トラックがすごくかっこよくてもやはりいちばん目立つのはラップなのだが、Skillkillsはバックトラックが(サンプリングに対して)ライブなのでその強みを活かしてよく動く、音も大きい。ただし「やかましいヒップホップ」という表現は半分しか当たってない。生で聴いてみるとその音のデカさにびっくりするものの、よくよく聴いてみるとやはりヒップホップに忠実であることもわかる。まずヒップホップなので音の数は決して多くない。例えばラップ・メタルなんかとは明確に異なる。Skillkillsの演奏はどこまでいってもヒップホップのトラックであり続ける。鳴らし方が違うだけだ。なのでビートは非常にタイトだ。この2つは人が演奏しているが、まさにマシンのようなタイトさ。この日Zazen Boysも激タイトだったが、あちらはバカテクが楽器それぞれ独立しているのになぜか一つの曲ができました、という感じだが、Skillkillsはドラムとベースの一体感が半端でない。日本の伝統建築のようにオーガニックな要素がガッチリはまって、粘りの強い強烈なビートを作り出している。Skillkillsも”間を抜”くことによってグルーヴのあるビートを生み出していて、特にドラムの人の「ここぞ」ってときの遅らせ方が絶妙。そこ絶対叩くよね?ってところを一つか2つ送らせてくるような感じ。とにかく気持ちよくて、前半の曲ははくの終わりを告げるシンバルのクラッシュが本当必殺!という感じだったし、後半シンバルメインの決めにスネアを叩く、というリフも非常にかっこよかった。
そしてここに乗るラップの正確さ!びっくりするくらいここもタイトに決めてくる。もっとルーズなのかと思ったが、たゆまぬ努力を感じさせる言葉のビートへの落とし方よ。ガチガチ合致する。それでいて即興要素をいれてリリックをいじってくる。これは気持ち良い。リリックも独自の世界観を構築するものでユーモアを交えつつ、一体感を煽ってくるポジティブさ。ロックフォーマットは良くも悪くもわかりやすく、感情の高まりをシャウトによって吐き出せるが、Skillkillsはずっとラップで感情をじわじわ上げてくる。フックもすごく格好良いが、フックのためのバースにならずにバースで上げてフックに持ち込むというヒップホップの格好良さがギュッと詰まった演奏だった。
途中のMCもシンプルかつ素直で本人たちがとても楽しい、という気持ちが伝わってくる良いものだった。今までのツアーでは(本人たちがいないので)できなかったという、Killer-Bong、それからZazenの向井さんを迎えた曲は一つのクライマックスでフロアが前にギュッと圧縮されていた。
結構思いつきでふらっと行ってしまったんだが非常に楽しかった。普段見ているジャンルとちょっと異なるのでそういった意味でも新鮮だった。Skillkillsの新作「The Shape of Dope to Come」を購入して帰宅。
Zazen Boysのライブが見たいというのが第一で、Skillkillsはよく目にするものの訊いたことも見たこともないバンドなのでこれは良い機会と思ったわけ。この日はSkillkillsの新作のリリースツアーのファイナル日。
なんとか仕事を放り出して会場に当日券で文字通り潜り込むと、Zazen Boysのライブがまさに始まったところだった。
Zazen Boys
ベーシストの吉田が今年限りで脱退することがアナウンスされたが、ステージングは落ち着いたものだった。照明をほぼ全開にしたステージは明るくそしてあけっぴろげであった。
私は30を半ばなのだから、思春期に洋楽の洗礼を受けてもNumber GirlとスーパーカーはOKという謎の方程式により、よくよくNumber Girlの音楽を聞いていた。(こういう輩は多いのでは。)初めて接したときの印象が強いのは音というよりMutomaJapanでみたフロントマン向井による手書きのMVの漫画テイストだったんだが。
このZazen Boysというのは完全に周囲とは隔たった音楽を追求するバンドで、私はこの手のジャンルに詳しくないのでよくわからないが、ロックをベースにプログレやファンクやジャズなどが引き合いに出されるようだ。(要するにNumber Girlとは異なる音楽性でそれ故私は少し敬遠していた。)
複雑ってことなのだが、音源聞いても分かる通り非常に肉体的な音楽だ。楽曲全体がリズムでできているようになっていて、相当ややこしいのだが私のような音楽的な知識がない輩でも踊りたくなっちゃうような音楽だ。生で見て思うのはとにかくZazen Boysの音楽は身軽である。難解になると技術の鎧がどんどん分厚くなるが、このバンドは音をどんどん抜いていっている。結果的に難解なリズムの骨組みのみが残っている。音の数は決して多くないが、余計に間が重要になってきてそしてそれらがとにかくきっちりあってくる。ドラム一つとっても今拍子はなんだろう?ってくらいで、楽器隊がそれぞれ別に何かやっているのが、何かわからんが偶然合っちゃって曲ができているような感じすらする。めちゃくちゃ緊張感があるのだが、ユーモアを交えたゆるさ(演奏以外の)があって、高尚な音楽にならずにあくまでも楽しい音楽にとどまり続ける。私が音源で聞いている曲も一回ばらばらにして再構築しているように、もはや別の曲では?というくらいの再現度。即興性も取り入れつつ、コールアンドレスポンスを取り込んだり(「Whisky&Unbubore」という曲、途中なんとなくNumber Girlの「Eight Beater」を彷彿とさせる)、酩酊の楽しさがにじみ出るようなステージングを進めていく。ステージの後ろの方でゆらゆら体をしているのが楽しかった。次はもっと前でみたいな。
Killer-Bong
続いてはBlack Smokerの首魁Killer-Bong。見るのは2回めで前回はコントラバス奏者とのコラボレーションだったので、単独を見るのは今回が初めて。
卓の上に据えられたサンプラー(?)2台位とマイクのみ。照明は落とされているが、プロジェクターを使った強烈な光線が暗闇を線上に切り裂いていく。この日のVJはENDONのライブでもおなじみのロカペニス。
このKiller-Bongという人はおそらく即興をやる方で、予めサンプラーに閉じ込めた膨大な料の元ネタをその場で曲に組み立てて、それにラップを載せていく。いわばその場でつくるヒップホップだ。(ただし既存の曲も演奏する。)ヒップホップというカルチャーで言うまでもなくサンプリングは重要な要素だから、実は基本に忠実なラップミュージックをプレイしているのだが、あまりこういうやり方を演る人というのは聞いたことが無い。元ネタはキックやハイハットなど単発のビートの部品、ジャズなどから引っ張ったピアノやホーンなどのリフなん小節か。これを組み合わせてあっという間にトラックを作っていく。Killer-Bongは低音の聞いた独特の声質をしていて、それが言葉の継ぎ目をあえて明確にしない、唸るようなラップをやっているものだから、おそらくリリックは日本語なのだろうが、よく聞こえない。ただ一本調子に呻吟するのではなく、節回しのようなラップも披露して、めっぽう格好良い。どうも酩酊しているようなトリップ感がある。そして自分の声すらその場でサンプリングしてオーバーダブを繰り返していく。ヒューマンビートボックスほど明快に音楽化されていないので、相当前衛的な仕上がりのトラックになる。この日は「うわあ〜、よんよんよん」みたいな叫び声をサンプリングして繰り返し流していた。
始まっていきなり卓をひっくり返すKiller-Bong。卓の上にはなみなみと注がれた飲み物があったのだが、機材と一緒にグチャー。スタッフが袖から何人も集まってきて必死に直しているのだが、本人は気にした様子もなくいま出る音で演奏し続ける。機材が壊れるのでは…とハラハラするが、本人はあまりそこら辺に頓着がないようだ。(なんかのインタビューで自分の部屋にものがほとんど何もない、と言っていたと思う。)マイクから音が出なければ叫び出す、というはっちゃけぶり。とにかく余裕のある人でトラブル感まったくなく、機材が元通りになってからも言葉を拾いながら演奏を続けていく。最後の方ではSimi LabのトラックメイカーHi'Specとの共作「やくそくのうた」を披露。リリックは変えてくるが、繰り返される「歌うんじゃねえ、ただ歌うんだ〜」というフレーズが即興的な自分のスタイルを象徴しているように思う。かっこよかった。
Skillkills
最後はこの日主役のSkillkills。名前はよく耳にするけど聴いたことないバンド。ドラム、ベース、ラップからなる三人組で、生音のヒップホップを演奏する。とにかくベーシストががっしりとした体躯に、横を刈り込んだ爆発頭にサングラスという出で立ちでよく目立つな〜と思った。見た目にパワーが有る。
三人のバンドだが、ビートの上に上モノを同期させる。”ラップ”ミュージックというくらいだから、トラックがすごくかっこよくてもやはりいちばん目立つのはラップなのだが、Skillkillsはバックトラックが(サンプリングに対して)ライブなのでその強みを活かしてよく動く、音も大きい。ただし「やかましいヒップホップ」という表現は半分しか当たってない。生で聴いてみるとその音のデカさにびっくりするものの、よくよく聴いてみるとやはりヒップホップに忠実であることもわかる。まずヒップホップなので音の数は決して多くない。例えばラップ・メタルなんかとは明確に異なる。Skillkillsの演奏はどこまでいってもヒップホップのトラックであり続ける。鳴らし方が違うだけだ。なのでビートは非常にタイトだ。この2つは人が演奏しているが、まさにマシンのようなタイトさ。この日Zazen Boysも激タイトだったが、あちらはバカテクが楽器それぞれ独立しているのになぜか一つの曲ができました、という感じだが、Skillkillsはドラムとベースの一体感が半端でない。日本の伝統建築のようにオーガニックな要素がガッチリはまって、粘りの強い強烈なビートを作り出している。Skillkillsも”間を抜”くことによってグルーヴのあるビートを生み出していて、特にドラムの人の「ここぞ」ってときの遅らせ方が絶妙。そこ絶対叩くよね?ってところを一つか2つ送らせてくるような感じ。とにかく気持ちよくて、前半の曲ははくの終わりを告げるシンバルのクラッシュが本当必殺!という感じだったし、後半シンバルメインの決めにスネアを叩く、というリフも非常にかっこよかった。
そしてここに乗るラップの正確さ!びっくりするくらいここもタイトに決めてくる。もっとルーズなのかと思ったが、たゆまぬ努力を感じさせる言葉のビートへの落とし方よ。ガチガチ合致する。それでいて即興要素をいれてリリックをいじってくる。これは気持ち良い。リリックも独自の世界観を構築するものでユーモアを交えつつ、一体感を煽ってくるポジティブさ。ロックフォーマットは良くも悪くもわかりやすく、感情の高まりをシャウトによって吐き出せるが、Skillkillsはずっとラップで感情をじわじわ上げてくる。フックもすごく格好良いが、フックのためのバースにならずにバースで上げてフックに持ち込むというヒップホップの格好良さがギュッと詰まった演奏だった。
途中のMCもシンプルかつ素直で本人たちがとても楽しい、という気持ちが伝わってくる良いものだった。今までのツアーでは(本人たちがいないので)できなかったという、Killer-Bong、それからZazenの向井さんを迎えた曲は一つのクライマックスでフロアが前にギュッと圧縮されていた。
結構思いつきでふらっと行ってしまったんだが非常に楽しかった。普段見ているジャンルとちょっと異なるのでそういった意味でも新鮮だった。Skillkillsの新作「The Shape of Dope to Come」を購入して帰宅。
ラベル:
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ライブレポート,
音楽,
日本
2017年7月16日日曜日
Public Enemy/Nothing is Quick in the Desert
アメリカ合衆国はニューヨーク州ロングアイランドのヒップホップグループの14枚目のアルバム。
2017年に自主リリースされた。
Public Enemyは1982年に結成されたヒップホップグループ。調べてみると「社会的」と捉えられることが多いようだ。メタル的には1991年のスラッシュメタルバンドAnthraxとの共演「Bring the Noise」ということで有名だろうか。(改めて聞いてみたらとてもかっこいい。)私は名前を知っているくらいで全然聴いたことがなかったのだが、最新作が無料DLで!というニュースを聞いてなんとなくDLしてみた。ヒップホップは結構突然、もしくは予定より早めリリースとか、無料DLとかがトレンドなのだろうか。
聞いてみるとさすがに早い段階にメタルとがっぷり四つで組み合ったことも頷けるパワフルかつ、多彩なサウンドに驚く。非常にに明快でシンプルなトラックに色々な音を上物として乗っけている。おそらくサンプリングを使いつつ専用に録音した生音を使っているのではと思う。イントロの役割を持った表題曲「Nothing is Quick in the Desert」が終わると滑らかなサウンドのギターソロが非常に印象的かつキャッチーな「sPEak!」が始まる。30年以上活動し、10枚以上のアルバムを出せば自然と老獪といってもいいほどの円熟味のあるサウンドでは〜と勝手に思ってしまったがとんでもない。非常にラディカルで外へ外へと広がりつつある温度とテンションの高い楽曲が次々と飛び出してくる。
ミクスチャーとまではいかないがギターを大胆にフィーチャーした楽曲など、枠の外にある”異質さ”を積極的に取りに行く。それはやはり明快かつストレートな攻撃性を曲に取り入れるためだろうか。ジャズを元ネタにあくまでもしっとりとした円熟味のあるヒップホップを聞かせたA Tribe Called Questの最新作に比較するとこちらの方がバリエーションに富んでおり、その分俗っぽくもありその成果高みからの神の声というよりは同じ地上に、つまり路上(ストリート)にある詩人の歌という感じがして、好みの問題だろうが、私的にはこちらの方がグッとくるかもしれない。曲名や歌詞にやたらでてくる「Beat」という言葉もそんな攻撃的な音楽を象徴しているようだ。ぶちかましてやれ、という初期衝動をいつまでも失わない。普通は成功と長い活動期間で磨耗して行くそれを、むしろ活動の長さの中で獲得する技術でもって一歩上のクリティティブに昇華させる様は無敵感すら漂う。その一方でラスト「Rest in Beats」では鬼籍に入ったヒップホップのミュージシャン達にリスペクトを捧げていて、ういう曲はさすがに大御所でないと作れないのではと。積み上げた行動、つまり言葉の重みがずっしりくるようで、最後に貫禄を見せる後ろ姿はさすがの渋さ。
かなりロック寄りのトラックもあって私にはとても聞きやすかった。わかりやすい盛り上がりがあるので高揚感が半端ない。
2017年に自主リリースされた。
Public Enemyは1982年に結成されたヒップホップグループ。調べてみると「社会的」と捉えられることが多いようだ。メタル的には1991年のスラッシュメタルバンドAnthraxとの共演「Bring the Noise」ということで有名だろうか。(改めて聞いてみたらとてもかっこいい。)私は名前を知っているくらいで全然聴いたことがなかったのだが、最新作が無料DLで!というニュースを聞いてなんとなくDLしてみた。ヒップホップは結構突然、もしくは予定より早めリリースとか、無料DLとかがトレンドなのだろうか。
聞いてみるとさすがに早い段階にメタルとがっぷり四つで組み合ったことも頷けるパワフルかつ、多彩なサウンドに驚く。非常にに明快でシンプルなトラックに色々な音を上物として乗っけている。おそらくサンプリングを使いつつ専用に録音した生音を使っているのではと思う。イントロの役割を持った表題曲「Nothing is Quick in the Desert」が終わると滑らかなサウンドのギターソロが非常に印象的かつキャッチーな「sPEak!」が始まる。30年以上活動し、10枚以上のアルバムを出せば自然と老獪といってもいいほどの円熟味のあるサウンドでは〜と勝手に思ってしまったがとんでもない。非常にラディカルで外へ外へと広がりつつある温度とテンションの高い楽曲が次々と飛び出してくる。
ミクスチャーとまではいかないがギターを大胆にフィーチャーした楽曲など、枠の外にある”異質さ”を積極的に取りに行く。それはやはり明快かつストレートな攻撃性を曲に取り入れるためだろうか。ジャズを元ネタにあくまでもしっとりとした円熟味のあるヒップホップを聞かせたA Tribe Called Questの最新作に比較するとこちらの方がバリエーションに富んでおり、その分俗っぽくもありその成果高みからの神の声というよりは同じ地上に、つまり路上(ストリート)にある詩人の歌という感じがして、好みの問題だろうが、私的にはこちらの方がグッとくるかもしれない。曲名や歌詞にやたらでてくる「Beat」という言葉もそんな攻撃的な音楽を象徴しているようだ。ぶちかましてやれ、という初期衝動をいつまでも失わない。普通は成功と長い活動期間で磨耗して行くそれを、むしろ活動の長さの中で獲得する技術でもって一歩上のクリティティブに昇華させる様は無敵感すら漂う。その一方でラスト「Rest in Beats」では鬼籍に入ったヒップホップのミュージシャン達にリスペクトを捧げていて、ういう曲はさすがに大御所でないと作れないのではと。積み上げた行動、つまり言葉の重みがずっしりくるようで、最後に貫禄を見せる後ろ姿はさすがの渋さ。
かなりロック寄りのトラックもあって私にはとても聞きやすかった。わかりやすい盛り上がりがあるので高揚感が半端ない。
ラベル:
Public Enemy,
アメリカ,
ヒップホップ,
音楽
2017年6月5日月曜日
Granule Presents AURORA@渋谷Ruby Room
解散したBOMBORIのメンバーらによって結成された新バンドGranule。2017年に音源「AURORA」をリリース。それに合わせていくつかのライブを主催。その中の1日に行ってきた。音源が良かったGranuleを見たいというのもちろんだけどDooomboysが個人的にとても見たかったのが決め手。
場所は渋谷Ruby Room。最近よく聞くライブハウスだが行くのは初めて。渋谷の道玄坂の手前?らへん。ライブハウス(もうちょっとこうイベントスペースという雰囲気でもあった)にしては珍しく2階にある。扉を開けるとどちらかというと狭いくらいのライブハウスだと思うんだけど、奥の壁が斜めになって屋根裏感がある。薄暗い照明や凝った内装も秘密基地めいていて狭いことを逆手に取った良い雰囲気の場所。なんとなく女性のお客さんが多かったのは場所のせいだろうか?
Friendship
一番手は待望の1stフルがいよいよ発売間近のFriendship。フロアにアンプが積み上がっている。ライブハウスが狭いのでいつもより密度がびっしりでアンプのすぐ前がドラムセット。ちなみにこの時点でもう結構人が入っている。Sunn O)))を思わせる低音が売りのバンドなのだが、この日はヒュンヒュン不安定に飛び回る高音フィードバックノイズが強め。多分新作からの楽曲を中心にしたセットだと思うが、曲中にもフィードバックを活かしていてちょっとした新機軸ではなかろうか。強烈な低音をソリッドかつ正確なドラムがビシッと引き締めている。ドラミングについても新曲はフィルインが多めでミニマルで非常にモッシーな曲をドラムが車輪になって重量感をそのままに回している感じ。どのパートもかっこいいが個人的にはやはりドラムに目と耳が行きがち。ただこの日ボーカルも鬼気迫る勢いでかっこよかった。
この日アルバムを先行発売していたのだが、特典付きのを予約していたので泣く泣くスルー。はよ聞きたいものです。
アンプの壁を除けると奥にステージがあったのか〜とちょっとびっくりした。多分アンプが多すぎてステージに乗らないからステージでやったんだね。
HIMO
続いては北新宿ハードコア、HIMO。ここからバンドはステージに乗る。名前は知っているが見るのも聞くのも初めてなので楽しみだった。メンバー4人のうち3人が坊主頭で、ちょっと他にない見た目のインパクトがある。かなり強面なので一体どんな音なのだろうか、きっとめっちゃ無愛想な日本的なハードコアに違いないと思っていたのだが、果たして実際は全然違って良い意味で期待を裏切られた。低音に偏向しない、非常に生々しい音を主体にフリーキーな楽曲。パワーバイオレンスとは全く異なるストップアンドゴー、というよりは休符、休止を強烈に意識した(恐らく、というのも音源は聞いたことないので)短い曲。ボーカルは勢いがあるが、節をつけて歌うというよりは言葉を早口にどんどんまくし立て、吐き出していくのでラップに聞こえる。曲が短く、反復やわかりやすい王道な構造性も希薄なので掴み所がない。爪弾くように引くギターは突然ギターとは思えない強烈なエフェクトをかけて引きまくったりする。パッと思い浮かんだのは54-71だが、シャウトも入るし曲がフリーキーだからむしろへんな例えだが、あぶらだこがRage Against the Maschineをやったかのようだ。つまりめちゃかっこいい。唯一無二の音であること自体難しいと思うが、それがかっこいいというのは奇跡めいている。見た目に反して熱く、血の通ったバンドだった。いい意味で本当に期待が裏切られた。そんな熱量がストレートに表れているMCも良かった。(ちなみにこの日まともなMCをやったのはHIMOだけ。)
音源を買ったが、メンバーの方はとても人の良い方だった。
Dooomboys
続いてはDooomboys。この日一番異色のヒップホップユニット。Wrenchなどで活躍するドラマーMurochinさんと、Think TankのメンバーでもあるBkack SmokerのBabaさんの二人組。電子ドラムを追加したドラムキットに、恐らくサンプラーなどを配線しまくった電子機器をBabaさんが操作しながらラップする。
Murochinさんがドラムを叩き、その上に上物を乗せてラップをしていく。この上物はジャズやダブ、ノイズをサンプリングし、音を加工し、ドロドロに溶かしたものを即興で再構築していくような技で再生というよりは再構成、生成されていく。音源に入っている曲もやったが、やはり生で再現するともっと生々しく少し様子が違う。ラップはエコーがかけられてすでに煙たい。電子機器でドラム音も入れたりするから、生のドラムとダブルになってそういった意味ではかなりテクノっぽい要素もある。よくもまあこう言葉が淀みなく流れ出ていくものだと感心する。非常に特徴的な声質だが、ライブで聴くとなめらかでかっこよかった。目配せで曲を制御するその様は即興性が強く、ゆえに二人のメンバーの間にはバチバチ火花が散るよう。Murochinさんのドラムはとにかく正確でタイト。だからヒップホップのフォーマットにぴったりはまる。マシンぽいドラムというとともすると批判的な文脈になってしまうが、とんでもない。めちゃかっこいいぜ。ヒップホップにしてはビートがかなり複雑かつ多様なんだけどまさにそこが二人でやる由縁なのだろう。黒煙に巻かれて非常に気持ちよかった。また見たいし、音源も新しいのを出して欲しい!12インチとかで新曲とか!
Granule
トリは東京のGranule。こちらは音源を聴いているからだいたいどんな音かわかっている、と思ったけど生で見るとかなり印象と違って面白かった。上背のあるメンバーは挑発も多くてこの日一番アングラメタル感出てた。音源を聴いた印象は長尺の強烈なスラッジだが、ワウを効かせたソロなどサイケデリックで地獄感と同時に煌びやかさもある音という感じ。ところがライブだともっと肉体的でおぞましかった。オールドスクールなスラッジをもっとでかい音で、もっと音の数を減らし、もっと一つの音を伸ばす、そんな音像。一撃をこれでもかというくらい強調するあたりはフランスのMonarch!っぽくもある。窒息するような緊張感も似ているがあちらは魔術的なドゥームだが、こちらはもっとハードコアっぽいスラッジ。ボーカルもどんどん喉があったまったのか最終的には低音、高音どちらも迫力が出て怖かった。途中で暴れる場面もあって音源よりよっぽど剣呑だった。しかしかっちりあったアンサンブル、何より引きずりのたうちまわるようなフィードバックノイズにその美学が込められており、無心に頭を振るうちにも退廃的な美しさを感じられてよかった。
ライブに行くと音源を持っているバンドでもそうでないバンドでも、大抵こうだろうな〜と思っていたことが違うので面白い。この日は特にそんなことが多かった。あと結構通ぶって楽器の方がきになる風でいるんだけど、最近はボーカルがすげえな!と思うことが多い。主催のGranuleに比べるとFriendship以外のバンドは結構音楽性が異なるんだけど、その違いが結果的にとても楽しかった。
あとHIMOとDooomboysの間に女性のDJが曲をかけていたのだけど、かかる曲がハードなテクノばかりでどれも非常にかっこよかった。全部曲名教えてくれろ!という感じ。
週末の渋谷には色々な人がいる…と思いながら帰宅。
場所は渋谷Ruby Room。最近よく聞くライブハウスだが行くのは初めて。渋谷の道玄坂の手前?らへん。ライブハウス(もうちょっとこうイベントスペースという雰囲気でもあった)にしては珍しく2階にある。扉を開けるとどちらかというと狭いくらいのライブハウスだと思うんだけど、奥の壁が斜めになって屋根裏感がある。薄暗い照明や凝った内装も秘密基地めいていて狭いことを逆手に取った良い雰囲気の場所。なんとなく女性のお客さんが多かったのは場所のせいだろうか?
Friendship
一番手は待望の1stフルがいよいよ発売間近のFriendship。フロアにアンプが積み上がっている。ライブハウスが狭いのでいつもより密度がびっしりでアンプのすぐ前がドラムセット。ちなみにこの時点でもう結構人が入っている。Sunn O)))を思わせる低音が売りのバンドなのだが、この日はヒュンヒュン不安定に飛び回る高音フィードバックノイズが強め。多分新作からの楽曲を中心にしたセットだと思うが、曲中にもフィードバックを活かしていてちょっとした新機軸ではなかろうか。強烈な低音をソリッドかつ正確なドラムがビシッと引き締めている。ドラミングについても新曲はフィルインが多めでミニマルで非常にモッシーな曲をドラムが車輪になって重量感をそのままに回している感じ。どのパートもかっこいいが個人的にはやはりドラムに目と耳が行きがち。ただこの日ボーカルも鬼気迫る勢いでかっこよかった。
この日アルバムを先行発売していたのだが、特典付きのを予約していたので泣く泣くスルー。はよ聞きたいものです。
アンプの壁を除けると奥にステージがあったのか〜とちょっとびっくりした。多分アンプが多すぎてステージに乗らないからステージでやったんだね。
HIMO
続いては北新宿ハードコア、HIMO。ここからバンドはステージに乗る。名前は知っているが見るのも聞くのも初めてなので楽しみだった。メンバー4人のうち3人が坊主頭で、ちょっと他にない見た目のインパクトがある。かなり強面なので一体どんな音なのだろうか、きっとめっちゃ無愛想な日本的なハードコアに違いないと思っていたのだが、果たして実際は全然違って良い意味で期待を裏切られた。低音に偏向しない、非常に生々しい音を主体にフリーキーな楽曲。パワーバイオレンスとは全く異なるストップアンドゴー、というよりは休符、休止を強烈に意識した(恐らく、というのも音源は聞いたことないので)短い曲。ボーカルは勢いがあるが、節をつけて歌うというよりは言葉を早口にどんどんまくし立て、吐き出していくのでラップに聞こえる。曲が短く、反復やわかりやすい王道な構造性も希薄なので掴み所がない。爪弾くように引くギターは突然ギターとは思えない強烈なエフェクトをかけて引きまくったりする。パッと思い浮かんだのは54-71だが、シャウトも入るし曲がフリーキーだからむしろへんな例えだが、あぶらだこがRage Against the Maschineをやったかのようだ。つまりめちゃかっこいい。唯一無二の音であること自体難しいと思うが、それがかっこいいというのは奇跡めいている。見た目に反して熱く、血の通ったバンドだった。いい意味で本当に期待が裏切られた。そんな熱量がストレートに表れているMCも良かった。(ちなみにこの日まともなMCをやったのはHIMOだけ。)
音源を買ったが、メンバーの方はとても人の良い方だった。
Dooomboys
続いてはDooomboys。この日一番異色のヒップホップユニット。Wrenchなどで活躍するドラマーMurochinさんと、Think TankのメンバーでもあるBkack SmokerのBabaさんの二人組。電子ドラムを追加したドラムキットに、恐らくサンプラーなどを配線しまくった電子機器をBabaさんが操作しながらラップする。
Murochinさんがドラムを叩き、その上に上物を乗せてラップをしていく。この上物はジャズやダブ、ノイズをサンプリングし、音を加工し、ドロドロに溶かしたものを即興で再構築していくような技で再生というよりは再構成、生成されていく。音源に入っている曲もやったが、やはり生で再現するともっと生々しく少し様子が違う。ラップはエコーがかけられてすでに煙たい。電子機器でドラム音も入れたりするから、生のドラムとダブルになってそういった意味ではかなりテクノっぽい要素もある。よくもまあこう言葉が淀みなく流れ出ていくものだと感心する。非常に特徴的な声質だが、ライブで聴くとなめらかでかっこよかった。目配せで曲を制御するその様は即興性が強く、ゆえに二人のメンバーの間にはバチバチ火花が散るよう。Murochinさんのドラムはとにかく正確でタイト。だからヒップホップのフォーマットにぴったりはまる。マシンぽいドラムというとともすると批判的な文脈になってしまうが、とんでもない。めちゃかっこいいぜ。ヒップホップにしてはビートがかなり複雑かつ多様なんだけどまさにそこが二人でやる由縁なのだろう。黒煙に巻かれて非常に気持ちよかった。また見たいし、音源も新しいのを出して欲しい!12インチとかで新曲とか!
Granule
トリは東京のGranule。こちらは音源を聴いているからだいたいどんな音かわかっている、と思ったけど生で見るとかなり印象と違って面白かった。上背のあるメンバーは挑発も多くてこの日一番アングラメタル感出てた。音源を聴いた印象は長尺の強烈なスラッジだが、ワウを効かせたソロなどサイケデリックで地獄感と同時に煌びやかさもある音という感じ。ところがライブだともっと肉体的でおぞましかった。オールドスクールなスラッジをもっとでかい音で、もっと音の数を減らし、もっと一つの音を伸ばす、そんな音像。一撃をこれでもかというくらい強調するあたりはフランスのMonarch!っぽくもある。窒息するような緊張感も似ているがあちらは魔術的なドゥームだが、こちらはもっとハードコアっぽいスラッジ。ボーカルもどんどん喉があったまったのか最終的には低音、高音どちらも迫力が出て怖かった。途中で暴れる場面もあって音源よりよっぽど剣呑だった。しかしかっちりあったアンサンブル、何より引きずりのたうちまわるようなフィードバックノイズにその美学が込められており、無心に頭を振るうちにも退廃的な美しさを感じられてよかった。
ライブに行くと音源を持っているバンドでもそうでないバンドでも、大抵こうだろうな〜と思っていたことが違うので面白い。この日は特にそんなことが多かった。あと結構通ぶって楽器の方がきになる風でいるんだけど、最近はボーカルがすげえな!と思うことが多い。主催のGranuleに比べるとFriendship以外のバンドは結構音楽性が異なるんだけど、その違いが結果的にとても楽しかった。
あとHIMOとDooomboysの間に女性のDJが曲をかけていたのだけど、かかる曲がハードなテクノばかりでどれも非常にかっこよかった。全部曲名教えてくれろ!という感じ。
週末の渋谷には色々な人がいる…と思いながら帰宅。
2016年7月31日日曜日
Madvillain/Madvillainy
アメリカのヒップホップグループの1stアルバム。
2004年にStones Throw Recordsからリリースされた。
何と言ってもこの印象的なアートワークが目を引く。ヒップホップに全然詳しくない私でも知っているくらい。勿論中身の音もあって名盤と称される事も多いのではなかろうか。
何となく気になっていたのだがBandcampで購入できることに気づいて買ってみた。
Madvillainは2002年MF DOOMとMadlibの2人によって結成された。特徴的な音でそのあまりに時代に迎合しない音楽性でもって発表当時は異質なものだったとか。(「狂気」と称されたともある。)2人ともMCとプロデュース両方を勤めているようで、MF DOOMの方がなんとも不思議なマスクを付けている。アートワークになっているのも彼。よくよく見てみると近代的というよりは原始的な作りになっていて、普段着でもこれを付けているものだから面白い。ヒップホップには純然たるファッション性があるけど、だからこういった特異な格好をする人は珍しいのでは。
気になる音楽性は(恐らく)サンプリングを主体に作られた堅実な作り。ヒップホップフリークに対してはイカレた音でも門外漢の私には全然まともに聴こえた。(私は後追いで世間に評価されてから聴いているから、勿論この私の評価は卑怯なものであるが。)元ネタは膨大なのだろうが、恐らくジャズやソウルがその主軸となっているのではと思う。ただこれに関しては本当に何とも言えない。出来上がった音は多少まともに表現する事が出来ると思うが、それらは少なくともそれらの片鱗を持っているように私には思える。(慎重になりすぎる故になんとも回りくどい感想になってしまい申し訳ないです。)ドラムは勿論、ベースやピアノホーン、アコーディオンなどのラインは非常に生々しく、まさに生音の用な迫力。逆に分かりやすい電子音やノイズなどのテクノロジーは表層状ほとんど出る幕がなく、全体的には生音で表現され、程よく抑えられたミニマルなトラックがあり、曲によってはそこに流れる様なラップが乗る。主役の2人だけでなく、多彩なゲストを迎えたラップも大変魅力的だが、インストもそれなりに多く音の研究家、探求者たろうという2人の首魁の思惑は見て取れる。
彼らの音の探求とはじゃあどういったものだろうか。
このアルバムには22の曲が収められているが演奏時間はトータルで46分。1曲あたりは平均するとだいたい2分ちょっとで、これはジャンルを問わず一般のポップスに比べると明らかに短い。それから彼らの曲にはフックというかわかりやすいサビはほぼ含まれない。MCは次々と登場しては詩を述べるようにラップを披露し、そして去っていく。私は英語は解さないのだが、どうも歌詞も相当何回というか直接的な表現はないようだ。obscureと評されたりしている。ここら辺が「狂気」という評価をくだされた由縁の一つであろう。映画からとって来た様な大胆で唐突なサンプリングもやはりアングラ臭が強い。(ここらへんはメタルとかもそうかも。)
思うに前衛的な音楽を作るのに手っ取り早いのは真逆に走れば良い。伝統をことごとく無視してやる訳だが、こうなると果たしてそれはそのジャンルの音なのだろうか?という問題が生じてくる訳で、そこをいくとこのMF DOOMとMadlibの2人の作り出す音は紛うことなきヒップホップである。彼らは自分たちの流儀のヒップホップを伝統に則り作ったのではあるまいか。だから私の様な無責任なリスナーには彼らの音楽はカッコいいヒップホップなのだ。反抗のための反抗というのもへそ曲がりなクリエイターにはあるのだろうが、どちらかというと無邪気に好きを突き詰めた様な伸びやかさがある音だと思った。
このMVも作られている「Accordion」という曲はそんな彼らの魅力が本当にわずか2分に込められていて、サビもないのだが、アコーディオンの哀愁のある音に導かれてぽつぽつ水滴にように流れ落ちてくるラップが非常にかっこ良い。比喩じゃなく本当に何回もリピートして聴いてしまう。
カッコいいヒップホップを探している人は是非どうぞ。音楽好きならヒップホップに詳しくなくてもハマるんじゃないかと。私はそうでした。オススメ。
2004年にStones Throw Recordsからリリースされた。
何と言ってもこの印象的なアートワークが目を引く。ヒップホップに全然詳しくない私でも知っているくらい。勿論中身の音もあって名盤と称される事も多いのではなかろうか。
何となく気になっていたのだがBandcampで購入できることに気づいて買ってみた。
Madvillainは2002年MF DOOMとMadlibの2人によって結成された。特徴的な音でそのあまりに時代に迎合しない音楽性でもって発表当時は異質なものだったとか。(「狂気」と称されたともある。)2人ともMCとプロデュース両方を勤めているようで、MF DOOMの方がなんとも不思議なマスクを付けている。アートワークになっているのも彼。よくよく見てみると近代的というよりは原始的な作りになっていて、普段着でもこれを付けているものだから面白い。ヒップホップには純然たるファッション性があるけど、だからこういった特異な格好をする人は珍しいのでは。
気になる音楽性は(恐らく)サンプリングを主体に作られた堅実な作り。ヒップホップフリークに対してはイカレた音でも門外漢の私には全然まともに聴こえた。(私は後追いで世間に評価されてから聴いているから、勿論この私の評価は卑怯なものであるが。)元ネタは膨大なのだろうが、恐らくジャズやソウルがその主軸となっているのではと思う。ただこれに関しては本当に何とも言えない。出来上がった音は多少まともに表現する事が出来ると思うが、それらは少なくともそれらの片鱗を持っているように私には思える。(慎重になりすぎる故になんとも回りくどい感想になってしまい申し訳ないです。)ドラムは勿論、ベースやピアノホーン、アコーディオンなどのラインは非常に生々しく、まさに生音の用な迫力。逆に分かりやすい電子音やノイズなどのテクノロジーは表層状ほとんど出る幕がなく、全体的には生音で表現され、程よく抑えられたミニマルなトラックがあり、曲によってはそこに流れる様なラップが乗る。主役の2人だけでなく、多彩なゲストを迎えたラップも大変魅力的だが、インストもそれなりに多く音の研究家、探求者たろうという2人の首魁の思惑は見て取れる。
彼らの音の探求とはじゃあどういったものだろうか。
このアルバムには22の曲が収められているが演奏時間はトータルで46分。1曲あたりは平均するとだいたい2分ちょっとで、これはジャンルを問わず一般のポップスに比べると明らかに短い。それから彼らの曲にはフックというかわかりやすいサビはほぼ含まれない。MCは次々と登場しては詩を述べるようにラップを披露し、そして去っていく。私は英語は解さないのだが、どうも歌詞も相当何回というか直接的な表現はないようだ。obscureと評されたりしている。ここら辺が「狂気」という評価をくだされた由縁の一つであろう。映画からとって来た様な大胆で唐突なサンプリングもやはりアングラ臭が強い。(ここらへんはメタルとかもそうかも。)
思うに前衛的な音楽を作るのに手っ取り早いのは真逆に走れば良い。伝統をことごとく無視してやる訳だが、こうなると果たしてそれはそのジャンルの音なのだろうか?という問題が生じてくる訳で、そこをいくとこのMF DOOMとMadlibの2人の作り出す音は紛うことなきヒップホップである。彼らは自分たちの流儀のヒップホップを伝統に則り作ったのではあるまいか。だから私の様な無責任なリスナーには彼らの音楽はカッコいいヒップホップなのだ。反抗のための反抗というのもへそ曲がりなクリエイターにはあるのだろうが、どちらかというと無邪気に好きを突き詰めた様な伸びやかさがある音だと思った。
このMVも作られている「Accordion」という曲はそんな彼らの魅力が本当にわずか2分に込められていて、サビもないのだが、アコーディオンの哀愁のある音に導かれてぽつぽつ水滴にように流れ落ちてくるラップが非常にかっこ良い。比喩じゃなく本当に何回もリピートして聴いてしまう。
カッコいいヒップホップを探している人は是非どうぞ。音楽好きならヒップホップに詳しくなくてもハマるんじゃないかと。私はそうでした。オススメ。
ラベル:
Madvillain,
アメリカ,
ヒップホップ,
音楽
2016年5月15日日曜日
Dälek/Asphalt for Eden
アメリカはニュージャージー州ユニオンシティのエクスペリメンタルヒップホップユニットの7thアルバム。
2016年にProfound Lore Recordsからリリースされた。一風変わっているメタルを聴いている人ならお?とくるレーベルである。Proufound Loreといったらブラックだったりデスだったりとマニアックなカテゴリの中のさらに尖ったバンドの音源を多数リリースするレーベルだからだ。ヒップホップといってもやはりかなり特徴的な音を出すに違いないだろうな、と思って気になり視聴してかっこ良かったのでデジタル版を購入。因に調べてみると以前のアルバムは”あの”マイク・パットンの運営するIpecacからリリースしていたみたいでなるほどな〜という感じである。
Dälekの作品を聴くのはこれが初めて。結成は1998年で一回の解散を経ての地裁結成して活動しているようだ。何回かメンバーチェンジはあったようだがMCを勤めるMC Dälekは結成当時からオリジナルメンバーのようだ。
その音楽性は独特でなんとたびたびMy Bloody Valentineを引き合いに出して説明される。ヒップホップがなんたるかを語れるほど詳しくないのだが、ことヒップホップという音楽ジャンルとなるとサンプリング文化に根付いた、比較的音の少ないトラックの上に執拗に韻を踏んでいくラップをのせていくもの、ということになるだろうか。
Dälekの場合も韻を踏んでいくラップは確かに伝統的なヒップホップの手法に乗っ取っている。しかしその背後でなるトラックがかなり独特である。サンプリングという手法がとられているかどうかは不明なのだが(多分違うんじゃないかなと思うんだが、どうだろうか)、ヒップホップに特有の歯切れの良い音のぶった切り(パーカッシブな音野津買い方)では全く構成されておらず、概してもっと浮遊感のある、かなりの厚みがある、そして途切れのない音が多く使われている。なるほどギターの轟音を壁のようにそそり立たせるMy Bloody Valentineが引き合いに出されるのもわかる音作りである。さすがにロックミュージックほどのラウドさはないものの、明らかにちまたのヒップホップと一線を画すその音は、ドリーミィであり、また暗く内省的だ。ただし、ヒップホップの肝であるリズミカルな要素は一切オミットされておらず、カッチリとしたドラムが刻みだすビート、そこにのる太く中音が強調された声で滑るように紡がれるラップが乗る。そうすると変幻自在にその形を刻一刻と変えていくノイジーなトラックが、寄せ手は返す波の様な効果を持って聞き手はゆったりと深く誘われるように深海に沈み込んでいく。この気持ちよさはなるほど、シューゲイザー的であり、かつそれらを使う一般的なロックバンドが生み出す音風景はまた異なったものだ。
シューゲイザーというとどうしてもロック的な音像を思い浮かべてしまうし、結果的にロックにアプローチしたミクスチャーの要素のあるヒップホップというのがなんとなくの先入観だったのだが、果たして実際聴いてみると完全にシューゲイザーなヒップホップであり、全く持って嬉しい期待への裏切りだった。なるほど今となっては色々な形のヒップホップが世にあふれている訳だが、その中でもこのDälekは相当変わった音を出しているように思う。似た音というのは知らないし、なんせ98年から活動しているのだから。
内省的で物語性に富んだヒップホップというと日本の降神を思い浮かべてしまうが、あれとは全く違った音で底のところも面白い。
不穏さ、というあまりヒップホップでは表現されない感情に深く切り込んだ内容で大変カッコいい。是非どうぞのオススメアルバムです。
2016年1月1日金曜日
submerse/Stay Home
イギリス出身で今は日本の東京に在住のトラックメイカーの2ndアルバム。
2015年にProject: Mooncircleからリリースされた。レーベルのBandcampからデジタル版を購入。界隈では有名な人なのだろうが私は全く知らなかった。Ghzのブログでメチクロさん(ドロヘドロの単行本の装丁などを手がけるクリエイターの方)が2015年のオススメとして紹介していたのを切っ掛けに購入。
まだ若い人で音楽に限らずアニメやゲームなどの日本の文化に触れて興味を持ち、来日したそうだ。
ジャンルとしてはダウンテンポなアンビエントトラックを作っている。ほぼほぼインストになっている。ジャケットが秀逸で楽曲を良く表現している。つまり都会的だが暗くて、キラキラはしているものの内省的で孤独(メチクロさんは端的にこの音楽性を表現している)である。アンビエントの要素はあるもののビートがしっかりしているので非常に取っ付きやすい。この構造からもエレクトロニカの要素を持ちつつ、ヒップホップ(インタビューを読むに子供の頃はヒップホップ漬けだったそうだ。)が土台になっている事が分かる。ビートは分かりやすくシンプルだが、下品にならずに程よいバランスで曲の土台を支えている。メロディはあくまでもフレーズに上手く閉じ込められている。同じように声の要素は入っているがボーカルというほどではない。エフェクトがかけられていて”誰でも無い感”(匿名性?)が徹底的に演出されるので、曲が導くイメージがあくまでも聞き手にゆだねられている印象でここがとても良いなあと。日本語の公共の乗り物のアナウンスなんかもサンプリングされている。(割と聴くよね、この類いの。やはり特徴的なのかな?)
学生の時に買ったCauralにちょっと似ていると思った。ゆっくりしていてでもキラキラしている要素がある。全体的に夜という感じで夜のドライブに良く合うかもしれない。(私は免許取得以来何年も車を運転していないのでちょっと試せないが。)
1曲も短めでアルバムを通しても7曲しか無いのですっと聴ける。個人的にはもう少し(跡2曲くらいは)聴けても良いかなという気持ち。
お洒落な音楽である事には間違いないだろうが、真摯な作りで万人が聴けると思う。オシャレと揶揄しないでまずは視聴してみてはいかがでしょうか。私は普段あまり馴染みも無いジャンルなのでバランスを取る意味でもとても気に入った次第。
2015年にProject: Mooncircleからリリースされた。レーベルのBandcampからデジタル版を購入。界隈では有名な人なのだろうが私は全く知らなかった。Ghzのブログでメチクロさん(ドロヘドロの単行本の装丁などを手がけるクリエイターの方)が2015年のオススメとして紹介していたのを切っ掛けに購入。
まだ若い人で音楽に限らずアニメやゲームなどの日本の文化に触れて興味を持ち、来日したそうだ。
ジャンルとしてはダウンテンポなアンビエントトラックを作っている。ほぼほぼインストになっている。ジャケットが秀逸で楽曲を良く表現している。つまり都会的だが暗くて、キラキラはしているものの内省的で孤独(メチクロさんは端的にこの音楽性を表現している)である。アンビエントの要素はあるもののビートがしっかりしているので非常に取っ付きやすい。この構造からもエレクトロニカの要素を持ちつつ、ヒップホップ(インタビューを読むに子供の頃はヒップホップ漬けだったそうだ。)が土台になっている事が分かる。ビートは分かりやすくシンプルだが、下品にならずに程よいバランスで曲の土台を支えている。メロディはあくまでもフレーズに上手く閉じ込められている。同じように声の要素は入っているがボーカルというほどではない。エフェクトがかけられていて”誰でも無い感”(匿名性?)が徹底的に演出されるので、曲が導くイメージがあくまでも聞き手にゆだねられている印象でここがとても良いなあと。日本語の公共の乗り物のアナウンスなんかもサンプリングされている。(割と聴くよね、この類いの。やはり特徴的なのかな?)
学生の時に買ったCauralにちょっと似ていると思った。ゆっくりしていてでもキラキラしている要素がある。全体的に夜という感じで夜のドライブに良く合うかもしれない。(私は免許取得以来何年も車を運転していないのでちょっと試せないが。)
1曲も短めでアルバムを通しても7曲しか無いのですっと聴ける。個人的にはもう少し(跡2曲くらいは)聴けても良いかなという気持ち。
お洒落な音楽である事には間違いないだろうが、真摯な作りで万人が聴けると思う。オシャレと揶揄しないでまずは視聴してみてはいかがでしょうか。私は普段あまり馴染みも無いジャンルなのでバランスを取る意味でもとても気に入った次第。
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