2016年1月31日日曜日

ロバート・E・ハワード/魔女誕生 新訂版コナン全集2

アメリカの作家によるファンタジー小説。
さてコナンです。ロバート・E・ハワードはかのラブクラフトのお弟子さん(正確には違うのかもしれないですが)というイメージもあって「黒の碑」やクトゥルーもののアンソロジーでその物語に触れてその魅力を楽しんだもの。そしてハワードというとやはりこのコナンものが著名で「剣と魔法」のヒロイック・ファンタジーというのはこの一連のコナンシリーズから始まったという事になっているから文学的な歴史から見ても極めて重要な作品である事は明白。(この英雄王コナンから名前を借りたドゥームメタルバンドもありますね。)アーノルド・シュワルツネッガー主演で映像化された映画も有名。かくいう私も小学生の頃午後のロードショーで見たもの。ちょっと刺激的なシーンもあってドキドキした思い出が。
興味はあるのだけど「剣と魔法」ファンタジーには全く知見が無くて、よもうよもうと思って後回しにしていたんですが、このたびようやっと重い腰を上げて購入。ちなみに何故2巻からかというとすでに1巻が売り切れていたからなのでした…

全部で5編収録されていおり、後に(きっと)英雄王となるはずのコナンも物語によって傭兵だったりならず者集団の長だったりとまだまだ第一線でしのぎを削る一兵士といった趣。黒く切りそろえた総髪に燃える様な青い瞳、盛り上がった筋肉は鋼鉄のよう、手足は長くしなやか、学は無いものの野生の勘は異常に鋭く弁は立ち戦場では指揮官顔負けの采配、大食漢で酒を浴びるように飲む。目上のものに対しても物怖じする事無く、自分の命の窮地でも一切ひるまない男。というまさに男の中の男。これでもかという魅力にあふれた男の一つの理想像なのかも。
ともするとこんなヤツはいないよ、と冷めてしまう様な造形だがこのコナンという男、豪放磊落という事がぴったりで不思議と好感を持てるから不思議で、なんといってもここがしっかりしているから物語が面白い。例えばコナンは英雄の多分に漏れず好色。物語には必ずと言っていいほど美女が登場するのだが、コナンは彼女たちに魅力を感じつつも決して力ずくで意のままにする様なことはない。意外に紳士。じゃあ良いやつかというと決してそうでもない。自分の命を救ってくれた恩人であるならず者集団の長をあっさりと排斥してしまったりする(ただし殺しはしない)苛烈さを持っている。要するに乱世の時代の寵児の様なもので生命力というものがもの凄い。清濁織り交ぜたその躍動する生命に、現代人の私たちが強烈に当てられてしまう。思うにタダの善人ならきっとそこまで好意はいただけないだろうと思う。
そんな男が長剣でもって悪漢ども、罪人どもに加えて、魑魅魍魎どももばっさばっさきっていく。は虫類めいたフリークス、そして鋼鉄の体を持つ異なる次元からおりて来た邪神までもその腕で立ち向かっていく。文字通りの死体の山と血の川を築いていく。コナンに負けず劣らず生命力に満ちあふれた野蛮な世界、主人公を凌駕するくらい魅力的なのがこのハワードの書く架空のハイボリア世界だろう。冒頭の地図を見ただけでワクワクしてくる。地図のほとんどのが未知の未開の世界で、謎があり、その背後には口にするのも恐ろしい名状しがたいものがうずくまっている。ここはラブクラフトも感嘆するのも頷ける闇の領域である。

荒野に剣戟がこだまし、うめき声と血がほとばしる熱い小説。あっという間に読んだ。とりあえず現状買える分は読むつもり。

Anopheli/The ache of want

アメリカはカリフォルニア州オークランドのネオクラストバンドの2ndアルバム。
2015年にAlerta Antifascistaからリリースされた。
私が買ったのはデジタル版でこちらは現時点ではBandcampでname your priceになっている。
元Light BearerのAlexが新しく始めたバンド。
メンバー構成が変わっていて6人編成でオーソドックスな楽器陣に加えてチェロ担当とアコースティックギター担当が一人ずついる。ロックだろうがメタルだろうがストリングスをバンドサウンドに導入する事自体は珍しくないだろうが、あくまでも追加のアレンジという感じで選任の奏者がいるのはあまり聴かない。(名前は忘れたけどバイオリン担当がいるパンクバンドがいた様な気がするな…)アコースティックギターに関してもギタリストが兼任というのが通常だろうが、このバンドでは選任。

オフィシャルではエモクラストと名乗っていて、全く知らない人に説明するにはこちらの方が音楽性が分かりやすいかもしれない。クラストというと苛烈な音楽性を想像するが前述の楽器陣も加わって非常に表情豊かな音楽をならしている。勿論なんといってもクラストなので激しさもあるのだが。
全6曲収録されていて、アコースティックギターが美しいインストをのぞき後の5曲はすべてだいたい7分台。スラッジの要素は勿論あるのだが牛歩っぽい遅鈍さはなく、どちらかというと練られた曲展開で激しくも聴かせるハードコアといった趣。インテリジェンスというとどうしてもメタリックで頭でっかちのイメージもあるのだが、個人的には非常に知性的な音楽だなと思った。こういうとき出自ハードコアがだから技巧自慢にならないのがとにかく好印象だ。同じ事をメタルバンドがやったら曲の長さは倍になるんじゃないかな。(勿論それはそれでカッコいいのだろうが)
いかにもクラストな男臭いだみ声ボーカルにギャアギャアしたボーカルが絡むツインボーカルは飽きさせない要素だが、歌のメロディ性はどちらかというとそこまで強くない。ボーカルも楽器の一つという感じで曲全体で聴かせるイメージ。アンサンブル全体で突っ走るのがカタルシスだが、常に全開で突っ走っている訳ではなく緩急をつけて高低を付けている。ためる様なアンビエントパートの後の疾走はこみ上げてくるように熱い。アンビエントパートはアコースティックギターを押し出したりしていてポスト感の影響も色濃いが、そちらのジャンルに比較すると短めで良い意味で凝っている訳ではない。静からの動はなるほど威力強めだが、なんといってもチェロがこのバンドの叙情性を飛躍的に高めてくる。とにかく伸びやかでまろやかな輪郭の、太く暖かい音がバンドの外郭をぶわっと一枚分厚く覆っている様なイメージで、こいつがエモーショナルさを倍加させている。弦楽隊のメタリックでエレクトリックな音とは好対照だし、チェロというのは(弾き方もあると思うけど)出す音が連続していて、途切れる事無くその音色を変えていくから、ドラムやギターなどの緩急を意識して旧譜やミュートがある弾き方と対照的なんだよね。ベースっぽいけどやはり途切れる事もあるそれとは一線を画す。
エモーショナルというのは感情的という意味だけど、このバンドの場合は激しさでもって一つの感情に特化したというよりは、複雑な感情をバンドアンサンブルとチェロなどで表現しようとしているように感じた。クラストの持つ激しさがにじんで(こう書くと悪く聴こえるかもだけどここでは良い意味で使っています)、色んな感情が溶け出しているようだ。抽象的になっているのかもしれないが、その分激しさだけでは得れない境地で訴えかけてくる。

乗り遅れた感じ聴いてみたが話題になるのも納得の出来。まだの人は是非どうぞ。

Twitching Tongues/Disharmony

アメリカはカリフォルニア州ロサンジェルスのハードコア/メタルバンドの3rdアルバム。
2015年にMetal Blade Recordsからリリースされた。CDを購入。
前作から2年を経てのリリース。2010年に結成されたバンドで来日経験もあり、ギタリストTaylor YoungはNailsでドラムを叩いている。ちなみにボーカルのColin Youngとは兄弟。

Twitching Tonguesはとあるブログでその名を知って以来のファン。個人的にはメタリックハードコアだと思っている。中速で力強く突き進む様はブルドーザーのようだ。ギターの音は非常にソリッドかつクリアで、タメが意識された曲はメタルの要素が色濃い。しかしやっぱりハードコアだと思う。ひとつはマッチョさ。ハードコアはマッチョな音楽だ。単発の筋骨隆々の男たちが力強く歌い上げる。マッチョさは時に批判される事も多いけどやっぱり魅力もある。(思うに方向性というかその主張が反感を買う事があるのだろうと思う。)特にバンドの顔ボーカルColinの雄々しい歌声と歌唱法は男の魅力満載。この図太さはちょっとメタルには無い。メタルだとデス声などの方向に振り切ってしまうが、このColinの歌い方はそこまでは振り切れていない。これは決して半端ということではなく、スクリームを織り交ぜながらも正気の域に踏みとどまっているから、何となく現実に足がついているバンドのスタイルが垣間見えると思う。
Twitching Tonguesの魅力はその力強さとグルーミィさの見事な調和だ。例えば同じハードコアのVision of Disorderはガッチリしたハードパートとクリーンボーカルとメロディを大胆に取り込んだしっとりとしたパートの対比によって、その陰鬱さを見事に表現している。Twitching Tonguesの場合はその両者を一回溶解させて混ぜ上げる、そして曲として昇華している。いわば曲に一貫性があって色んな感情がないまぜになっているのだ。これが面白い。グルーミィといっても現実に立脚したもので、極端になよなよしたものでも、捻くれた猟奇性は皆無だ。この後ろ向きな感情すら男らしい。ここにかっこよさがある。さすがに演歌とまではいわないが、泣くに泣けない男の哀愁みたいなのが漂っている。
今作もそんなTwitching Tongues節が満載。ガツンガツン刻んでくる力強い演奏陣に頭を振りまくれるし、決して強さ自慢ではない、心の機微をその激しさの中に感じ取れる。一言で言えば”熱い”音楽である。徹頭徹尾ストレートで装飾性は希薄だが、例えばアコースティックギターの使い方は昔から得手で、乾いた音が響いてくるだけでこちらの期待感も高まるというもの。今作ではピアノを大胆に取り入れたりしてさらに哀愁度があがっている印象。鉄塊の様な低音リフとの対比が凄まじい。

聴けば聴くほど良いアルバムだなと思う。もうちょっと知名度が上がっても良い様な気がするな。オススメです。

2016年1月24日日曜日

スティーブン・キング/悪霊の島

言わずと知れたアメリカモダンホラー界の巨匠によるホラー長編。
帯には「恐怖の帝王、堂々の帰還です。」と書かれている。このブログでも紹介した「1922」だったり「ビッグ・ドライバー」だったりとホラーそのものは書いていたのだろうけどこれだけのボリューム(「悪霊の島」は上下分冊でそれぞれ500前後ある)というのはきっと久しぶりなのだろうと思う。
キングの本は読んだ事が無い人でも「グリーン・マイル」や「ショーシャンクの空に」、「シャイニング」(キング本人は不満を持っている事は有名だけど)などで作品に触れた事のある人は多いはず。私もご多分に漏れず大好きな作家で、一時期読む本が無い時はキングを読んでおけば良いやと書店に通っていたものです。(勿論読む本なんてのは幾らでも見つかるからそれと結局べつにキングの本も買って帰ったんだ、いつも。)本当に色んな種類の物語をかける人だけど、やはり私だけじゃなく皆さんホラーがお好きなようで、それも超自然的な要素が出てくるような。キングのホラーは結構善と悪の二項対立形式をとっている事が多くて、いわば手あかのついた構図なのだろうがキングが書くとそれはもう面白く、形式なぞで物語の優劣は決定されない事がよくわかる。
この本の原題は「Duma Key」でこれは舞台となる小島の名称。「悪霊の島」というとその明快な物々しさがちょっと面白いくらいだが、読み進めればこのタイトルがばっちりハマっている事がよくわかる。

建設会社を経営するエドガー・フリーマントルはある日現場で乗っていた車ごとクレーン車に押しつぶされ、体と脳に大きな損害を受ける。結果右腕を失い、まともに歩けなくなり、そして記憶と発語、情緒面にも重篤な後遺症が残った。妻とも離婚したエドガーは治療のためフロリダの小島デュマ・キーに海に面するコテージを借り、そこでリハビリをかねて暮らす事に。かつての手遊びだった絵を書き始めると隠された才能が開花し、エドガーの絵は人々の耳目を集める事になる。心身の傷も回復の途上にあるエドガーだったが、その順風満帆の日常に暗い影が侵入してくる…

キングのホラーは長い。というのも登場人物一人一人に背景、つまり人生があってそれを丁寧に書き込んでいくからだ。一本道で始まった物語は進むに連れてその葉脈を広げていく。俯瞰してみれば巨大な一枚の葉っぱが出来上がっているという様だ。この丁寧さが物語を圧倒的に豊かにしている事が、キングの本を何冊か読んでいる人には分かっていると思う。個人的には長いけど苦痛だった事は一度も無い。人生といってもだらだらと書く訳でなく、その人を個性づけるエピソードを書く事で脇道とはいえ無いくらいの魅力を備えているからだ。
この「悪霊の島」はその構成が面白い。何かを失った男あるいは女がそれを埋め合わせようとする(まさに傷を負った人が再生するように)というのは物語の類型だとして、主人公エドガーは冒頭に体と精神に傷を負い、それから絵を描く事で回復していく。普通ならこれでもう一個の立派な物語だが、回復期に合わせてさらに”敵”と直面する訳だから、いわば物語の山場が二つあって、これは中々複雑である。心身の回復と敵は同一視されない訳だから。エドガーは恐らく身ひとつで成り上がった経営者のままでは敵とは戦えなかっただろう。おそらくその存在を鼻で笑ったはずだ。いわば傷を負う事で一回社長のエドガーは死に、大きなハンディを抱えた一人の中年として生まれ変わった訳だ。生まれ変わっても健康面では大きく減退し、過去のしがらみ(別れた妻との関係など)からは逃れられない、たとえ南の島に逃げても。残酷な言い方だが死ななければ分からない人生の一側面に気づいたエドガーは新しい人生を楽しみつつ、その世界に潜む悪夢に立ち向かう事になる。
この悪夢というのが非常に面白く上巻なんて本当にエドガーが再起する様を丁寧に描いていてこれだけで十分面白い。所々妙な箇所があるけど、それはまだ謎ってくらいで放置されても気にならない。ところがその謎のしみがちょっとずつ広がっていくのだ。純白の壁が華美に浸食されていくがごとく、南の島での楽園の様な生活はその姿を変えていく。これぞキング流のホラーの醍醐味の一つ。何の変哲も無い日常に異形が滑り込んでいく。次第に周囲を変えていく。「呪われた町」「ニードフル・シングス」なんかそうだった。「化け物を倒すのはいつだって人間だ」というのはアーカードの言だが、キングの主人公たちは特にそうだ。普通に暮らす人間たち。勿論エドガー含めて異能の才がある場合もあるのだけど敵を打ち倒すのは、いつだって勇気だった。キングのホラーが面白いのは勇気の物語だからだと思う。だから日常に暮らす私たちには共感できて、そのかっこよさにしびれるのだろう。

後半に入ってからは特に素晴らしくて久々に寝る間を惜しんで読んだ。260ページあたりの描写は本当もうゾクゾクしてしまった。やっぱりキングは面白い。長い物語だけど超オススメなので是非どうぞ。

J・G・バラード/時の声

イギリスの作家によるSF小説の短編集。
SFの中でも「ニュー・ウェーブ」活動の旗手とされる作家で独特の作風で人を惹き付ける。私も「結晶世界」(エクスペリメンタル・ドゥーム/ドローンバンドのLocrianもこの小説をアルバムの元ネタにしていましたね。)を学生の時に読んで以来、ぽつぽつと思い出したように何冊か読んでいる。

SFといえば広大な外宇宙に漕ぎ出していく人類!といった印象があるのだけど、この人はむしろ「内宇宙」に目を向けるべきだと主張し、新しいSFを模索した人でした。といっても彼の作る小説というのはひたすら人間の内面の真理のみを書いていた訳ではなくて、やはりSF作家という事もあり、なにかSF的な状況、例えば温暖化により海面上昇した世界だったり、宇宙に進出した人類が故郷である地球を顧みなくなった世界だったり、そういった特異な状況を作り出し、そこに直面する人間たちの心理状態に深く着込んでいく、そんなスタイルになっています。とはいえその手腕はSF的な状況を描くにとどまらず「楽園への疾走」(これは特異な状況を書いているのですが)などのあまり現実から離れていない世界を書くことも。
J・G・バラードの各世界は大抵破滅に向かっていて、それは世界が破滅に向かっている(前述の水没した地球などもそう)場合と、主人公となる人(たち)が色んな世界の中で破滅に向かっている場合、大まかに分けて二つある事が多い。もちろん前者の話の場合は必然的に後者も適用される訳で、そうなるといわば二重の破滅を描く非常にくらい作風になる。登場人物は皆ガリひょろというわけではなくて鍛え上げられた軍人なんて人も出てくるけど、メインとなる彼らに関しては活動的であってもその視点は内側に向いていてる、つまりどこかしら自己探求的で、内省的な一面を持っている。だから物語の進行するに従って、J・G・バラードの描く物語というのは浮かんでいくというよりは、むしろ沈降していく様な趣があって、さながら暗い沼に捕われるがごとく、それを読む側もその足をがっしり掴まれて底なしに向かって落ちていく事になる。思うにそれがこの作者の小説の魅力の一つでしょう。
この本に収められた7つの短編に関してもだいたい上記の事が言えてバラード流の破滅の口がぽっかりとその深淵を見せている。
「重荷を負いすぎた男」はフォークナーは徐々に発狂していた。という非常に印象的な一文から始まる短編。妻に内緒で仕事を辞めた甲斐性なしの男が自分の内側を一枚通して世界を眺めるうちに次第にその精神の均衡を崩していく、というまさにバラード流の破滅を描いた一遍。
「音響清掃」は音楽から聞こえる音という要素が一切排除された未来世界で過去の栄光にしがみつくかつてのプリマドンナと彼に心酔する唖の青年の組み合わせが起死回生を狙う。この物語は彼らの内面を行動で描写している趣があって、バラードのなかではとても読みやすい。結末が最高で何とも言えない味がある。SFとは単に奇異なガジェットをかくものではないという事を証明していると思う。

破滅を描くといってもその性質上、巨大な爆発それ自体が無く、その暗い未来に向かって爆走していくそんな過程を描いた作品群。暗い、暗いSFが好きな人は是非どうぞ。非常に楽しめた。

BUTCHER/Holding Back The Night

アメリカのハードコアバンドの1stアルバム。
(恐らく)自身のレーベルButcher Recordsから2015年にリリースされた。
目下のところLPがメインなんだろうけど、オフィシャルサイトからデジタル版を購入可能。私が買ったのはデジタル。

デビュー作なのだが新人ではない。World Burns to DeathというクラストハードコアバンドのボーカリストJack Controlが新しく始めたバンドだ。(ディスクユニオンのこの音源の紹介にはJackが元World Burns to Deathと紹介されているから脱退してしまったのかな…)他にはAsshole Paradeのメンバーがいるらしい。(日本のSlight Slappersとのスプリットを買った事ある。)日本のForwardというバンドのギタリストSouichi Hisatakeさんがゲストで参加している。ちなみに印象深いコラージュジャケットも日本人のTomohiro Matsudaさんの手によるもの。World Burns to DeathはHG Factからのリリースも、来日経験もあるからその繋がりかも。
私はこのJack Cotrolという人の声が好きでWorld Burns to Deathも今でも聴いたりします。吐き捨てるような男らしい(というより男臭い)ボーカルはいかにもハードコア的なんだけどいわゆるD系のバンドの猛々しい感じとは少し異なるんだよね。もっと掠れていて自暴自棄なところがある。といってもスラッジのような厭世的なものともちがって、もうすこし華がある感じ。良い声なんだ。

音的にはまさにハードコアパンクといった赴き。だいたい平均すると2分位の曲の長さ。速いしぎゅっと詰まっている。ただあくまでもハードコアパンクの形で極端に速過ぎたり、バンドサウンド意外の音を入れたりと行った事はなしの王道。まず主張があり、それを攻撃的な音楽で表現している、といった印象。飾りっけ皆無のストレートさ。ドラムは小気味よくビートを刻み、ベースはあくまでも伸びやかに。ギターの音がとにかく気持ちよい。曲の速さもあってせわしないのだが、ところどころ良く伸びている。そのぎゅーんと行った感じが飾らないのだけど、ギターという楽器の良さがぎゅっと詰まっている様な、そんな音。高音のフレーズもキンキンしていなくて耳にストレートに飛び込んでくる。Jack Controlの声はやっぱり良くて悪っぽさのなかにも何かこちらの軽快を飛び込んでくる様な親しみみたいなのがあって、ハードコアでこんな事も言うのは変化もだけどあったかい感じ。ただ勿論曲に負けないくらいの緊張感で、なにより声の太さもあって迫力満点。そんな土台に流れる様なギターリフだったり、Jackの歌のメロディアスさが良い感じにまざりあってラディカルながら哀愁のあるサウンドに仕上がっている。どの曲も怒り以外の感情にも満ちていてなんといってもそこが良い。

全10曲であっという間の21分。最後まで行ってももう一回という魅力にあふれている。カッコいいわ〜。非常にオススメのハードコアです。是非どうぞ。

2016年1月23日土曜日

Blanck Mass/Dumb Flesh

イギリスはイングランド、ブリストルのテクノプロジェクトの2ndアルバム。
2015年にSacred Bones Recordsからリリースされた。
Blanck Massはイギリスの2人組エレクトロニックグループFuck Buttonsの片割れBenjamin John Powerによるソロユニット。聴くのはこのアルバムが初めてで勿論Fuck Buttonsも聴いた事が無かったが、こちらもよそ様の2015ベストに入っていたのを視聴して気に入り購入。全くこの時期は本当に人のベストを見て音楽を買うマシーンと化している、いつも以上に。

音的には電子音で構成されたテクノ(余談だが電子音で構成されてもテクノにならない音楽が今ではもう余裕で作れるようになっているんだろうね。)ってことになるのだろう。ふっといビートの上にうわものがのっかるのは大まかにいって確かにテクノ的だが、聴いた印象はかなりロック的なアプローチで曲が作られている。ミニマルテクノの逆を行く様な饒舌さがある。はっきりとしたボーカルが入らない事、それから曲を構成する音がはっきりそれと分かる電子音である事、逆にそれらの要素をのぞくと(それらの二つが超重要な訳だけど)、曲の構成は曲によって結構ロック的だ。別にAメロがあって、サビがあるとか、そういった訳でもないのだけど、曲によっては結構明確に展開があって曲はその姿を変えていっている。それからメインとなる音自体が結構分厚くてシューゲイザー的な要素もちょっとあって、その豊富な粒子で持って空間を埋めていく様な趣がある。他の音もテクノにしては感情的というか豊かで血が通っている(それゆえ不気味でもある)暖かいものが多い。
ビートがはっきりしている分踊れる音楽ではあるのだろうけど、結構実験的な要素もあって面白い。一つは音自体が面白くてエフェクトをかけて溶解させた様な人の声だったり、結構露骨にノイズだったりを大胆に曲に用いている。それがコラージュのようなごった煮感であったり、飛び道具的な使い方ではなくて、それらの良くも悪くも強烈な音をキチンと分かった上で曲に組み込んでいると思う。だから実験的であっても曲自体は奇抜というよりはもっとしっかりしている。小器用というよりは、技術の革新によって溢れ出している音から効果的に自分の武器を選んで使っている印象だ。
前述の声のサンプリングもあって露悪的とは言わないが、奇形めいたところがあってこれは好みだろうが個人的には結構好きだ。(アートワークにもその精神が遺憾なく反映されている。)特にやっぱり2曲目は完全にキラーチューンだろうと思う。ねっとりとした嫌らしさはあまりなくてもっとからっとしている。ちゃんと人を踊らせる音をつくるぞ!というコンセプトがあるのかもしれない。

「しゃべらない肉」というタイトルは結構面白い。一つはタイトル通り肉体的な音で構成された肉体的な音楽である事。それからタイトルに反して非常に饒舌である事という観点で。ロック好きな人にも余裕でお勧めできる不気味でありつつも楽しい音楽。