2018年12月23日日曜日

City Hunter/Deep Blood

どんなジャンルにでも異端というのが存在するものだ。
このCity Hunterもそんなバンドの一つかもしれない。
リリース元はYouth Attack Records。
ジャケットは妙に昔のアメリカ映画のポスターのような雰囲気がある。
覆面の男がアーミーナイフ(ボウイナイフかも)を構えているという構図で、これ実は過去の音源を見ると全部同じ世界観で統一されている。
数少ないライブ映像を見るとボーカリストは目出し帽をかぶっており、体格もあってかなりいかつい。

マスクをかぶるという行為が何を意味するのかというと、個人でなくなり何かになる、ということだ。
なまはげなんかはわかりやすい。Slipknotなんかもこの流れに属するのではなかろうか。彼らは人間でない別の何かになって、非人間的な音楽を鳴らすわけだ。
ところが犯罪者というのもマスクをかぶってこれは単に特定の個人であることを放棄している。
このバンドはその流れに属し、目だし帽をかぶりCity Hunterという誰でもない男になるのだ。

演奏に関しては曲が短めでアルバムトータルで18分たらず。これで全部で14曲。
とはいえ型にはまったファスト&バイオレンスなスタイルではなくて、オールドスクール・スタイルを踏襲しつつテンポを早く、そしてムダな装飾やリフレインは極力省くというやり口。
いわば自然発生的なファスト(なハード)コアで様式美というよりは単にぶっきらぼうなだけといった潔さ。様々なインプットは当然あるわけなのであえて流行には背を向けているのだろう。メロディアスさ?当然あるわけがない。

なんといってもフロントマンに華があるバンドで、見た目もさることながら声質も相当特徴的。
タフなハードコアスタイルでもないし、喚き散らすファストコアスタイルでもない、整然と低音が利いたデスメタルスタイルでもなくて、喉に引っ掛けるような発声方法で内にこもったブラックメタルに近いスタイル。
ある意味ミスマッチなスタイルなのだが、かなりうまくハマっている。
というのも演奏はきっちり突進力とマッシブさを抑えつつ、バイオレンスとまでは行かなくらいの温度で、いわばまだ飽和状態に達していないところに劇薬のようなボーカルを突っ込むと、これで完成という感じ。
とにかく全開、全部乗せ!ってわかりやすいのだけど、いろいろな色を混ぜてもきれいな色にならないように、この手のジャンルでもバランスが大事なのだろう。とくにハードコアは概ね足すではなく引く、ほうのジャンルではと思っているので個人的にはこのバンドのやり方はしっくり来る。
やり方的には(The Infamous)Gehennaに似ている。純正ハードコアでは醸し出せない危険な雰囲気も共通項としてあると思う。ただGehennaのほうが音的にはより粗野か。
よくよく今バンドを利いてみると特にギターが凝っていて、がむしゃらに弾いているようでいて実は不安感を煽るSE的な音の出し方をしている。結構技巧的だ。

覆面をかぶることとアートワークへのこだわりから、粗野な音楽性も緻密な計算がされていることが推測できる。
演奏面でのバランス感覚もその感覚を強化する。芸術性を徹底的に排すことで(ただしハードコアのタフさという美学にはたとは異なるやり方で与している)、あざとさが発生するのを防いでいるのだろう。

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