2018年6月17日日曜日

Capitalist Casualties/Subdivisons In Ruin

アメリカ合衆国はカリフォルニア州のファストコア/パワーバイオレンスバンドの2ndアルバム。1999年にSix Weeksからリリースされた。1986年に結成されたこの手のジャンルでは知らない人はいないバンド。残念ながら今年ボーカリストのShawn Elliotが亡くなってしまった。私はHellnationとのスプリットしか持っていなかったのだが、最近Fast Zineパワーバイオレンス特集(非常に面白いので是非どうぞ。)を読んでちゃんと聞かないと!と思っておっとり刀で購入したのがこちら。(このアルバムは新品で買える。)

20曲を17分で駆け抜ける正しくパワーバイオレンスなアルバム。
リリースから20年近く経っているわけで当然昨今のパワーバイオレンスとは結構趣が異なり面白かった。当たり前だがこちらがオリジナル。ここからいろんな音楽が広がっていったのだ。
基本的に全編突っ走るタイプ。今風の速いパートと遅いパートを曲の中に同居させることはしない。またドラムもブラストを叩くわけではなくて抜けの良いタムをスタスタスタ刻んでいくタイプ。ギターの音もそこまで重量感があるわけではなく、またメタリックな音質、さらにはザクザク刻んでいくようなリフもほとんど使わない。あくまでも疾走感が意識されており、ハードコアをできうる限りの速度でプレイしたような感じ。まさにファストコア。(パワーバイオレンスという単語は最近よく聞くけど、逆にファストコアとあまり聞かないような気がする。)
初めは思ったよりパンキッシュだな、と思ったんだけど、よく聞くとただただ速度至上主義で既存のシンプルな曲を早回しでやっているのではないとわかる。一番わかりやすいのはリフの凝りよう。これ例えばスリーコードをばーばーばーとただストロークするようなものではなくて、どの曲も緩急をつけたリフがきちんと用意されている。ただただ低音弦を弾くのではなくてちゃんと高音も使っていて、これがちゃんと拍にきっちり収まるように演奏している。ドラムはなるほどブラストは叩かないにしても曲の中で頻繁にテンポを変えている。パンキッシュなツービートやマーチっぽいフレーズなど結構多彩。私の耳の問題かもしれないけどあまりシンバル系は多用しないみたい。
パワーバイレオンスというと字面からしてはちゃめちゃなことをしそうで、まあ実際そうだったりするけどCapitalist Casualtiesに関しては基本は結構かっちりしていると思う。きっちり練習量あってのはちゃめちゃぶりというか、なので単に奇をてらっているのではなくて、ハードコアの特異な進化系として説得力があり、結果魅了される人が続いたのかなと。この初期衝動にあふれたパワーバイオレンスの魅力はというとやはり性急さだろうか。今のバンドはとにかく速度という意味では激烈だけれどとにかく堂々としている。Capitalistは「ぼやぼやしているとヤバイ、なんだかじっとしていられない」というちょっと病的な焦燥感があってヒリヒリしていて、結構別の意味で危ない。これはボーカルの腕によるところも大きいと思う。ハードコアにおける「カオティック」であったり「病的さ」であったりは表現であってそのまま垂れ流すものではないから、やはりきっちりとした基礎がものを言うのではなかろうか。
17曲、20曲あたりは遅いパートが入っていてパワーバイオレンスの当時のこれから(つまり今の姿)の萌芽が感じられて面白い。

パワーバイレオンスは結構流行り廃りというか進化があって(すべてのジャンルでそうなのだと思うけど。)Capitalist Casualtiesを聞いておけばこのジャンルのすべてがわかる、というのではないかもしれないが、このジャンルが好きな人はもちろん聞いておいた方が良いだろう。2014年に来日した際に見にいっておけばよかったな。

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