2016年2月7日日曜日

Lycus/Chasms

アメリカはカリフォルニア州オークランドのフューネラルドゥームバンドの2ndアルバム。
2016年にRelapse Recordsからリリースされた。
2013年リリースの1st「Tempest」時は確かもとDeafheavenのメンバーが在籍するバンドという事で話題になっていた様な気がする。私もご多分に漏れず興味を持って1stを買った。期待の2作目も購入。全4曲で43分。激長いわけではなかろうが、平均すると1曲あたり10分以上だからやはり普通からしたら十分ドゥームなアルバムだろう。Chasmとは深い裂け目とか溝のことを言うそうだ。

音楽的にはやはりフューネラルドゥーム。文字通り葬式な雰囲気で、真性ドゥームメタルバンドに比べると攻撃性に怒りの感情に劣る分、何とも言えない陰鬱な悲しみが全体を支配しており、体感速度も遅く感じる。
一通り聴いて思ったのはこんなに表現の豊かなバンドだったかな?ということ。フュネーラルドゥームは感情の極北めいたジャンルである。尖った分どうしても単調になりがちで、その灰色の単調さがこのジャンルの魅力の一つである。ところがこのアルバム、非常に表現の幅が広い。勿論速度が速い訳ではないし、楽しい気持ちなど付け入る隙すらない。深い悲しみと公開が支配した典型的なお葬式感なのだが、その表現の幅と行ったらちょっと目を見張るものがある。このジャンルに特有のひたすら低いボーカリゼーションを主役に置きつつも、朗々としたお経めいた不穏で気怠い詠唱やクワイアっぽい歌唱法(ちょっとBell Witchっぽい雰囲気ある。)、低音と対比をなすギャアギャアしたわめき声の投入。そしてなによりバックの演奏陣の色彩の豊かな事。例えばドラムは牛歩戦術がメインだが、たまにバスドラの乱打を投入してくる。弦楽器隊のテンポは遅いままなので曲全体の速度が加速する訳ではないのだが、なかなかこの手のジャンルには無い感情を獲得する事に成功していると思う。そしてギターリフはタメのある刻みリフに加えて、中音域の厚い暖かみのある単音を披露し、またアコースティックなコード感のあるフレーズなど、その表現の幅はとても広い。長い尺を活かしたインストパートにストリングスを投入したりと結構色々やっている。これらはともすればポスト感をますあまり、フューネラルな雰囲気をぶちこわしかねない要素となり得るのだが、どっしりとした芯でもってあくまでも出自を堅持しつつ使いこなしている様は中々どうして器用である。私の様な軽薄な愛好者は長い曲でも飽きずに聴けるし、むしろこの変化は大歓迎。なんといっても悲しみの要素が一切その魅力をそがれる事無く、それどころか陰影色濃く強められている印象がある。

バンドが作り出す音の風景は表現力を増した分より深くなっていると思う。個人的には前作より今作の方が好きですね。オススメ。

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