2013年9月8日日曜日

Vampillia/Hefner Trombones Vol.1

日本は大阪の10人+αのブルータルオーケストラの21013年発表のEP。
iscollagecollectiveというレーベルからのリリース。
妙に安いなと思ったら3曲しか入っていなかった。

Vampilliaというとデス声、ゲス声、オペラ声というトリプルボーカルに、ギター、ベース、ドラム(なんとRuinsの吉田達也も参加している。)というバンドアンサンブルに加えて、バイオリンやピアノなどの楽器陣が脇を固めて唯一無二の音をならしている不思議なバンドで、活動当初から海外の様々なアーティストからラブコールを贈られ、実際Nadjaだったり元Mayhemのアッティラなどなどとコラボしたりといろいろ話題のバンドだ。
私が初めて彼らのことを知ったのは何時だったか、恐らく田代まさしさんが出演しているミュージックビデオが話題になった1stEPの頃だっただろうか。

それから何枚か音源をリリーシスしてきた彼らだが、初めて上のビデオを見たときからこいつらは根底に悪ふざけがあるなと思ってきた。
諧謔といえば聞こえがいいが、ともするとちょっと人を食ったような悪ノリがあるのだ。ちょっとこっちを煙に巻くような。彼らは人をむかつかせるバンドだろうか。人によっては添うかもしれない。では彼らは心底人を馬鹿にしたバンドだろうか。それは否であると思う。彼らの馬鹿にする人でも彼らの音源を一聴すれば、彼らが100%マジで音楽を作っていることは分かるのではなかろうか。
ゲス声のボーカルの人は頭のおかしいピエロのようなメイクを施しているが、彼が象徴しているように基本的にこのバンドは道化的であると思う。不気味な面をして奇矯な振る舞いをするが、本質的に彼らというのは私たちを笑わそうとしているのだと思う。

さて、久方ぶりの彼らの音源だが、レーベルの説明をみるとhefner trombonesという架空のバンドになりきって録音したというコンセプトがあるらしい。なんのこっちゃと思うがまず曲名をみていただきたい。
1 , My father was hugh hefner,mother was crystal harris.
私の父はヒュー・ヘフナー、母親はクリスタル・ハリス。
前者はプレイボーイの創始者で後者は彼がおじいさんになってから結婚したセクシーなモデルさんである。
2 , Toshi’s Beautiful Thug Life,Only God Could Judge Him
トシの美しいギャングスターライフ、誰も彼をさばけない。
トシというのは多分X japanのボーカルではなかろうか。
3 , 15years Ago,I Ate Mogwai As Dinner.
15年前、夕飯にモグワイを食った。
なんだかアナルカントのむちゃくちゃなタイトルを彷彿とさせる。
モグワイは映画グレムリンに出てくる可愛いモンスターで、同名のポストロックバンドも有名。

うーん、これは大分ふざけている。
さて曲の方はというとこれもかなりふざけている。
全編にわたって赤ちゃんの声、女性の鳴き声、妙にいい声の男声ナレーション、気持ち悪い笑い声、気持ち悪い男たちの歌声と変な声がふんだんにフィーチャーされている。
1曲目は妙に雰囲気のあるピアノ、バイオリンがなったかと思うと、突然妙にチープなリコーダーが入ったりする。そしてまた突然始まる絶叫しまくりの混沌としたグラインドパート。ちーんというベルの音で区切られている妙な反復性。締めはアンビエントなピアノだし???となっているうちに曲が終わる。
2曲目は終始突っ張りまくるグラインドコアスタイルだが、パイプオルガンがかぶってくるため妙に怪しい雰囲気で、ブラックメタルっぽく聴こえないこともない…かも。いい声のナレーションが入って小休止、また爆走再開という流れ。
3曲目は手拍子とくぐもった男性の気持ち悪い合唱からナチ的なアジテーションを絡め、不穏なギターがリフを反復する不穏なスタート。後ろでぐうぐう唸る獣めいたデス声がグッド。今度は聖歌で区切る。曲の前半分は執拗な反復。むむむ、と思っていると後半妙にメロディアスなギターがトレモロの効いたブラックメタル然としたフレーズを奏で、ピアノが鳴りだしデス声とゲス声がわめきだす。余韻を残して終了。
3曲に共通して小休止と反復を取り入れてます。テーマなのかな?

まあふざけてますね、完全に。狐につままれたような感じです。しかし3曲目後半の美しさといったらどうだ。素直にやられた〜という感じ。Vampilliaはこうなのである。彼らはこっちがぽかーんとするくらいにふざけるくせに、要所要所にびっくりするような美しさをちらっと見せて私たちを感動させ、混乱させるのである。ふざけるなよー、と睨みつけたその顔ははっとするほど真剣なのである。
ずるい。
なんというたちの悪い奴らであろうか。私はもう完全に虜である。
さっさとフルアルバムを作りなさいよ、といいたい。
この夏は結構リリースがある彼ら、可能な限りついていきたい所存。

いつもにまして悪ノリだが、彼らのファンならマストでしょう。おすすめ。

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