2013年3月31日日曜日

ジェフリー・ディーヴァー/ウォッチメイカー

アメリカの元弁護士の作家ジェフリー・ディーヴァーによるクライムサスペンス、リンカーンライムシリーズ第7弾。
リンカーンライムシリーズといったら第1作目「ボーンコレクター」がデンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリー主演で映画がされているから結構知っている人がいるんじゃなかろうか。かくいう私も見た覚えがある。
警察の優勝な鑑識官であったリンカーンは事故によって首から下の感覚がなくなり、動かなくなる四肢麻痺になってしまう。 警察もやめて離婚したリンカーンは自暴自棄になっていたが、ある事件で捜査に召集され、その明晰な頭脳を披露することになる。手足が動かないので実際の捜査には女性警察官アメリアにリンカーンの指示通りに動いてもらう、という感じ。
恥ずかしながら私、リンカーンライムシリーズはボーンコレクターを映画で見ただけで、活字で読んだことはない。しかしこの第7弾はよほど出来が良いらしく、思わず買ってしまった次第です。

3・11からいまだ立ち直っていないニューヨークで2つの殺人事件が起こる。
一つはハドソン川に臨む桟橋に大量の血痕が。犯人は被害者の手首を切って桟橋の突端につかまらせたらしい。もう一つはとある路地で男性の遺体が発見された。口にはダクトテープが張られ、40キロ近い重さのダンベルが落ちていた。犯人は被害者につりさげられたダンベルを支えさせたらしい。力尽きた被害者の喉に支えを失ったダンベルが落ちてきたきたらしい。
両方の現場には置時計が置いてあった。古式ばったスタイルで月齢の表示がついているものだ。犯人はウォッチメイカーを名乗り現場に不可解な詩を残していた。警察から依頼を受けたリンカーンは自宅の車椅子の上から科学捜査を開始する。
リンカーンの手足であるアメリアはある公認会計士の男性の自殺が実は殺人事件であることを確信。捜査の先にはどうやら警察官の汚職がかかわっているようだ。2つの事件を抱えるアメリアは自分の跡をつける者たちの存在に気付く。
 一方ジェラルドとヴィンセントの2人組は3人目の被害者のもとに迫ろうとしていた。2人こそがウォッチメイカーだった。

というあらすじ。
この本の魅力は何と言っても二転三転する展開であろう。
節目節目に丁寧に捜査状況が読者に提示されるけれども、真相を読者が突き止めるミステリーというよりはどちらかというジェットコースターサスペンスの趣。
じつは上巻を読み終えて下巻のある程度まで「あれ~」という感じであまり面白くなかったのだが、ある地点で急転直下である。下巻の途中からは最後まで一気に読んでしまった。これはスゲー。
というのもこの本、操作する側とリンカーンと犯罪者側のウォッチメイカー、両方の視点で書かれている。コロンボスタイルとでもいうのか。これだと犯人もその足取りもわかっているので、基本的には捜査側が犯人を追いつめていく、という形になるのだが、この配置にも罠がある。どうにもこうにも構造上つっこんだことを欠いてしまうと面白さが半減してしまうので、ここにかけないのが歯がゆくてならないが、個人的には「偶然」、しかも都合の良いもののそれの書き方には思わずうならされたものである。書き方がとにかく巧みで基本的に丁寧に描写していくのだけど、途中で意図的に時間をすっぽぬかしたようにに書いたりするので、読んでるほうとしては手に汗握りまくりである。もちろん飛ばした過程もきっちり後で説明するのですっきり。とにかく巧みな文章構成です。
 
キャラクター造詣も魅力的で、気難しいというよりは細かいリンカーンはもちろん厳しいのだけれど、もっと日常からずれた人格破綻気味の鑑識オタクかと思っていたら、結構前向きで茶目っ気のある人だなという印象。ただ第7弾ということで彼の性格に大きな影響を与えているであろう自身の四肢麻痺との付き合い方も変わってきているだろうから、ここはやはり1作目から読んだほうがよさそう。個人的にはフレッド・デルレイという人がちょっとしか出てこないのにすごい印象的だった。人の顔をハリウッド俳優にたとえたり、服装を丁寧に描写したりと世界観にちゃんと読者が入り込めるように細かいところにも気を使っているように思いました。
とにかく騙されたい!(泣きたい!という変な人たちがたくさんいるらしいから、騙されたい人だってたくさんいるだろう) という人におすすめ!!

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