2016年7月2日土曜日

V.A./DOROHEDORO Original Soundtrack

日本の漫画家林田球さんによる漫画「ドロヘドロ」のサウンドトラック。
2016年にMHzからリリースされた。
私が買ったのはCD盤でT-シャツがつかないヤツ。作者書き下ろしの特殊なケースはかなり大きいです。
「ドロヘドロ」は高校生の時にクリスマスに1巻をジャケ買いして以来のファン。この作品は2016年現在まだ映像化されていないから、そのサウンドトラックを作るというのは相当面白いアイディアだ。しかもこの音源に収録されているのはすべてアーティストの書き下ろしの新曲、このCDのために「ドロヘドロ」をモチーフに作成している。既存の楽曲を集めたコンピレーションという訳ではないからとても豪華。元々作者林田球さんは音楽好きであることは伺えて、初期はとにかく色んなコマにSlipknotのモチーフが書き込まれていたりした。元々コミックの装丁(持っている人は知っているだろうが凹凸のついた凝った作りになっている)をやっているメチクロさん(造形師/クリエイターだと思う)が関係しているショップ(同じく私が大好きな漫画家弐瓶勉さんの作品関係の商品も多数作ったりしている)MHzが、音楽ショップGHzもやっていて恐らくその関係で音楽方面の繋がりも強いのだと思う。この音楽ではほぼほぼ電子音楽のミュージシャンによって構成されている。あくまでもサウンドトラックなのであまり歌ものを入れるのは趣旨に合わなくなってしまうからそういう事もあるとのではと。
読んだ事のある人は分かるだろうが、「ドロヘドロ」の世界観というのは一風変わっており、結構ダークで同時にお茶目でのんびりしている。人間たちが住むどこにも似ない無/多国籍な世界「ホール」にドアを開けて別世界から魔法使いがやってくる。魔法使いは人間たちを劣等種と考えていて、「ホール」にやってくるのは自分の魔法の実験台に人間を使うためだ。そんな世界で記憶を失ったトカゲ頭のナイフの使い手カイマンが過去を取り戻すために魔法使いを殺しまくる、というのがあらすじ。すべては混沌の中。それがドロヘドロ!なのだ。
様々なアーティスト全14組がその世界観を音楽で表現しようとしている試みが結実したのがこのアルバムだと考えるとサントラという形式以上の面白さがあるように感じる。
1曲目のkhostの「Redacted Recalcitrant Repressed」が素晴らしいオープニング。彼らだけは明確にドーゥムメタルをやっているのだが、じっとりとした陰湿な雰囲気はまさに魔法使いの煙から発生した雲から発生した汚染された雨に濡れるホールそのものであり、ドロヘドロのオープニングにふさわしい。続くVOODOOMを始め、複数のアーティストがシリアスな中にもファニーさを多分にとけ込ませている曲を提供しているのは恐らくよくよく原作を読み込んでくれたのではなかろうか。もちろんIgorrrなんかは自分の持ち味を活かしている部分もあるだろうが、そういった意味だと非常に優れたセレクトであり、アーティストも難しいリクエストを楽々と飛び越えていていかにも楽しい。
個人的には最近作品の幅を広げつつあるDead Faderと、Dead Faderのリミックスも手がけた外国在住日本人ユニットDevilmanにも在籍しているGhengis、Asian Dub Foundation(高校生位から気になっているのに音源持っていない)のDr Dasが気になっていた。Dead Faderは最新アルバムの延長線上にある不穏でありつつも感情豊かな18分に迫る超大曲。アンビエントな雰囲気がありつつも歪んだ激音ビートがいかにも。Ghengisはインダストリアルなノイズにこちらも太いビートを持ち込んだもの。ともにビートに関しては減算の美学があって、制限した方が一音が際立つのだなと。Dr Dasは元々ベーシストということでベースラインが非常に硬派で目を引く。ダブ/レゲエを彷彿とさせ鵜ゆったりとした雰囲気で土臭いパーカッションが映える。その他は前述のkhost、色彩豊かなデッドワンダーランドといった趣のあるCandie Hank、それからこちらも楽しい雰囲気のあるビートが小気味よいShitwifeの楽曲が気に入った。

漫画のサウンドトラックというとその新奇さゆえに色物テイストを感じてしまう方もいるかもしれないが、単に奇抜という上に中身のクオリティは極めて高い。それぞれのアーティストが自身の良さを活かしているのだろうが、専用に書き下ろされた曲を聴くとやはり「ドロヘドロ」らしさを感じてしまうから、そこがとにかくすごい。
収録されているアーティストに引っかかるものを感じる人、漫画「ドロヘドロ」が好きな人は是非どうぞ。
それからGHzのアーティストのインタビューも併せてどうぞ。

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