2014年6月1日日曜日

Retox/YPLL

アメリカはカリフォルニア州サンディエゴのハードコアパンクバンドの2ndアルバム。
2013年に名門EpitaphとThree One G Recordsからリリースされた。
The LocustやSome Girlsなどのラウドかつ奇天烈なバンドのフロントマンJustin Pearsonが中心になって2010年に結成された4人組のハードコアパンクバンド、それがRetoxである。
私は2011年にリリースされた彼らの1stアルバム「Ugly Animals」をもっていて、久しぶりに聴いたら偉い格好よかったため昨年リリースされた本作に手を伸ばしたのであった。

Justin Pearsonといったら一番有名なのはやはりThe Locustであろうか。バンド名通りイナゴの衣装に身を包み、目まぐるしいハードコアをプレイする独特なバンドで、これもやはり当時の日本ではカオティックハードコアの文脈でよく登場し、私もご多分に漏れずタワーレコードで彼らのCDを買ったりしたのであった。ふざけているのか本気なのか(多分両方)わからないようなセンスでもって、訳の分からない長ーいタイトルのショートカットチューンが並び、なんといっても妙にピコピコしたシンセサイザーを取り入れているのが持ち味の面白いバンドである。
そんなJustin Pearsonが組んだ比較的新しいバンドがRetoxであるが、これがThe Locustから比べると真っ当なハードコアをプレイする。(けどやっぱり相当かわっている。)ボーカル、ギター、ベース、ドラムのオーソドックスな4人編成でパンクといっても初期衝動をそのまま音楽にしたみたいなとにかく五月蝿く、速く、あまりメロディアスではないパンクである。

Justinのボーカルはこのジャンルでは珍しくしゃがれてもいない、ドスが利いている訳でもない少年の様なちょっと甘くすらある幼い印象のあるスタイル。といっても終始これが叫んでいる訳で、つまりすでにとてもやかましいのだ。彼がボーカルが取るバンドは彼の声故に聴いてすぐにそれと分かる混乱性をもっている。これは一つに魅力である。
ベースは硬質でベキベキしている。ドラムと相まって打楽器のように刻んでくるその様はすごく格好よい。また疾走する際は一点水面に潜るようにその音質を変え、中音でもこもこした音でもってグルルルルルと迫ってくる。これは中々技巧派である。
ギターが独特で低音、中音、そして突き刺す様な高音を使い分ける。中でもノイジーな高音パートが曲にカオティックな印象を与えている。一秒後に何をやっているのか分からないスタイルで、低音が聴いたグルーヴィなリフを弾いていたかと思えば、スクラッチを織り交ぜ、あっという間に高音パートに移行する。ブラックメタルとはいわないが、嵐のように弾きまくるトレモロリフが格好いい。断絶した様なハーモニクスも多用して、主にリスナーに混乱をもたらしている。面白い。パンクって演奏が単調でツマラン(今更そんな奴いるのか?)という貴方、是非聴いてみて欲しい。
そしてドラムである。私は楽器は全く弾けないんだけど、このバンドとにかくドラムがすごくない?めちゃ叩きまくる。べつにメタルみたいに露骨に戦車みたいなセットをブラブラ(このスタイルも大好きだ!)弾く訳ではない。多分そんな大仰なドラムセットではないと思う。でもすごい。叩きまくる。そして変幻自在である。妙にキャッチーなリズムから、疾走パートでも変なオカズ我は行っているような複雑なパートまでさらっと裏ですごいのを叩いている。これが超気持ちいい。多分ギターが好き勝手出来るのは、ドラムとベースがしっかりしているからじゃないかと思う。
こいつら4人がアンサンブルになって責め立て来る楽曲と行ったらぱ、パンク?っていうほどのカオスで最早これはノイズである。なんていうか混乱していき急ぎすぎている奴がすごい向こうから何かわめきながら走って来て途方に暮れている周りをぴょんぴょん飛び回って、あっという間にまた向こうに走り去っていく様な感じ。一言でいうと超楽しい。自分も走ってそいつの後を追いたくなる様な感じ。この気持ちって何だろう。彼らが伝えたいことって何だろう。って気になる。特別恐ろしい訳でも、悲しい訳でもない。でもなんだか感情にあふれているってことは分かる。

ある種のハードコアパンク特有のマッチョさは皆無である。それのカウンターである妙にインテリ文学青年めいた恨みがましさも無い。訳の分からないブチ切れた感情をパンクの枠に当て込んだやっけぱちな感じで、たとえるなら唯我独尊か。ただし孤高ってほど気取っている訳ではない。自然体の潔よさ。

というわけで本作もめちゃ格好よい。
もうちょっとみんな聴いてもいいんじゃないかと思うんだ。
超オススメっすよ。

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