2013年12月31日火曜日

Lycus/Tempest

アメリカはカリフォルニア州オークランドのフューネラルドゥームメタルバンドの1stアルバム。
2013年に20 Buck Spinからリリースされた。ジャケットがお洒落。

結成は2008年で停止期間を挟みつつ初めて世に出たのがこのCDな訳なのだが、結構界隈では有名らしく、まあその流れに乗って私も買ったんだけど。
なんでそんなに注目されているかというとメンバーの一人が元Deafheavenなんだよね。Deafheavenといえば(ファッション・サブカルクソ野郎で)今年リリースした名作「Sunbather」が賛否両論を巻き起こし(私が見たのは大体賛のほうだったんだけど、批判している人の意見も見てみたいな。)たあのバンドです。シューゲイザー+ブラックメタル+激情ハードコアのようなスタイルでまさに一世を風靡したある意味今年の顔のようなバンドじゃないかしら。そのDeafheavenでドラムを叩いていたのがTrevorさんといって上の写真の左端の人。なんとまだ23歳だとか。

自然とお洒落なかつキラキラした音への期待が高まる訳だけど、聴いてみるとこれがフューネラルドゥームなんだよね。
Trevorよ、おまえなして若い身空でこげな地獄のような世界に自ら飛び込んでしもうたんよ…
というわけではないんだけど、なかなか気合いの入ったフューネラルっぷりで若気の至りなどもう皆無な徹底的に絶望的なその音楽性に思わず居住まいを正したよね。
遅い、重苦しい演奏陣に、これまた低音のデス声が苦しいーと乗る伝統的なスタイル。
ドラムの音はタスタスしているのだが、寝ているんじゃないかと思うくらい叩かない。
ギターとベースはフューネラル特有の基本音数が少ないずーんずーんとカーテンのように苦しみが持続するあのスタイルです。
いわばフューネラルドゥームのイロハにそった伝統的なスタイルなんだけど、このバンドが面白いのは基本を踏襲しつつ自分たちのスタイルを確立しているところ。
簡単にいうと曲の展開が凝っていてまるでグラデーションのように、基本から実験的な展開に自然に展開させている。
その実験的なスタイルというのは、疾走するパートだったりもするんだけど、一番目立つのは音の数を増やすことではなかろうか。それこそDeaheavenのような派手さは無いが、ブラックメタルを彷彿とさせるトレモロっぽいギターが結構随所に挿入されている。これが実に饒舌かつメロディアスで灰色のようなフューネラルスタイルに程よく多彩な色をさしています。
これが個人的にはとても刺さったよね。ともすると眠っちゃうような反復的かつ地味なフューネラルに、その世界観を壊すこと無く緩急を導入することに成功している。
9分から20分台(それが3曲収録)という比較的長い尺でも一つの曲として飽きずに聴けるんだからなかなかどうしてさすがです。
途方に暮れたような静寂のパートや妙にお経めいた朗々とした不気味な歌唱法など、あくまでも伝統的なフューネラルスタイルも大切にしつつ、自分たちの音を確立しています。変な表現ですが、カラフルなフューネラルドゥームとでもいいましょうか。

大変気に入りました。
元Deafheaven云々気にせずすばらしいメタルだと思います。
フューネラル好きはぜひどうぞ。ドゥームは聴けるが、フューネラルはきつい、という諸兄も安心してどうぞ。

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