2015年4月19日日曜日

Hurusoma/Sombre Iconoclasm

日本のブラックメタルバンドのコンピレーションアルバム。
2006年にSabbathid Recordsからリリースされたのがオリジナルで、私が買ったのはZero Dimensional Recordsから2015年に装いを新たにしボーナストラックを追加した再発版。
Hurusomaは大阪のバンドでWoodsさんによる一人バンド。バンド名は高知の妖怪古杣(ふるそまと読む)から取ったもの。1996年以前から活動を始め1枚のアルバムといくつかのデモを発表しだいたい2000年ごろまで続いたが現在は解散済みとの事。
私はどこでこのバンドを知ったのかはもう忘れてしまったが、なにかしら並々ならぬ興味があって一時期中古のCDを探していた事があった。(結局買わなかったのだが。)その後同じ零次元さんからWoodsさんのプロジェクトGnomeのCDが出たのですかさず購入して楽しく聴かせていただいた。で、個人的には満を持してという形でのHurusomaの再発。とても嬉しいものです。感謝。
バンド名ももちろんそうだが、旧版のジャケットや「Senpoku Kanpoku」といった曲名からも分かるが、恐らく妖怪に代表される様な日本の(昔の)生活に紐づいた闇や土着の信仰をテーマにしているバンド。だから思想的にはブラックメタルではないのかも。たまにネットではジャパニーズペイガンブラックメタル(ペイガンは異教の意)と称されているのを目にする。(しかしこのペイガンというのは中心=正統がキリスト教って意味の言葉なんよね。)

とはいえ音の方はというと完全にブラックメタルの形式に則ったもの。それも音質は良いとは言えずガシャガシャしており、非常に喧しい。ロウなプリミティブっぽいもの。そこを土台にオカルトっぽいアングラ感をぶち込んだのが大枠。
1曲目は「Intro」なんだが深夜の山中で気が倒れる音が入っている。古杣という妖怪というのは木が倒れる音がするのに実際には倒れている木なんてないという幻聴?を起こす妖怪の事。つまりここから古杣(Hurusoma)のアルバムが始まるよ、というまさにイントロになっていて、こういう演出個人的には大好きです。
ガリガリ削る様なささくれ立ったギターは耳ざわり一歩前くらいの高音でトレモロで迫ってくる。かなり多彩なレパートリーがあって、基本プリミティブなんだけど結構スラッシーだったり、曲によってはパンキッシュなハードコアテイストだったりと、ギターソロを聴いても分かるのだが結構技巧的なんだけど決してそれをひけらかすところが無いのが良い。アコースティックでメランコリックなフレーズも入ったりして展開も凝っている。
ドラムは結構キンキンしたシンバルの連打を入れてくるこちらも喧しいものでバタバタというよりはスタスタしたスネアの連打も気持ちよい。
そんでもってそこに乗るボーカルがすごいんだが、まずはいかにもプリミティブ然とした高音スクリームでイーヴィルという形容詞が良く合うものでこれがメイン。中音程でやや雄々しい歌唱スタイル。さらにぼそぼそした低音や幽霊のようなうめき声が入り乱れるまさに魑魅魍魎蠢く百鬼夜行スタイル。
ドロドロした和太鼓やお経っぽい男声による合唱など和のテイストにあふれたオカルト的音使いが随所にちりばめられていてニヤリとしてしまう事間違い無し。
なんといっても全曲とおして聴きやすさが素晴らしいアルバムで、これは別にポップである訳ではない。メロディをギターが担っているスタイルではあるのだがあざとすぎるくらいのメロディはむしろあまり無い。徹頭徹尾冷徹なプリブラなんだが不思議に耳にすっと入ってくるんだよね。恐らく基本はしっかり一環としつつも曲それぞれと曲中でアイディアがとても良く練られているので飽きないというのがあると思う。曲もどちらかというと陰鬱なんだが不思議と気分が高揚してくる様な力があるのも不思議です。まさに妖怪メタル。

前述の通り古杣とは幻聴を引き起こす妖怪。聞き終わってみるとその世界観も相まってなにか不思議な異世界からの幻の様な音を聴いた様な感覚になる。そんな余韻にひたれる素晴らしいアルバム。
長年聴きたかったアルバムだったが、私の勝手な想像より何倍も素晴らしかった。ブラックメタルが好きな人は是非どうぞ。そうでない人も是非どうぞ。ものすごーくオススメ。

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