2014年8月10日日曜日

Tragedy/Vengeance

アメリカのオレゴン州はポートランドで活動するクラストパンク/ハードコアバンドの2ndアルバム。
2002年に自身のレーベルTragedy Recordsからリリースされた。
以前紹介したNightfellがとても格好よかったので、ボーカルのToddがやっているこのバンドにも手を出した次第。(このアルバムには「Night Falls」という曲があるね。)元々ToddがTragedy以前にやっていたバンドHis Hero is Gone(ユニオンで探しても見つからなくて店員さんに聞いたらTragedyの欄においてあったんだよね。)は好きだったし気にはなっていたバンドだったのでちょうど良い機会だった。

最近はクラストパンクバンドがちょっと流行っているんじゃないかな?と思う。Nailsも来日したし。Southern Lordからも黒っぽいハードコアバンドが結構リリースされているよね。まあ元々歴史のあるジャンルだし、たまたま私が注目しだしただけかもなんだけど。
このTragedyというバンドはそういった意味だとシーンの動向に関係なく結構長いことやっているベテランバンドと言えるんじゃなかろうか。

音の方はメタリックな重さをもったハードコアである。曲の尺は2分から3分台が多くハードコアというジャンルにしては決して短くはない。速さはあるものの、ただ闇雲に速いわけではないし、どっしりした中速もあればスラッジーなスローなパートも取り入れている。いわば曲を聴かせる作りになっている。音は荒々しく飾らないが、じっくり練られている様なそんな印象。
ドラムは重々しくも激しいときはよく叩く。ハードコアなビートは勿論突発的なブラストが格好よい。ベースは元気でよく動く。ドラムと相まって疾走感を演出。
ギターは音が分厚くて結構ソリッド。そういう意味では結構メタリックだが、演奏はハードコア由来でノリが良くて疾走感がある。高音がよく伸びる様なハードコアなフレーズが気持ちよい。一個前で紹介したSargeistもそうだったんだけど、このバンドもギターが結構メロディアス。ハードコアなボーカルとは良い対比で、よくよく聴いてみるとぱっと見の印象より大分親しみがあって丁寧な作りなのが分かる。トレモロリフというよりはもっと荒々しいけどやっぱりざくざく刻むメタルのリフとは違う爽快感がある。フィードバックノイズやキューンっていうスクラッチ?(あのピックで弦をこする奴)があざとい位ばっちりハマって格好いい。ボーカルはだみ声吐き出し系の野太いThe ハードコアなスタイル。
男臭い楽曲は力強いけどマッチョイズムは感じられず、むしろ垣間見える哀愁のあるグルーミィな曲調は内省的ですらある。その暗さをあくまでも感じたようにそのまま出しているように感じられてそこが好感触。その所為か楽曲が陰鬱までに落ち込んでいないから、あくまでもハードコアのスタイルで気持ちよく聴けるというのが良いね。

さてハードコアと言えば音楽の一ジャンルでもあるけどパンクの流れを汲んでいて、ただその音楽にとどまらずその背景にある思想というのがとても重要だと思う。ただスタイルだけハードコアやパンクというバンドも勿論沢山いて批判されることもあるけど、それはそれで良いのかもしれない。しかしこのTragedyというバンドは勿論反体制なアティチュードをもっていて、例えばブックレットにはこう書いてある「地球は死にかけているんじゃない。殺されかけているのであって、殺している奴らは名前と住所をもっている。」(訳したのは私だから間違っているかもしれません)。なんとも恐ろしい一文である。もちろんどんな言葉でもどう思っていようが関係なく吐けるものだが、「Vengeance」と名付けられたこのきっと大変な苦心をして作り上げただろうCDを聴くとすっと心に響いてくるから不思議なものだ。ただの言葉に説得力を持たすのはそれを言う人の行動だと思う。

という訳で格好よくもこちらをぶっ叩く様な凄みをもったアルバムである。渋い。とても真摯なアルバムであると思う。これはオススメ。

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