2015年12月13日日曜日

Corrections House/Know How to Carry a Whip

アメリカのスラッジ/インダストリアルスーパーグループの2ndアルバム。
2015年にNeurot Recordingsからリリースされた。
2012年にEyehategodのMike、NeurosisのScott、YakuzaのBruce、MinskのSanfordによって結成された。どう考えてもスラッジ臭が漂ってきそうな面子でその期待は裏切られないのだが、そこに強力なノイズを加えたのがこのバンド。既に十分重たく遅いのになにもそこまでという無慈悲さはバンド名(Correctionsは監獄の意味だからHouseをつけて獄舎だと思う。)やアートワークにも如実に表れているが、シンガーだけではなく詩人としても活躍するボーカルのMike IX Williamsの感性が働いているのだろうか。(「鞭を運ぶ方法を知れ」というタイトルには一体どういう意味が込められているのだろう。)

基本的には前作を踏襲する音楽性で間違いないと思う。
このバンドを聴いてつくづく面白いなと思うのは無機質と有機質の強引とも言える融合感。スラッジというと色んなバンドがいるがどれもその音楽性は生々しい。嫌悪憎悪ドラッグ嗜好性、おもに負の感情がハードコアなアティチュードでもって吐き出されるのがその心情かと思うが、そこにインダストリアルの要素を持ち込んだのがこのバンド。ここでいうインダストリアルは例えばMinistryだったりGodfleshだったりを彷彿とさせる、一撃一撃が不自然なまでに重々しいマシンビートを基調に、ギリギリギチギチした比較的分かりやすいノイズを投入している。要するに無機質で野蛮さを投入するための音使いという感じで、繊細な芸術性とは無縁である(結果芸術性を獲得しているのは無論だが。)。
徹頭徹尾無慈悲な音世界かというとここからがこのバンドの変わったところで、例えば放心した様なアンビエントな楽曲だったり、アコースティックギターを基調とした土臭いカントリーな楽曲だったり、Bruceのなんとも哀愁のあるサキソフォンだったり、そういった感情豊かなアウトプットをインダストリアルの土台にさらにどっかとのせてくるスタイル。いわばアクの強い面々が個性的すぎる要素を掛け合わせる実験室としてのこのバンドは、結果見事にその独自性を獲得している。奇形の実験音楽としてではなく、このバンドにしか出来ない唯一無二の音を完成させているその秘訣は、たぶん元々負の方向性に舵を取っているもののスラッジの心情が根底にあるからなのかもしれないな、と思った。多様な音楽性を取り入れつつもスラッジというぶっとい軸で一本通してやるとこんなにも上手くまとまるのである。だから地獄の様な音像であっても血が通っていて、それがマシンビートを通じてキチンとこちらの血を踊らせるので。そういった意味ではラディカルななかにもベテランたちの凄まじさを感じ取ってしまうのである。職人気質というかいぶし銀でぶれてないなあ〜という感じ。
唯一いうとしたら前作はタイトル曲がドローンにMikeのポエトリーリーディングがのるという形で、ぽつぽつ語られるアメリカの荒廃した風景に何故か日本でぬくぬく生きている私が泣きそうになるという珍妙な出来事が出来して、それ以来超ヘヴィロテなんだけど今作では全編攻めの姿勢でその種の曲は入っていないんだよね。でも今作はラストでScottの歌声もたっぷり楽しめるし(超良い曲なんだこれが!)、全然良いですね。

2曲目聴いた時にやっぱりスゲエなと放心してしまった。なんだろうな、始めの印象よりずっと感情豊かだなあと聴くたびに思ってしまう素晴らしい音源。意外にあったかいんだよ〜是非どうぞ。

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