2015年8月30日日曜日

Birushanah/魔境-Makyo-

日本は大阪のトライバルスラッジメタルバンドの3rdアルバム。
2015年に自身のレーベルScumzoneからリリースされた。
前作「ヒニミシゴロナヤココロノトモシビ」から2年を経てのリリース。前作に関してはベースの草魚さん在籍時に録音が完了し、その後ベーシストで唯一のオリジナルメンバーである草魚さん脱退に伴ってお蔵入りになっていた事を考えると、編成が変わってからの新しいBirushanahになってからの初音源ということになる。ただしこのアルバムではドラムは康平さんがクレジットされているが、恐らく録音終了後に脱退し、現在ではギターボーカルのISOさんと、メタルパーカッションの佐野さんが正式メンバー。ライブではやじん(佐野さんがやっている別バンド)のドラマーもときさんが叩いている。
私は1st「赤い闇」を発売大分経ってからのファンで、Drain the Skyとのスプリットに収録された「窖」、前述の「ヒニミシゴロナヤココロノトモシビ」も大変楽しく聴いているのでこのニューアルバムというのは今年最大級の期待度だった(もう一個はCult Leaderのフルアルバムかな)。

印象的なアートワークは前作から引き続き彫り師のヨナルテさんの手によるもの。(ヨナルテさんはISOさんとCavoをやっていた方です。)
全5曲で1曲だけ4分台で後の曲はすべて10分を超えている。
相変わらず和太鼓、笛などの楽器を取り入れた和風のテイストを盛り込んだ重苦しいスラッジメタルを演奏している。ドラムとメタルパーカッションという打楽器混成部隊が強烈なリズムを編み出して、その上に重たいギターが乗る。伸びのあるギターリフを無理矢理低音でギュドンと止める様な印象的な弾き方も健在。そしてどこかしら儀式めいた感のある魔術ボーカルが乗っかる。
ただし前作までの流れを概ね踏襲しつつもメンバーチェンジもあって少し変わって来ているかなという印象がある。かなり歌っているアルバムである事。ともすれば難解とも表現される様な長尺の曲を一貫してプレイして来たバンドではあるが、「窖」はとても良い例だが常にメロディ(ただし決して明るくはない。)を曲に取り入れていた。ので別にポップになったという事は無いのだが、今作は歌詞をなぞって一緒に歌えるくらいのメロディがぐわっと前面に出ている。特にラストの「鏡」は私家で聴きながら一緒に歌っているくらい。(大変気持ちよい)もう一つはちょっと上手い言い方か分からないのだが、より生々しくなっている事。前作までは荒々しい音楽である事は勿論だったが、いわばカッチリした様式美も勿論あって一個の劇を見ている様な展開の一つ一つにも時間と楽器(例えば種々の楽器や女性の合唱だったり)を贅沢に使っていたが、今作ではバンド以外の楽器は取り入れつつ、そして移ろい行く展開もありつつももっと生々しくなった。より粗野になった印象。(ただしISOさんのボーカルは高音をとりいれてその表現力をかなり増している。)これが打楽器2人という体制にすごく合っている。より研ぎすまされている。
ドラムがリズムを刻む。キンキンしたメタルパーカッションが踊るように乗ってくる。ギターフレーズがつま弾かれ始める。しばらく無声のパートが続き反復を繰り返しながらも徐々にテンションがあがってくる。いつの間にか轟音に包まれている。と一点朗々とした男らしいボーカルが乗ってくる。気づくとそこは魔境。改めて思うのはリズムがとても重要なバンドであるなと。音が多い分の複雑さもそうなのだが、力強いそれはまさに血を沸かせる邪悪な祭り囃子のようだ。ギターが乗ればまさに聞き手を圧殺しにかかる重たい音楽だが、よくよく聴いてみると跳ねるリズムは踊れるくらい楽しいものだ。歌詞を読んでもなんとなく分かるのだが、恨み節というよりはもっと内面に切り込んでいくストイックなものだ。

という訳で一言で表現すると今作も最高です!こんな記事を読んでいる場合ではないのでさっさと買いにいってくださいませ。面白くかっこ良い。超ワクワクするアルバム。劇的にオススメ。

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