2019年5月5日日曜日

ザ・フォーリナー

昔12チャンネルでお昼から2時間吹き替え映画を毎日放送していたのを覚えている人は多分私と同じくらいの年齢の方だと思う。
その時分でも新しいとは言えない(おそらく権利費用が安いからだと思うけど)映画をただただ放送していて、小学生の自分は特に長期の休みのときにはよくそれを見ていた。ほぼ毎日かな?近所に友達がいなかったもんで。
で、よく放送されることもあって印象にあるのはジャッキー・チェン主演の映画である。「酔拳」「ポリス・ストーリー」「スパルタンX」などなど。当時の私は手に汗握ってみたし、笑ったものだ。
当時からだいぶ時間が経ち、上記の映画の記憶も全然曖昧なのだが(タイトルごとに区別つかないグチャッとした記憶になってる。)、自分のなかではジャッキー・チェンというのはスターである。いつもちょっとすきがあって、時に情けなかったりするが、正義のために戦う男。

そんなジャッキーが今までとは違う役柄に挑戦ってことで前々から気になっていた「ザ・フォーリナー」を見に行った。これは原作があるそうなのだがあえて読まないことに。

映画の中ではイギリス、ロンドンで中華料理店を営む初老の男になったクワンことジャッキー。テロでたった一人の家族である娘を失ったクワンは犯人探しに乗り出す。
という筋。早々に涙を流し悲しんだあとは、悲しみを封印し、娘を殺された怒りを通り越した無の表情で敵を襲う。とにかく行動が速い。そして呵責がない。手段を選ばず、目的に向かって一直線に愚直に行動する。無表情も相まってサイコパスにも見える。

良かったね。私は贔屓目があるから正当に判断できないかもしれないが、面白かった。
異質なジャッキーもきちんと描けている。彼の持つ非人間性は人間的な感情に基づいているからだ。スイッチのオンオフのようにキャラクターが切り替わるのも特殊部隊の経験が生んだモンスターと言う感じで良かった。
なにより途中で気がつくのだが、実は破滅的な攻めも抑制が効いている。それが彼に陰湿な印象を与え、それがなおさら怖い。
本当の敵以外は不殺を貫く、それも格好いい。はじめの爆破から「これは、イカれてますわ…」と思ってしまうんだけど、そうじゃない。行動からクワンの心理状態と覚悟が読み取れる。そうするとジャッキーの無の表情に対する印象も見ている間に変わってくる。こういうの楽しいよね。
ひょこひょこしたいかにもおじいちゃんぽいあるき方や、強引な割に礼儀正しい態度も示唆的だ。ここらへんの描写はなにより一辺倒でなく、そしてくどくなく簡潔で好きだ。
ジャッキー・アクション(私が今作った言葉)といえばそこら辺に落ちているものを戦闘に利用するってのがあると思うんだけど、今作でもそれは健在。
ジャッキーは明らかに強いのだけれど演技しているときは必死の形相で、今作は特に痛みの描写は結構すごい。ただすかっとするんじゃない、見てて「いてて」ってこっちが顔をしかめてしまう。

復讐劇なのだが、どちらかというとピアーズ・ブロスナン演じる副首相ヘネシーとの対決に焦点を絞っているのが良かった。
ヘネシーは権力、家族、仲間、そして土地に対する由緒を”持っ”ている男らしい男で、外国人で移住してきて慎ましく暮らし、そして今家族を失ったジャッキー演じるクワンとは正反対。
クワンがヘネシーを追い詰めていき、次第に彼の力=持っていたものが剥がれ落ちていく。そしていよいよ対決という構図になる。

敵側の人間はクワンのことを「チャイナ・マン」と呼ぶ。
フォーリナーである彼(ら)は表情が読みにくいし、何考えているかわからない、というところからこの物語が生まれたのかもしれない。
原作者Stephen Leatherはイギリスの方でこの物語の原題は「The Chinaman」。

私が子供の頃はまだIRAのニュースが結構耳に入ってきた。
最近はとんと聞かないような気がしていたのだが、もちろん血で血を洗う抗争があっという間に終わるわけもなく、いまでも続いているのかと思うと暗澹たる気持ちになった。
日常生活を害すテロリズム、破壊行動は嫌なものです。

私達世代、具体的には30〜40代くらいで子供の頃にジャッキー・チェンの映画を見て興奮した方は是非どうぞ。
ちなみにエンディングに流れる主題歌はジャッキー・チェン自らマイクを取って歌ってる。これはホント最高。

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