2018年9月2日日曜日

Tirzah/devotion

イギリスはイングランド、サウスロンドンの女性シンガーの1stアルバム。
2018年にDomino Recordsからリリースされた。
詳細な来歴はわからないが2013年にはEPを発表している。
Twitterでたまたま好評を目にして聞いてみたらよかったので購入した。

完全にデジタルなトラックの上に割と自由な感じに歌が乗るというやり方で、全編ダウンテンポだがところどころポップである。ただしエレクトロポップというには歌が前面に出ているし、かというとR&Bというにはテンション低めでいかにも無愛想である。赤裸々なトラックの上に否が応でも実力が露わになる歌声を披露しているのだが、どこか体温が低くて真意がつかめないのが魅力。私が買ったCDには歌詞カードはついてない。どうも「Straight up Love Song」ということらしいのだが、情熱的に恋心を歌っているわけでもなさそう、かといって悪ぶっているわけでもない
ビートは控えめながらかなりはっきりしている。そこに乗っかる上物が模糊としているが、別に神秘性を演出しようというのでもない。(いったことないのだけれど)それこそロンドンの曇天のような憂鬱な感じ。またはバスのちょっと汚れた窓から差し込む午後の日光だろうか。
ふと思うのだけどこのローな感じ(最近あまり聞かない言葉だがオフビート?)は別に意識しているわけではないような気がする。このはっきりしない感じ。そこに乗る自由奔放なんだけど、ちょっと気の抜けた歌い方こそこのTirzahの日常なのだろう。もちろん気負ってないわけがないのだけど、どうしても日記のようなプライベート感/日常感がある。MVを見ると(予算の関係もあるだろうけど)スマートフォンで手で撮影した動画を繋ぎ合わせたような手作り感のあるもの。
肩の力が良い感じに抜けているんだけど、決してやる気がないわけじゃない。(よく考えるまでもなくこの音源を作るには彼女と周りの人たちの相当の時間と情熱がかかっているはずである。別にこの音源に限らないわけだけど。)これが彼女のリアルであって、このやや気だるい歌は彼女のまっすぐな恋心(前述のストレイトアップを訳すとこうなるかな?)だったり、迷いや葛藤が詰まっているはずなのだ。落ち着いた歌を聞いてみれば、いかにも堂々と彼女の本気具合がわかろうというもの。シンプルなトラックを足がかりにまっすぐに耳に飛び込んでくるではないか。それは全く情熱的だ。
よく聴いている。とても好き。

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