2016年6月26日日曜日

Hi'Spec/Zama City Making 35

日本は神奈川県のDJ/トラックメイカーの1stアルバム。
2016年にSummitからリリースされた。
Hi'Specは同じく神奈川県のヒップホップクルーSIMI LABの一員で、彼らの1st、2nd、それからラッパーOMSBのソロアルバムでも楽曲を制作・提供している。どのアルバムも非常に良かったので購入した次第。
Zama Cityというのは恐らく神奈川県座間市のことだろう。どうも出身地がこの待ちだそうな。米軍基地で有名。

トラックメイカーということでインスト曲もそれなりに入っているが(15曲中5曲)、ほとんどはゲストのMCを迎えている。SIMI LABの盟友OMSB、Rikkiが名前を連ねるがグループ外からも色々な人が参加しているのでとてもバリエーションがある。ただ当たり前のように作曲しているのはHi'Specなので統一感があり、かつ多彩という事で非常に楽しいアルバムになっている。
SIMI LABで今まで聴いていた彼の曲というのは1stならまさにキラーチューン(私がかれらのCDを買う切っ掛けにもなった)「Show Off」、2ndなら一点ゆったりとして豊穣な「Worth Life」あたり。良い曲だなというくらいの印象でしかなかったが(あとすごい酔っぱらって超熱く釣りの話をする人なんだなという印象)、こうやってフルアルバムでどっぷり浸ってみるとなかなか面白い事に気がつく。それはかなりノイジーな曲が多い。ヒップホップといえばその文化の一つにサンプリングがあって、それは元ネタと言われる既存の楽曲を解体、時には複数の曲からパーツを集めて再構成するという手法だが、ラップを活かすために概ねほぼほぼビートで構成されたシンプルなものが多いと思う。(それゆえシンプル故ごまかしがきかないタイトな印象だ。)youtubeでメイキング(メイキングのメイキングだ!)の映像を見ているとMPCを駆使している様子がうかがえるからやはりHi'Specもこのサンプリングという手法をメインに使っているのだろう。(インタビューを読むと元ネタはレコードのみのとのこと。)しかしその元ネタというのはジャズやソウルをそのまま使うというよりは、もっと近代的である。恐らく曲の相当尖った部分だけを切り取って使っているのだろう。オーガニックなビートであってもその上に乗る音が非常にソリッドで攻撃的だ。音数もヒップホップにしてはひょっとしたら多めなのではないだろうか。MVも制作されている「Phantom Band」を聴いてみてください。ぶっといビートにきしむ様な音が乗っけられている。全部パーカシッブで全身これリズムの様な楽曲に、チップしたノイズが次第に重ねられていく。ちぎられたホーンがメロディの断片を奏で始める。ビートは非常にミニマルなので自然と中盤曲にのめり込んでいくと酩酊していく様な陶酔感がある。この気持ちよさである。
この複雑で良く練られたビートに乗ってくるラッパーたちも非常に個性が強い、アクが強いと言っても良いだろう。特にこれもMVが作られているABC(Air Bouryoku Club)との曲は完全にどうかしている域で攻撃的でサイケデリックだ。あとはRIkkiとのコラボ作「Taco-Nasu-Boke」は攻撃的なリリックがいかにもRikkiなのだが、良く読んでみると実際は口は悪いもの非常に愛情にあふれた励ましのような雰囲気があって、ちょっと大人っぽくなったラップに相まって非常にかっこ良い。同じくOMSBは恐らくHi'Specと幼なじみなのかな?非常に地元愛に満ちた自伝の様な曲をしっとりとラップする。

というわけで非常にかっこ良い曲が満載で滅茶カッコいい。すごくオススメ。SIMI LABに興味がある人はまずはこっちを購入しても良いかもしれない。すでにそっちのCDを持っている人は迷わずこちら買ってもらって間違いない。

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