2014年4月27日日曜日

Cult Leader/Nothing for Us Here

Gazaというアメリカはユタ州のバンドがあって、粗いグラインドコアにスラッジの泥沼の様な悪意を無理矢理コラージュした様な音楽性でもって2004年から2013年までの活動で3枚のフルアルバムを発表。バンドはその後ボーカリストが女性への暴行の角で訴えられ解散。
私は幸いなことに彼らの1stアルバム「I don't Care Where I Go When I Die」に偶然であって以来のファンだった。特に最終作となったアルバム「No Absolutes in Human Suffering」は過度の暴力性と放心した様な諦観がないまぜになった感情の極北ともいうべき恐ろしいもので、現時点で人生のベストを選ぶなら確実にリスト入りするくらい気に入っている。
だからアルバム発表後間を空けずにバンドが解散を宣言したときは、私の大好きな音楽というものが遂に日の目を見ないまま、大衆という訳の分からないものにその膝を屈してしまったようで大層残念で、何ともいえない喪失感に苛まされた訳だ。
その後事情が事情なだけあって元Gazaのメンバーが組んだバンドがこのCult Leaderである。
このたび2014年に目出たくかのConvergeのジェイコブが運営するレーベルDeathwishから1stEPがリリースされる運びになった。
私はFacebookで小出しにされる情報や、新曲などを聴きながら大分前からこの発売を心待ちにしていたのでまずこの発売自体がとても喜ばしい。

Cult Leader は実質ボーカル不在のGazaが名前を変えてその音楽を弾きついた様なバンドで4人中3人がGazaの元メンバー。ベーシストがボーカルにシフトし、あたらにベーシストを迎えた形になり、既にEPの発表だけではなくかなり頻繁にライブを行っているようだ。
基本的には音楽性もGazaからの直線上にある。つまりメタルというよりはハードコア由来が強い酷くノイジーなハードコア/グラインドコアに何ともいえない放心した様なスラッジパートを突っ込んだ凶暴なものである。
1曲目「God's Lonely Children」、フィードバックノイズにまみれた絶叫が響き渡るその音楽性、これはもう聴いた瞬間にやっぱり間違いねえなと思った訳である。間髪入れずに始まる2曲目「Flightless Birds」のこじる様な独特のギターリフ、こりゃあGazaだ。バンドの名前が変わっても全く日和ることなく凄まじい密度で復活してきた。
ボーカルは変更したこともあり、さすがにちょっと質が変わったが(野太さがちょっと減少した)、基本はのどに引っ掛けて絞り出す様な苦しそうなハードコア由来のスクリーム。
ベースは新メンバー。Gazaのそれに比べてもう一歩前に出て来た印象で、太く低いものの分離が良い音で露骨に唸りまくっているのが分かる。
ドラムは相変わらず叩きまくりのスタイルで、独特のキンキンいわすシンバルの連打が滅茶苦茶格好よい。
ギターは相変わらず無理矢理こじった様な歪んだリフでギョムギョムしている。低い低音とキャラキャラした高音リフへの移動速度が凄まじく、楽器が出来ない私からしたら何をやっているのかよくわからない。一方でためる様なパートでのメリハリがすばらしく、単純に頭を振っていて気持ちよいことこのうえなし。フィードバックノイズも多め。
相変わらずアンサンブルによる演奏は凄まじく、突っ走ったかと思えば、どろりと停滞している。放射状に音が放出される様な広がりがあるのに、異常な緊張感が呼吸が苦しい。ある種拷問の様なその音楽性が何故こんな気持ちよいのか分からない。
暴力、死、恐怖、悪魔、サタン、死体、憎悪、ねたみ、嫉妬およそメタルやハードコアは負の要素を燃料にその過激な音楽性を研いで来た。暴力そのものを感じさせるバンドは多々ある、しかしその暴力の後の破壊の惨状をどうしようもないような気持ちで眺めている様な空虚さを感じさせるバンドとなるとそういないのではあるまいか。
(Gaza)Cult Leaderは常に暴力からその先のビジョンを見せつける様な音楽性で活動して来た。今作でもそのどうしようもない空虚さが嫌になるくらい満ちている。
凄まじい音楽性でもって私は今回もその景色に魅了されてしまうのである。
フルアルバムを作ってくれと切に願う。
そして世にはこんなすばらしい音楽があるので、皆さんは是非是非聴いてください。

0 件のコメント:

コメントを投稿