2013年10月14日月曜日

ジェームズ・ロリンズ/ユダの覚醒

 
御馴染みロリンズ先生(獣医さんでもあります。)によるシグマ・フォースリシリーズの第3弾。
今度はバイオハザードからの病原菌からのプラスミドからの謎に、東方見聞録で有名なマルコ・ポーロの冒険の空白期間の謎が絡んでくるという相変わらずのお得満載感全開な感じ。

科学者に仕立て上げられた優秀な兵士で構成される米国国防総省内の秘密組織シグマ・フォース。
その一員のモンクは医者のリサとともにインド洋はオーストラリア領クリスマス島で発生した感染症と思わしい病気の調査に向かう。簡単な調査のはずが武装した海賊に襲われる一行。どうやら病の背後には未知のウイルスの存在が。
一方同じくシグマ所属のグレイは敵対する組織ギルドの工作員セイチャンに助けを求められ、両親とともにギルドに追われることに。セイチャン曰く世界は絶滅の危機に瀕しているらしい。世界を救うカギはマルコ・ポーロの失われた冒険期間だというが…

東方見聞録といえば誰でも知っているはず。冒険家マルコ・ポーロによる文字通り東方世界への冒険譚。私も実際のところ中身をちゃんと読んだことはないのだが、イタリアに生まれたマルコは東方に旅に出て、モンゴルのフビライ・ハーンに長いこと重用されたのち、生まれ故郷に帰還するというもの。黄金の国ジパングという話も有名。(我が国に対する記述は伝聞だそうです。)
さてそのマルコ・ポーロだが、実はイタリアに帰還する際は十四隻の船に600人からなる大船団でもって帰途についたはずが、到着した際は船は一隻で18人しか乗組員が残っていなかったそうな。2年間というその間に何があったのかマルコは生涯黙して語らず、ただほのめかすように自分の見たことの半分しか話していないといったとか。
わくわくしますな〜。ここまでは史実で、この本ではマルコはどこかの島で死の都に出会い、そこで船団のほとんどを失ったことになっております。「近づくなかれ」と隠されたメッセージの中で警告するマルコ。死の都(!)がどこなのか、グレイ一行はまた世界をまたにかけて追われながら謎の究明に奔走するわけだ。
これは男なら絶対わくわくするはず。

今回読んで改めて思ったのはロリンズ先生は現実(史実と科学)と虚構の繋げ方が抜群にうまい。本の一番最後で必ず作者本人の解説が入って、どこまでが現実でどこからがフィクションなのかきちんと説明されている。彼は自分で扱うテーマに関しては歴史、人物、建物(歴史的建造物はどのタイトルにも必ず出てくるが、読んだことのある人はその描写の精緻さに驚いたはず。)、それから毎回出てくる最新の科学技術などなど、これらについては(恐らく)現地に赴き取材をし、資料を集めて読み込んでいる。
ちゃんと自分の頭で理解してから文字にする。それからそれらが各々一本の線だとするとその先端にフィクションである虚構の部分を少しずつ書き足していく。
これが不格好な線だと勿論根幹となる現実の部分とずれてしまうから、変な言い方だがもっともらしく嘘をつかないといけない(当然だが私は物語中毒者としては他人のうまい嘘に乗っかるのがこの上ない人生の楽しみだと思っている。)訳だから、これは私たちが考えているよりずっと難しいことだろう。
最新の科学のもしも、そして昔に起きて歴史の闇に葬られているなぞのもしも、いわば歴史の最先端と過去の出来事というそう反するベクトルの両端をぐっと一つの物語にまとめてよりあげる訳だから、面白くてすらーっと読ませるのになかなかどうして巧みな物である。

今回は扱っているテーマからして全2作に比較するとSF的な要素が強め、表紙にあるとおり最後は歴史のあるとある建造物にたどり着く訳なのだが、そこがま〜面白かった。兎に角盛りだくさんの物語が最後ぎゅーっと一点にしぼられて密度が濃くなるような感じ。こういうたぐいの本の醍醐味ですね。
というわけで安定の面白さ。過去2作を読んだ人は今作も面白いので是非どうぞ。

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