2014年11月29日土曜日

上橋菜穂子/夢の守り人

日本のファンタジー守り人シリーズ第3弾。ハマっています。
来年NHKでドラマ化されるらしい。アニメが評判だったのかもしれない。観てないが。

新ヨゴ皇国で呪術師を営むタンダは眠ったまま目を覚まさないという姪の様子を見る。どうも魂が抜かれて何かにとらわれている節がある。数は少ないものの他にも同じ症状が出ている人間がいるようだ。姪の魂をたどって何者かの夢に潜入したタンダだが、逆にとらわれて夢の主の奴隷になってしまう。夢の主と浅からぬ因縁のあるタンダの師匠トロガイ、そしてタンダの幼なじみの女戦士バルサは人鬼と化したタンダを救う事ができるのか…

前作「闇の守り人」で過去とケリをつけたバルサ。今回は全く新しい物語。
前作の敵役は露骨に自分のために他を害をなそうとする攻撃的な男だったが、今回はナイーブな引きこもりが意気地がないもんでみんなを巻き込んで自殺しようというはた迷惑な話。そんな背景もあってか(「守り人」というタイトルからしてそうだが、)今作は色んな登場人物みんなの行動する動機が何かを守るためってことにセットされている。守るってことは脅威があって直接的もしくは予防的に動くもんだからどうしても動きが後手になりがちだし、地味だ。しばしば困難になりがちだが、あらためてその困難さを逆手にとったこのシリーズの巧みさを実感。このもどかしい感じ。やきもきする。
容赦のない格闘シーンは痛みを感じない人鬼の登場もあっていつも以上に生々しい。今回は一番動く敵がタンダなので刃物が使えない。動きを封じるために関節技主体の戦いになる訳だけど、外れるわ折れるわで読んでてイタタタとなる事請け合い。

この上橋菜穂子さんの各世界というのは牧歌的で美しい反面、しっかり現在ほど文明化されていない世界の残酷さと非情さ、そしてそこを生き抜くための力強さを描いている。今作ではぬるま湯につかっているようにただただ楽しい夢や過去にぼんやり浸っていても前進しないし、なんなら死ぬ、というちょっと説教的な内容でもあるんだけど、そこを言葉でこぎれいにまとめるのではなくて(ある意味)ばしーんと殴りつけて人間は飯を食わないと死ぬ!(だいぶ私なりのまとめ方です。)という様は潔くかつ説得力がある。主人公のバルサからしてそうだけど、このシリーズにはすごい優しくても生き抜くためには力強く無ければいけないよ、というメッセージがあると思っている。

安定の面白さ。次は皇子チャグムが主人公になるらしい。次も読むぜ。

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