2013年12月21日土曜日

The Kilimanjaro Darkjazz Ensemble/From the Stairwell

オランダのダークジャズバンドの3rdアルバム。
2011年にドイツのDenovali Recordsからリリースされた。
Denovaliというと凝った色合いのレコードで有名だが、私の買ったのはCD版。

The Kilimanjaro Darkjazz Ensemble?
この間紹介したのはThe Mount Fuji Doomjazz Corporation。で似ている。高い山+~jazzというネーミングセンス。まあ前の記事でも書いたけど、ブレイクコアアーティストであるBong-Raなどで結成された前衛的なジャズバンドが今回紹介するThe Kilimanjaro Darkjazz Ensembleで、その変名でライブでインプロゼーションを演奏するのが富士山の方。
順番が逆になってしまったが今回は元となるバンドの紹介。クレジットによると7人のメンバーによって演奏されている。

Stairwellというのは階段のある吹き抜けという意味でだそうで、ジャケットでは螺旋階段が狭い空間にぎっちり詰まっている。(stairwell=螺旋階段ではなさそうである。)タイトルはすばらしく、まさしく暗い螺旋階段の底の方から聞こえてくるような音楽性。

富士山プロジェクトの方はジャズをその特性の一つとして存在するドローン方向に向かって思いっきり引き延ばした音楽スタイルだった。いわばブラックホールに吸い込まれたジャズであって、永遠に引き延ばされた時間の中でなり続けるその音はまさしくドローンだが、よくよく要素を切り取ってみるとジャズ由来であった、という前衛的なスタイル。
キリマンジャロプロジェクトというのは同じく前衛的なジャズだ。恐らく伝統的なジャズの土台がありながらも、エレクトロニクスとロックの要素を巧みに取り入れ、かなり独特な音楽を演奏している。

はっきり言えば富士山ほど曲の輪郭が崩壊していない。きっちり曲の様相を呈していてこちらの方が圧倒的に受け入れやすいスタイル。
とはいえDarkjazzを名乗っているだけあって暗い。音の数は多くないし、アンプリファー全開でかき鳴らすようなロック的騒音性は皆無。かなり間を意識してゆったり、かつ不穏に妖しく、立ちこめる霧のような視認性の悪い幻想的な音楽が醸し出されるイメージ。
きしむような揺らぐような電子音、あくまでもゆったりと静かに入ってくるドラム、人目をはばかるように吹かれるトランペット、寂しげなピアノ、ドローンめいたチェロ、そしてささやくような女性の声が入ってくる。すべてが静かだ。盛り上がったと思ったら霞のように消えてしまうような儚さがあって、どうにもこうにもたまらない。
個人的には電子音が相当良い縁の下の力持ち存在になっていると思う。やはりドローンの要素があって、密やかになり続けることでアナログに無い冷徹さを曲に追加する役目を担っている。
暗闇に潜行するようなしめやかさと反復性、間と反響が意識された広がりのある空間性があってそれがイチイチこちらの琴線を揺らしにかかってくる。

特に私が偏向した音楽の嗜好を持っているからだと思うが、暗い音楽というと血や死のイメージが付きまとう。ゴアグラインドの残虐性はあまりに過激だが、乾ききった髑髏の持つ陰鬱な死のイメージに代表されるような。
このバンドがならすのは同じく暗い音楽だが、もうちょっとイメージが抽象的であって、具体的に陰惨で如何にも凶めいた不吉な雰囲気は皆無であって、同じ暗さにしてもいろんな種類があるんだな、と素直に感心した。

かすかに夜明けを感じさせる真っ暗闇のような音楽。
暗い音楽好きの人はどうぞ。非常にオススメです。


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