2017年1月2日月曜日

Run the Jewels/Run the Jewels 3

アメリカはニューヨーク州ニューヨーク/ジョージア州アトランタ出身のヒップホップユニットの3rdアルバム。
2016年にRun the Jewels Inc.よりリリースされた。現状のところオフィシャルによるデジタル形式のみのリリースでフィジカルは年が変わって2017年にリリースされる予定。
Run the JewelsはMC兼プロデューサーのKiller MikeとEl-Pの二人によって2013年に結成された。今作を含めて3枚のアルバムをリリースしているが、ネットに接続できるなら全てフリーでDLできる。私はKiller MikeもEl-Pも知らなかったのだが、一昨年(2015年)一個前のアルバム「Run the Jewels 2」をなんとなく買ったらとても気に入っており今でもよく聴く。新作ということでフィジカル待つには時間空きすぎて耐えられないので、繋がらないオフィシャルサイトに躍起になってアクセスしてDLした。
今作では前作でも参加していたBOOTSなどいくつかのアーティストが参加している。ftと表記されるMCとして客演するのはもちろん、曲作りにもメンバーの二人以外が関わっているようだ。私が知っているのはKamashi WashingtonとZack De La Rochaの二人。ニューメタル世代としてはやはりザックというとテンションが上がってしまう。(ninのトレントさんとアルバム作るって言ってたのはどうなったんかね。)

このユニットはサンプリング主体の伝統あるヒップホップというよりはデジタル技術を駆使したオルタナティブなヒップホップ(実際サンプリングが使われているのか否か、使われているとしたらその頻度はわからないのだが)をプレイしている。そのためいわゆるジャジーな元ネタを使ったヒップホップとは一線を画す作りになっており、未来的(決して前衛的では無い)な音作りになっている。それが私のような普段はヒップホップをあまり聞かない人たちにも刺さっているのかもしれない。
ビートはさすがにヒップホップだけあって重たくまた数の少ないしっかりしたものだが、テクノとまではいかないもののマシンメイドの無機質さを感じさせる。
ぶっといビートに乗っかる上物に関しても空電ノイズのようなヒョロヒョロしたもの、工業機械を思わせるインダストリアルなものなど、色彩豊かな”ノイズ”たちが飛び回る。これが面白くてまずバランスが良くて全体的に抑えられている。ロクでもないメタラー/パンクスだとこってりした顔でノイズもマシマシで!となりがちだが、さすがはヒップホップどれも邪魔にならないくらいに、もっというと耳に入るけど意識しないくらいにコントロールされている。もちろんラップを生かすヒップホップの黄金律に沿ったもので、ラップを抜かしたら結構ソリッドかつストイックなトラックになるのだろうと思う。全体的に音にはフィルタとエフェクトがかけられていて余韻がもたっと残るように調整されているので、冷徹なマシンビートが空間的/眩惑的な(それこそ煙たい照明が抑えられた地下のクラブのような)雰囲気を作り出している。
そこに二人のラップが乗るのだが、やはり声質の違いがはっきり出て良い。El-Pのパートだと「やっぱEl-Pかな」となるのだが、Killer Mikeがラップしだすと「うん、Killer Mikeだな」と思うくらい。単語単語がくっきり分かれてそれぞれが跳ねるように明快、乾いており明るいのがEl-P、単語が小節ごとにくっついてその小節の中でウネリがあり滑らか、ちょっと湿ってこもっているのがKiller Mike。見当違いだったら申し訳ないのだけど人種が違うと結構ラップには違いが出るのでは…と思う。
青を基調としたグラデーションが美しいアートワーク通り、真っ赤だった前作と比べると音の種類的にはやや大人しくなったと思う。初め聴いたときは「むむ」と正直思ってしまったのだが、ところがどっこい聴いてみると前作に一歩も引けを取らないくらいかっこいい。一つはトラックが大人しくなり、ラップがさらに曲の中心に据えられていること。抑え気味のBPMの中を緩急自在に(ラップの速度が一定ではない!)自由に泳ぎ回る二人のラップがとにかく映える。落ち着いて持ったりした靄の中、チラチラっと鱗が光るようなEl-P、ゆったり這い回る蛇のようなKiller Mike。どちらもやはり”危険さ”があると思う。いわゆるギャングスタとは異なるのだろうが、スキルのやばさ、そして「Bitch!」に代表されるよろしくない言葉たちがちりばめられた危険さが非常にかっこいい。トラックも枠から出ないくらいに実は展開が変わったりしているが、全体的にはよりヒップホップ成分が増しているのではなかろうか。(そういえばスクラッチの登場頻度は増えているようだ。)

というわけで前作に引き続き今作もやばいかっこよさ。これはもう音楽好きな人はもちろん、ヒップホップが苦手なんよ…という人でも一旦聴いてみていただきたいくらい。めちゃかっこいいので是非聴いてみてね。オフィシャルでフリーDLできますので。非常におすすめ。

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