2016年8月27日土曜日

Russian Circles/Guidance

アメリカ合衆国イリノイ州シカゴのポストメタルバンドの6枚目のアルバム。
2016年にSargent Houseからリリースされた。
3人組のインストバンドで結成は2004年。奇妙なバンド名はwikiによるとアイスホッケーの練習方法からとられたそうだ。ベーシストのBrian Cookは元Botch(!)で今はAron Turnerと一緒にSUMACもやっている。

私は一個前のアルバム「Memorial」をChelsea Wolfeが参加したのを切っ掛けに購入した。彼らのアルバムはこれで2枚目。そんな私のこのバンドの印象としては”無愛想”という感じ。ロックにしろメタルにしろ頭に”ポスト”と付けるとちょっと小難しくなると思う。この界隈では完全にインスト、もしくはボーカルパートは少なくなる傾向にあるが、一番分かりやすく感情移入しやすい要素である人の声が削られるのでどうしても抽象的になりがち。緻密な計算のように精緻に音を一個ずつ積み重ねて作られるかの様な楽曲は良くも悪くもアート的な表現になってきがち。使用される楽器もバンドアンサンブルからどんどん増えていき曲の尺もながーくなっていくと。これらはいまや一個の様式美として(つまりポスト〜というジャンルとして)成立している事の証左であり、これが悪い事は勿論ない訳です。(各人が色んなバンドのアウトプットを体験して善し悪しの判断をすれば良いのです。)そんなジャンルにカテゴライズされながらも結構それらと距離をとって自分たちなりにやっているのがこのRussian Circlesというバンド、というイメージ。
今回にしても表面的なアートワークにしても意味は掴みにくいもののはっきりしているし、アルバムタイトルと各曲名も単語一つのみで表現されているという無骨っぷり。曲にしても全部で7曲で41分弱と。このジャンルでは明らかにコンパクトにまとめられているのではなかろうか。だいたいまあ5分か6分には収められている。曲の方も”ポスト”の代名詞というか存在理由といっても言い芸術的な部分を徹底的に削ぎ落とした内容。勿論全編これクライマックスという、実はただ単調な楽曲でも全くなく、ポストの醍醐味である楽器時んのみが導きだせる抽象的だがそれゆえの陽炎の様な美を追求している訳なのだが、とにかくもうソリッドかつ必要最低限の潔さ。各メンバーの一音一音とっても非常にクリアかつ明快。使用されている楽器にしてもバンドアンサンブルにシンセを追加したくらい。(だと思う。)ゴリゴリ迫るベースをちょっと聴いただけだとあの朦朧としたポスト感の幻想などがらがらと音をたてて瓦解していくようだが、ちょっと待ってほしい。かの澁澤龍彦さんがこのようなことを言ったそうだ。曰く「幻想文学といって曖昧に書いてくるやつが沢山いるが文体はあくまでも明快でなくてはならない」(細部色々違うと思います。)なるほどこのバンドはこの哲学を地でいく様なスタイルで、使われている音は非常に無骨だが、それらが作り出す曲のダイナミクスはどうだ。必要最低限の反復と多彩な展開でもって圧倒的な”劇的”を作り出している。眼前に光り輝く別世界の入り口が見える、これはまさにポスト音楽の神髄ではないか。素材と作りに拘り、釘などを一切使わないで絶妙な芸術品と評して間違いない家をつくる宮大工のようだ。そうして作られた社には神が宿るのだとしたらこれが幻想でなくて何なのだ。幻想と信仰には確固たる土台が必要なのかもしれない。

ぼんやりかつ冗長がポスト感だと思っているやつの顔に轟音ぶつけてくるRussian Cirlces。これは壮快。是非どうぞ。個人的にはラストの「Lisboa」にただただ圧倒されるばかり。オススメです。

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