2014年10月18日土曜日

Kendrick Lamar/good kid, m.A.A.d city

アメリカはカリフォルニア州コンプトンのラッパーの2ndアルバム。
2012年にTop Dawg Entertainmentからリリースされた。
ラップ界の大物達をして西海岸の新しいキングといわしめたというからラップ好きのかたならとっくに知っているだろうミュージシャンで、このアルバムも世界で120万枚うりあげたからというからすごいものだ。
私はKendrickが所属しているグループBlack HippyのメンバーSchoolboy Qのアルバムやこの間紹介したFlying Lotusの新作での客演で彼を知った訳だが、2回となればなんかの縁だってことでこのアルバムを買ってみた。2枚組のデラックス版や日本盤も出ているが私が買ったのは通常盤。

どうもKendrickの出身地コンプトンというのは由緒のある犯罪多発区域らしく、そんな土地で生まれ育った彼の音楽にもその影響が強く出ているようだ。いわゆるギャングスタラップである。さてそんな前情報もありこっちも構えていざ聴いてみると、いきなりキリスト教のお祈りから始まるアルバムにまずはビックリさせられる。その後聴こえてくるラップはギャングスタっぽさ(自体私はよくわかっていないが、)は皆無でむしろ年齢(27歳だそうだ。)より大分落ち着いた男性の声ががやや浮遊感のあるアブストラクトな音楽に乗せて呟かれるようにだが、非常に力強く落ち着いたリズムをもって吐き出されるではないか。続く2曲目でも彼のペースは変わらない、強く打たれるバスとばっちりシンクロした彼のラップはすごく格好よい。トラックはどちらかというと落ち着いたもので否応無しにラッパーのスキルが問われるシンプルかつハードなもの。そこを力でねじ伏せる訳でなく、流れるようにしなやかに流れるラップ。思わず唸る様なクオリティだが、続く3曲目ではスタイルを変えてがなる様なひょうきんともとれるスタイルでいい感じの酔っぱらいの様なテンションである。しかしその口の早さには思わずこちらが舌を巻く。スキルの幅が広く、飛び道具風の変わり種も落ち着いて聴いてみたらきっちりものにしている。
アルバムを通じて暗いというか明るい曲調はあっても内省的なところがあって、それはどちらかというとストイックという形容詞がよく合う。トラックとラップで勝負というヒップホップの基本を押さえた堅実な作り。一番難しいのだろうがそこを平気の顔で繰り出してくるスキルにやはり圧倒される。
例えばこの曲なんだけど、 ラップを早口といったら全世界のラッパーが怒るだろうが、その早口の中にもリズムがあって一見ただ流れてくるはずの言葉が明確に跳ねているのが分かってもらえると思う。



とにもかくにもその落ち着いた真摯なスタイルに超ビックリした。勿論限界を超えるように背伸びはしているのだろうが、このハマり具合といったらちょっと他にはないのではなかろうか。全部が自分の言葉という感じで変な違和感がいっさいない。極めて自然体に聴こえる。

歌詞がついていないので分からないがリリックは抗争やハードな日常を歌ったものが多く含まれるという事だし、曲のアウトロに挿入された会話や銃の発射音などギャングっぽさはあるもののそこから一歩引いたところからラップをしている様な感じがあって、そこが私の様なリスナーにとっても非常に聴きやすい音楽になっていると思う。
普段ヒップホップ聴かない私でもすごいってことは分かるすごいアルバム。
普段ヒップホップ聴かない人でも是非どうぞ。ジャンルをぬきにしてとても良いアルバムを買ったと思ってます。超オススメです。

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