2016年7月18日月曜日

SWARRRM/20Year chaos

日本は兵庫県神戸のChaos&Grindバンドの編集版。
2016年にLongLegsLongArms Recordsからリリースされた。
「20年の混沌」というタイトル通り、1998年の結成以来リリースしたEPやスプリット、コンピレーションへの参加曲を集めた編集版。2001年から2004年の間に録音された音源で構成されている。また全曲リマスタリングが施されているようだ。インナーには音楽ライターの行川和彦さん、3LAのレーベルオーナー水谷さんのライナーノーツが書き込まれている。

現状生きるレジェンドな存在感を放っているSWARRRMだが、私は完全に後追いで聴き始めたのは2009年にボーカリストが元Hellchildの司さんに交替後の「Black Bong」から。さかのぼってこのアルバムのアートワークにもなっているPicture EPは購入したはず。
このアルバムだとボーカリストは全部で3人。そういった意味でも現在のSWARRRMとどれくらい隔たりがあるのかというのは興味があったところ。
実際に聴いてみると20年やっているバンドなのだがその軸はぶれていないなと思う。(勿論最初機の音源は未聴なので偉そうな事は言えないのだが…)デビューEPに付けたタイトルが「Choas&Grind」な訳で、曲に必ずブラストパートを入れるという縛りの元に確固たる音楽性を築いている。グラインドコアだと半分正解だが、そこに彼らの主張する「混沌」がぶち込まれている。ボーカリストはどれも異常な存在感を放っているが、ちょっと語弊があるかもしれないがバンドアンサンブルの一つとして機能している。カオスがバンドアンサンブルで企図された(実は)非常に知的なものである一方、それをぶちこわすくらい暴れ回るのがSWARRRMのボーカルに与えられた任務であり、歌詞はありつつもどちらかというとそれは獣めいた叫びに近い。低音グロウルから高音シャウトまでシャトル欄のようにせわしなく移動するそれはまさに混沌の象徴に他ならないのでは。
もう一つSWARRMの打ち出す「混沌」とは何かというとこれは一種の「悩み」じゃないかと思えて来た。SWARRRMの音楽には独特の美学があってそれは叙情性といってもよいかも。例えば苛烈な音楽性の嵐の様なその様に一瞬垣間見える美しいメロディがそれ。新作「FLOWER」ではこの叙情性がコード感のあるギターメロディなどで強烈にフィーチャーされているのだが、その萌芽がこちらの音源でも聞き取る事が出来る。こちらの方が漆黒の塊と言った印象なのだが、ブラックメタルを彷彿とさせるトレモロリフだったり、物悲しいピアノだったり(6曲目)、不穏につま弾かれるギターとそこにのっかる言葉にならない絶叫だったり(9曲目)、激しさとは別の感情豊かな表現がそこかしこに見て取れる。これらの暗い魅力を備えた音楽性はなんとなしに、悩みだったり迷いだったりを表現してとれるように思った。そうするとなんとなく凶暴な咆哮も手負いの獣の様な物悲しさと凄まじさを併せ持つように思えてくる。

激しさの中に感情をぶち込んでドロドロした音楽をやっている、なるほど言うのは簡単で多くの表現者が実現しようと四苦八苦しているのだろうが、そこにひとつの答えらしきもの(なぜならこのバンドだって未だきっと完成はしていないのだろうから)をだしてしまったのがひょっとしたらSWARRRMなのかもしれない。帝王と呼ばれるのも納得の貫禄。
歴史を学べる側面も勿論あるけど、一つの独立した音源としてあり得ないくらいの存在感があるアルバムだと思いますんで、激音好きは是非。可能ならば目下の最新作「FLOWER」とセットでどうぞ。


ちなみにこの編集版、リリースにあたって非常に面白い取り組みがされており、リリースライブに行くと一般販売に先駆けてCDをゲットできる権利を得る事が出来た。具体的には会場で提示されているメールアドレスに一方入れると優先権を得る事が出来るというもの。私もライブに足を運んだのだが、ライブの凄まじさに竦然とするあまりアドレスをチェックするのを忘れるという驚きのていたらくで一般販売でゲットしたんよ…
孤高という存在なんだけど、ライブではkapoさんが非常に楽しそうに演奏するのが非常に印象的だった。(音は凄まじいのと司さんがおっかなすぎたけど。)そこら辺のギャップもあってすごいバンドだと思う。またライブがみたいすね。

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