2017年9月3日日曜日

Framtid/Defeat of Civilization + Split EP Tracks

日本は大阪のクラストコアバンドの編集盤。
2017年にMCR Companyからリリースされた。
耳慣れない「Framtid」という言葉はスウェーデン語で「未来」という意味らしい。ひねくれた名前も良いけど、シンプルかつストレートでかっこいい。
2002年には1stアルバムをリリースしているから結成はその以前ということになるが、この手のバンドにありがちなあまり情報がない。Discogsを見るとそこまで音源の数が多くなく、マイペースに活動しているよう(1stと2ndの間には11年の隔たりがある)だが、その名は日本だけでなく世界でも広く知られているようで、由緒あるアメリカの音楽祭のトリを飾ったりしているそうな。名前は気になっていたし、1stのカセットはユニオン新品コーナーでも横目にしていたけどなんとなく聴けてなかったが(私はカセットを再生できる機器を持っていない)、CD形式で音源が出るということで購入してみた。タイトルもストレートで2ndアルバム(ミニアルバムと書いているページもある)「Defeat of Civilization」(2013)を主体に(アートワークはこちらのアルバムから引き継いでいるようだ、少なくとも表のカヴァーは)3つのスプリット音源(2004〜2009)を収録している。2016年の音源を除いて、概ねこのバンドの最近の音楽を聴くことができる編集版のようだ。

音の方は完全にクラストコアだ。トゲトゲに逆立てた頭、鋲を打ちまくった革ジャンという見た目、「どんな理由だろうが戦争はいらねえ」というメッセージ、見た目も音もクラストスタイル。D-ビートに高音に潰れた特徴的なサウンドのギターが乗る。思うにクラストというのは非常にとっつきにくい音楽性だ。(いろんなバンドがいるけど大抵は)メロディアスではないし。速度も速く激しいが、熱いシンガロングがあるわけではない。ひたすら疾走する地獄感に聞き手も打ちのめされるような感じがする。このバンドも間違いなくそんな厳格なクラストの血統を受け継ぐもので、決してフレンドリーではないが、ギターのノイズ加減も程よく調整されていてノイズコアというほどにリフが判別できないわけではない。終始弾き倒すでもなく、ミュートを挟んできちんと曲にメリハリをつけている。ボーカルも伝統的なクラストスタイルを受け継ぎつつ低音に特化している野太い歌唱方法とはちょっと違って中音も出ているので聴きやすいと思う。
歌詞は基本的に英語で歌われているが、この編集盤でもきちんと読める形で掲載されていてしかも和訳もついている。ハードコアで歌詞がきちんと読めるバンドが私は好きだ。私たちの主張を読んでくれ、ってことだもの。一体大抵はひどくうるさい形式で発される音楽が何を言いたいのかというのは私にとっては重要だ。戦争、(大量破壊)兵器、虐殺、格差をテーマとした歌詞からは攻撃的なパンクアティテュードをひしひしと感じられるが、思った以上に攻撃的ではないのに驚く。「あいつを打ち倒せ」「破壊しろ」なんて少なくともこの音源のどの曲でも一言も言ってない。むしろ淡々と悲劇的な光景の描写をするそれからは、怒りを通り越した嘆きを強く感じられる。音楽自体は力強くうるさいのだが、その歌詞はなんとも言えない無常観に包まれていて、それゆえ瞬間風速的な、というよりこの世の不条理に対する怒りがふつふつと燃え続けている様が感じられている。黒い瞳の奥に地獄の業火が燃え盛っているように。奥に秘めた激情が溢れてくるようで私的には非常に好きな歌詞の書き方だ。
何と言っても「ヒロシマ」「ナガサキ」という歌詞が轟音から飛び出して脳に突き刺さる15曲目「Land of Devastation」が良い。その後は「私たちは立ち続けよう あの荒廃の地に」と続く。誰を責めるわけでもないが覚悟が見て取れる、非常にかっこいい歌詞だと思う。

今ならまだ手に入りやすいと思うので、気になっている人はこのタイミングで是非どうぞ。クラストという音楽性がおっけーという人なら購入して間違いないだろう。激しい音楽性はもちろん是非歌詞も読んでいただきたい作品。オススメ。

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