2014年7月26日土曜日

Ben Frost/By The Throat

オーストラリア出身、現在はアイスランド在住の音楽家/プロデューサーのBen Frotsのアルバム。(何枚目かは分からん。)
2009年にBedroom Communityからリリースされた。
先日紹介した「A U R O R A」がとても良かったので、さかのぼる形でその前作を買ってみた次第。
強烈なライトに照らされた狼達が駐車場の様なところにたむろっているジャケットが何とも印象的だ。内面にもブックレットにも狼達がいっぱい。アイスランドには狼が沢山いるのかな?毛がもさもさしていて触ったら気持ちいいんじゃないだろうか。噛まれるだろうが。

前作の印象ではとにかく冷たいノイズの嵐の様な作風で、暴風にもにたそのノイズの合間に流麗なメロディが見え隠れする様なアルバムだった。その前作にあたる今作はちょっと趣が異なる。暴力的とも言えるインダストリアルな金属質ノイズは勿論こちらでも伺えるのだが、嵐の様な凄まじさは鳴りを潜めていて、より不安をじわりじわりとあおる様な使い方をされている。最新作ではノイズが音の壁の様なシューゲイズ要素が強めだったのに対し、今作ではよりドローン的な要素が強いようだ。従ってよりアンビエントよりで、
ノイズ以外の成分が前面に押し出されている。何かというと「A U R O R A」ではかいま見れるだけの様な、つかめそうでつかめなかったメロディの部分である。メロディといっても一般のポップスなどに比べたら儚く消えそうなもんだが、この手のジャンルだったら結構饒舌な方じゃかなかろうか。恐らくピアノ由来の何とも言えない儚げなメロディが美麗な旋律を奏でる。やり方と言ったらいかにも彼流のそれであって、必要以上に大仰でもメロディアスでもない。夢の効果音のように儚くはっきりしないのが、ふと気づくとなっていることに気づく様な、そんな感じでならされている。それにほれぼれと聞き込んでいると、静かに不協和音、つまりノイズが侵入してくる。つまり非常に対比が分かりやすく表現されたアルバムだといえる。ノイズというのは不穏、不安の象徴みたいなものであって、せっかくきれいだったものが、病魔におかされるようにゆっくりとその形を変えていくのは、妙に退廃的だ。
そして狼達の遠吠えが複数の曲でサンプリングされている。まさにハウリングである。妙に尾を引いて悲しげに伸びるそれは、何となく人間に対しては一種の恐れを抱かせる。原始の記憶だかなんだか分からんが、考えてほしい。一人で荒野で聴いたら結構恐いっすよ、これは。人の声を入れないで、あえて獣の声を入れるあたり、ジャケットのアートワークもそうだが、なにかしらのメッセージかもしれない。

「A U R O R A」が気に入った人は是非どうぞ。
こちらの方が曖昧模糊としているが、その分不穏でもある。
来日もするそうです。行きたいなー。これ大きい音で聴いたらたまらんだろうな。


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