2015年8月23日日曜日

ブレイク・クラウチ/ラスト・タウン-神の怒り-

アメリカの作家によるエンターテイメント小説(なんでもありなんでお茶濁した)。
「パインズ」三部作の完結編。
一作目「パインズ」でおー!となり、二作目「ウェイワード」でうーん?となったんだけど折角乗りかかった船だしという事で三冊目も買った次第。
前作ではとにかく勢いで強引に物語が進まされている感じがしてしまってちょっと冷めてしまった感が正直あった。まああのシャマラン監督が映像化(ドラマ化されている)するくらいだから設定命の物語であって、ジェットコースターな感じの一冊目は良かったんだけど、二冊目で主人公の視点が「追われる男」から「町の住人」になって落ち着いたという事もあって、彼イーサン・バークと一緒になってよくよく読んでみると、設定の粗に気づいたという感じだろうか。それでもつまらないという事は無いし、なにより最後どうやって締めるんだろう?と気になった訳です。

アメリカアイダホ州の渓谷に佇む静かな田舎町ウェイワード・パインズは危機にさらされていた。保安官イーサン・バークは町の創設者であるピルチャーに直談判をしようと彼の元に乗り込もうとするが…

さてこまったことに記事を書くのが大変難しいのだ、この作品。なんせあらすじだって上記の様な始末。というのもどんでん返し系の作品の三冊目なのだもの。ネタバレしないで書く方が難しいよ。本当はネタバレあります、とか書くのも嫌なんだが…(だってネタバレする様な何かがあるのね、って未読の方にわかっちゃうじゃんよ。)
記憶喪失の男が見知らぬ町で自分を探し求めるうちに何かがおかしい事に気づく、という態のミステリー小説だが、その姿を大きく変えた三冊目。
全体を通じて独裁者に目隠しをされ、過去未来そして現在すべての生殺与奪を彼に握られているというディストピアへの批判というテーマがあるものの、こちらは正直なところ特に目新しい発見はなかった。主人公イーサン・バークとその妻との関係を中心にした家族関係の描写もあるが、こちらも特に目新しさはなし。息子との関係は”もう一人の男”を絡めてもう少し深堀出来たかも?と思うが、勢いをそいでしまう可能性もある訳だし結果的には脇道にあまり突っ込まない今の構成が良かったのだろうとも。どちらかというと実際に天国「パインズ」が崩壊していく様をフリークスを文字通り投入する事で生々しく描いたというところがこの本の面白いところだろう。なのでどっちかというとホラーに舵を取っている。この化け物たち(食欲おう盛過ぎて動物もあまりいない環境なのに普段何食って行きているんだよと思わなくもなかったが。(もし動物が沢山いるなら後半の人類サイドの大きな問題は無いはず))はなかなか生理的嫌悪感を抱くデザインで持って、その出自もあって結構魅力的な存在感を出している。

細かい箇所にぐちぐち言っては粋でない小説。とにかく勢いでもて最後まで読ませる。翻訳も素晴らしいので読みにくさとは無縁の、そういった意味では大変優れた小説だと思う。とりあえず本読みたい!という方はどうぞ。可能だったら一冊目から手に取ってみるのがよろしいかと。三冊でも結構すぐ読めると思います。

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