2015年8月9日日曜日

Locrian/Infinite Dissolution

アメリカはイリノイ州シカゴのエクスペリメンタルメタルバンドLocrianのアルバム(何枚目なのでしょうか)。
2015年にRelapse Recordsからリリースされた。私が買ったのはCD盤。
前作からあっという間での気がするが、2年の間隔は開いている。バンドの結成は2005年なので10年目という節目の年にリリースされてたアルバム。

前作から引き続きの3人体制で作成されている。ということもあり基本的にはよりロック方面に舵を取った前作の流れを踏襲している作りになっている。
ドラム/パーカッションがキッチリとしたリズムを刻む事で圧倒的にバンド感がまし、曲がしっかり締め付けられている印象。ただし霧が徐々に濃さを増していく様な奥行きがあるのは明白なのにその奥が全く見えない様な模糊としたサウンドを、シンセサイザーや音色の豊富なノイズサウンドを重ねる事で、はっきりしたバンドサウンド(ドラム+ギター)のその上に構築していく。よくよく考えると結構ややこしい事をしている。(こういったところも実験的と言えると思う。チャレンジング。)ブラックホールに引き込まれた様に引き延ばされたぎぃいいいやああああーと反響する絶叫は今作でも健在。
このバンド面白いのはアンビエント成分強めの癖して曲全体で見ると結構劇的。曲の広げ方が上手いのかも。アンビエントにしても徐々にノイズの勢力を増していき最後はハーシュ地獄で締める#3なんかは結構意地悪な作りでニヤリとする事請け合い。勇壮なオーケストラも微妙に劣化させた様な音質にして、ギリギリしたグリッチノイズを追加する事でなんとも嫌らしい仕上がりに。鳥の声も最早悪夢的である。(#6)知的ではあるし、一筋縄ではいかないのだが、全体的にメリハリがついているのでこういったジャンルの音を鳴らすバンドの中ではかなり聴きやすいと思う。

相変わらず恐怖だったり狂気だったりそのものというよりはその予兆とか予感とか、一歩前もしくは荒廃しきったその後を描き出そうとしている印象のある作風で、聴いているとこちらの想像力がかき立てられるようでそこが魅力。
ちょっと調べてみるとブラックメタル、ポストロック、ポストメタル、プログレッシブ、ノイズと色んなジャンルを引き合いに出されている。実験的(エクスペリメンタル)とは便利な言葉だが、やはりジャンルに拘泥しない独自の世界観を押し進めているバンドだと思う。悪夢の様に反響しまくる絶叫や、独特のやや霞がかかったような音楽的特徴でオリジナリティを確立しているところもさすがな感じ。
個人的には「Crystal World」の宙に浮いた様な完全悪夢的な浮遊感、前作「Return of Annihilation」の怪しい攻撃性の衝撃の度合いには劣るものの、敢えて別方向にチャレンジしている今作は結構気に入りました。#1#3#4#5あたりは素直にカッコいい。特に#5は結構なキラーチューンかと。欲を言えば後半もう少し盛り上がりが欲しかったかも。
難点を挙げるとするとジャケットは前作、前前作の方が好みです。(インナースリーブ内のアートワークは結構良いと思うんだが。)
前作までのファンの人は迷わず買って聴くでよろしいかと。今作もオススメです。

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