2013年9月1日日曜日

Fleshgod Apocalypse/Labyrinth

イタリアの伊達男シンフォデスメタルバンドの3rdアルバム。
2013年にNuclear Blastからリリースされた。

メタルとクラシカルなシンフォニーというのは結構親和性のある組み合わせで、今や音楽に普通に取り入れているバンドも沢山あるし、大御所メタリカもコラボアルバムを出していたように思う。しかし個人的にはちょっと苦手意識があった。というのもドラマティックナノは結構なのだが、大仰すぎて入り込めないのである。自信過剰というともはや誹謗中傷ともとらえられかねないが、どうにもこうにも曲に入り込めないというパターンが多かった。

彼らの2ndアルバム「Agony」がリリースされたのが2011年で、それに前後して(リリースのちょっと前だったような覚えがあるのだが、はっきりしない。)アルバム収録の「The Violation」のミュージックビデオが後悔された。何ともいえないストーリー仕立てのビデオはいかにもメタル然としていたものだが、その曲の内容はとてつもなかった。
シンフォニックなアレンジのデスメタルであった。別に妙に奇をてらった訳ではないが、凄まじかった。私は「Agony」(妙にださいジャケットはいかにもメタルだ。)と一個前のEP「Mafia」を購入しとても楽しく聴いた。

それから2年。新作がリリースされたのだが、当然購入した次第だ。
クレタ島のミノタウロス伝説がテーマのコンセプトアルバムのようだ。
基本的な音楽性は前作からの延長線上にあるといっていいと思う。
シンフォニックなレンジをかなり大胆に取り入れている。女性のオペラ声を導入するなど、前作に比べて派手さが増した。かといって同時に十分すぎるほどブルータルである。さらにひたすら突っ走った前作に比べると、激しさはそのままに曲に緩急がついた。メリハリがあってアルバムを通して聴きやすくなった。
私は「The Violation」を聴いたときもそうだったが、思わず笑ってしまった。
なぜならばあまりにメタルであるからである。以前もどこかの記事で書いたが、私はメタルの良さは「過剰さ」であると思っている。
そういう意味ではFleshgod Apocalypseはきわめて純度の高いメタルである。ドラムは叩きすぎるほどに叩く(大好きだ!)。ギターとベースはリフをすげー速度で弾きまくる。妙にクラシカルなフレーズが散見されるのがさらにグッドだ。小節にこれでもかというほどに音を詰め込む。もはやある種のチャレンジではと思うほど。デス声がからむ。妙にオペラっぽい高音で歌い上げる。さらに重厚すぎるシンフォニーが曲をもう一個別の次元に押し上げる。
前作も恐ろしかったがややもすると単調になりがちだったが、今作は曲にメリハリをつけた。タメを作って一曲の中にも緊張感とカタルシスを大幅に追加することに成功している。リスナーは嵐に飲まれた小舟に乗っているように、あちらこちらへと引っ張り回される。上ったかと思ったら谷のような波間に急降下していくようだ。
個人的には曲によってはピアノが大胆に取り入れられている点がとても気に入った。これだけやかましいのにピアノを導入するというのはすげえなあ。やはりピアノは良い。五月蝿いのにメランコリックさがある。

よくぞここまでといいたい。太陽と海の国イタリアに生まれ、パスタとワインの食べて育ったというのに、一体何を間違えて髪をのばしすぎるほど伸ばし、バンドをやるのはかまわないにしても、5人も集まってなぜこんなマニアックな音楽を作ったのだ、と快哉を叫びたい。全く持って素晴らしい奴らである。

メタルすぎるほどにメタルだ。小賢しいモテ音楽をいとも介さずひたすらメタルなアルバムである。もはやメタルですとしか言いようがない。デスメタルです。メタルの固まり。全メタル野郎必携の良盤。

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