2015年に自身のVivisick Recordingsからリリースされた。
ボール紙で箱状になったジャケットに新聞を模した様なカラー印刷の歌詞が掲載されたインナーが入っているという力の入れよう。(新聞紙っぽい紙質)
私はなんとなくこのアルバム収録の楽曲を聴いて気に入り購入した。他の音源は未聴。
フルアルバムは2枚目だが1996年に結成されたバンドで日本だけでなく、アメリカ、ブラジル、アジア諸国と各国をライブして回ったりと大変精力的に活動を行っているようだ。
タイトルは「被爆したアイデンティティ」と明らかに震災を意識したなかなか重いものになっている。それでは正座して聴かないと行けない様な高尚な音楽かというと全然そんな事はなかった。
ジャンル的にはハードコア、wikiにはThrashcoreと書かれている。
ぱっとHellnationが思い浮かんだ。なるほど重量感のあるメタリックなリフを多用する部分は共通しているが、Vivisickの場合はもっとメロディアスでポップ。全編バッキングのコーラスが歌いまくる楽しさにみちたハードコアパンクを演奏している。勿論演奏の方はかなりがっちりしたハードコアなもの、速度も爆速でないものの疾走感は十分。1分から3分台で畳み掛けてくる。全10曲があっという間でもう一回聴こ、という気分になれる。
ドラムはバスドラで重さを出しつつ、タムがぱたぱた高速で回転する様なタイプで気持ちよい。
ベースはゴロゴロした硬質で低音を強調したタイプ。結構前にも出てくる。ただ音圧を意識的に押さえているの非常にバランスが良く、疾走爆走に良く合うんだ。重くすれば良いんじゃね?的な下品さから華麗に解き放たれているかの様な自由さ。
ギターは中音域を強調した硬質かつ暖かみのあるパンクサウンド。スラッシーなリフ主体なんだけど結構低音から高音と自在に動きまくる。
ボーカルはかなり高音で特徴的。のどが切れそうな高音シャウトが癖になる。早口でまくしたてる様なそのスタイルはエクストリーム感すら漂うのだが、ここを上手くバックのコーラスがカバーしていると思う。とにかく全編シンガロングかってくらい歌いまくる。これが男臭いんだけど、妙にさわやかで気持ちよい。もはやずるいくらい聴いている方も高揚してくる訳でこれはライブが非常に楽しいのではないだろうか。
日本語で紡ぎだされる歌詞は英訳が乗っている。世界で活躍しているバンドらしいと思う。2曲目の出だしは各国の言葉で歌っているようだ。歯に布着せない攻撃的な歌詞は衝撃的だが、どうも「自分で考えろ!」というようなアティチュードが垣間見える気がする。つまり十二分メッセージ性に富んでいるが押し付けがましくない。これは楽しい音楽性にも表現されている。楽しさ、かっこよさ、そしてそこにシリアスさを同居させている。シリアスすぎれば当然楽しくないし、楽しすぎると軽薄になっている。このバンドは両方出し切っているのに、どちらも活きているのがすごい。
非常に気持ちよいハードコアパンク。ポップな楽しさに面食らってしまうが、よくよく聴いてみればくそ真面目なハードコアパンクだった。すごい。オススメです!
0 件のコメント:
コメントを投稿