2016年7月24日日曜日

Mortalized/呪われた…Complete Mortality

日本は京都のグラインドコアバンドのディスコグラフィー。
2016年にオーストラリアのBlastasfuck Grindcoreからリリースされた。私が買ったのはデジタル版。
Mortalizedは1998年に古都京都で結成された、ボーカル・ギター・ドラムの3人編成で幾つかの音源をリリースした後、残念ながら現在は既に解散したとの事。その後ギタリストの松原さんはアメリカのDiscordance AxisのボーカリストJohnとバンド・Gridlinkをやってたりするみたい。
私は同じく日本のSWARRRMとのスプリット音源だけリアルタイムで買って持っている。大ファンという訳ではないのだが買ってみた。

解散後にリリースした活動全記録という感じで色々な音源から集めた61曲で構成されている。収録時間は1時間半弱、CDだと2枚組になっているとの事。
グラインドコアというジャンルの定義が出来るほど詳しくはないのだが、ブラストビートを用いた非常に速いハードコアとデスメタルのクロスオーバー的な音楽であって、その尖りまくった性質上結構個性を出すのは難しいのではないだろうかと思うのだが、このMortalizedというバンドはそんな先鋭的な音楽ジャンル(=縛り)のなかでこんなにも豊かな表現が出来るのか!と思わせてくるくらい非常に多彩。
音的にはピュアなグラインドコアで、デスメタル要素が非常に濃い。重さと速さを兼ね備えたドラムは叩きまくるし、ギターは短い曲の中で凝りまくり、練りまくられたリフをこれでもかというくらいに矢継ぎ早に披露していく。ボーカルは高音〜低音を行き来するシャウトスタイルで終始叫びっぱなし、クリーントーンなのどの小細は皆無。
徹頭徹尾呵責のないスタイルだが全61曲全く飽きさせる事がない。一つは楽器陣(といっても2人視界内のだからスゲー)の魅せる事。手数の多いドラムはどっしりしており非常に気持ちよい。ギターはとにかく短いという制約の中で縦横無尽に駆け巡る。ミュートを使ったタメのあるギターリフ、低音の嵐の中で非常に印象的なハーモニクス、そしてボーカルに圧倒的に欠如しているメロディ成分を補填してあまりある叙情性。怒りに満ちた攻撃性を詰め込んだお手本の様なメタリックリフ、ブラックメタルを彷彿とさせる泣きのトレモロ、ノイズ一歩手前の非人間性、音数が少ないのに妙にキャッチーで印象的なフレーズまでこのレパートリーの豊富さには目が回る。一見多重人格なのだがそれぞれの側面への意向が非常にスムーズかつ自然で、ちぐはぐさが皆無なのでどちらかというと感情の豊かさでは。
このバンドのもつ懐の広さは後半に収録されているボーカルレスのセッションでかいま見る事が出来る。ベースメンバーも迎えたこのインスト群はメタルの枠を抜け出した、というか完全に非メタルな音で構成されている。細かく手数の多いドラムはシンバルの使い方もあってどう見てもジャズのそれに聴こえるし(そう考えると確かにメタリックな曲でもジャズっぽいドラムフレーズがある様な気がする)、反復的な展開からフリーキーな即興性が飛び出してくるギター。非常にテクニカル。こういった背景からあのグラインドコアが生まれてくると思うと凄まじいな。きっともっと他の音楽性を目指しても素晴らしい曲が出来たのだろうなと思う。

滅茶苦茶かっこ良いのだが、そうなるとどうしてもこの素晴らしいバンドが既に解散している事が寂しくてならない。偉大なバンドが日本の京都にたしかに存在したのだ。こうして音源をまとめてくれるのは大変ありがたい事。どうもCDは限定50枚というこれまた容赦のなさなのでゲットした人は急いだ方が良いかも。グラインドコアの凄みをこれ1枚であらかた体験できてしまうんじゃないかというくらいのバリエーションなので是非是非どうぞ。非常にかっこ良い。オススメ!!

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