2014年10月19日日曜日

Today is the Day/Animal Mother

アメリカはテネシー州ナッシュビルの(FBみるとホームタウンはフロリダ州のオーランドになっているが)ノイズコアバンドの10thアルバム。
2014年にSunn o)))の Greg Andersonの運営するSouthern Lordからリリースされた。私が買ったのはボーナストラックが1曲追加された日本盤でこちらはいつも通りというかなんというかDaymare Recordingsから。

Today is the Dayは1992年に結成された比較的歴史のあるバンドで、かつては現Mastodonのメンバーが在籍していたりと 知っている人を多いのではなかろうか。実質フロントマンSteve Austin(同名のレスラーがいるらしいが勿論別人。)という人のプロジェクトである。Austinはレーベル(今は休業中かも。)もやっていて、たしかConvergeの「When Forever Comes Crashing」をプロデュースしていたハズ。バンド自体はメンバーチェンジが結構激しく、今のメンバーは3人(最近はだいたい3人編成が多いようだ 。)だが、Austin以外は2013年加入との事。
私は学生の頃たしかカオティックハードコアの文脈で知って、名盤と誉れ高い6thアルバム「Sadness Will Prevail」とライブ版「Live till You Die」がセットになった3枚組のセットを買ったのが出会いである。人生この1曲を選べと言われれば、前述のアルバムのタイトル曲「Sadness Will Prevail」を挙げるかもしれない(滅茶苦茶美しく悲しい曲なので皆さん聴いていただきたい。)位は好きである。一個前のアルバムが出たのがこの前の様な気がするが、調べてみると2011年だから時の経つのは速いものだ。
歴史が長い割にはあまり話題には上ってこない(今回日本盤出たのは結構すごいかも。)バンドの様な気がするんだが、何とも形容しがたい音楽性と所謂メタル文脈とは違う露悪性の所為かもしれない。 ノイズコアと称される音楽性だが、分解して聴いてみるとグラインドコアっぽくもあり、スラッジメタルっぽくもあり、メロディアスなロックであったりもする。全部が中途半端ではなく、Austinの頭の中の音楽を表現するために色々形を柔軟にかえている様な印象。その音楽性は悪夢的でとても取っ付きやすいとは言えない。とにかく嫌悪に満ち満ちており、それはこういった界隈では珍しくないのだろうが、例えてみれば他のバンドが観客とともに嫌悪を叫ぶなら、Today is the DayはとにかくAustinの嫌悪をひたすら リスナーが聴かされる様な孤高さがあって、なんとなく気安くお前の気持ち分かるぜって訳にはいかないのである。私の様なそれが好きな人にはたまらないのだが。

さて今作は10枚目であるがその権勢全く衰える事なく、今回も憎悪と厭世観にまみれた凄まじい音楽になっております。
全体的な音質はややもこもここもった感じがして閉塞感、アングラ感が出ている。
このバンドの常としてドラムが結構救いになっていて、手数が多くて比較的抜けの乾いた音質での良い連打は小気味よい。バスドラは結構えぐいが。
ベースは曖昧模糊とした唸りあげるものでギター音とシンクロするように良く動く。
Austinの手によるギターの音は流石というか結構音色的にも多彩である。乾きまくった固いハードコア音質のもの、メタルぜんとした若干湿気のある押しつぶす様な重たい音。アコースティックなものなどなど。このバンドの特色の一つでもある重たい音とぺなぺなした高音を織り交ぜたリフがなんとも嫌らしい。
さらに特徴的なのはボーカルスタイルで、しゃがれた声で吐き出すように歌い上げるもの、ドスの利いた低音シャウト、そして気の狂った猫の叫び声のような高音である。特に高音は精神がガリガリ削られる様な独特なものなのだが、慣れてくるとこれが不思議と癖になるから不思議だ。
全体的にはAustinの恨み節といった感じで時代を経る毎に衰えるどころが、偏屈にでもなったのか今回ますます盛んであり、リスナーはひたすたAustinおじさんの恨み言を聴かされる事になる訳である。一つ一つの音楽的な要素はそれぞれを突き詰めたエクストリームメタル界のバンドに比べれば抜きん出ている訳ではないが、兎に角Austinの混じりっけ皆無のぶち切れっぷりのスパイスがノイズロック、アートロックとさえ呼ばれるその音楽を結果的に悪夢的なものにしているから驚きである。そして屋台骨となるのが器用とも評価すべきそのソングライティング能力ではなかろうか。逆に凶暴過ぎても成り立たないとても希有な音楽性だと思う。ノリのある疾走感のある曲、一転速度を落とした低音の塊の様なスラッジ曲、前作の「Remember to Forget」を思わせる持ち前の暗いメロディアスさを堪能できる静かなアコースティック曲、バリエーションのある曲が絶えず蠢き続け得る悪夢のように一つの連なりになって全体的には違和感なくまとまっている。以前に比べると昨今はアートっぽい前衛さはいささか減退し、その分よりバンドサウンドでの表現の幅が広がっている印象。偏執狂っぽさは変わらないが。

日本盤はMelvinsの「Zodiac」の大分変質した様なカバーが収録されていてこれはとても格好いい。
思い入れのバンドのニューアルバム となると期待と不安が入り交じるところだが、今作は個人的にはもうちょっと暗いメロディアスさを押し出した楽曲がもう少し欲しかったところではあるが全体的には非常に楽しく聴ける。なんか嬉しい。というか10枚目なのに全くぶれていないところに喜びを抱くとともにSteve Austinって人はやっぱちょっとやべーなと再確認。
という訳で人の恨み節を聴くのが大好きという貴方には文句無しでお勧めできる一枚。快哉を叫びたいくらい。イエー、Today is the Day!
まあそんな感じなんでこの記事を読んだ貴方、まあちょっとまずは聴いていただきたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿