2018年2月25日日曜日

U TAKE ORB.Vol.2@高円寺二万電圧

大阪のsecond to noneは何度か東京で見る機会があったのだが、ことごとく気を逸してしまっていたので今回はということで東高円寺の二万電圧に。この日はQuetzalcoatlのEPのリリース記念ライブ。Quetzalcoatlの方はこの日初めて見るし聴くことになった。(調べても音が聞けないというスタイルのバンドのようだ。)

second to none
一番手はsecond to none。Discogsによると1993年頃に結成されたバンドらしい。こちらもネットにはほとんど情報がない。2016年に1stアルバム「Bāb-Ilū」をリリースし、私も発売当時に購入し、ろくに調べずに聴いてたものだからこれはドゥームなデスメタルだな!と思っていた。(感想書いたんだけど、先程見たら公開するのを忘れてた…。)確かに音的にはデスとドゥームの要素はあるのだが、調べるとハードコアバンドだということがわかる。元々BreakOutという関西のハードコアの集団(?)があったらしく、その母体に属するバンドということみたい。開演を待っているとサイズの大きいパーカもしくはコーチジャケットに身を包み、ニット帽もしくはキャップをかぶったそれらしい人たちの姿がちらほら見えて、「真ん中にいると危ない」なんて声が聞こえてきて恐ろしい気分になってくる。
客電が落とされフロアには青い光(強烈な青というよりは水色ががってきれい)が灯されて(演奏中はずっとこの照明)ライブがスタート。ツインギターで片方はAssembrage、Cataplexy(元々デスメタルとして開始したはず)のギタリストの方。ベースはGreenMachineのメンバー。音のデカさにやられるが、よくよく聴いてみると各メンバーの出す音がきちんと分離している。弦楽体はたしかに低音に偏重しているが、ギターとベースでは深さが違ってきちんと住み分けができている。ベースは特に低くて太く、首と背骨のつなぎ目あたりがブワブワ震えてほっとくと頭が上に持ち上がっているような感覚がしてすごく気持ち良い。ギターは粒子の粗い詰まった音でメタルとハードコアの中間辺のイメージだろうか。ドラムがすごいなと思ったのだが、バスドラムは重たいのだが、スネアとかシンバルはタイトで軽めにセットされていて、遅い楽曲にしては手数が多い。これが弦楽器の重たさと好対照になっている。曲は遅くほぼ疾走するようなことはない。デスメタルをただ遅くプレイするのではなく、異常にタメが効いている。ザクザク刻むのだが音をぶつ切りにするのではなく、ほぼ強烈なフィードバックを含めて音が途切れることがないように設計されていて、文字通り窒息させるような地獄(ドゥーム)感がある。音のデカさもあって、Sunn O)))やBell Witch感すらある。
ボーカルの方は細身で背が高く、はじめはマフラーをしておりスマートな見た目なのだが、唸るような低音主体のデスメタリックな声質。ステージをゆっくり動き回り客席を強烈に睨めつけてくる。怖い。中盤以降はちょっと首を揺らせたり、人差し指を口の前で「しっ」のポーズをとったり、確認のように客席を指差したり。指差しすると客席ではモッシュが起こる。魔術師。見た目はむしろジャズって感じなのに〜と思った。ところでジャズには”スウィング”という独自の概念があって、会社のジャズが好きな人に聞いたら音的な特徴を言語化するとリズムをはじめゆったりしてちょっと後ろに詰めるのだそうだ。つまり一定ではないリズムをわざと作ってグルーヴィにするらしい。second to noneはまったくもってジャズではないが、ちょっと似ている部分がある。それはこのリズム感だ。とにかく溜める。タメてタメて、それで強烈なアタックが来る。特にドラムが変則的かつ多様でドラムだけのトラックを聞いたら相当面白いのではなかろうか。ドゥームにメリハリをもたせるというよりはむしろやはりハードコアのあのつんのめるようなリズムだろう。それを劇的な低速でやっているのだ!と低音の地獄にやられている頭で思いついた。もちろんただモッシュパートを延々とやったら流石にマッチョ耐久レースになってしまうから、デスメタルの荘厳な感じを曲に取り込み(よくよく考えたら結構水と油の要素をよくまあ混ぜ込んだものだ。)、さらに凶悪にドゥーム化させたような雰囲気。それはモッシュも頻発するだろうなと納得。超ロングセットということで1時間半以上プレイして終了。ヘトヘトになったが本当格好良かった。

Quetzalcoatl
続いてはこちらは東京のバンドQuetzalcoatl。今日はEPのレコ発であるから主役。second to noneと同じツインギターに専任ボーカルの5人体制。元T.J.Maxx、Stinger、Low Visionというハードコアのバンドのメンバーによって結成されている。(Low Visionは何回かライブ見たことある。)このT.J.Maxxは大阪で活動しており(ボーカルの方はMCでは関西弁)、元々はsecond to noneと同じくBreakOutに属していたらしい。そういうつながりで今回のライブになったのかと納得。
second to noneとは打って変わって明快な音だが、音楽的にはかなり説明するのが難しい。曲によって結構雰囲気が変わるのもあるが、ハードコアを通過してややオルタナティヴになった音を基調にしている。ギターはザクザク刻んだりもするが、音を高音から低音までまんべんなく鳴らしており、場所によってはコード感も結構ある。ドラムの人は顔と体で叩け!といったエモーショナルさで前にせり出してくる。ベースもかなり肉体的でとにかく小節に限界まで音をぶち込むくらいの気迫で硬質な音を連打しまくる。ステージングも一番派手だった。上背のあるボーカルの人がかなり独特で、ライブの前半ではほとんど節のある歌い方をしなかった。がなりたてるようなハードコアスタイルでもなく、歌詞を力強く読んでいくような形。所見でも結構聞き取れるくらいの歯切れの良さ。でもおしゃれなポエトリー・リーディングとはぜんぜん違う。とにかく力強い。バンドの演奏も小節の頭を意識させるような明確な弾き方だから、なんならラップに通じる気持ちの良さがある。といってもミクスチャー感はないからやっぱり相当変わっている。中盤以降は節のある歌唱法を導入していき、どんどん歌めいてくる。中盤では速度を落としてヘヴィにした楽曲や、冒頭にアカペラのような独唱を用いた曲などを次々に披露。それぞれに表情があるが共通しているのはやはり日本語の歌詞。これをちゃんと聞き取れるような速さと勢いに調節されているような気もする。歌詞もまた独特でおそらくだが、団結と友愛の素晴らしさについて雄々しく(声が太くて格好いい)歌い上げるんだけど、結構神話的な要素もあって、多分なんだけど「大国主〜」って歌ってたようなきがする。別に怪しいとか、左右いずれかとかそうではなくて、普通にひょいっと出てくるような感じ。相当な懐の深さを見せつけてくるのだけど、フロアを見れば殺伐とした感じというよりは熱量が眩しい。そういった意味ではストレートな日本のハードコアといってもよいのではと思う。

物販で幾つか購入して帰宅。自転車できたのだけど結構距離があって帰り足がパンパンになってしまった。しかし自転車こいでいると冷静にライブのことを思い返したりできて良い。すごく寒かったけど。楽しかった。

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