2018年9月2日日曜日

Stimulant・Water Torture/Split

アメリカ合衆国はニューヨーク州ニューヨークのパワーバイオレンスバンドのスプリット音源。Stimulantはデビューアルバムをこのブログで感想を書いたこともある。ドラマーとギタリストの二人体制のパワーバイオレンスバンド。一方のWater Tortureはライブの動画を見ると三人組のバンドで、ドラム、ベース、ノイズとボーカルという編成。StimulantはWater Tortureのメンバーがより激しさを追求して結成したバンドらしく、そう考えるとWater Tortureの方はすでに解散しているのかもしれない。ドラムを務めるIan Wiedrick(NYのブルックリンでタトゥーの彫り師を営んでいるようだ。)は少なくとも両方のバンドに共通したメンバーである。Stimulantの方ではボーカリストがいないので彼がボーカルを兼任している。もう一人のメンバーもベースからギターに持ち替えた同じ人かな?と思うのだがどうだろう。(ライブ動画を見比べると似ているような気がする。)

全部で20曲が収録されているが、Stimulantは14曲、Water Tortureが6曲だからメンバーが同じといっても曲の作り方が違う別のバンドだということがはっきりしている。
順番は逆なんだけどWater Tortureはまずドラムの上にベースが乗っかるわけで音が当たり前に低い。いくらダウンチューニングしても音域というものが異なるわけで(ギターにベースの弦を張るのは無理だと思うけど、やっている人いそうだな…)ギター主体のバンドとはやはり音が異なる。当然曲の作りも異なっていて、こちらのバンドは曲が大分遅い。ほぼスラッジコアといっても遜色はない。印象としてはむしろ曲の速さを決めているのがベースで、持ったりとしたその長大さにドラムが彩りを加えているようなイメージ。音の数が少ない二人組編成なので、どちらの音も邪魔が入らず鮮明に聞こえる。ともすると単調になりがちなので、スラッジにしては曲の長さは短めにしており、またノイズの成分を入れることも色を足すという意味で納得感がある。
思い出したのは音楽性は異なるがBell Witchであちらもドラムとベースのデュオだ。多弦ベースを使っていてしかもドゥームメタルだから大分曲自体は違うのだが、ベースの使い方という意味では似ているとがある。それはやはり音の少なさであり遅さである。一発のアタックの影響、音の大きさがでかいためあまり乱発しないで、むしろそのでかい音波を途切れさせずに後ろに引き延ばすことが非常に格好良いのである。

続いてそのWater Tortureを音楽的にアップデートしたという現行のStimulant。当たり前のように速い。速いだけでなく短い曲の中で遅いパートもしっかり入れてくる。いわばより明暗のくっきりしたパワーバイオレンスらしいパワーバイオレンスであり、劇速パートを積極的に取り入れることでそのマニアックな音楽性の魅力をわかりやすく再提示している。ベースをギターに持ち替えたこともその音楽性の変遷に対応していて、流石にせわしなくそして音の数が多い。音自体も軽くなっていて、今度はとにかく速いドラムの上にギターリフが乗っかって巨大な地滑りのように肉薄してくる。ドラムがすごくて1曲のなかでまるで別の曲を演奏しているように奏法が変わる。これはやはり楽器の数自体が少ないことでそれぞれの動きがわかりやすいのだと思うし、ギターとドラムがうまく分離して動いているせいもあるのではないか。ガラスでできた家のように中身が丸見え。そんななかでブラストかけまくるドラムが非常に良い。パワーバイオレンスだ…。全く隠しようもないパワーバイオレンスである。ただ速く演奏しているというよりは音の密度が異常に濃密である。通常の曲をバカみたいな速さで演奏しているような趣があり、つまりどこか病的なのだ。何かに取り憑かれているか、何かから逃げようとしているかのようだ。どちらのメンバーもボーカルを取り、低音と高音のメリハリも効いている。なるほど速いところはより速く、遅いところはより遅くというコンセプトが前のバンドと比べるとよくわかる。

激烈な音楽を味わえることも魅力の一つだし、共通するメンバーの音楽的な変遷を1枚の音源で知ることができて、そういった意味でも非常に面白い音源だと思う。この手の音楽が好きな人は是非どうぞ。

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