2016年8月14日日曜日

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アメリカはミシガン州アナーバーのハードコア/クラストコア/ブラックメタルバンドのディスコグラフィー(同名の1stアルバムにその他の音源を追加したものとの事。)
1999年にSound Pollution Recordsから発売された。
元はと言えばtoosmell RecordのHPで見つけたのだが既に在庫はなく、どうやらデジタルでの販売もなさそうなので、他のショップで購入した。
1995年に結成されたバンドで1999年に解散している。どうもバンドメンバーの変遷が多かったようだ。

「私たちの呪いを家に持ち込む」というのはいささか変わったタイトルだ。ひょっとしたら元ネタがあるのかもしれない。
彼らの音楽を説明するならブラックメタルに強い影響を受けたハードコアだろうか。所謂ブラッケンドというと手っ取り早いのだが、まあ待ってほしい。オリジナルとなるアルバムリリースされたのは1998年(アルバムは1年速いようだ)でバンド自体は95年からやっている訳だ。きっと当時には「ブラッケンド」という言葉はなかったのではなかろうか。いわばオリジネーターの一角をになうバンドなのだろうがメジャーさで言えばどうだろうか?(私が知らなかっただけでひょっとしたらみんな知っているのかもしれないが。)
一見無慈悲に見えるが実は陰としたメロディを奥に秘めたのトレモロリフ。元々共通項があるハードコアとブラックメタルなのでこの融合は非常にしっくり来る。ボーカルは複数人がとる体制で、恐らくメンバーチェンジもあってか結構バリエーションがある。Gehennaを思わせる厭世観/嫌悪型満点のブラックメタラーもはだしで逃げ出しそうなイーヴィルなもの。いかにもハードコア然とした低音、わーわー叫ぶ高音、そしてのどから吐き出す早口吐き捨てパンクス中音。曲によってはそれらが同時にわめいたりして非常に異形のハードコアらしくてとても良い。このバンドのブラッケンドというのはブラックメタルの技術的なものを取り出して来てハードコアに当てはめているというよりは、とにかくトーラルで見たときの暗さに一番良く反映されている気がする。クラストコアの持つ追い込まれた捨て鉢な厭世観が異界に結びついた様な感じで、ストイックで現実的なハードコアのその先にヤバい世界が見え隠れしました、というイメージ。そういった意味では完全に異世界に負見れ入れているメタルとは違って、神経的に病んできました…感が強く音楽的にはタフさも勢いもある故にそのまずさが恐ろしい。
手元にある音源で一番似ていると思ったのはGehenna。ブラックメタル化した曲調や吐き捨て型のボーカル。この世に対する憎悪しかありませんが?という不遜で冒涜的な態度はかなり似ている。ただGehennaが完全に奇形的な悪魔の首領的な孤高の雰囲気を出しているのに対して、こちらはもっと若くて試行錯誤している印象。ハードコア特有のストレートさでいうとむしろGehennaなのかもしれないが、色々取り入れるどん欲さはこちらに分があるか。全22曲でも結構曲にフックというかバリエーションがあって面白い。(メンバーチェンジの多さで曲にバリエーションが出ている、というのもあるのでは。ボーカルも。)個人的には反復を執拗に繰り返す7分台のスラッジチックな曲は未来先取りだな〜という感じで好き。

今でこそ「ブラッケンド」という言葉は一定の音楽ジャンルを説明する形容詞として定着しているが、その成立には色々なバンドの地道な活動が確実に寄与していたんだなと感慨深い気持ちになるとともに、歴史的な意味を考慮しなくても一個の音源として非常に楽しめる音源。私が買ったショップでは今ならA389からリリースされていてもおかしくない、とか書かれていてなるほどなと思った。「ブラッケンド」というジャンルに目が無い人は見つけたら是非買ってみてどうぞ。

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