2015年10月3日土曜日

Knave/Discography of Darkcore-X

日本は大分県のダークコアバンドのディスコグラフィー盤。
2015年に自主リリースされた。
独特の3つ折トールケースでつや消しブラックに銀が鈍く光る凝った装丁。結成10周年を記念し、今までにリリースしたデモ音源、1stミニアルバム、Grind Bastards!のコンピに収録された曲群に未発表曲を1曲追加した全22曲。


Knaveを初めて知ったのはyoutubeの映像である。
路上ライブである。私はだいたいメタルの中でも特に激烈な個性を持ったバンドというのは現実から乖離している分、真っ暗な深夜のライブハウスがある種の舞台装置として必要というか、一番映えるのではと思っていた。しかし彼らは曇天の下恐らく真っ昼間から人の行き交う路上でもってライブを演奏していたのである。それも顔と体にはコープスペイントを施し、鋲を打ちまくった革ジャン、ガンベルト、ニードルのついた衣装と完全にブラックメタル全開の格好で持ってである。私は自分の未熟な認識を恥じるとともに、このバンドのいわば一番自分たちから遠いところに打って出るというその一歩も引かない姿勢に大いに感銘を受けたのである。素直にかっこ良い。
音源を探したものの売り切れ状態で歯嚙みしていたところ今回のリリースという事で飛びついた次第。

自分たちの音楽を持ってしてダークコアと称するその性質というのはやはり強烈であって、なるほどこれはダークコアを自称するのも納得の出来。
もっとブラックメタル然としている音楽を想像していたのだが良い意味でそれが裏切られた。ぱっと思い浮かんだのはグラインドコアっぽいなと。要するにストレートかつ重たく速い。音楽性は攻撃性に満ちている。ブラックメタルの持つ(本当に色んなバンドがいるので)儚さや内省性というのはあまり感じさせず、またいわゆるトレモロに彩られた美メロというのもほぼほぼ無い。とにかくもっと邪悪で勢いがある。時間と空間を真っ黒に染め上げていく暴風雨のようである。
音質は良いとは言えない。ずたずた突っ走るドラムはハードコア的である。ブラストビートは素直に気持ちよい。曲によっては冒頭にクリーンなトーンでアルペジオをみせる事もあるが、基本的には低音に特化したギターは人数が少ない分音の厚みが半端無い。ぎゃりぎゃりとした湿りっけのある音でひたすら黒い。時にリフが判別できないほど。ボーカルは金切り声を一歩か二歩進めた超音波ボイスの用で「キィイイイイイイ」とまさに耳をつんざく悲鳴のようだ。これはヤバい。常軌を逸している。たまに入る低音グロウルに何かしら落ち着きを感じてしまうほどだ。
短くて1分以下、だいたい3分前後でほぼほぼ突っ走りまくる。(恐らく)基本バンド編成のみで構築されていて余計な音の付け入る隙がない。その音楽性はとにかく喧しいとしか言いようが無い。真っ黒いノイズ。この徹底的な荒廃は例えばGazaだったりに少し似ているところがある。美的感覚を決定的に欠いたその容赦のない音楽性が、結果的にある種の退廃的な美(問いって良いのか分からないが)を獲得している様な希有な音楽性である。なるほどこれがダークコアかと思った次第。

予想と違ったがその恐ろしさに呆然とした音楽体験であった。容赦ない。黒い引力。これはカッコいい。殺気に満ちた音楽を聴きたい人は是非に。オススメ。

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