2015年12月19日土曜日

ユッシ・エーズラ・オールスン/特捜部Q -吊るされた少女-

デンマーク作家によるデンマークを舞台にした警察小説。
過去の未解決事件を捜査する特捜部Qシリーズの第6弾。

デンマークのボーンホルム島で40年警察に勤め上げたクレスチャン・ハーバーザートは自分の退官式で拳銃で頭を打ち抜き自殺した。彼は17年前少女がひき逃げされ樹につり下げられ殺された事件を執拗に追っていた。死の直前にデンマーク署の地下室で未解決事件のみを扱う特捜部に電話したハーバーザートはすげ無い対応に絶望したという。否応無く事件に引きずり出された警部補カール・マークら特捜部の面々は一人の男が私生活を犠牲にしてまで解決できなかった難事件に挑む。

人気シリーズも遂に6冊目。馴れた事もありたしかに始めの2冊のインパクトは無いのだが今作を読んで改めてこのシリーズの面白さを再発見したと思う。
この特捜部Qシリーズの魅力は沢山あるけど、まずはひたすらやる気の無い主人公カールと謎のアラブ人アサド、奔放かつ辛辣なローセ(二人ともミステリアスな要素がある)との軽妙なやり口。これによって堅苦しい警察小説にない雰囲気を獲得していると思う。のどかといったらあれだが。ただ彼らが取り扱う事件というのがこの上なく凄惨である。この凄惨が何かな時になっていたのだが、今作を読んで思ったのは2つ。
始めは暴力の使い方で、例えばバラバラにされた、大量に殺された、サイコパスなどの派手な要素は意外に無い。今作でも切っ掛けになるのは一人の少女とその轢死である。ど派手に目を引く様な作風ではない。また警察小説だが発砲するような暴力性はほとんどない。このほとんどが重要で大抵終盤くらいにカールたちに暴力が襲いかかるのだが、これが本当油断したところにくるくらい唐突なのでとても効果的に見えてくる。暴力の使いどころを作者がきちんと分かっているなと思う。
もう一つは陰湿さだ。今作を読んだ人に思い出してほしいのだが、特にこの物語ではまともな人間が出てこないでしょう。読後感と主人公たちのキャラクターにいい感じに中和されてしまうのだけど、思い返してみると本に出てくる人物たちは悪意とはいわずともどこかしら上記を逸している。それもサイコパスというのではなくて、普通に暮らしている人たちのエゴとそこから一歩、もしくは数歩すすんだような、想像のできる嫌らしさである。これが相当だ。身勝手、愛憎、執着、読んでいる時にげんなりするくらい負の感情のオンパレードである。よくもまあこんな暗さを含んだ小説がベストセラーになるものだとなかばあきれてしまうくらいである。(勿論言うまでもなく面白いからだ。)この作者はなかなか意地の悪い人かもしれないよ。
面白いなと感じる物語は沢山あるし、上手いなと思わせる作家もいるが、物語の作り全体を通してここまで完成度が高いのはちょっと珍しいのではと思う。

相変わらずのクオリティで楽しめた。
あくまでもエンタメ小説の枠に入りながらも薄皮の裏側にある人間のダークサイドを描いた小説。気になる人は1作目から是非どうぞ。

0 件のコメント:

コメントを投稿