2015年2月15日日曜日

ロバート・A・ハインライン/宇宙の戦士

アメリカのSF文学の巨匠ハインラインによるヒューゴー賞も受賞した名作。
ハインラインは日本で大人気の「夏への扉」と題名がカッコいい「月は無慈悲な夜の女王」しか読んだ事無くて、いよいよ「宇宙の戦士」を読んでみるかという感じで手に取った。
「宇宙の戦士」というとほう、という感じだが現代は「Starship Troopers」でそのまま日本語で書くと「スターシップ・トゥルーパーズ」。30歳位の人なら見た事ありませんか?「スターシップ・トゥルーパーズ」。一時期地上波でも結構やってましたよね。人類が虫型異星人と激しい戦闘を繰り広げるあの映画。その原作がこちらの小説。原作と言っても中身は大分違うのですが…(物語というよりは趣旨が結構違う。詳細はwikiをどーぞ。)

今から遠い未来人類はその版図を宇宙に広げていた。広い宇宙にはしかし危険が多く、宇宙軍の需要は高まるばかり。地球政府は市民権を従軍した事のある人間にのみ与える方針を取っていた。(市民権が無いと投票は出来ないが普通の生活はできる。)主人公ジョニーは市民権は無いが裕福な家庭に生まれ、将来は父親の跡を継ぎ経営者になるはずだった。しかし高校卒業後ちょっといいかっこをしたいが為に宇宙軍に入隊。配属された先はもっとも過酷な陸軍の機動歩兵隊だった。パワードスーツに身を包みカプセルに入って敵地に降下する危険な部隊である。甘ったれのジョニーは過酷な訓練を乗り越えて一人前の兵士になれるのか?

さて分厚いこの小説は今でこそそれなりに市民権を得たパワードスーツ(展開してガンダムのモビルスーツ?の元ネタになったとか。間違っているかも…)が堂々と世に出たという小説らしい。(1959年に発表。)物々しい題名もあってたしかにド派手な先頭も展開される痛快な小説でもあるのだが(ここが映画の原作に相当するところ)、実際読んでみるとそれ以上に市民とは兵士とはということを説いたやや観念的というか説教的な側面が強くあって、ページもそっちの方に多めに取られているのではなかろうか。おかげでAmazonのレビューでも読んでいただければ分かるのだが、かなり賛否両論な本なのである。なんせ本編の後に日本で発表されたあとの編集者?と読者の手紙での応酬がたっぷりと収録されているくらいなのだ。
要するに軍隊・暴力礼賛的なファシズム的な要素があって、市民というからには自分より国家を優先して、有事の際にはつべこべ言わずにその身を使って国家に奉仕せよ、とこういう風にも読める側面があるのだ。
私は政治家は全員軍隊で前線に出たら良いんじゃないかと学生の時に考えた事があって、つまりそれはそうしたら平和のありがたさが分かって一番戦争を始めやすい政治家が(と私は思っているのだけど本当は全然違うかもです。)戦争を始めるなんて言いたださなくなるんじゃないかと思ったからだ。この本はそれをさらに押し進めて基本なにか政治的に主張したいなら全員軍隊に行け!というのである。こうなると分からなくはないんだけど、やっぱり基本的にはいつも戦争をしている事になって平和からは遠ざかってないだろうか。でも同時に敵意のある他者がいる場合は善し悪し関係なく武器を取らなければ行けないのだろうとも思う。そういう奴が耐えなければ一億総火の玉で国家のために粉骨砕身、七生報国せよ!と、こうなるのだろうか…
と考えはつきないし、私は一体何が正しいのかは全然判断つかないのでここら辺で。(適当で申し訳ない。しかしあまりブログでは政治的な事と宗教的な事は言いたくないという気持ちもあるのです。)だいたい中身の方は想像できるかと思います。
私的には内容は問題ないんだけど、主張には首を傾げるところがあって、しかもその描写が長いもんでちょっとだれてしまったところもありました。全部が駄目とかではなくてここまでは分かるけど、ここから先はちょっと同意できませんな、という程度の問題かもですが。(そう簡単なもんではないことは分かっているんですが…)

ただこの本を読む事で戦争(と平和)について色々考える事は出来るのではなかろうか。この本を読んでただ蜘蛛との戦いが面白かった!という人がいたら中々の強者では無いでしょうか。という訳で興味がある人は手に取ってみるのはいかがでしょうか。

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