2015年1月3日土曜日

上橋菜穂子/神の守り人

守り人シリーズ第5弾まで読み進めてきました。
2巻に分冊されていて上巻が「来訪編」、下巻が「帰還編」。

前回の事件で大けがを負った女用心棒バルサは病後のリハビリもかねて幼なじみの呪術師タンダに隣国ロタ王国国境近くの町の草市に出かける。そこで商人に連れられた兄妹を見かけたバルサは、商人が実は奴隷商人である事を見抜く。自分の過去を少女に重ねたバルサは兄妹から目が離せない。宿の彼らの部屋を訪ねると目に見えない何かに襲われるバルサ。奴隷商人は殺され、別の呪術師が兄妹の身柄を狙っているようだ。何か訳のあるのは間違いないが、バルサは兄妹を救う事を決意する。その選択が国家を揺るがす陰謀に繋がっている事も気づかずに。果たして兄妹の抱えている秘密とは何なのか…

という訳で今回の主人公はバルサに戻る。時系列で言えば前作の「虚空の旅人」のちょっと前からほぼ同時進行という感じになるかと。
女子供に弱いバルサはチャグムの時と似ていて訳ありの兄妹を守る事に。チャグムの場合は命を狙われていたが、今回は兄妹の少女の方がなにかとてつもない”力”を持っていてそれ故に命ではなく身柄を狙われる事になる。いわば争奪戦。
右も左も分からない子供なのを良い事に、その大きな力を自分のために使っちゃおうという大人達が露骨に汚い感じ。人の手に余る力というと核兵器が思い浮かぶ。国家間の政治の切り札にもなりますよね。今回はその核兵器が擬人化されたのが少女という事なのかも。一体どうするのが彼女のためになるのだろうと直感的に手を差し伸べたものの逡巡するバルサ。ヤバげな力関係一切無視して少女の幸せを願うあたりぶれなくて格好いい。

前作あたりから話のスケールがアップしている感じがあるけど、作者はマクロな物語をあくまでもミクロ(個人)の視点で書くのが上手い。出来事一つ一つを大雑把にではなく、個人の体験で書く事で感情移入度がぐーん増す。面白いのは今回の悪役、どう考えても頭良い系クズでいや〜な奴(大抵悪役が良い感じに嫌な奴だと物語は面白くなります。)なんだけど、なんかこいつはこいつですごいかもーと思わせてしまうところ。人は多かれ少なかれ人を利用して生きていく訳だから、一体どこからどこまでが許されるのだろうと思わせる作り。恐らくわざと正義という言葉を明示していないところにもなんとなく意図的な配慮が伺える気が。

というわけで安定の面白さですかね。
徐々に周辺の平和にかげりが見えてくるきな臭さが高まっている気がして次巻以降にも期待大。ふと思ったけど見方は結構固まっている話なので物語の面白さが結構敵次第で感じになって来ているのかな?まあ今のところ敵役の魅力は十分なので特に問題無しですが。
という訳で気になった人はシリーズ1冊目からどうぞ。

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