2015年8月30日日曜日

酉島伝法/皆勤の徒

日本の作家による連作SF小説。
2013年に単行本の形でリリースされると第34回日本SF大賞、2014年版SFが読みたい!の国内編で1位に選ばれたりと話題になった本。気になっていたので、今回東京創元社から文庫になって再登場というタイミングで購入。
著者の酉島伝法はどうやら(小説とどちらが先なのかは分からないが)デザイナー兼イラストレイターを生業としているという事で、ご本人の手によるイラストがいくつも収録されている。
世界観を共通にする4つの独立した物語が収められている。間を読み取るのが難しいごく短い背景の説明をする断片が埋めている形。
この小説非常に読みにくい小説で普通のSFを読む程で本を開くと結構戸惑うのではなかろうか。私がそうだった。まず一つにSFといっても広義に渡るが、共通して現在にない想像力を駆使した(あるいは現在の延長線上である程度実現される度合いが強い)未来的な技術を物語の根幹に、あるいは周辺に配した”ソリッド”な文学である事が多い。非現実を扱いつつも説明を必要しない(そういえばSFだって飛躍のある技術の説明はできないのだが)幻想小説とは一線を画す訳だ。ところがこの4つの小説群というのはどうにも模糊としている。それも幻想的というよりは内蔵がうごめき異形がひしめき合うグロテスクなものである。一つはその文体で架空の言語が難しい漢字を当てられて頻出する。意識的に難しい語彙がこれでもかというくらい使われている。さらに筆者が考えだした全く新しい単語もそれ以上に出てくる。これらに関してはどうも前後の文脈からこういうものだろうと判断するしか無い。もう一つは全体的に世界がグチャっとしている。人間らしき隷長類はでてくるものの変な生物に寄生されていたり、単独生殖したりとどうも様子がおかしい、食べ物も変な気持ち悪いものを食べている。その周りには社長と呼ばれる不定形のアメーバだったり、しゃこ(すしネタにもあるあのしゃこ、私は虫じゃん!と思って食べられないんだ)に似た殻場の外角をもったデカい化け物、通称「外回り」が跋扈している。他にも自ら人類と賞する昆虫のような生物たち。もう本当なんだか分からない感じになった人間たち。こんな個性豊かな面々がぐちゃぐちゃのたくっているのだ。この文体と世界観(個性的な世界観を表現するためには個性的な文体が必要なのだと分かるだろう。(音楽で言えば過剰な演奏で過剰な世界観を確立しようとするメタルに似ている。(無理矢理かなあ))
この突き放した様な世界観にちょっと戸惑うのは確かだが、おぼろげに名前から性質が想像できる粗野な生き物(もしくは化け物)が跋扈する生命力あふれる世界観は椎名誠さんのSFに相通じるところがあるし、なにより漫画家の弐瓶勉さんの世界観に良く似ている。(弐瓶勉さんは登場人物に椎名誠さんの小説の登場人物の名前をつけたりしている。)作者が考えた感じに彩られた造語が多いところと、全体的にぐちゃっとしているところはそっくりといっても良い。私は弐瓶勉さんの描く漫画のファンであるから、この酉島さんの書く世界観にもなんとか入り込む事が出来た。そこは完全なディストピアであり、最早魔界であるが、そんな世界観を文字を頼りに頭の中に再現できるというのは読書の醍醐味ではないか。

大森望さんの解説が大変分かりやすくこれを読むと沢山の「?」が解消される。なるほどね!と膝を打つところ多し。ただし本編を読み終えてから読まないと駄目。確かにSFだったんだなあと感心。
決して読みやすくはないが、難解な言葉の壁を越えれば貴方の想像力を超えた世界が広がっている。化け物が跋扈する地獄にきっと魅せられる事だろう。弐瓶勉さんの漫画が好きだという人は是非手に取っていただきたい。

BIrushanah 魔境-Makyo-リリースイベント @新宿Dues 8/29

2015年8月19日、日本は大阪の3人組トライバルスラッジバンドBirushanahの最新作「魔境-Makyo-」がリリースされた。
その10日後ディスクユニオンのライブハウス新宿Duesでリリースイベントが開催された。
ライブレポートを書くのが1年ぶりということでこの一年ライブに行けてなかった私だが(チケット買ったのに行けなかったライブとかもありました…)、個人的に今年最大級の期待感を持っていたBirushanahの最新作ということで万難を排しても行かねばということで行って参りました。最新作「魔境-Makyo-」に関しては一個前の記事で書いているのでもし良ければそちらもご覧ください。一言で言うと高すぎる期待を全く裏切らない素晴らしい音源です。もしよろしければ是非聴いていただきたい。

Birushanahを見たのは去年のフランスの女性ボーカル激遅ドゥームMonarch!との一連のツアーが初めてでそれ切りでした。(この日メタルパーカッションの佐野さんはMonarch!のバンドT着ていました。)レポートはこちらです。
初めて行ったDuesはとても小さいライブハウスでステージは一段高いものの距離は本当に近い。12時開場ということで15分くらいに入場してぼんやり立っているとギターボーカルのISOさんが物販を始めたのでCavoのCDを購入。「マアカ」はもっているので「カズカ」と「ユシナ」を購入。後一枚でコンプリートできるっす。

少し遅れて12時40分位にライブがスタート。まずは新作1曲目「薔薇小夜も兎」。
まず思ったのはドラムがすごい重たい。サポートメンバーのモトキさんが叩くドラムは一撃一撃が滅茶重たい。スラッジなんだが、速度はそこまで遅くないし、手数も結構多いので重たい連打になって大変な迫力。そこに佐野さんのメタルパーカッションがキンキン乗ってくる。こちらは見た目はすごい厳ついのに(メタルパーカッションという楽器はドラム缶鉄板、車のホイールなどの素材から手作りです。楽器屋にいっても売ってないです。)そこから出る音は結構繊細で美しくもある。キンキンしているのですが、余韻が奇麗で耳にいたくない。それが跳ねる様なリズムで持ってドラムに重なっていく。音が多いリズムは複雑で楽しい。そこにギターがつま弾かれるようにフレーズを反復しつつ乗っかってくる。まだ静かと言っても良いくらいの出だし。これがミニマルに続いていく。段々と激しさを増していき、ISOさんが「ああああーーーーーーーー」と叫んだら地獄の始まり。渦を巻くように弾くギターリフ、そしてズンン!!と抉じるように止める弾き方。打楽器2人どころじゃない、曲の一部では全部打楽器のよな暴力的で物理的な衝撃!これが複雑なリズムと絡み合って体が揺れる。思ったのだが、スラッジであるものの、この速度がBirushanahにとってもは自然な速度なのだ。一番リズムが合う。スラッジだから遅くしている訳ではないんですね。
そこから一気に畳み掛けるイントロの新作の中でも唯一4分台と短い「瞼色の旅人」。激しさと重たさがないまぜになりつつも、朗々としたボーカルが歌い上げる儀式っぽい不思議な曲。スラッジパートを経ての後半の魔術的なボーカルに酔う。
佐野さんのMCを挟んで前作「ヒニミニゴロナヤココロノトモシビ」から「人的欲求」。一点獣の咆哮めいた荒々しいボーカルが特徴的な攻撃的ナンバー。この曲は歌詞も怖いんだが、それもあってかライブではとても良く映える。最後爆走するパートも大変気持ちよい。
再度MCを挟んでラストは最新作のラストでもある「鏡」。ドラムとパーカッションが一体になって5回、7回と繰り返していく叩いていく冒頭でもうやばかった。ここんところ深夜の会社で繰り返しこればっかり聞いていたもんでなんかこうこみ上げるものがありました。ギターがつま弾かれていく。思ったのだが、この反復し段々高まり合っていくイントロというのはまさに魔術めいている。例えば魔法の詠唱のように。細かくライブハウスの空間に音をためていく。小さい音がどんどんたまって緊張感が高まってくる。そうすると本当にもうだめだってところで曲が爆発する様な感じ。アルバムの長いイントロはなるほどすごいカッコいいけど、ライブで聴くともっとすげえなと。要するに間であって、いきなり激しいのはそれはそれで良いものだけど、魔法陣を組むように緊張感を高めて曲を完成させるというやり方もあるのだなと。そうこうしているうちにISOさんのボーカルが入ってくる。ここ私もう多分一緒に歌えるくらいだな。歌わなかったけど。この曲は珍しくサビっぽいところがあるのだが、そこまでくるとこっちはもう死にそうな訳で。そこからの無声パートはライブ的にもばっちり映えて佐野さんもあおってくる。佐野さんがドラを乱打してライブは幕。本当短時間だったけど時間が経つのを忘れた。本当に魔境だった。私はそれを真っ昼間の雨のそぼ降る新宿でかいま見たのだった。幸せでした。

ライブがあまりにかっこ良かったのでパーカを買ってISOさんに「かっこ良かったです」とボソボソしゃべることができました。(ISOさんは次はCavoのあったら全部持ってくるよと優しかったです。)んでもって佐野さんと握手して帰りました。良かった〜〜〜。(折角だからかっこ良かったと思っている事をメンバーに直接伝えたいなと思っていたので。)またライブ行きたいです。音楽は個人的なものなんだけどそれが連鎖するように全体(人と空間)に浸透するようでライブはやっぱり面白い。

Birushanah/魔境-Makyo-

日本は大阪のトライバルスラッジメタルバンドの3rdアルバム。
2015年に自身のレーベルScumzoneからリリースされた。
前作「ヒニミシゴロナヤココロノトモシビ」から2年を経てのリリース。前作に関してはベースの草魚さん在籍時に録音が完了し、その後ベーシストで唯一のオリジナルメンバーである草魚さん脱退に伴ってお蔵入りになっていた事を考えると、編成が変わってからの新しいBirushanahになってからの初音源ということになる。ただしこのアルバムではドラムは康平さんがクレジットされているが、恐らく録音終了後に脱退し、現在ではギターボーカルのISOさんと、メタルパーカッションの佐野さんが正式メンバー。ライブではやじん(佐野さんがやっている別バンド)のドラマーもときさんが叩いている。
私は1st「赤い闇」を発売大分経ってからのファンで、Drain the Skyとのスプリットに収録された「窖」、前述の「ヒニミシゴロナヤココロノトモシビ」も大変楽しく聴いているのでこのニューアルバムというのは今年最大級の期待度だった(もう一個はCult Leaderのフルアルバムかな)。

印象的なアートワークは前作から引き続き彫り師のヨナルテさんの手によるもの。(ヨナルテさんはISOさんとCavoをやっていた方です。)
全5曲で1曲だけ4分台で後の曲はすべて10分を超えている。
相変わらず和太鼓、笛などの楽器を取り入れた和風のテイストを盛り込んだ重苦しいスラッジメタルを演奏している。ドラムとメタルパーカッションという打楽器混成部隊が強烈なリズムを編み出して、その上に重たいギターが乗る。伸びのあるギターリフを無理矢理低音でギュドンと止める様な印象的な弾き方も健在。そしてどこかしら儀式めいた感のある魔術ボーカルが乗っかる。
ただし前作までの流れを概ね踏襲しつつもメンバーチェンジもあって少し変わって来ているかなという印象がある。かなり歌っているアルバムである事。ともすれば難解とも表現される様な長尺の曲を一貫してプレイして来たバンドではあるが、「窖」はとても良い例だが常にメロディ(ただし決して明るくはない。)を曲に取り入れていた。ので別にポップになったという事は無いのだが、今作は歌詞をなぞって一緒に歌えるくらいのメロディがぐわっと前面に出ている。特にラストの「鏡」は私家で聴きながら一緒に歌っているくらい。(大変気持ちよい)もう一つはちょっと上手い言い方か分からないのだが、より生々しくなっている事。前作までは荒々しい音楽である事は勿論だったが、いわばカッチリした様式美も勿論あって一個の劇を見ている様な展開の一つ一つにも時間と楽器(例えば種々の楽器や女性の合唱だったり)を贅沢に使っていたが、今作ではバンド以外の楽器は取り入れつつ、そして移ろい行く展開もありつつももっと生々しくなった。より粗野になった印象。(ただしISOさんのボーカルは高音をとりいれてその表現力をかなり増している。)これが打楽器2人という体制にすごく合っている。より研ぎすまされている。
ドラムがリズムを刻む。キンキンしたメタルパーカッションが踊るように乗ってくる。ギターフレーズがつま弾かれ始める。しばらく無声のパートが続き反復を繰り返しながらも徐々にテンションがあがってくる。いつの間にか轟音に包まれている。と一点朗々とした男らしいボーカルが乗ってくる。気づくとそこは魔境。改めて思うのはリズムがとても重要なバンドであるなと。音が多い分の複雑さもそうなのだが、力強いそれはまさに血を沸かせる邪悪な祭り囃子のようだ。ギターが乗ればまさに聞き手を圧殺しにかかる重たい音楽だが、よくよく聴いてみると跳ねるリズムは踊れるくらい楽しいものだ。歌詞を読んでもなんとなく分かるのだが、恨み節というよりはもっと内面に切り込んでいくストイックなものだ。

という訳で一言で表現すると今作も最高です!こんな記事を読んでいる場合ではないのでさっさと買いにいってくださいませ。面白くかっこ良い。超ワクワクするアルバム。劇的にオススメ。

2015年8月23日日曜日

Vivisick/Nuked Identity

日本は東京のハードコアパンクバンドの2ndアルバム。
2015年に自身のVivisick Recordingsからリリースされた。
ボール紙で箱状になったジャケットに新聞を模した様なカラー印刷の歌詞が掲載されたインナーが入っているという力の入れよう。(新聞紙っぽい紙質)
私はなんとなくこのアルバム収録の楽曲を聴いて気に入り購入した。他の音源は未聴。
フルアルバムは2枚目だが1996年に結成されたバンドで日本だけでなく、アメリカ、ブラジル、アジア諸国と各国をライブして回ったりと大変精力的に活動を行っているようだ。
タイトルは「被爆したアイデンティティ」と明らかに震災を意識したなかなか重いものになっている。それでは正座して聴かないと行けない様な高尚な音楽かというと全然そんな事はなかった。

ジャンル的にはハードコア、wikiにはThrashcoreと書かれている。
ぱっとHellnationが思い浮かんだ。なるほど重量感のあるメタリックなリフを多用する部分は共通しているが、Vivisickの場合はもっとメロディアスでポップ。全編バッキングのコーラスが歌いまくる楽しさにみちたハードコアパンクを演奏している。勿論演奏の方はかなりがっちりしたハードコアなもの、速度も爆速でないものの疾走感は十分。1分から3分台で畳み掛けてくる。全10曲があっという間でもう一回聴こ、という気分になれる。
ドラムはバスドラで重さを出しつつ、タムがぱたぱた高速で回転する様なタイプで気持ちよい。
ベースはゴロゴロした硬質で低音を強調したタイプ。結構前にも出てくる。ただ音圧を意識的に押さえているの非常にバランスが良く、疾走爆走に良く合うんだ。重くすれば良いんじゃね?的な下品さから華麗に解き放たれているかの様な自由さ。
ギターは中音域を強調した硬質かつ暖かみのあるパンクサウンド。スラッシーなリフ主体なんだけど結構低音から高音と自在に動きまくる。
ボーカルはかなり高音で特徴的。のどが切れそうな高音シャウトが癖になる。早口でまくしたてる様なそのスタイルはエクストリーム感すら漂うのだが、ここを上手くバックのコーラスがカバーしていると思う。とにかく全編シンガロングかってくらい歌いまくる。これが男臭いんだけど、妙にさわやかで気持ちよい。もはやずるいくらい聴いている方も高揚してくる訳でこれはライブが非常に楽しいのではないだろうか。
日本語で紡ぎだされる歌詞は英訳が乗っている。世界で活躍しているバンドらしいと思う。2曲目の出だしは各国の言葉で歌っているようだ。歯に布着せない攻撃的な歌詞は衝撃的だが、どうも「自分で考えろ!」というようなアティチュードが垣間見える気がする。つまり十二分メッセージ性に富んでいるが押し付けがましくない。これは楽しい音楽性にも表現されている。楽しさ、かっこよさ、そしてそこにシリアスさを同居させている。シリアスすぎれば当然楽しくないし、楽しすぎると軽薄になっている。このバンドは両方出し切っているのに、どちらも活きているのがすごい。

非常に気持ちよいハードコアパンク。ポップな楽しさに面食らってしまうが、よくよく聴いてみればくそ真面目なハードコアパンクだった。すごい。オススメです!

Grief/Turbulent Times

アメリカはマサチューセッツ州ボストンのスラッジバンドの編集版。
2002年にSouthern Lord Recordingsからリリースされた。
1991年にDisruptというバンドの元メンバーらに結成され、度重なるメンバーチェンジを繰り返しつつ5枚のアルバムと数々のスプリット(本邦とのCorruptedとの音源もアリ)を発表し、2001年に解散。その後再結成や再解散を経て、今では名前を書いて再結成しているらしい。
この音源は一度目の解散後にリリースされたもので、全スプリットの曲を網羅したアルバムとの事。いわゆるベストアルバムな訳ではないが、バンドのサウンドをほぼ活動次期全体を通じて追う事が出来そうだ。前々から気になっていたのだがマテリアルは見つけられなかったのでiTuensで購入。ジャケットがお洒落。タイトルは「騒々しい時代」。

音楽評論家のyamazakiさんの所の紹介ページにはスイサイド・トーチュア・スラッジ・ドゥームコアと呼ばれると書いてある。なるほど。あまりの激烈な音楽性に私はリリース元のSouthern Lord RecordingsのStephen O'MalleyがやっていたバンドKhanateの1stを想起した。あれもトーチャースラッジだったはず。すごく似ている。Khanateは結成が2001年だからどう考えても彼らに影響を与えたのがGriefってことになるだろう。(直接影響を受けたか確認した訳ではないけど、自身のレーベルから音源を出した事からきっとリスペクトしているに違いないと思う。Khanateの音源はドゥームじゃないのかな?と買った当時は思ったんだけどなるほどどう見てもスラッジ要素の方が濃いね。)

要するに”拷問”という形容詞がふさわしい、聴くのが苦痛なんじゃねーのってくらいの長く引き延ばされた音楽が延々と続く凄まじいバンドである。
リフは鈍器で徹底的に叩きのめされたように爛れ、崩れ、そして引き延ばされている。特に長い尺の曲では最早リフとリフの感覚が長く、輪郭が曖昧になっており、融解したという表現が非常にしっくり来る。フィードバックにまみれた弦楽器隊がズルズルズルズル一音一音が狂気の様な衝撃を持った音を出す。ギターはざらついたヤスリの様な音だが、下品な重さは無い。もっと生々しく汚らしい。その分ベースは低い低音を奏でている。ドラムの乾ききったタムが唯一の清涼剤でかろうじてそこにリズム、つまりルールを見いだし、安心する事が出来るだろう。ふらふらした頭に内蔵を吐き出す様なしゃがれた、この手のジャンルのお手本の様な邪悪なボーカルが乗ってくる。こうなると完全に追い込まれる。貴方はいつ終わるのだと曲の長さを見る。また2分しか経っていない。曲は後7分は続く。とてもそれまで持ちそうにない、とそんな感じの音楽である。こんな曲を何回か無理してでも聴いてみると良い。何故だか分からないがたまらなく気持ちよくなってくる。どんな性癖だといわれそうだが、意外にも曲は難解さとは皆無だ。そこがスラッジの良さかもしれないと思う。とにかく極端なリフのアタックが明確なので実は頭を振るには最適なんだ。二日酔いのようにふらふら→ゴン!ゴン!とまあこんな感じ。こりゃあ気持ちよい。それから一番長い曲でも実は9分。平均するとだいたい6分くらいかな?意外にコンパクトにまとめている。それから特にギターリフには例えばBlack Sabbath系と言われる様なヴィンテージロックっぽさがたまーーーに見え隠れする事があってそこも面白い。ただ一方で極端にハードコアで徹頭徹尾容赦がない。曲の緊張感は最後まで途切れる事が無く、Eyehategodのように曲中で疾走する様なパートもこの音源に関して言えばほぼ皆無。(#10の途中がかろうじて?)本当に最初から最後まで遅い。マジで地獄。たまらん。

という訳で個人的には非常に良かった。Khanateの1stが大好きな人にはたまらないはず!トーチャーされたい貴方は買って聴きましょう。一部の人にはとてもオススメ。


ブレイク・クラウチ/ラスト・タウン-神の怒り-

アメリカの作家によるエンターテイメント小説(なんでもありなんでお茶濁した)。
「パインズ」三部作の完結編。
一作目「パインズ」でおー!となり、二作目「ウェイワード」でうーん?となったんだけど折角乗りかかった船だしという事で三冊目も買った次第。
前作ではとにかく勢いで強引に物語が進まされている感じがしてしまってちょっと冷めてしまった感が正直あった。まああのシャマラン監督が映像化(ドラマ化されている)するくらいだから設定命の物語であって、ジェットコースターな感じの一冊目は良かったんだけど、二冊目で主人公の視点が「追われる男」から「町の住人」になって落ち着いたという事もあって、彼イーサン・バークと一緒になってよくよく読んでみると、設定の粗に気づいたという感じだろうか。それでもつまらないという事は無いし、なにより最後どうやって締めるんだろう?と気になった訳です。

アメリカアイダホ州の渓谷に佇む静かな田舎町ウェイワード・パインズは危機にさらされていた。保安官イーサン・バークは町の創設者であるピルチャーに直談判をしようと彼の元に乗り込もうとするが…

さてこまったことに記事を書くのが大変難しいのだ、この作品。なんせあらすじだって上記の様な始末。というのもどんでん返し系の作品の三冊目なのだもの。ネタバレしないで書く方が難しいよ。本当はネタバレあります、とか書くのも嫌なんだが…(だってネタバレする様な何かがあるのね、って未読の方にわかっちゃうじゃんよ。)
記憶喪失の男が見知らぬ町で自分を探し求めるうちに何かがおかしい事に気づく、という態のミステリー小説だが、その姿を大きく変えた三冊目。
全体を通じて独裁者に目隠しをされ、過去未来そして現在すべての生殺与奪を彼に握られているというディストピアへの批判というテーマがあるものの、こちらは正直なところ特に目新しい発見はなかった。主人公イーサン・バークとその妻との関係を中心にした家族関係の描写もあるが、こちらも特に目新しさはなし。息子との関係は”もう一人の男”を絡めてもう少し深堀出来たかも?と思うが、勢いをそいでしまう可能性もある訳だし結果的には脇道にあまり突っ込まない今の構成が良かったのだろうとも。どちらかというと実際に天国「パインズ」が崩壊していく様をフリークスを文字通り投入する事で生々しく描いたというところがこの本の面白いところだろう。なのでどっちかというとホラーに舵を取っている。この化け物たち(食欲おう盛過ぎて動物もあまりいない環境なのに普段何食って行きているんだよと思わなくもなかったが。(もし動物が沢山いるなら後半の人類サイドの大きな問題は無いはず))はなかなか生理的嫌悪感を抱くデザインで持って、その出自もあって結構魅力的な存在感を出している。

細かい箇所にぐちぐち言っては粋でない小説。とにかく勢いでもて最後まで読ませる。翻訳も素晴らしいので読みにくさとは無縁の、そういった意味では大変優れた小説だと思う。とりあえず本読みたい!という方はどうぞ。可能だったら一冊目から手に取ってみるのがよろしいかと。三冊でも結構すぐ読めると思います。

2015年8月16日日曜日

Chelsea Wolfe/Abyss

アメリカはカリフォルニア州ロサンジェルスのシンガーソングライターの5thアルバム。
2015年にSargent Houseからリリースされた。
前作「Pain is Beauty」から2年という時間でのリリース。個人的には2年って結構あっという間。もう新作?と思ってしまう。嬉しいから良いけど。

前作は印象的なジャケットもそうだけどぼんやりとしつつも結構色彩豊かなサイケデリックなフォークいイメージがあった。今作は黒を基調としたアートワークが示す通り、前作に比べるとちょっと方向性が違うかな?と思った。
1曲目「Carrion Flowers」の不穏かつ低音を強調したノイジーな電子音で幕を開けるこのアルバム。全体的に重苦しく暗くなっている。バンドサウンドはあからさまにノイジーに唸りを挙げるようになり、バンドサウンドが鳴りを潜めるフォーキーな曲は逆に音の数が減り、ドローンめいた電子音が内省的な雰囲気を醸し出している。こう書くと徹頭徹尾内省的で実験的な音になっていそうなもんだが、あくまでも歌が曲の中心にある曲作りの手法は前作と変わらず。今作も妙に浮遊感のある歌声は健在。ため息を吐く様な声に凝縮される色気のある蠱惑的な艶っぽさと、不安定な内面を映し出した様な病的危うさの二面性がある何とも癖のある魅力的な声が何とも独特の世界を作り上げている。
全くこの人の声というのは不思議なもので、幽霊の様なウィスパーボイスはつま弾かれるギターのアルペジオや、霧の様な電子音で構成されるアンビエントな曲調で良く映える。かと思えばいびつなギターが作り出す轟音の世界でも負けない声量と強さでもって耳に突き刺さってくる。暗さを突き詰めつつ静と動、静寂と轟音の両極端をよいっと統べてしまう様な印象があってこれは結構ずるい。なよなよしているのかと思えば蛇の様な執拗さを持っているわけで、これは中々男性にとっては魅力的ではなかろうか。
バックの演奏陣もそんな彼女の声を活かすべく、五月蝿かったり、静かだったりと手の込んだ事をしている。言わずもがなのバンドサウンドにしてもさすがにメタルの持つような重苦しさはありつつも(ドラムの音とか結構重厚)、どこかしらしっとりしたビンテージ感がある。あとはピアノだったりバイオリン?などのストリングス。それからドローンめいた様々な電子音。一見漆黒の闇夜なんだが、目が慣れてくると色々細部にも目がいく様な作りになっている。アルバムタイトル「Abyss」とは確か深淵の意だったと思うが、そんな深淵に深くゆっくり沈み込んでいく様な気持ちよさがある。煌めく水面も気づくと遠く目のない魚たちが泳いでいる中をひた落ちていく様な。

アルバム全体を通して位という共通点はあるものの、曲の作りに結構バリエーションがあるので聴いてて飽きない。個人的にはアルバムトータルで見るとかなり好きだ。一番好きなのは2ndなんだけど、それくらい良いかも。聴けば聴くほど曲の良さに気づく様な気がする。こりゃオススメ。初めて聴く人には良いかもよ。

Alpinist/Lichtlaerm/Minus.Mensch

ドイツのミュンスターのネオクラストバンドの1stアルバムと2ndアルバムをくっつけた編集版。
2011年にSouthern Lord Record Recordingsからリリースされた。
2000枚限定で私が持っているのは999番。ぞろ目でなんか嬉しいです。
バンドは2007年結成。ネオクラストの文脈で語られるバンドで私は完全に後追いですがディストロの紹介で視聴したらかっこ良かったもので購入。

2ndアルバムLichtlaerm(2010)は「明るい騒音」1stアルバムMinus.Mensch(2009)は「マイナス。人間」という感じではっきりとはしていないもののなんとなーく彼らの姿勢というが見える様な気が。このアルバム2枚目が頭の面白い構造(普通は時系列に並べるのかな?と思います)なんですが、スパンが1年という事もあり路線も同じなのでそんなに違和感無く聴けます。
FBのジャンルには重たく低く速く遅く暗いハードコアと書かれており、この説明だけでだいたい好きなヤツだなと分かりますね。
クラストを土台にした呵責の無いハードコアなんだが、同時に滅茶苦茶ドラマティックで爆発寸前の激情っぷりに涙がちょちょぎれるタイプの叙情性を持っている。終始喧しいのにここまで感情込められるのが不思議なくらい。
空間を真っ黒に塗りつぶすタイプのハードコアで徹頭徹尾容赦ないが弦楽器が奏でるメロディが疾走感と相まって非常に気持ちがよい。
ドラムはハードコアっぽくズダズダ突進するタイプだが、結構転がすようにタムを回したりして手数は多め。
ギターが暴れる分低音を一手に担っているのかとにかくベースがごろごろ存在感を出してくる。
ギターはどっしり重たい低音で嵐のように左官屋のように塗り籠めてくる塗り壁タイプで、不協和音っぽい高音だったりアルペジオだったり、遅いパートては単音つま弾いたりでで雰囲気だしてくる。とにかくメロディアスに弾き倒してくるのでボーカル以上にギターが歌っている印象。低音リフからの高音トレモロが泣ける。
ボーカルは激情系な絶叫タイプが主体で終始シャウトしっぱなし。血管切れないのだろうかとこっちが心配になってくる。たまに出てくる低音ボーカルも彩りを添えて大変良い。
スローパーともふんだんに取り込んでいるものの基本は疾走するハードコア。かなり極端なジャンルには間違いないのだが、なぜこんなにも感情豊かなのか。ストイックさ、そして全身全霊さ。一番最後の曲、1stアルバムの「Outro」を聴けば分かるのだが、このイントロの曲の中には荒々しさの中にもポストロックを彷彿とさせる空間的な広がりと、音の厚みが重なって作られるアンサンブルが強く意識されている。ボーカルなしのただのアウトロと侮るなかれの魅力がぎゅっと詰まっていて、ここにこのバンドのすごさをかいま見た。小器用さ、ひけらかしとは無縁のバンドだが、無骨な音楽性をささえる圧倒的な表現力の豊かさがギラリと光る。彼らの言葉は血が通っている故に聞き手に対して説得力があるのだろうと思った。

ある程度聴いていると結構なれてくるのだが、曲の終わり引きずる様なフィードバックノイズでこのビリビリ震える様な重低音を再認識する様な感じでまさに圧倒的な余韻。

2000枚限定でBandcampはあるもののデジタル販売はやっていない様なので気になる人は速めにゲットしておくのが良いかと。

リチャード・モーガン/ウォークン・フュアリーズ 目覚めた怒り

イギリスの作家によるSF小説。
男の中の男コヴァッチ-サンが活躍するシリーズ第三作。
前作「ブロークン・エンジェル」が面白かったのでこちらも購入。

27世紀の人類は宇宙に進出。今はその姿を消した火星人の遺跡から得た航行チャートを元に居住可能な惑星を開発、植民地化する事でその版図を広げていた。人間の魂をデジタル化する事により、恒星間の移動も可能になり、デジタル化した魂をスタックという機器に移植する事により、スリーヴと呼ばれる肉体を換装する事で問題はありながらも事実上の不老不死を実現させていた。地球を頂点とする保護国の特殊部隊エンヴォイ・コーズにかつて所属していたタケシ・コヴァッチはサンクション第4惑星での活躍後、自分の生まれ故郷であるハーラン一族が支配するハーランズ・ワールドに戻っていた。”ある因縁”にけりをつけるため新啓示派と呼ばれる宗教に属する人間を殺害しまくるコヴァッチはある夜酒場で一人の女と出会う。その出会いを切っ掛けにコヴァッチは惑星を揺るがす”革命”に巻き込まれていく。

前作では失われた火星人の技術を求めて探検するという冒険小説の要素を持っていたが、今作は完全にハードボイルドなSFが展開される。SFだから目を見張る様な新技術や驚くべきガジェットが沢山出てくる(これも醍醐味の一つ)が、読んでいれば理解できるように優しく書いてありハードボイルドながらもハードSFの難解さは無くスラスラ読める。今作は1作目「オルタード・カーボン」のハードボイルドな雰囲気を醸し出しながらも、惑星を巻き込む革命をテーマとし、またコヴァッチが何故戦うのか?という問いかけが自分の幼少時の体験と相まって描かれているいわばスケールを大きくし、同時に過去を振り返る様な集大成的な作品に仕上がっている。
作品を通じて言葉や哲学としてたびたび登場したハーランズ・ワールドの今は死んだ伝説的革命家クウェルクリスト・フォークナーが物語に直接絡んでくる。蘇った英雄を見越しに担いでかつて失敗した革命をといきり立つ活動家。縁あって彼らに組みする事になったコヴァッチだが、あくまでも革命には懐疑的だ。ここら辺読んでいて共感できるのは個人的には私も革命家というものに不信感を持っているからだろうと思う。盲目的で暴力的な宗教への嫌悪、奇麗なお題目を抱えつつ争乱を起こしては失敗する革命への不信感。いつでも弱いものがその犠牲になる。コヴァッチの怒りがふつふつと煮えたぎってくる。前作でもあったが元特殊部隊員の冷酷な殺人マシーンとしての俺様像に綻びが生じ、無様なくらい我を失うコヴァッチ。思うにコヴァッチは常に現実と対処するのに人との関係を通じる。概念や集団は受け入れない。知り合いのシルヴィ・オオシマは助けるが、革命には懐疑的であるといったように。今回はっきり言って冷静さを書いたコヴァッチはみっともないくらいかっこわるいのだが、読み終えてみるとなるほどそこが魅力なのかと気づくのである。なんとも不思議なヒーローだと思う。
今回は結構小説の構造的にも凝っていて、冒頭読んだだけであれれ?何か変な?と思うのだが、物語が進むに連れてその違和感の謎が解けたりしてくる面白さもある。情けない話私は一度読み終えてから冒頭を読んでああ、そういうことね!と膝を打った次第。
またハーランズ・ワールドが日系の植民惑星といこともあってヤクザが出てくるのだが、東洋的な幻想間を排し、仁義だのなんだのきれいごと言っているけどただの犯罪者集団だ、ぶっ殺せと切り捨てるコヴァッチに拍手を送りたい。
解説は私の大好きな作家椎名誠さんが書いている。なんだか嬉しいものだ。
三部作完結編ということでまさに集大成であった。今のところコヴァッチ・シリーズの続編は書かれていないようだ。となると作者の他の物語も是非邦訳してほしいところです。シリーズ通じてとにかく面白かった。派手な映画っぽさもありながらもきちんと読み物として重厚なところが個人的にはとても良かった。激オススメシリーズなので、まずは1作目「オルタード・カーボン」から是非どうぞ!!

2015年8月9日日曜日

ホルヘ・ルイス・ボルヘス/砂の本

アルゼンチンの作家による短編小説。
幻想文学野分野ではとても有名な人ではなかろうか。アルゼンチンの国立図書館館長にも任命されている方です。実は私ボルヘスの本を買うのは2回目。大分前学生かもしくは卒業したてくらいの頃に「伝記集」を購入したのだが、冒頭で挫折してしまった。けちくさい私なので買った本はうむ?と思っても大抵読み切るものなのだが、今となってはそのときどう思ったのかは覚えていないが相当わからん!と思ったのだろう。
それから時間も経ったのでもうそろそろ…というわけで再チャレンジしてみたのがこの本。
「砂の本」という幻想文学のシリーズに、「汚辱の世界史」という世界の悪人たちを題材に取り上げた伝記ものをくっつけた本で「汚辱の世界史」の中にはさらにいくつかの短編と色んな古典から一部を抜粋したもの(をボルヘスが訳したのだろうか?)が含まれている。
このボルヘスさんというのはその生涯を通じて短編しか書かなかった。また詩人でもあるのでとにかく言葉が簡潔で、難解な修辞などは全く使われていない。思ったほど分かりにくくはないのである。ただその確固たる言葉を使って作り出される世界というのがまた不思議なのだ。例えばわかりやすくお化けや化け物が出てくる物語は意外に少ない。(ないことはない。なんとラブクラフトに捧げられたコズミックホラーもあったりします!まさかの展開に歓喜。)悪夢のように模糊とした書き方をする訳ではない。いわば非常にソリッドな幻想世界を簡素な言葉でもって構築するのがこの人の持ち味らしい。一遍目の「他者」これは70歳になった著者ボルヘスがまだ若い自分のドッペルゲンガーと遭遇する話なのだが、若い自分にしたって本当に触れるくらいしっかりしている存在として描かれている。怪異や不思議そのものは勿論描かれるのだが、その前提として不条理だったりずれみたいなのがあって、結果怪異が生じました、という書き方。なんで非現実的な事がおきたのでしょうね?と暗に問いかける(決して読者に直接的な問いかけする様な事は無い)ような書き方。なのでどの物語も非常に短いのだが、とにかく紆余曲折あってこうなったというその背景(歴史)があるように感じさせる。ちょうど良いところだけを切り取ったのがちょうどこのボルヘスが書いたところ、というような印象。
さて怪異や不可思議というのは結構何かの暗喩だったりするわけで、そうすると非日常のギミックが出てくる小説というのはどこかしら寓話めいてくる。別に説教臭くなる必要は無いし、勿論不思議としての不思議だって沢山あると思うけど。そこに来るとこのボルヘスの書く不思議たちというのは様々な解釈が出来るものの、一体何かを象徴しているのだろうか、というと結構難しい。変な話だがボルヘス自身も一体我々を取り巻く世界というものがわからないので、分からないなりに解釈してみようというプロセスの中で彼の物語が生まれて来たように、個人的には感じられるところがあって、うーん?と最後一緒に迷うかの様な「余裕」(というのも変な話だが)がある様な気がする。勿論これは私の解釈でボルヘスは完璧主義者で彼の物語は一語一句すべて何かしらの意味含蓄を持っているのかもしれぬ。ただ何となく私はそんな風に思ってボルヘスの小説の柔らかさに感心したのでした。

という訳でおっかなびっくり手に取ったが意外にも非常に楽しく読めたので次の本が読みたい。折角だから「伝記集」がちょうど良いのだろうが、本棚のどこかに放り込んでしまったので探すのがムズイ。どうしたものか…
幻想文学好きな人は是非どうぞ。「汚辱の世界史」がある分ボルヘス入門としては良いかもです。

Not on Tour/Bad Habits

イスラエルはテルアビブのパンクロックバンドの3rdアルバム。
2015年にPhobiact Recordsからリリースされた。
全然知らないバンドだったんだが3LAさんでの紹介文が気になって購入。私が買ったのはLPでダウンロードコードが入っておりました。
女性ボーカルを含む4人組のバンドで2009年に結成。地元の他のバンドがみんなツアーでいなかったため居残ったメンバー達がふざけて始めた自分たちのバンドを「Not on Tour(ツアーしてないよ)」にしたとの事。(彼らの2ndアルバムをリリースしている日本のInyafaceさんのバイオを勝手にそのまま参考にさせていただいております。)

80年代のパンクに影響を受けているという彼らがプレイするのはメロディックハードコア。私は30代なんだが、中学生高校生くらいの時はメロコア(後に青春パンクとか言ったりもしていましたが。)が隆盛を見せていた。Air JAM世代はもちっと上か?でもHi Standardを始め色んなメロコアバンドがいたもんでみんなそれに夢中でした。私は「Making the Road」を聴いていたくらいで、Nine Inch Nailsとニューメタルばかり聴いていたんだが。(そういえば何故かPennywiseだけは何枚かレンタルして聴いてた。)だからこの手のバンドサウンドにはあまり馴染みが無い。(メロコアとメロディックハードコアはちょっと違うんだろうなと思うんだけど。)そんな私が聴いてもカッコいいのがこのバンド。
全部で16曲あるが全部1分台におさまる。めっちゃ短い。メタラーだとすわグラインドコアか!?といきり立つところ。(もしくはパワーバイオレンスか!といきりたつハードコアフリークスか。)勿論速度はかなりあるものの、ブラストビートはないし、激速爆速ではありません。単に曲が短いんだ。ただそのショートカットの中に、極上のメロディにあふれた通常のバンドが曲に込める要素をぎゅっと濃縮して詰め込んでいる印象。
スタスタ軽快にリズムを刻んでいくドラム。唸るというよりはゴロゴロ硬質でたまにパーカッションかと思うくらいトンガって聴こえる特徴的なベース。中音域の強調されたギターは程よい重さで弾き倒すようなリフはいかにもって感じでカッコいい。
ボーカルがまた良い。思うにこういったメロディックなハードコアというのはボーカルがとても大切。強さが売りのハードコアでもだめだし、ひたすらメロディアスなポップ一辺倒でもやっぱり駄目。伸びやかで強さがないといけない。そしてどこかやんちゃさがある事が個人的には大切かも。諧謔と反抗心。そういった意味ではこのバンドの女性ボーカルは完璧。艶やかというよりは何にもとらわれない自由な感じでカッコいい。ちょっと憧れを持って聴いてしまう感じ。
とにかく全体的なアンサンブルは疾走感(実際の速度とはちょっと違う。)が意識されていて耳にすっと入ってくる。前楽器はからっと乾いた印象でどこまでもポジティブだ。ただし攻撃性が無い訳では勿論無い。何と言ったってパンクだから悪ふざけのような余裕のあるいたずら心と反骨精神がハードな演奏とボーカルにはっきりと見て取れる。それらがなんともメロディアスにせめてくる訳なんだが、微妙に影のあるメロディアスさ。あくまでも楽しく、でもそれじゃないです、という感じ。#9のアルバムタイトルになっている曲とか特にそう。なんだかギターの音一つとっても妙に切なくさせるような響きがあってそこが大変な魅力になっている。勿論コーラスも多めで男女混声の分なんだかと得した気分。
ちょっとデンマークの「Gorilla Angreb」を思い出したけどあそこまで野性的ではないかな。こちらの方が大分メロディアス。

という訳で30代の方はまず視聴していただければ何かしら感じるところがあるのではと。当時メロコア聴いてたかどうかあまり関係ないと思います。今のところレコードが買えるのは日本では3LAさんだけらしいですよ。是非どうぞ〜。オススメっす。

Locrian/Infinite Dissolution

アメリカはイリノイ州シカゴのエクスペリメンタルメタルバンドLocrianのアルバム(何枚目なのでしょうか)。
2015年にRelapse Recordsからリリースされた。私が買ったのはCD盤。
前作からあっという間での気がするが、2年の間隔は開いている。バンドの結成は2005年なので10年目という節目の年にリリースされてたアルバム。

前作から引き続きの3人体制で作成されている。ということもあり基本的にはよりロック方面に舵を取った前作の流れを踏襲している作りになっている。
ドラム/パーカッションがキッチリとしたリズムを刻む事で圧倒的にバンド感がまし、曲がしっかり締め付けられている印象。ただし霧が徐々に濃さを増していく様な奥行きがあるのは明白なのにその奥が全く見えない様な模糊としたサウンドを、シンセサイザーや音色の豊富なノイズサウンドを重ねる事で、はっきりしたバンドサウンド(ドラム+ギター)のその上に構築していく。よくよく考えると結構ややこしい事をしている。(こういったところも実験的と言えると思う。チャレンジング。)ブラックホールに引き込まれた様に引き延ばされたぎぃいいいやああああーと反響する絶叫は今作でも健在。
このバンド面白いのはアンビエント成分強めの癖して曲全体で見ると結構劇的。曲の広げ方が上手いのかも。アンビエントにしても徐々にノイズの勢力を増していき最後はハーシュ地獄で締める#3なんかは結構意地悪な作りでニヤリとする事請け合い。勇壮なオーケストラも微妙に劣化させた様な音質にして、ギリギリしたグリッチノイズを追加する事でなんとも嫌らしい仕上がりに。鳥の声も最早悪夢的である。(#6)知的ではあるし、一筋縄ではいかないのだが、全体的にメリハリがついているのでこういったジャンルの音を鳴らすバンドの中ではかなり聴きやすいと思う。

相変わらず恐怖だったり狂気だったりそのものというよりはその予兆とか予感とか、一歩前もしくは荒廃しきったその後を描き出そうとしている印象のある作風で、聴いているとこちらの想像力がかき立てられるようでそこが魅力。
ちょっと調べてみるとブラックメタル、ポストロック、ポストメタル、プログレッシブ、ノイズと色んなジャンルを引き合いに出されている。実験的(エクスペリメンタル)とは便利な言葉だが、やはりジャンルに拘泥しない独自の世界観を押し進めているバンドだと思う。悪夢の様に反響しまくる絶叫や、独特のやや霞がかかったような音楽的特徴でオリジナリティを確立しているところもさすがな感じ。
個人的には「Crystal World」の宙に浮いた様な完全悪夢的な浮遊感、前作「Return of Annihilation」の怪しい攻撃性の衝撃の度合いには劣るものの、敢えて別方向にチャレンジしている今作は結構気に入りました。#1#3#4#5あたりは素直にカッコいい。特に#5は結構なキラーチューンかと。欲を言えば後半もう少し盛り上がりが欲しかったかも。
難点を挙げるとするとジャケットは前作、前前作の方が好みです。(インナースリーブ内のアートワークは結構良いと思うんだが。)
前作までのファンの人は迷わず買って聴くでよろしいかと。今作もオススメです。

2015年8月8日土曜日

2methyl/Layer 8

フランスはブザンソンのダブステップアーティストによる1stアルバム。
2015年にAd Noiseamよりリリースされた。
同レーベルからのメールで興味を持ってデジタルで購入。

methylとはメチルのことらしい。元は「2methylbulbe1ol」という名前で2008年から活動していたが最近改名したとの事。
ジャンル的には多分にインダストリアルな雰囲気のある無骨なダブステップという事になるだろうか。ダブステップと言いっても流行のそれととは一線を画す無愛想さ、呵責の無さである。金属質なぶっといビートの上に浮遊感のあるうわものが反響するように乗っかるスタイル。はっきりいってかなりダークな世界観で音色も低音に変更しているものの、音の種類は結構豊富でミニマルさをのこしつつ、結構豊かな音像になっている。結構やかましい。
歪みまくったキック音だが下品というよりは、完全にインダストリアルでこの硬質さはやかましくもどちらかというと不穏である。中速でずしずし進むそれは巨大な機械の足音にも思える。その周りを飛び回る小さく細かいオカズのようなビートはブレイクコアのそれを思わせて大変気持ちがよい。この大小2種類(時にはきっとそれ以上の)ビートの乱立する様がまず醍醐味の一つ。さらに上に乗っかる音色が豊富で金属で頭を殴られる様なギンギンしたもの。ダブ色を強める奥行きのあるぶわんぶわんしたもの。いずれも単音をぽこぽこ設置する様な”置き方”だが、たまにぐわーんと伸びる様なノイズを乗っけて着たりしてそれが大変気持ち悪くとても良い。メロディというよりはその音たちの配置によって曲を作る印象だから、ミニマルなパートはミニマルなんだが、漫然と聴いていると曲の展開が変化して印象ががらりと変わって面白い。
この間紹介した同じレーベルのGore Techに比べるとともに未来的(かなりディストピア感に満ち満ちている)な重金属ダブを演奏する共通項はありながらも、あからさまな攻撃性に関してはGore Techに分があるものの、空間的な広がりに関してはこちらに軍配が上がる印象。ぱっと見こちらの方がどうしても地味だが、一見漆黒な地味さもアルバムタイトル通りよくよく注目してみると色々な層(レイヤー)に分かれているのが見えて深みがある。繰り返して聴くとその美しさに気づく。9曲という長さも程よく、気持ちよく全編聞き通せる。

結構衝動買いだったけどかなりカッコいい。暗いビートに特化した音楽が好きな人は是非どうぞ。中々どうしてオススメ。

2015年8月2日日曜日

アルカジイ&ボリス・ストルガツキー/ストーカー

ロシアの兄弟作家によるSF小説。
72年から80年にかけて発表された連作小説をまとめたもの。
アンドレイ・タルコフスキー監督が映画化した事でも有名だが、個人的には映画は見た事無く、どちらかというとウクライナのオープンワールドFPSゲーム「S.T.A.L.K.E.R.」の元ネタという印象。(ゲームも実は自分でやった事は無いんだけど…)なので結構知っている人も多いかもしれない。

白鳥座α星から突然来訪した宇宙人は人類にその姿を見せずにあっという間に去っていた。しかし彼らが来訪した地球上の6カ所の地域はその姿を大きく変貌させ、彼らの痕跡は人類に取っては解明不可能な超自然現象として残り続けた。大きな危険をはらむそこはゾーンと呼ばれ地域の政府によって立ち入りが禁止されている。しかし危険を顧みずに未知の強大な力を持つ遺物を運び出す男たちは後を絶たなかった。彼らはストーカーと呼ばれる。

なるほどゲームの「S.T.A.L.K.E.R.」は多くの設定をこの小説から仕入れている事が分かる。ボルトを投げて危険を確かめるところや、手にした人間の願いを何でも叶えるという願望機(の噂)などの遺物など。でもこちらのゾーンには危険な生物はいないし、放射能も無い。超危険地帯という設定はあるものの、派手なアクションを期待するとちょっと趣が違う小説である。
原題を英訳すると「Roadside Picnic」となる。さらに和訳すると「路傍のピクニック」。大分印象が違うでしょ?訳者の深見弾さんが後書きにて端的にこの小説の内容をまとめてくれているのでここに引用。
キャンピングカーで旅をしている連中が、ある日一夜をどこかの道端でキャンプをして立ち去ったあと、そこに残していった塵芥は、野の虫たちにとってどんな意味があるのか、という問いかけの意味が込められています。
言うまでもなくある連中がエイリアンで虫たちが我が人類で、エイリアンのごみ=遺物を巡って右往左往する(この表現も深見さんのものによる。)という物語。
だから基本的にエイリアンが不在で非常に真面目な視点で人間を書いた小説、ということになる。超危険なものだからほっとけば言い訳なのだが、それが莫大な富をもたらすとなれば、そして未知のものを知りたいという欲求(どちらかというとストーカーは前者目当てだという割には実はこっちがメインでないかと思う。なぜなら作中豊かなストーカーは「禿鷲」と呼ばれる他のストーカーをこき使う嫌なヤツしか出てこないから)があって、ゾーンに見せられてしまう人間の性。人知を遥かに超えた未知の技術は確かに後世の人類の(作中の描写を見ると大分後になると思う。研究しているけどそのくらい何も分かってない。)役に立つのだろうが、少なくともゾーン周辺の人間は幸福になっているのだろうか。主人公レッドもまたゾーンに取り憑かれ、いつでも離れられる、もう離れると思っているのにそこから立ち去る事は出来ない。(彼の場合は普通に働くのはまっぴらだと考えるアウトローさもあるのだが。)愛する人との間に生まれた娘は人類の姿からはかけ離れている(ストーカーの子供はたいてい奇形を持って生まれる)。
いわばゾーンという奇特な存在によってその周辺の人類の営みのシステムが微妙に歪められてしまった世界を(ゾーンが無くても必ずしもシステムが上手く動いているかという塗装でもないのだろうが)そこに住む一人一人の人間の目と手でもって描いている訳で、だから少し違ったその世界が奇妙に物悲しいのである。取り憑かれたという表現が妙にしっくりくるのはやはりどこかしら目的意識が欠如しているように見えるだろうか。ストーカーは危険そのもに中毒になっているように見える。
さて意外に真面目な人間ドラマが展開されるのだが、じゃあ地味かと言われるとそんな事は無い訳で。ゾーンとその中身の設定・ギミックに関しては無類の魅力を誇っていると言っても過言ではない。だいたいSFというのはどれだけ面白い”非現実”が展開されるのかと言った点も個人的には大きな読む楽しみの一つ。そこをいくとこの小説は危険な液体?「魔女のジェリー」重力異常地帯「虹の禿」、家に帰ろうとする蘇った死者、まだ名前もない様々な危険たちと枚挙にいとまがない。後半レッドとゾーンに潜り込む緊張感はこの本のクライマックスだろう。
「S.T.A.L.K.E.R.」好きな人は是非どうぞ。違いをなぞっているうちにあっという間に引き込まれる事請け合いです。

2015年8月1日土曜日

Redsheer/Eternity

日本のハードコアバンドの1stアルバム。
2015年に日本のTill Your Death Recordsからリリースされた。
1stアルバムではあるが新人バンドではなく、メンバー3人それぞれが名だたるバンドのメンバーだったとのこと。(Atomic Fire Ball、Scalene、Bucket-Tというバンドなのだが、私は恥ずかしながらどのバンドも聴いた事が無い。)
そんな経歴もあってか注目度は高くとにかく音源が出る前からライブがスゲエと評判だった印象で、私は本当見たとも言えないくらいのライブ体験(ライブハウスのフロアに入ったら本当に彼らの丁度最後の曲の最後の部分だった)が一回だけあったのだが、そんな評判が気になっておりこの音源を買った次第。
濃い血の色を思わせる赤が印象的なジャケットはスペインのニュークラストバンドKhmerのメンバーの手によるもの。真っ黒い鳥(多分からす?)はハードコアパンクの界隈では何か含意のある象徴なのかもしれない。(AmebixのMVとかTragedyとか。)

聴いてみるとこれは何とも形容のしがたい音楽性。
土台はハードコアだと思うのだが、荒々しくも素直が心情の真性ハードコアパンクにしては曲が相当凝っている。怨念かってくらい想いがこもっているので激情系かというと、その界隈に見られる”青さ”は皆無であるどころか、明らかに鬱屈しすぎている。曲調もあってじゃあスラッジかというと、スラッジの要素はありつつもそこにとどまらない叙情性や美学がある。だから曲作りの方針としてちょっとブラックメタルっぽさもあると思う。こびている訳ではないがメロディアスでもある訳で、tiwitterで目にした「オルタナっぽさ」という形容にもなるほど!と頷ける。
既存の型にはめるのが難しいからといって朦朧とした音楽か?というと、例えば衒学的な難解さで煙に巻く様な”高貴さ”なんてのは皆無であって、それはもう曲を聴けばすぐ分かるだろう。刺さる様な、それでいて鈍器の様な衝撃のあるソリッドな音の塊である。

3人体制という訳で各パートごまかしのきかない状況でそれぞれに個性が強い。
ベースは右に飛騨入りにとにかく動きまくり、強調された低音が溜まった澱のように不穏かつ活発に動いている。ドラムは手数が多いのだが、あえてここって時に音を抜いてくる様な叩き方でこれが猛烈に気持ち悪くてカッコいい。ギターはアルペジオからスラッジーな叩き付け、メロディアスなトレモロまで多彩なリフを披露する。
どれも割とクリアな音質なんだが、なんでこんな地獄の釜のふたが開いちゃいました、な激音、凶音になるのか不思議だ。まあ後述のボーカルもその要素だと思うんだが。
とにかくボーカルがすごいわけで、こちらも安易にハードコアな吐き捨てタイプと安易にくくれない様な異様さがある。若干しゃがれた声。バンドサウンドではどうしても括弧付けた感じが出てしまうのものだが(勿論それがカッコいいのだが)、このバンドのボーカルに関しては括弧付ける事を放棄したかの様な必死さがある。オイオイ暑苦しいなと余裕ぶっていると次第に本気度に当てられてこっちが黙り込んでしまうような、そんな力がある。前もどれかの記事書いたけど必死さが突き抜けてかっこよさになるんだと思う。楽器陣はわりと乾いたバランスの良い轟音なので、ボーカルの切羽詰まった感がむしろとても良く映える。
とあるオンラインショップではToday is the Dayが引き合いに出されていてすごい納得した。あのカオティックさ、ジャンクさ、そしてすでにぶち壊れているのに本人が気づいていないかの様な、どうかしている美しさへの憧憬がある。これは個人的にはばっちりハマる訳です。

身もふたもない言い方なのだが敢えて言うと夢が無い音楽性であると思う。想像性(創造性)が無いことはもちろん全くない(さながら悪夢だ)。しかし夢みがちなドリーミィさの付け入る隙がないのだ。顔も足もある幽霊が包丁を持って襲って来たかの様な奇妙な現実感がある。(幽霊というか鬼かもしれないが。)生々しさ。インタビューを見るとメンバーは40代ってこともあって、それはもう夢だけ見てられない訳で、そこで音楽をやるという決意が、変な話40代にしか作れないソリッドさ(ストイックさ)でもって”現実的”に恐ろしいその音楽に結実しているように見える。「大人のロック」などというといかにも取って付けた様な余裕さが頭に浮かぶが、とんでもねえな、Redsheerこそ「大人のロック」じゃねえかと思う。なぜなら大人になっても現実に余裕なんてできやしないからだ。(これは多分に私的な感情によるが。普通の30代はもっと人生に余裕があってそれを謳歌しているのかもない。)この窒息させるような閉塞感よ!
という訳で窮鼠猫を嚙む用な息苦しい音楽。良い年しても相変わらず生きにくい大人の貴方、是非どうぞ。オススメです。