2015年5月30日土曜日

envy/Atheist's Cornea

日本の激情ハードコアバンドの6thアルバム。
2015年に自身のSonzai Recordsからリリースされた。
タイトルの「Atheist's Cornea」というのは「無神論者の角」という意味みたい。
結構速いペースだと思ったが前作「Recitation」は2010年か。間にいままでのディスコグラフィーをまとめた総決算的な完全版をリリースして、気分的にも一新という感じなのかな?という感じのニューアルバム。
envyといえば初めて買ったのは「君の靴と未来」かな?まだブログも無い様なネット時代に色んな音楽レビューサイトでライブも音源もとにかく激しいのに熱いと絶賛されていて購入したハズ。(ハードコアなんだけどライブだとみんなで合唱する、見たいに書かれて全く想像できないと思った覚えがあります。)多分ニューメタル好きだった頃だからハードコアやポストロックなんて全然知らなかった訳だから疾走する激しさと静のパートのアルペジオの美しさに戸惑いつつも魅了されたもので特に「堕ちてカゴへ」が好きでした。(いまでも好き)

そんな訳でニューアルバム。
再生ボタンを押すと柔らかく暖かみのあるアルペジオが…なるほどなるほどと思っているといきなり轟音がアルペジオを押しつぶしてくる。うおおと唸る幕開け。
全部で8曲で一番長い曲でも7分台で、だいたい4、5分でまとまっている。さすがにコンパクトとは言える尺ではないが、ポストロックにしては短めといえるのでは。
前述の「君の靴と未来」を感じさせる様な激しさに舵を切りつつ、ポエトリーリーディングだったりアルペジオに代表される様な静寂のパートを活かした陰影に富んだ曲作りだったりは引き続き程よく引き締まった曲に存分に活かされている。つまり密度が濃い。

「世界」「希望」「未来」「明日」「君」といった言葉がちりばめられた歌詞も素晴らしい。歌詞も読みやすい文字できちんと(しかも日本語と英語で)書かれている。ちゃんと伝えたい事があるんだよ、という事だろうと思う。ハードコアというくくりの中ではどちらかというと抽象的なのだろうが、なんとなくenvy節みたいなのがあって、曲調も相まっておぼろげながらもこんなことかな、という思いが聞き手の心に浮かび上がってくる。それは個人的だが夢みがちな前向きな気持ちだ(と思う)。激しい音楽性ではあるが、曲を聴いてみればその指向性が概ね明るい方に舵を取られているのが分かると思う。といっても悩みがある訳だからどうしても暗い部分があるのだろうが、それを巻き込んで前進する動きがある。常に迷いつつ常に前進するポジティブさだ。それをばかでかい音でかき鳴らし叫ぶのだ。きっとそれが”激情”なのだろう。特に5曲目のイントロには今のenvyがぎゅっと濃縮されている様な気がする。気分が高揚してくるようなドラムロール、重々しいのに前に向かっていく様なギターの音がどこまでもポジティブだ。歌が始まった後につま弾かれるギターの一音一音が煌めいているようだ。

という訳でようもこう進化するものだなという研ぎすまされっぷり。好きな人は儲かっているだろうから、envyを気になっている人はこのアルバムから買ってみても良いと思う。

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