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2019年2月17日日曜日

leave them all behind 2019@渋谷O-east

CONVERGEとNEUROSISが来日。これは行くだろう。
私なんて妙に焦って会社から抽選申し込んだくらい。そしてあっという間に当日が来るのだ。
開演後、ロッカーに荷物を入れるのももどかしいくらい逸る気持ちでステージ前に。

Self Deconstruction
久しぶりに見たが他に類を観ないバンドだなと改めて思った。
グラインドコア、パワーバイオレンス、似たようにうるさくて早い音を出すバンドはたくさんいるけど、よくよくこのバンドを目前にするとその特異さがすぐに分かる。
大きい特徴はほぼリフレインがない。メタル(ハードコア)はリフの音楽だというが、ほとんどはいくつかのリフによって楽曲が組まれている。いくつかの(多すぎない)コードがポピュラー音楽の楽曲を形作っているように。
ところがSelf Deconstructionは違う。リフを惜しみなく使い捨てていく。一回使ったリフはもう出てこない。(ように聞こえた。)まさに究極の贅沢。これって特にエクストリーム・ミュージック界隈ではかなり難易度が高いことに思える。尖れば尖るほどバリエーションを出しにくくなる界隈でお約束的なリフを使い回すことができないのだから。つまり弾き手の引き出しの多さが試されている。Self Deconstructionの楽曲をそういう観点で聴いてみると、ギターは確かに低音を貴重としながらも指板を文字通り縦横に行き来する相当フリーでフリーキーな弾き方をしている。すごい。グラインドコア、パワーバイオレンスに仕上げている、といってもその中身は相当異次元だよ。途中で「Concubine」のカバーを披露していたと思うけど、あのぶっきらぼうな曲ですらリフレインがあり、あきらかにセットリストで浮いていたもの。(もちろんとてもかっこよかった。)単に弾きまくるわけではなく、しっかりキャッチーなリフも挟んでいく。
3つのバラバラの個性がかっちりあっているからまた格好良い。お互いほぼ見ることないのに、決めるところはきっちり合わせてくる。

ENDON
昨年後半にリリースされた最新作「Boy Meets Girl」は明らかにそれまでの文脈とは異なる問題作だったと思う。そういった意味でも最新の形のライブを見たかった。
のっけからCONVERGEのKurt Ballouがプロデュースそた「Through the Mirror」のキラーチューン「Your Ghost is Dead」でぶっ飛ばす。いつものENDONだ。ところがライブが進むとどうも様子がおかしい。特に新曲群が異常だ。表面上はメンバー2人が垂れ流す激音ノイズがうるさいエクストリーム・ミュージックなのだが、なんだか…あれ?楽しい?すごく楽しい。なんじゃこれと思ったら、ドラムだ。豪腕だがリズムが明確ではっきりしたロックドラムだ。ミニマルなリズムがむしろロックを通り越してダンス・ミュージックに聞こえ始める。言語外のボーカルの存在感は一旦おいておく。そうなるとその他の音の出し方が非常に巧みだ。程よく重たくないギターは言わずもがな。しかしなんといってもこのバンドの主役ノイズの使い方だ。たしかにうるさい。でもいつもハーシュノイズが爆音で流れているわけではない。ときには音を小さく。時には完全に止め。また時にはハーシュノイズではなく、鍵盤から流れ出るような美麗な音も出てくる。これらの音のON/OFF。つまりビートを基調にそこに音を重ねていくやり方は確かにテクノ、ダンス・ミュージックのやり口ではないか?
「Boy Meets Girl」は単に逆に切った奇をてらうだけの飛び道具ではなかった。彼らはとっくに新しい未知を模索し、そして大胆に舵をとっている。かっこいいぜ〜。
初めてこんな広い会場で見たが、この広さの似合うこと。汚く狭い地下室(大好きだ)とは違う高い天井、その余白がなんだか異常にENDONにあっていた。

CONVERGE
続いてはいよいよ今日の主役の片方。ハードコアの街ボストンでジャンルを更新し続けるバンド。もはやその影響は語るまでもないでしょう。観客の期待度も半端なく、前に前にの圧がすごい。ドラマーのBen Kollerが肘の怪我でお休みのためRough Francisというバンドでドラムを担当するUrian Hackneyが急遽代役に。MCによるとほとんど練習する時間もなかったらしい。重たいカーテンがいよいよ開けられるとそこにいたのはCONVERGEだった。
初めて目前で見るとCONVERGEの異様さに気がつく。なんだろうこのハードコアは。完全にハードコアだけどエモーションが溢れすぎている。それはハードコアにしては複雑な楽曲(とくにKurtのギターは低音から高音まで隔てなく用いるリフはもちろんタッピング、ギターソロなど技巧的にも複雑だ。)、そこに内包される特に新作では顕著な(クリーンで歌われることもある)メロディライン。これらの要素は個別ではあるいでは複合でももはやハードコアのシーンでは珍しくない。ただこれらは諸刃の剣で、これらを多用すると音のヘヴィさとは別の「重たさ」が生じて、ハードコアから距離が離れてしまう。とたえばDeathwishならCult LeaderやOathbreaker、日本なら独自の激情系など。ところがCONVERGEに関して言えば表現力が他の追随を許さないくらい豊富なのに、どこまでいってもハードコアなのだ。どうなってんだ。
様々な楽曲の随所に仕込まれているシンガロングパート。乗車率200%のギュウギュウのおしくらまんじゅう状態で拳を振り上げ叫んだ。
Jacob Bannonはとにかく華があるシンガーで、特徴的な歌い方も初めて見るとちゃんと歌っているし(これはセットリストの関係もあるかもしれない)、細身で長身な体をよく動かす。マイクをぶん回してキャッチする、マイクに覆いかぶさるようにシャウトする、水を頭にぶっかける、両手を大きく広げて観客を煽る、どれもすごく画になる。MCは暖かく、またリラックスもしている。
その他のメンバーもさすがのベテランなので落ち着いているが、決して弛緩することはなく、ただ勢いだけではない楽曲、というよりは勢いがありつつ複雑な曲をがっちり合わせてくる。
クラウドサーフが結構発生していて、ステージと客席に隙間があるのでJacobはちょうどサーフ後に落ちた観客にマイクで歌わせていた。みんなすごい笑顔だった!
本当に時間がすぎるのがあっという間でラストの「Concubine」。なんとSelf Deconstructionのボーカリストの方と共演。すごかったなあ。

NEUROSIS
ラストはいよいよNEUROSIS。結成34年。様々なバンドに影響を与えたバンド。私が初めて知ったのはTVKのビデオ星人で流れたライブ動画。さっぱり何がなんだかわからなかったです。あれから20年位経っていまライブをようやく見れるのは感慨深い。
中核メンバー3人は全員髪の毛やひげに白いものが混じり(というかほぼ白い)ロマンスグレーな感じ。Scott Kellyは体格もよく、アメリカの田舎の偏屈おじさんのようで見た目からして怖い。(ギターよりチェーンソーなどが似合いそうだな…とちょっと思った。)
大阪名古屋の感想を見ると絶賛する人が多数。いざ目の当たりにするとたしかにすごい。どのくらいすごいかというと結構ずっと鳥肌立っていた。いやもう「神だな」って終わりにしたいのだが、なんとかそ(れらの音楽や本)の凄さを言語化したくて始めたのがこのブログなのだった。
分厚い音で静と動を大胆に取り入れた楽曲を演奏。実はそんな奇をてらったことはしていない。音はたしかにでかい、轟音と言っても良い。ただし音量やバランスはきちんとコントロールされていて耳に痛いということはまったくない。そして音もどこまで行ってもオーガニック。経年によって水分が抜けた頑丈の木材のような音だ。分厚いが温かみがある。
またスラッジといっても不吉なフィードバックノイズを必要以上に撒き散らすことはしない。むしろたっぷりと空間系のエフェクターを繋いで出した浮遊感のある音を曲中や曲間のつなぎに使っている。特にベースは結構曲中でも独特の音を出していたようだ。
かといって強面の大人がやっているゆるふわ系ポストメタルではまったくない。楽曲から見えるのは30年以上に及ぶ試行錯誤の歴史である。
たっぷりと時間と間をとった楽曲だが、引きずるようなドゥームさはなく、明快に区切られた音はやはりハードコア由来のスラッジだろうと思う。そこにアタックが強いが非常に明確にリズミカルでよく回転する、つまり重量感がありつつも跳ねるドラムが加わる。
原始的と言っていいようなシンプルで強靭なリズム、弦楽器のときにアンビエント、ときにラウドなアンサンブル、立体的なサウンドで時間をかけて楽曲を織り上げていく。トライバルだ。トライバルな呪文のようだ。
「Times of Grace」の「The Last You'll Know」。セットリストに入っていることは知っていたが、ライブで聞くのはやはり別格だ。私はこの楽曲が好きなんだ。厚みのある轟音が私の体にじんわり染み込んでいく。涙が出そうに。


終演後「Times of Grace」のパッチ、(オタクだから)2つ買ってこ!と思ってたら見事に売り切れだった。前の方に行きたかったから開演前に物販に並べなかったのだ。仕方ない。
個人的にとても思い入れのある2つのバンド、いっぺんに見れて幸せ。やっぱり別格だなと思いつつも、日本から迎え撃った2つのバンドも只者ではなかった。楽しかった。

2018年12月24日月曜日

CANDY/Good To Feel

何でもやりすぎがかっこいい。イカれているという評価は常に通常の一歩先を求めるものだ。ハーシュノイズを入れたり、低音を強調したり、色々なバンドがその一歩先を目指している。
このヴァージニア州リッチモンドのハードコアバンドはとにかく音がでかい。実際はきちんと考えてこそのバランスなのだろうが、私の耳には全く全部の楽器ができる限りのデカさで鳴らした音が一つの塊になっているような気がした。とにかくうるさい。結果的に細部がわからなくなってすらいるけど、それこそがやりすぎのマインドでもっと私をノックダウンしたのだ。追加の要素ではなく、とりあえず手持ちの楽器を全開で鳴らしてしまおうか、というのは潔い精神であると思う。

とにかく1曲めの「Good To Feel」が良い。私はほぼほぼこの曲だけを聴いているような気がする。別の他の曲がイマイチというわけではないのだが、どうしてもこの曲が好きなのでしようがない。まずこのバンドはドラムがかっこいい。カッチカチに張り詰めたドラムを力任せにひっぱたくという豪腕タイプなのだが、結構タイトでグルーヴィ通り越してマシンにすら聞こえる。この1曲めの途中で挟まれるパートはまるでブレイクコアを聴いているようだ。この感覚はハードコアではあまりない。

日本のハードコアの影響を受けた、というのは3曲めの「Ststematic Death」というタイトルもそうだろうし、曲中につんざくように(とても短い)悲鳴のようなソロを入れるやり方もそうだろうと思う。ただし日本のバンドがソロなどによってハードコアに叙情性を持ち込んでいるとしたら、このバンドはそれをリスペクトしつつ(ちょっと語弊があるかもしれないが)悪用しているといった趣でこちらも詩情なんてあったもんじゃないくらいのジーにしてしまっている。その解体性を持ったプロセスが非常に過激でしびれる。
このバンドの音楽性は実は結構複雑ではないかと思う。良くも悪くも1曲めだけが激速パワーバイオレンス感があって浮いているが、残りの8曲は割と中速。速くはない。きっちり低速成分としてモッシュパートを押さえているのだが、全体的に見れば一部でしかない。つまりブルータルなモッシュコアとは一線を画す内容で、独自の中速を模索している、そんなイメージ。
ハードコアバンドをやったら速くするか、それとも遅くするか、みんなきっと迷うのではないか。中速というのは実は一番難しいかもしれない。ミリタントのようにメタリックなリフに凝る、というやり方もあるがそれを採っているわけではない。前述の日本からの影響色濃いギターソロなどはわかりやすい暗中を切り裂く武器だろう。ただそんな試行錯誤も恐る恐るというかんじではなく、とりあえず興味あること全部ぶち込んでみたよ、というブレーキ壊れた感じがする。ラストの「Bigger Than Yours」(ひどいタイトルだ)は明らかにハードコアの対局にある甘いシューゲイザーを再現していて、悪意があるというかこれはもう完全にいたずらである。例えば半端にサンプリングして言い訳を残すとかではなく自分たちでやっちゃう。それで破滅的なノイズで占める。結構これはもうミクスチャーと言っても良いかもしれない。底抜けのポジティブさと混沌さはThe Armedに通じるところがあると思う。

2018年10月28日日曜日

Nothing Clean/Cheat

イギリスはイングランド、レスターのパワーバイオレンス/ファストコアバンドの1stアルバム。
2018年にAbusive Noise Tapesをはじめ複数のレーベルからリリースされた。私はBandcampで購入。
SNSはやっているもののあまり情報を描かないタイプのバンドで、おそらく2014年以前に結成されている。(FBの登録日とDemoのリリース年から。)今はドラム、ベース、ギター、ボーカルの4人組。今までいくつかの音源をリリースしており、中にはSpazzのトリビュートも含む。

今時パワーバイオレンスも珍しくないわけで、色々なバンドがそれぞれ個性を出そうと奮闘している。一リスナーとしてはそんな切磋琢磨が本当嬉しいわけだけだ。このNothing Cleanもそんな波の中で生まれた比較的若いバンドなのだろう。これがびっくりするくらい素直なパワーバイオレンスなのだ。特徴がないというわけではない、もちろん。ただことさらわかりやすい要素を入れていない。最近はブラストに乗っける速いパート、それと対応する遅いスラッジパートを入れて短い曲の中にメリハリのある展開を込めるのが流行なのかもしれない。このバンドは遅い方にはあまり力を入れていない。もちろんテンポチェンジはかなり頻繁にやるし、遅いパートもあるのだけど、ただこれはもう地獄だぜ〜苦しいぜ〜というわかりやすさ、がないのである。スタート一直線走り出したらもうあとは止まらないような、そんな気迫がある。100%ケツに火がついていて、止まったら死ぬ、そんな気迫すら感じる。音的にはきっちりとクリアでメタリックな音にアップデートされている。だから音楽的にはもちろんパワーバイオレンスもそうだし、ガチガチに音をアップデートしたファストコアにも聞こえる。Capitalist Casualtiesのような凝ったリフを劇速で演奏する、というのとはまた違ってかなり速さにパラメータを全振りしているような趣があって、その代わりに失うものがあっても気にしないスタイル。全ては速さ。全ては勢い。そうなると持てないものは捨てていくしかねえな。そんな覚悟だ。なんて言ったって41曲だ。それをぴったり24分00秒に込めたのだ。

何かを追求するなら全部を持っていくことはできない。なるほどこの楽曲は確かに抑揚はないかもしれない。展開だって乏しいかもしれない。同じパワーバイオレンスだってもっと豊かな表現をするバンドはたくさんいるだろう。ただそんなものは糞食らえだ。ファストコアってなんだ。速い音楽だ。速いハードコアだ。ファストコアはやべえ。しかりだ。しかしはじめっからやばかったわけではない。速くて異常だったからやばくなったのであって、Nothing Cleanというバンドはやばい音源をやる、のではなくファストコアをやる、がその出発点になっている感じがする。ピュアな動機であり、なるほど結果的にはやばいのだが、そこには形式だけに囚われない(つまりいかにも頭のおかしそうなハーシュノイズを入れたり、病的なモチーフをジャケットに引用したりということをしない)本質的な原動力がある。

私のようにただただ流行りだからだという理由でパワーバイオレンスに興味を持っている人間というのはよくよく軸がないのでブレがちだが、その軸をぶっ飛ばしにかかってくるのがこの音源。いやー格好いい。妙に反省しちゃってファストコアってこういうものでした、ってなってしまう。ぜひどうぞ。(ちょうど24分で書けたのでここまで。)

2018年9月9日日曜日

Transient + Bastard Noizet/Sources of Human Satisfaction

アメリカ合衆国はオレゴン州ポートランドのグラインドコアバンドのBastard Noiseとのコラボレーションアルバム。2018年にSix Weeks Recordsからリリースされた。
Transientは2008年に結成されたグラインドコアバンド。一方のBastard Noiseは言わずと知れたMan is the Bastardのメンバーによるノイズグループ。

このアルバムは二つのバンドのコラボレーションだが、TransientのグラインドコアをベースにBastard Noiseがノイズを追加しているという趣。主体はグラインドコアなのでそこまで実験的ではなくて聴きやすい感じ。この手のコラボだとパッと思いつくのはFull of HellとMerzbowのコラボレーション。こちらも主体はFull of Hellのパワーバイオレンスでそこにノイズを追加するというやり方だった。メタルやハードコアなどのいわゆるバンドサウンドに比べるとノイズは抽象的だ。それらの暴力性を倍加するビデオゲームでいうバフみたいな使われ方をするのもなんとなく納得できる。ノイズとは魔法だ。
グラインドコアといってもいろいろな種類がある。このTransientに関していえばデスメタリックな成分は少なめで、音の作り方や自然体で装飾性のあまりない楽曲はハードコアに近い。よく回転するドラムに低音は出ているものの程よく抜けが良いギターが乗っかる。ハードコア色は強めだが、パワーバイオレンスというには音は重たく、また速度の両極端をいったりきたりもしない。曲も短いながらも自暴自棄なファストコアというよりは、よくよく聞くときちんとリフが練られていてメリハリがついたグラインドコアだということがわかる。ミュートの使い方がメタリックなのだが、音の作り方が巧みであまり重々しく聞こえない。ここら辺は好みかもしれないが、私は好きだ。もともとハードコアからスタートしたしたグラインドコアというジャンルのピュアな血統に属するバンドと言えるかもしれない。
Bastard NoiseももともとメンバーがやっていたMan is the Bastardは(ハードコアのサブジャンルである)パワーバイオレンスの始祖と呼ばれる(パワーバイオレンスという言葉を生み出したのがEric Woodというこのバンドのメンバーだった)こともあって親和性は抜群。乾いて明快な楽曲に存在感のあるノイズが乗る。過激なバンド名だが単にハーシュノイズを撒き散らしているわけではなく、Transientの音が最大限生かされるように配慮している。ガチガチのハーシュノイズは冒頭において、いざグラインドコアが開始されれば音域が被らないように、高音域の不吉な運命を告げるトランペットかサイレンのようなノイズを鳴らしたり、フィードバックノイズのような焼けこげたようにチリチリするノイズを出したりして、メタルではなかなか表現し得ない不穏さを演出している。存在感のある音がぶつかった結果よくわからん、という変な抽象性に逃げるのではなく、ちゃんとコラボレーションとして化学反応することを考えている。もはや円熟の極みという感じだろうか。
ハードコアを感じるのは19分のリアルな質感であり、(デス)メタリックな重厚な物語感も良いが、あくまでも地に足についた反骨精神が清々しい。

2018年9月2日日曜日

Stimulant・Water Torture/Split

アメリカ合衆国はニューヨーク州ニューヨークのパワーバイオレンスバンドのスプリット音源。Stimulantはデビューアルバムをこのブログで感想を書いたこともある。ドラマーとギタリストの二人体制のパワーバイオレンスバンド。一方のWater Tortureはライブの動画を見ると三人組のバンドで、ドラム、ベース、ノイズとボーカルという編成。StimulantはWater Tortureのメンバーがより激しさを追求して結成したバンドらしく、そう考えるとWater Tortureの方はすでに解散しているのかもしれない。ドラムを務めるIan Wiedrick(NYのブルックリンでタトゥーの彫り師を営んでいるようだ。)は少なくとも両方のバンドに共通したメンバーである。Stimulantの方ではボーカリストがいないので彼がボーカルを兼任している。もう一人のメンバーもベースからギターに持ち替えた同じ人かな?と思うのだがどうだろう。(ライブ動画を見比べると似ているような気がする。)

全部で20曲が収録されているが、Stimulantは14曲、Water Tortureが6曲だからメンバーが同じといっても曲の作り方が違う別のバンドだということがはっきりしている。
順番は逆なんだけどWater Tortureはまずドラムの上にベースが乗っかるわけで音が当たり前に低い。いくらダウンチューニングしても音域というものが異なるわけで(ギターにベースの弦を張るのは無理だと思うけど、やっている人いそうだな…)ギター主体のバンドとはやはり音が異なる。当然曲の作りも異なっていて、こちらのバンドは曲が大分遅い。ほぼスラッジコアといっても遜色はない。印象としてはむしろ曲の速さを決めているのがベースで、持ったりとしたその長大さにドラムが彩りを加えているようなイメージ。音の数が少ない二人組編成なので、どちらの音も邪魔が入らず鮮明に聞こえる。ともすると単調になりがちなので、スラッジにしては曲の長さは短めにしており、またノイズの成分を入れることも色を足すという意味で納得感がある。
思い出したのは音楽性は異なるがBell Witchであちらもドラムとベースのデュオだ。多弦ベースを使っていてしかもドゥームメタルだから大分曲自体は違うのだが、ベースの使い方という意味では似ているとがある。それはやはり音の少なさであり遅さである。一発のアタックの影響、音の大きさがでかいためあまり乱発しないで、むしろそのでかい音波を途切れさせずに後ろに引き延ばすことが非常に格好良いのである。

続いてそのWater Tortureを音楽的にアップデートしたという現行のStimulant。当たり前のように速い。速いだけでなく短い曲の中で遅いパートもしっかり入れてくる。いわばより明暗のくっきりしたパワーバイオレンスらしいパワーバイオレンスであり、劇速パートを積極的に取り入れることでそのマニアックな音楽性の魅力をわかりやすく再提示している。ベースをギターに持ち替えたこともその音楽性の変遷に対応していて、流石にせわしなくそして音の数が多い。音自体も軽くなっていて、今度はとにかく速いドラムの上にギターリフが乗っかって巨大な地滑りのように肉薄してくる。ドラムがすごくて1曲のなかでまるで別の曲を演奏しているように奏法が変わる。これはやはり楽器の数自体が少ないことでそれぞれの動きがわかりやすいのだと思うし、ギターとドラムがうまく分離して動いているせいもあるのではないか。ガラスでできた家のように中身が丸見え。そんななかでブラストかけまくるドラムが非常に良い。パワーバイオレンスだ…。全く隠しようもないパワーバイオレンスである。ただ速く演奏しているというよりは音の密度が異常に濃密である。通常の曲をバカみたいな速さで演奏しているような趣があり、つまりどこか病的なのだ。何かに取り憑かれているか、何かから逃げようとしているかのようだ。どちらのメンバーもボーカルを取り、低音と高音のメリハリも効いている。なるほど速いところはより速く、遅いところはより遅くというコンセプトが前のバンドと比べるとよくわかる。

激烈な音楽を味わえることも魅力の一つだし、共通するメンバーの音楽的な変遷を1枚の音源で知ることができて、そういった意味でも非常に面白い音源だと思う。この手の音楽が好きな人は是非どうぞ。

2018年6月17日日曜日

Capitalist Casualties/Subdivisons In Ruin

アメリカ合衆国はカリフォルニア州のファストコア/パワーバイオレンスバンドの2ndアルバム。1999年にSix Weeksからリリースされた。1986年に結成されたこの手のジャンルでは知らない人はいないバンド。残念ながら今年ボーカリストのShawn Elliotが亡くなってしまった。私はHellnationとのスプリットしか持っていなかったのだが、最近Fast Zineパワーバイオレンス特集(非常に面白いので是非どうぞ。)を読んでちゃんと聞かないと!と思っておっとり刀で購入したのがこちら。(このアルバムは新品で買える。)

20曲を17分で駆け抜ける正しくパワーバイオレンスなアルバム。
リリースから20年近く経っているわけで当然昨今のパワーバイオレンスとは結構趣が異なり面白かった。当たり前だがこちらがオリジナル。ここからいろんな音楽が広がっていったのだ。
基本的に全編突っ走るタイプ。今風の速いパートと遅いパートを曲の中に同居させることはしない。またドラムもブラストを叩くわけではなくて抜けの良いタムをスタスタスタ刻んでいくタイプ。ギターの音もそこまで重量感があるわけではなく、またメタリックな音質、さらにはザクザク刻んでいくようなリフもほとんど使わない。あくまでも疾走感が意識されており、ハードコアをできうる限りの速度でプレイしたような感じ。まさにファストコア。(パワーバイオレンスという単語は最近よく聞くけど、逆にファストコアとあまり聞かないような気がする。)
初めは思ったよりパンキッシュだな、と思ったんだけど、よく聞くとただただ速度至上主義で既存のシンプルな曲を早回しでやっているのではないとわかる。一番わかりやすいのはリフの凝りよう。これ例えばスリーコードをばーばーばーとただストロークするようなものではなくて、どの曲も緩急をつけたリフがきちんと用意されている。ただただ低音弦を弾くのではなくてちゃんと高音も使っていて、これがちゃんと拍にきっちり収まるように演奏している。ドラムはなるほどブラストは叩かないにしても曲の中で頻繁にテンポを変えている。パンキッシュなツービートやマーチっぽいフレーズなど結構多彩。私の耳の問題かもしれないけどあまりシンバル系は多用しないみたい。
パワーバイレオンスというと字面からしてはちゃめちゃなことをしそうで、まあ実際そうだったりするけどCapitalist Casualtiesに関しては基本は結構かっちりしていると思う。きっちり練習量あってのはちゃめちゃぶりというか、なので単に奇をてらっているのではなくて、ハードコアの特異な進化系として説得力があり、結果魅了される人が続いたのかなと。この初期衝動にあふれたパワーバイオレンスの魅力はというとやはり性急さだろうか。今のバンドはとにかく速度という意味では激烈だけれどとにかく堂々としている。Capitalistは「ぼやぼやしているとヤバイ、なんだかじっとしていられない」というちょっと病的な焦燥感があってヒリヒリしていて、結構別の意味で危ない。これはボーカルの腕によるところも大きいと思う。ハードコアにおける「カオティック」であったり「病的さ」であったりは表現であってそのまま垂れ流すものではないから、やはりきっちりとした基礎がものを言うのではなかろうか。
17曲、20曲あたりは遅いパートが入っていてパワーバイオレンスの当時のこれから(つまり今の姿)の萌芽が感じられて面白い。

パワーバイレオンスは結構流行り廃りというか進化があって(すべてのジャンルでそうなのだと思うけど。)Capitalist Casualtiesを聞いておけばこのジャンルのすべてがわかる、というのではないかもしれないが、このジャンルが好きな人はもちろん聞いておいた方が良いだろう。2014年に来日した際に見にいっておけばよかったな。

2018年6月3日日曜日

Fairy Social Press presents Boys Don't Cry#6@初台Wall

someoneはsometimes言う。曰く地獄とはこの地上のことだった。いや正しくは地獄は仕事のことなのだ、私は言うだろう、特に最近のバージョンの私がだ。職場が地獄で不味かった。終わることがないような業務時間もそうだ。仕事は大体つまらないものだが、そのなかでも特に気が重い類のものがある。今回はそれがしんどい。深夜2時に翌日(当日)朝7時に偉い方々(どうして彼らは総じて早起きなのだろうか)に自分が詰められるための資料を作成するというのはなかなかどうしてテンションが上がりようのない仕事だ。空いた時間を寝て過ごすいうのも良い選択肢だが、寝て何かが発生することはない。私の人生に何もなくなるという恐怖感からライブに行くことにした。

Kruelty
昨今話題の東京のDepressive Hardcore。ちゃっかりでも音源は購入したのだが生で見たことはないので楽しみだった。爽やかな初夏なのに4人のメンバー全員が目出し帽を被るという容赦のないスタイル。始まってみればこれはデスメタルでは。ざっくざく刻むギター、地の底から響くような低音ボーカル、重苦しいリズムはドゥーミィなデスメタル。ただただ呆然とするのだが耳が慣れているとデスメタルにしては異常にシンプルじゃないか?と気がつく。偏執的に隙間を埋めるようなテクニカルなリフ。つんざくような高音ソロ。そのような装飾性がほとんどない。ひたすらミニマルにリフを刻んで行く。1分はどうしたって60秒だ。駆けぬけようが牛歩だろうが同じ60秒だ。Krueltyはこの空間をリフで分割して行く。なるほど執拗な正確さで等間隔に刻んで行く様はメタリックだがあまりにそっけない。引っ掛けるように進んで行くそれを聞いて思う「これはハードコアだな…」。そうこのつんのめるようなリズムはまさしくハードコア。モッシュパートを切り出してそれで曲を作りましたという態。まさしく邪悪。音的には大阪のsecond to noneに似ているが、こちらがもっとシンプルだ。その分執拗でなるほどDepressive。こうやって演奏中にこちらが気が付いていくようなバンド、良いですよね。

Runner
続いては大阪/京都のRunner。恥ずかしながらバンド名も知らない始末。
こちらも抜けの良い軽めのスネアが軽快な瞬間風速系ブラストビートがキレッキレのパワーバイオレンスバンド。落とすパートの頻度が非常に高く、ほぼほぼモッシュパートの合間合間にボーカルが入るのでは、というくらいのエゲツなさ。バンド名はまさに名を体を表すかのごとく遅いパートもしつこくなくてあっという間に駆け抜けていく。
ひたすら筋肉質そのスタイルから Fight it Otuに似ているかなと思ったが、日本語の歌詞や遅くも早くもないパートにジャパニーズスタイルのハードコアを感じてしまう。パワーバイオレンスというのはふざけているか、おっかないか、あるいはその両方なんだけど、このRunnerはシリアスでありつつもまっすぐな暑苦しさもあってそこがこういったジャンルでは結構珍しいのではと思った。やはり関西のバンドというのは独特のオリジナリティを持っているなあと再実感。

leech
続いては船橋パワーバイオレンス、leech。見るのは2回目か。ボーカルの方が丸坊主になっていて厳つさが増していた。
ギターが2本だがノイズ感がすごい。曲が始まる前からフィードバックノイズが垂れ流しでこちらも脳汁がドボドボ溢れてくる。曲が始まると流石に低音が目立つのだが、よくよく聞いているとその低音の裏には高音ノイズが渦を巻いている。(片方のギタリストはひたすら高音に徹しているのかもしれない。)いわば高音域と低音域を同時に抑えている音の厚みがあって、それが音の壁になっていてフロアにぶち当たってくる。気持ちが良いよ。もちろんコントロールはしているはずだが、このleechというバンドは全部の楽器を最大音量で鳴らしているかのような感じがしてひたすら煩い。楽器隊VSボーカルみたいになってそこの相克も面白い。ただし一つ前のRunnerに比べると圧倒的にこちらのが陰湿。高速から低速に移ってもいわゆるモッシュパートとは違う、もっとスラッジっぽい放心したような気怠い感じがしてもはや手の施しようの無い感じ。わかられてたまるかという病んだ雰囲気が不健康ですき。

Fight it Out
後半戦トップバッターは横浜パワーバイオレンスFight it Out。始まる前からフロアに緊張感漂ってきてすごいバンドだなあと。
ライブハウスの特徴なのかもしれないけどこの日は前見たときよりドラムより弦楽隊の音が前に出ているイメージ。(私がいた位置の関係もあるだろう。)このバンドは速度のコントロールがすごいと思っているので、今日はまたもっと混沌としたイメージで聴けて面白かった。とにかくなんでもありなジャンルの中でくっきりとした音のイメージを提供するバンドだなと改めて思った。とことん研ぎ澄まされた曲というのは、余計なパートが無いということだ。速いか遅いか、その中間はバッサリ切り捨てる。ただし短いながらも余韻を残すようなパートがあってそれがまた格好良い。ひたすら筋肉質で無骨だが、その分たまにある短いシンガロングパートが映えてくる。あえて誤解を恐れずにいうと非常にわかりやすいんだと思う。馴れ合いというわけではなくてわかる奴は乗ってこい、的な。そうなればフロアも当然盛り上がってくるわけで。短いMCにもそんな姿勢が表れているようでひたすらカッコよかった。

she luv it
続いては大阪のバンド。音源の数は少ないのだが結構その名を聞く機会が多く気になっていた。なかなか見れない関西のバンドということでこの日の目当てでもあった。
ステージにはギタリストが2人、それからベーシストが2人(一人はボーカル兼任)、ドラムが一人(この方は他のバンドの時からずっとフロアで楽しそうに踊っておりました。)という変則体制。
セッティングが終わった時点でフィードバックノイズがすごいよ。人もぎゅうぎゅう。曲が始まってみると大変ですよ。満員電車が急停車した時のような人の動き。さらには恐らくビールが飛んでくる。モッシャー同時多発テロなお祭り騒ぎなわけで、それもそのはずだって曲が全編モッシュパートなんだもの。ひたすら刻んできて、そこに低いボーカルが乗る。そういった意味では一番手Krueltyに似ているところがある。確かにデスメタリックなところもある。ただ形式は似ていても音の印象は結構違う。一つはこちらがハーシュノイズも生々しいロウさ(生々しさ)を備えていること。内側に掘り進めていくようなDepressiveさはこちらには無い。陰湿だが内向的というよりは外向的で外に外に放射していくような動きがある。ひどくブルータルだが、フロアは湧きに湧きモッシュは自然発生的。

Nervous Light of Sunday
最後は大森のハードコアバンド。最近出た2枚のEPがとにかくよかったので是非とも見たかった。ドラム、ベース、ギター2本に専任ボーカルという5人組。
前の5つのバンドに関してはスタイルは違えどだいぶ逸脱していたのだなとわかるな、というかっちりしたサウンド。メタリックさはサウンドの重たさ、ミュートを用いた弾き方によくよく表れている。リフの中での低音と高音の対比が目がさめるようにくっきりしている。これはニュースクールハードコアだ。メタリックなサウンドでもKrueltyとは異なって、重量感があっても突進力がある。ボーカルはほぼシャウトだがたまに呟くような歌い方をしていてそこが日本っぽい。ただメロディ性は皆無でそこらへんはギターリフで補う。といっても例えばトレモロのようなわかりやすいメロディ感はなくてかっちりとしたリフの中にエモさを感じ取るというマニアックさ。しかしリズミカルに構築されたガッチリしたリフに感情を見出すことのできる奇特な人たちもいるものだ。

この日6つのバンドが出演し、そのどれもがハードコアのバンドだった。それぞれに共通点がありながらも結果出ている音は全然異なり、聞けば聴くほどにわからなくなるのがハードコアなのかと思った。耳が爆音でやられているのが快感だ。完全にやられた感のあるshe luv itのT-シャツを買った。音に似合わずかわいい。
電波の届かない地下から出ると仕事関係のチャットが何件も届いていた。これが私の選んだ毎日なのだった。耳鳴りを引きずって京王線に乗る。ドアの開閉をアナウンスする徹底的に無機質な女性の声が、私は好きなのだった。楽しい時間でした。

2018年5月27日日曜日

Henry Fonda/Front Antinational

ドイツはベルリンのパワーバイオレンスバンドの2ndアルバム。
2017年にNerdcoreからリリースされた。
5人組のバンドでFBのステートメントからも分かる通り生粋のDIY、生粋のライブバンドのようだ。
日本のFast Zineのパワーバイオレンス特集で吉祥寺のtoosmell Recordsの方がリコメンドしていたのがこちらのアルバム。ほかに推していたMellow Harsherと一緒に購入した。

バンド名はアメリカの往年の有名俳優からとっている。同じパワーバイオレンスのCharles BronsonやスクリーモバンドのYaphet Kottoなどもそうだがどうもこう俳優から名前を拝借するバンドというのがいるのがハードコアらしい。
短い曲の中に高速と低速を巻き込んだ、つややかな音もモダンな香りのする今風パワーバイオレンスバンドだ。〜分というタイトな時間の中でも長尺(といっても3分くらい)のスラッジ曲もきっちり挟んでくる。
低速に落としてくるところは徹底的に暴力的だが、疾走するパートは重さを抜いており、またパンキッシュなリフをたようすることもあり、なめらかで爽快。ここら辺は同郷のYacøpsæを彷彿とさせるところがあると思う。低速高速どちらも地獄のバンドとは異なり、高低と明暗の対象がはっきりしている。流石にひたすら明るいという種の音楽でもない。メロディ性もきっちり皆無。なんといっても疾走感のあるパートからなめらかに、そして唐突に低速パートに突入するこの脈絡の無さが最高なのだ。気分屋の男が気持ちよく飲んでたら、突然本人しかわからない事情でキレだすみたいな、そんな嫌な感情の急展開を実にスムーズにこなす。この一見した所矛盾した自然な不自然さがこのバンドの何よりの魅力ではなかろうか。バンド名からして人を食っており、ステートメントにもユーモアのセンスを伺わせている。実際にその感覚は曲の所々で感じられて、やはりひたすら酷薄なバンドとは一線を画している。ただ終始ふざけているのかというとそんなことはなくて、特にアルバムの後半はそのシリアスさを増していく。雰囲気に酔っているとふとした瞬間張り詰める緊張感に突然気が付いて背筋が凍るということはたまにあるが、まさしくそんな流れを地で行っている。このファニーさとシリアスさの対比と同居というのも極端なパワーバイオレンスというジャンルによく合っている。
やかましくて展開が混沌としていてまさしく騒々しいという言葉ぴったりのパワーバイオレンスという。個人的に最近かなりよく聴いているお気に入り。

2018年4月21日土曜日

PUTV Tour2018 SEX PRISONER Japan Tour@小岩Bushbash

幸いなことに私の上長は自身が音楽をやっていることもあって、ジャンルは違えど私の音楽趣味に理解を持っていてくれる。
私「今日ライブ見に行きます。(ので早く帰りたい…)」
上長「なんてバンド?」
私「セックスプリズナーです。」
上長「え?」
私「セックスプリズナーです。」
上長「それはいかがわしいな」
私「真面目なやつです」
みたいなやり取りがあって会社を出た。
そう、アメリカ合衆国アリゾナ州ツーソンのパワーバイオレンスバンドSEX PRISONERが来日しているのだ。私は来日ツアー二日目の公演を見るべく小岩にむかった。
私には珍しくオンタイムで小岩に到着。5つの日本のバンドがSEX PRISONERを迎え撃つ。

leech
一番手は千葉県船橋シティのパワーバイオレンスバンド、leech。5人組で専任ボーカルにギターが2本。ボーカルの人がガッツリハードなスタイルで異彩を放っている。
甲高いボーカルが終始シャウトをかまし、高速と低速を痙攣的に往復するさまは正しくパワーバイオレンスだ。このバンドは低速に特徴があって、スラッジ的というかそれを一歩通り越してスワンプ的だ。アメリカ南部の泥濘というか、ねっとりした腐敗したブルーズ臭が漂う。ハードコアのリフをただ低速に引き伸ばしたというよりは、妙に停滞したグルーブを打ち出していくる。このモッタリ感が非常にかっこいい。うわ〜ダメになる〜という感じ。もちろんフィードバックノイズも多めで不穏な感じ。低速が印象的なのでそこからの高速もよくよく映えてくる。

Thirty Joy
続いては東京のパワーバイオレンス/ファストコアバンド。ELMOとのスプリット音源を持っている。こちらはギターが1人に専任ボーカルの4人組。
めちゃくちゃ早いので「なんてバイオレンス…」と圧倒されるのだが、よくよく聞いてみると(今あらためて音源を聞いても思うんだけど)、楽器の音はモダンなハードコアとはちょっと違ってまだ生の音がいくらか残されているガシャガシャしたもの。リフもミュート用いて溜めを作っていくタフなものではなく、音の雰囲気もあってか80年代風のハードコアを高速でプレイしているような趣。ボーカルは高音だがやや喉にちょっと引っ掛けて叫び出すようにちょっとしゃがれている。なるほどたしかにファストコアだ。音はでかいし、攻撃性に満ち満ちているがどこかカラッとした感じがある。持っている人にしかわからなくて恐縮なのだがELMOとのスプリット3曲め(曲名がわからない音源なのだ)の曲に象徴されるようにリフがパンキッシュ(オールドスクール感)でキャッチーだ。

Fight it Out
ぼんやりしていたらいかつい見た目の人がセッティングしている。あれ?Fight It Outだ。ツアーに帯同しているからてっきりトリ前かと思っていた。そんな寝ぼけた頭をふっ飛ばしに来たのが横浜のパワーバイオレンスバンド。ギターが2人、ボーカルは専任。
Fight It Outはとにかく怖い。ピットができるのだが客の暴れ方が半端なくそれに合わせてピットも広がる。非常に暴力的だ。すでに何か会場にぴりっとした雰囲気が漂う。私はいつも後ろに下がろうかな…と思ってしまう。(この日はときすでに遅しだった。)
隠しようもなくモダンにアップデートされたパワーバイオレンスを演奏するバンドだが、この日思ったのはドラムがすごい。パワーバイオレンスは短い曲の中で速度がコロコロ変わる音楽だ。ドラムも速度だけでなくフレーズ(ドラムの場合はリフというのだろうか?)も目まぐるしく変わっていく。私は楽器の上手下手はからきしわからないのだが、FIOの場合はこのドラムが圧倒的に空間を支配している。ガッチリとしたリズムがフロアに残酷に今のリズムを叩きつけていく。この明快さ!(明快と言っても実際にやるのはすごく難しい。)
それから暴れるなら、盛り上げるならまず自分からを地で行くのがこのバンド。いかついボーカリストがフロアに降りて縱橫に暴れて、観客もそれに触発されて盛り上がる。怖くて、そして格好いい。

ELMO
続いては東京のパワーバイオレンスバンド。昨年末にリリースしたEP「Draw Morbid Brutality」は自分の中では空前のヘヴィローテンションで2曲め「Depth of Despair」はリリースから今まで際限なく聞きまくっているため、この日どうしても見たかった。ギター1人に専任ボーカルの4人組。
極端にノイズを強調したギターとベースが流行とは一線を画す凶暴なハードコアを鳴らしていく。高速パートは疾走感もあって気持ちが良いのだが、ノイズまみれの低速パートが長すぎる。高速パートの勢いを一時停止するどころか完全に息の根を止めるような執拗さでフロアを地獄に叩き込んでくる。前回、前々回見たときもそうだったがとにかくボーカルの剣呑さが常軌を逸していて、この人はラップもやっているそうなのだが、ライブが進行していくとどんどんボルテージが上がっていてこの日も相当恐ろしかった。目が据わっていて観客に怒鳴りまくっている。FIOは健全に暴れるという感じだが、(ちょっと語弊があるかもだが)ELMOの場合は絶対的にバンドと観客の間に溝があってその孤独に病んでいる感じが恐ろしくかっこいい。ノイズが全身を這っていくのに合わせて鳥肌立った。すごかった。

FIXED
続いてはFIXED。最近結成されたバンドでOSRUM、endzeweck、FRIENDSHIPのメンバーらからなるバンド。専任ボーカルいれて4人!アンプもドラムセットも(おそらく)完全に持ち込み。アンプは山積みだし、ドラムセットもなんだが一個一個がでかい。(裏にライブハウスのドラムセットがあることもあって)全体的に前に張り出して迫力がある。ちなみに出している音も超デカイ。
パワーバイオレンスではもちろんなくてどっしりとしつつも非常に柔軟なハードコアだった。ボーカルは終始シャウトしていて、ギタリストもシンガロングというかもう一人のボーカルのようにかなりの頻度で叫んでくる。速度はたしかに速いのだが、とにかく曲がとても豊かでギターはとくにただただ速度を追求して刻んでいくような弾き方ではなく低音から高温まで満遍なく使っていく。ベースも運指があってスライドも多用したりで速度を落として獲得したふくよかさがヘヴィで格好良かった。個人的には休符をすごくうまく使っていて、曲間でもまた一から合わせていくような出足の気持ちよさというのがなんかも体感できてよかったな〜。止める、というのは止めること自体の楽しさとそこから、ガッチリアンサンブルで合わせて始める、という楽しさがあるなと。
曲の複雑さとかっちりさ、再度ボーカルの使い方というところで、出ている音はぜんぜん違うがなんとなく柏シティのkamomekamomeを思い出してしまった。
物販を見ると音源はまだみたい?

SEX PRISONER
いよいよトリ!アリゾナ州ツーソンからのパワーバイオレンスバンド。専任ボーカルいれて4人組。メンバーが非常にリラックスしたムードで淡々とセッティングしていく。ささっとライブがスタート!これが非常に楽しかった!格好良かった!!のだけど思っていたのと違ってかなり驚いた。
まずパワーバイオレンスって非常にいかつい音楽である。前述のFight It Out、ELMOは出している音は似ていないがそんなジャンルを印象的に象徴していた。つまりヒリヒリしていておっかない。内面に湛えられた目に見えない怒りがもはや現実になって観客に獰猛に襲いかかるような、そんな雰囲気がある。そしてそれこそがパワーバイオレンスという恐ろしげな単語で表現される音楽だろう!と個人的には思っていた。SEX PRISONERに関しても音源を聞いてもやはりそうだな…こええな…と思っていた。ところがライブを見るとちょっと違う。確かに曲はばかみたいに速い、音は分厚い、おっかない、しかしなんというかもっと非常にカラッとしている。雰囲気で言えばそれこそThirty Joyの表現する80年台からのハードコアを正当に継承している感じだ。重たく速いが、あくまでも透明に澄んでいるような。爽快感と言っても良いかもしれない。ゆるいわけではもちろんなくて多分この日一番かっちりしていた。(すごい練習いているか、もしくはライブをやりまくっているか、どちらかだろうと思う。)ハードコアはラフが信条なんて戯言吹き飛ばす勢いでアンサンブルが噛み合い、それでいて荒々しさが露も失われず、そして音もでかすぎるというのではなく非常に良い塩梅に調整されていた。
曲がわかりやすい、乗りやすいというこもない。たしかにキャッチーではあった。というのもこのバンド高速低速の両極端も強いが、実は最大の持ち味は中速ではなかろうか?というのは中速と高速の合間にとどまることが多く(比較的、時間的にはやはり短いのだが)、その中速リフこそがハードコアらしい溜めのあるリフが縦ノリ横ノリのグルーヴを産んでいく。これが気持ち良い。ただ低速と高速が目まぐるしすぎるほどに矢継ぎ早だ。FIOは高速と低速にそれなりに時間を割くことで観客に現状を理解する時間を与えるが、SEX PRISONERの場合はそれすらきっぱり削ぎ落としている。曲も圧倒的に短い。極限までにハードコアを削ぎ落とし、それでも明確なハードコアとして存在しているのだから尋常ではない。いわばハードコアの核や真髄を彼らは鍛錬の果についに見出してそれを提示しているのかもしれない。そんな戯言も現実味をちらりと帯びてしまうほどに堂々としたハードコアだった。
そしてやはりカラッとしている。怒りはもちろんあるだろうが、それは完全にもう飲み込んで別の何かになっている。繰り返して言うが腑抜けた音楽では全然ない。おっかないのである。でも同時に非常に楽しい。本当もう私ずっと笑っていたと思う。本当に。
いかつい見た目のボーカリストの方は獰猛でしかし非常にしなやかであった。走るような格好で飛び上がるジャンプは格好良かったし。楽しそうにフロアでステップを踏むこともしばしば。(twitterでハードコアのライブでステップに対して疑問を呈する発言を見たが、そんなのどこ吹く風でかっこよかった。本当自由だった。)
ショートチューンを幾つも披露し、そしてあっという間にライブが終わってしまった。私はもう事前に考えていたことがことごとく違って本当痛快だった。「あっはっはっっは」って笑ってしまいたいくらいであった。すごかったな〜〜〜〜〜〜。

もう完全にいい気持ちで(私はこの日お酒は一滴も飲んでいない)、物販でSEX PRISONERの長袖T-シャツを買う。ボーカリストの方と握手して(日本にきてくれてありがとう!と言えました。)帰宅。楽しかった!自分の狭量な偏見がふっとばされたのがとにかく気持ちよかった。
(あと小岩はやはり遠くていつまでたっても家にたどり着かず絶望した。)

2018年1月20日土曜日

Su19b/Neurtralize

日本は神奈川県のブラッケンド・パワーバイオレンスバンドの2ndアルバム。
2017年にObliteration Recordsからリリースされた。
結成は1997年でフルアルバムより先にディスコグラフィーが出る(つまりアルバム以外の音源はかなりの量リリースしていたアンダーグラウンドな)バンドだったが、待望の1stアルバムを2015年にリリース。2年間というかなり短いスパンで2ndフルアルバムをリリース。結成20周年記念、ということもあるとのこと。

「ブラッケンド・パワーバイレオンス」という枕詞で語られるのだが、この言葉から想像される音とはちょっと異なる音楽を演奏するバンド。
パワーバイレオンスというジャンルはハードコアの先鋭的なサブジャンルで、その音楽性を簡単に一括りにできないオリジンリティのあるバンドがたくさんいる振れ幅のあるジャンルだが、SpazzやInfestのような伝統的なハードコアの激速版みたいな手法が一つと、それから昨今の流行り(なのかはわからないけど)短い曲の中で強烈なストップ&ゴーを取り混ぜたスタイルがあると思う。Su19bの場合はこのどちらにも当てはまらない。ブラッケンドの方も、純粋な音楽として捉えたブラックメタルから抽出した要素を用いる、という用法だとするとやはりSu19bの音楽性に合致しているとは言い難いかもしれない。というのもこのSu19b、ブラッケンド、パワーバイレオンスというにはおもすぎる、強烈すぎる、そしてどろどろしすぎている。これは前作もそうだがアートワークがよく中身を表現していて、モノクロにゾンビ(骸骨)と言うのはなるほどハードコア的だが、よくよく見るとゾンビにしては元気でそしてやはりどろどろしている。この溶解した腐肉感はどちらかというとデスメタルを彷彿とさせる。音に関しても同様で、ファストコアとスラッジを短くひとまとめにした、というよりはそれぞれをそれなりの尺で(といっても真性のスラッジに比較すれば長くはないが)、丁寧に、つまり陰湿にやるのがこのバンドのスタイルであり、「うげええええええ」と吐き出すようなボーカルもデスメタルを彷彿とさせる。ゾンビのうめき声みたいで超かっこいい。当然それをやるにはハードコアを経由した重たくもカラッと乾いてわかりやすい音ではなく、ジリジリ輪郭が撓んで腐りかけた湿っぽく邪悪な音にチューニングされている。外へ外へ突き抜けていくポジティブさというよりは、音が瘴気のように渦巻くネガティブさがあって、わかりやすくヘイトとフロアに混沌をぶちまけるスタイルのパワーバイオレンスとは一線を画していて面白い。もっとこう胃もたれするようないやらしい重たさがあって、それが停滞するのだ。特に遅いパートはデスメタルとスラッジコアを重量と陰湿さという要素でがっちり結びつけており、この表現力はちょっと他のバンドにはないのではなかろうか。遅さから突き抜けるブラストは一見爽快なのだが、これで何処かに行けるわけでもなくひたすら地獄なのが非常に良い。聞きやすさとは無縁で、しかし全編通してかっこいいという、まさにハードコアなスタイル。

Bathoryのカバーはややフューネラル・ドゥーム感も漂い、非常に音楽的な懐の広いバンドだと思った。私はCDを購入したが、今ではBandcampでデジタル版も購入できる。流行りに迎合しないオリジナリティのある音を鳴らすバンド。いわゆるパワーバイレオンスを想像するとびっくりするかもしれないが、底なしのヘイト感なら満載なのですぐにこの瘴気のような重たさと腐臭漂う邪悪さが気に入るのではなかろうか。おすすめ。

2018年1月2日火曜日

Tho Body & Full of Hell/Ascending A Mountain of Heavy Light

アメリカ合衆国オレゴン州ポートランドのドゥーム・デュオThe Bodyと同じく合衆国メリーランド州オークランドのパワーバイオレンスバンドFull of Hellとのコラボレーションアルバム第2弾。
2017年にThrill Jockey Recordsからリリースされた。LP盤を購入。
私は前作「One Day You will Ache Like I Ache」(タイトルが最高)が大変気に入っているアルバムなので今作も非常に楽しみだった。
幸いなことに2017年Full of Hellの最新作「Trumepting Ecstacy」のリリースに合わせた日本公演で両者のステージングを見れたのは良かった。どちらのバンドからも凄まじいエネルギーが感じられたし、バンドの今を確認できた。

激しく、そして先鋭的な音楽を演奏している2つのバンドだが、微妙にやっているジャンルは異なり、普通に考えればそのコラボというのはちょっと異質だと思うのだが、その先入観をふっ飛ばしたのが前作で、それはもうパワーバイオレンスとドゥームをノイズ、低速という共通項でもって一つに繋いだ、というかもう完全に融合した一つの別個の生命体だった。停滞する厭世感と爆発起動するヘイトを併せ持つ、不安定な物質としての純粋なニトログリセリンのように危険なやつだ。ハードコアにはなかなか出せない淀んだ停滞を強烈に全面に打ち出したその音楽性は個人的にとてもツボである。
今作も基本的に両者がっぷり四つの出来だが、前作とはやや音楽性が異なる。The BodyはFull of Hellだけでなく、Hexan Cloak、ThouやKrieg、日本のVampilliaなど多様なバンドとの合作を行っており、とくにFull of Hellとの2作に関してはどちらかというと主導権を握っているのはThe Bodyなのではと思う。はじめに聞いたところではさらにThe Body化が進んだのかと思ったのだが、来日公演で見たThe Bodyを思い出して微妙にそうではないことに気づいた。The Bodyの音楽性の変遷がこの共作にも影響を与えているのだ。来日公演ではThe Bodyの二人はドラムとギターを利用せず、ほぼ目の前にセットされた卓をいじることで音を出していた。なるほどノイズの要素は大きかったが、個人的に驚いたのはテクノ然としたはっきりとしたビートの導入だった。おそらくアナログシンセとビートマシンを用いているのだろう、凝った音というよりは実直でシンプルな音で驚いた覚えがある。
この共作でも電子音に対する愛着とこだわりが散りばめられている。前作ではまだ披露されていた速さという爽快感が徹底的にオミットされている。遅鈍さにDylan Walkerの強烈に喉に引っ掛けるような低音ボーカルが乗ってくる。垂れ流し系のズルズル演奏はスラッジを通り越した過剰装飾性すら感じさせるが、さらにそれを冷徹で重たいインダストリアルなビートがぐるっと一巻きにしているのだから明らかにやりすぎである。2つのバンドをつなぐ共通項がノイズ(単にハーシュノイズを用いた楽曲を制作するという意味ではなく、うるさい音へのアプローチとして)だったので、出来上がった音がうるさいのはわかりやすいのだが、冷徹なビートを用いるというところが面白い。もちろん単に今ハマっているから、という説明だけで充分なのだが(そもそも作り手側に説明を求めるのはお門違いであるが)、なんとなく意図が気になってしまうのが私だ。ミニマルなビートで陶酔させると言うにはあまりに曲の出来がカオティックで情報が多すぎる。そうなると垂れ流しに拍を導入することで引き締めるというのが一つあると思う。(逆に5曲目「Our Love Conducted with Shields Aloft」は生ドラムを叩きまくり徹底的にやりたい放題やっているのも興味深い。)うねりがあった前作に比較すると今回は曲の中で相克があって、抑圧感が半端ない。それがストレスに感じられる人もいるだろうが、個人的には「Didn't the Night End」「Farewell,Man」(邦訳すると「さよなら人類」になってたま感が半端ない。)の2曲はもうビートがおもすぎて最高。

Full of Hellの最新作のようなヘイトに満ちたデスメタリックなハードコアを期待すると、もったりと停滞したドゥームな世界観に驚くだろうが、根底にあるのはこの世に対する恨みつらみなのでそういった意味では全くぶれていない。バンド名知っているという時点で買って間違いない。今更速いとか遅いとかの話ではない。

2017年11月19日日曜日

DS-13/UMEÅ HARDCORE FOREVER, FOREVER UMEÅ HARDCORE

スウェーデンはヴェステルボッテン県(調べるとスウェーデンの上の方)、ウメオのハードコアバンドのディスコグラフィー盤。
2017年にLPやCDの形式で複数のレーベルからリリースされた。私が買ったのは日本のCrew for Life Recordsからリリースされた日本盤。(CD形式は日本盤だけみたい。)
DS-13はDemon System 13の意味で1996年に結成、本国だけでなくアメリカ、ヨーロッパ、日本なども含めて世界的に活動したが2002年に一度解散。2012年に再結成し、また精力的に活動している。Pusheadのイラストを使った音源は聞いたことない私でもなんとなーく知っていた。おそらく来日を記念してという意味もあってのこのディスコグラフィー日本盤だろうと思う。私は再来日ライブには行けなかった。この音源とても内容が素晴らしいので非常に残念。
この音源はアルバムを除く1997年から2000年までのスプリット音源や、EP、コンピレーションに収録、提供した音源を集めたもの。全部で67曲あり、リマスターが施されている。

最近日本のハードコアバンドのインタビューを読むと一昔前は本当にハードコアを聞く人が少なくて大変だったようだ。最近は(自分が興味を持ったことも大きいだろうけど)一昔前に比べるとやや盛り上がってきたのかな?という感じ。
このDS-13は1996年から活動しているバンドだから現行スタイルにはむしろ影響を与えた方のバンド。67曲を聞いてて思ったのは非常に聞きやすいってこと。(とくにパワーバイオレンスなどの激しいタイプの)ハードコアバンドは1曲が短いからアルバム全体も短くなる傾向にある。短くても中身的には結構重たくて濃いので、濃厚な家系ラーメンのように短い尺がちょうどよいくらいなのだけど、このバンドに関しては67曲がすっと聴ける!それもあとに残らない軽さではなく、これはいい曲、これもいい曲という感じに耳を通して脳にガツガツくる。こういうのはなかなかない。ディスコグラフィーだから良い曲のみを集めたベスト盤ってわけでもないし。この聞きやすさの秘密は今のところ3つくらいあって、一つは音がおもたすぎないこと。低音をバリバリ強調して不穏でノイジーなフィードバックノイズを添えた昨今の音とは一線を画す、ハードコアパンクの延長線上にある中音域の厚みがあたたかみすらある音が非常に気持がよい。もう一つは曲によって聞き所がきちんと用意されていること。たしかにとんでもない速度で突っ走る曲がほとんどなのだが、スラッシュ一辺倒でなくて結構コード感のある聞きやすいパンクな曲構成になっていたりもする。シンガロングに彩られたメロディが出て来る曲もある。(「Degenerated Generation」や「(I'm Not Your)Steppin' Stone」なんかは歌えるくらいキャッチー。)強烈な速度とその極端にある急停止からの鈍足、というスタイルが(もちろん良いことでもある)一つのやり方になっている昨今は特に、こういうふうに脇道にそれているというか、いろいろな試行錯誤が、結果的に勢いのある曲を主体とした音源の中でいい感じに異彩をはなちつつ凹凸を作っている。そして最後の要素は全体を覆うポジティブ感。ぬるいポップパンクだというのではないし「死んだ警官だけが良い警官だ!」と叫ぶ過激さ、攻撃性がありながらも、音的には陰惨にならないでエネルギッシュでありながら創造的だ。聴いていて単純に元気が出てくる。

演奏の感じやボーカルの親しみやすさからCharles Bronsonにちょっとだけ似ているかな?なんて思った。非常に格好良くこのDS-13というバンドを紹介しているディスコグラフィーだと思う。現行のパワーバイオレンスのようなキレッキレのハードコアが好きな人も、きっちりとしたハードコアパンクが好きなのだという人にも進められる音源では…なんて思ったりする。非常におすすめ。

2017年9月24日日曜日

Coke Bust/Confined

アメリカの首都コロンビア特別区(District of ColumbiaでD.C.)ワシントンのハードコアバンドの2ndアルバム。2013年にGrave Mistake Recordsからリリースされた。その後スプリット2枚とライブアルバム1枚をくっつけた「Confined/Anthology」という同じジャケット(手に取ったわけではないのでひょっとして違うかも)の編集盤もリリースされているが、私はBandcampで購入した9曲入りの「Confined」。たしかユニオンの中古LPのところでよく見るな〜と思って買ってみた次第。とにかくジャケットがかっこいい。メンバーの一人はMagurudergrindのメンバーらしい。ストレートエッジのバンドである。どうもCoke Bustというのはちょっとふざけたバンド名らしい。(なんだろうコーラの胸???スラングでしょうね。twitterで教えていただいたのですがコカインで逮捕される、という意味だそうです。)

全9曲を9分4秒でやってのけるわけだからフルアルバムったって、普通のアルバムを聞く間に4周くらいできるコスパの良いアルバム。(最近の人はとにかく損をしたくないらしくコスパの良さを重視するよな。)とにかく激烈な音を出しているので「ウヒョーこれはパワーバイオレンス…!」と思ってしまうのだが、じっくり聞いてみるとちょっと違うかもな、というのが私の印象。
ノイジーなフィードバックにまみれたハードコアで(このアルバムでは)1分20秒より長い曲は存在せず、露骨な速度のチェンジが短い曲中で何回もある。ここまではOK。このバンドあんまりスラッシーではない。ミュートを挟んだメタリックなリフは使わないという意味で。もちろん使わないわけではないのだが、疾走するパートでは特に伝統的なハードコアの流れをくむジャージャーと休止を利かせない弾きまくるリフを使ってくる。下手すれば単調に聞こえるわけだけど、単にアップダウンで弾くのではなく抑揚は聞いているし、コード進行がよく練られているからか非常にかっこよく、かつキャッチーである。
昨今のパワーバイオレンスというと速度のチェンジ、というか低速パートに落とし込むいわゆるブレイクダウンが大胆に取り入れられており、洗練されたそれより音も汚く、ラフなアトモスフィアを感じさせるそれは遅いハードコア、つまりスラッジコアからの影響を強く感じさせる事が多い。一方速いパートはとにかく速いので、同じ曲の中で両極端を行ったり来たりするという醍醐味があるわけなのだ。しかしこのCoke Bustはそのスラッジ的な成分はあまり感じられない。遅いパートはあるのだが地獄のように遅く、引きずるようなそれではない。むしろ中速くらいで一点突っ走ったリフがちょうどよくグルーヴィにうねりだすイメージ。速度を落としても結構音の数は多い。踊れる(つまり暴れる)ハードコアというハードコア的なノリの良さはありつつ、現行のパワーバイオレンスとは微妙に一線を画す攻め方、曲の作り方である。
そう考えると前述の速いパートのリフもそうだが、パワーバイオレンスというか往年のハードコアを激速で演奏しているのがこのCoke Bustなのでは、という感じがしてきた。たしかに高速に対応する低速パートがあるわけだけど、そこもうまく自分たちなりの色を出していてちょっと他のパワーバイオレンスとは結果違うなと。ファストコアのモダンなアップデートみたいな感じだろうか。

パワーバイオレンスじゃない!ってわけではなくてよく聞くと結構面白いことやっているなあという感じで、人々がパワーバイオレンスに求める爽快な暴力性はきちんと備わっている。速いパートでも遅いパートでもスラッシーではない、リフのかっこよさがあるので大変聞きやすい。気になってい人は是非どうぞ。

2017年9月17日日曜日

GASP/Sore For Days Demo'96

アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスのパワーバイオレンスバンドのデモ音源。
1996年に自主リリースされていたものが2017年にDark Symphoniesから再発された。もとはカセットだったが、今回はCDのフォーマットで再発。
Gaspは1996年から1999年まで活動していたバンドでフルアルバムは1枚のみしかリリースしていない。ベーシストの女性はDespise Youでツインボーカルの片方をやっていた人のようだ。InstagramやFBでの動きがあるのでどうも再活動を始めているような感じがする。Full of Hellが影響を受けたアルバムとして彼らの唯一のフル「Drome Triler of Puzzle Zoo People」(これはかのSlap a Ham Recordsからリリースされた。)を挙げていたので気になっていたのだが廃盤だしな〜と思っていたところ図ったようなタイミングで再発されたので買ってみた次第。

なんとなくパワーバイオレンスにノイズを加えた激烈なショートカットチューンをやってそうな先入観があったのだが、果たして聞いてみると結構印象が違った。
このデモ音源には8つの曲が収録されていて、トータルタイムは約28分だから結構この手のジャンルにしては尺が長い。
不穏なニュースのSEから幕を開ける1曲め表題曲「Sore For Days」からして圧倒的に遅い。ヌケの良い乾いたドラムがパタパタ刻み、その上をジリジリノイズがかかったギターが叩きのめしたような牛歩リフを奏でていくさまはどう聞いてもスラッジコア。タフというより何かに追い詰められている、もしくはそのたぐいの妄想を抱いている偏執病患者のような病的な声でタフなハードコア、パワーバイレオンスのそれとは明らかに一線を画す。もったり陰鬱なスラッジから、不穏なアルペジオを挟み突如切れたかとのように疾走パート(曲によってはブラスビートを入れているのでグラインドコアといっても差し支えないはず。)に突入する。パワーバイオレンスといっても色んな形があるが、その一つに低速から高速を中間を挟まずに移動する、というのがある。今でこそ目新しくないが、Gaspはこれをもっと時間を贅沢に使って表現している。スラッジパートはスラッジバンドのそれと同じように楽しめるし、激走パートはファストコアさながらである。今はいいとこ取りがパワーバイオレンスの醍醐味見たくなっているが、Gaspの場合はこれを馬鹿正直に1つの曲に丁寧に両パートを演奏する。曲によってはそのつなぎに不穏なパートを入れて、唐突な激速チェンジに一旦かませることで違和感を減じようとしているのだ。これは今ある程度パワーバイオレンスの方が決まっているから、こういうことができるけど当時はこれが試行錯誤の果にあった最先端だったのだと思う。これを今再発するということがどういう意味を持っているかを考えると特に。
(今聞いても)たらたら長いパワーバイレオンスにならずに、私からすると奇形のスラッジコアと言う印象が強くてめちゃかっこいい。逆に型にはまっておらず非常に自由だ。ある程度長い時間を使って曲を演奏するからこそできる、パワーバイレオンスだと思う。「何日間ものひりつく痛み」というタイトル(医者が言うセリフのようだ)が不穏である、病的なジャケットもやはり一捻りした厭世的スラッジの成分を感じてしまう。

世界で1,000枚限定とのこと。現時点では普通に店頭に並んでいるので気になっている人は早めにどうぞ。パワーバイオレンスファンはもちろん、Griefなど往年のスラッジバンドのファンにはピッタリあってくる音楽だと思う。
このアルバムはノイジーであるもののハーシュノイズの要素はあまり感じられず、話を聞いているとどうもフルアルバムはまたこの音像とは全く異なるらしいので、再始動をしている今他の音源も再発されないかなと、密かに期待しているものである。

2017年8月28日月曜日

FULL OF HELL/THE BODY/FRIENDSHIP Japan Tour 2017@新代田Fever


まずはこの動画を見てほしい。

演奏しているのはアメリカ合衆国のFull of Hellというバンドである。ハードコアの極北パワーバイオレンスにノイズを混ぜ込んだ激烈な音楽をやっている。そんなFull of Hellが新作「Trumpeting Ecstasy」のリリースに合わせて来日するという。それなら問答無用で行くしかない。Full of Hellは日本のノイズ神Merzbowとコラボレーションを行なったことがあり2014年にも来日経験があるのだが私はいっていないため今回見るのが初めてである。Full of Hellともコラボレーション作品をリリースしている(今年もさらに1作品リリース予定)厭世ノイズ・スラッジデュオThe Bodyも帯同するのだからさらに嬉しい限りである。
典型的なオタクなので弱い言葉がいくつかある。その一つが「限定版」だ。今回FoHの新作の限定版LPがあるというので勇んでいったのだが残念ながら売り切れ。開演前にT-シャツとピンズとパッチを購入。ボーカルの方が物販にいらっしゃいましたよ。とてもにこやかでした。

Friendship
一番手は日本から若い身空で刺青びっしり親不孝アウトローたちによる重低音ハードコア。今回の来日ツアーに帯同している。彼らが今年リリースした待望の1st「Haetred」も形式は異なるもののノイズを意識した強烈なハードコアをやっており、いわば一つの潮流としてのハードコア+ノイズに対する日本の回答なのであります。
いろんなイベントで目にする彼ら。いつもとにかくセットは少ないが音のデカさとタフに持続する正確性で強烈な個性を放つドラムに目が釘付けになってしまうので、今日はそこ以外をしっかり注目という気持ち。セルフブランディングもあってかとにかく強面、タフなバンドというイメージが強い(実際タフです)が轟音に負けないようによくよく聞いて見ると曲がよく練られていることに気がつく。ドラムに目が行きがちだが、ベースとギターは非常にうまくでかい音で空間と時間を区切っている。とにかくミュートの使い方がうまく、体を揺らせるでかいビートをバンドアンサンブル全体で生み出している。ただ速い、ただ遅いではなくきちんとつんのめるようなハードコアのリズムをものにしている。
そしてまさに豪腕という感じで、膂力でテンポをぶった切るように変えて行く。「ぎゅドン!」という感じで乗せたスピード一瞬で殺してくる。これにはやはり積み上げたアンプによる非常にボリュームの大きい音が効果的だと思う。
ボーカルはフロアに降りてきて暴れる。単にステージとその下で映える、というだけでなく放っておいたら何をするかわからない、2秒後にはこっちに体を低くして突っ込んでくるのでは(実際突っ込みます)という危機感もあって目が離せない。非常に華のあるボーカルだと思う。暴れすぎてマイクが物理的に断線。MC一切なし、客に拍手する隙すら与えない孤高のステージングだった。

Endzweck
続いては1999年から活動を続ける日本のハードコアバンド、Endzweck。ライブを見るのは初めてで実はこの日とても楽しみだった。ドラムの方はとにかくいろいろな国内外のハードコアのライブに関わっているようで、お名前を見ることがとても多い。ボーカルの方はバンドと並行してきちんと社会人やれるよ!という記事がついこの間話題になった。私も読ませていただいたが非常に面白く、また社会人として感銘を受けた。なんでもやろうと思えばできるのだ。
Friendshipから一点ライトをつけた明るいステージで丁寧なMCも間に挟んで行く。演奏するのは紛れもないハードコアで明確に良い意味で流行とははっきり距離を置いた堅実なもの。基本的に速度は早めでテンポチェンジも派手には行わない。速度を落として暴れさせるようなある種の”わかりやすさ”もなし。ひたすら突っ走る。途中でマイクから音が出ないトラブルもあったが、むしろ後ろで鳴っている演奏が聴けて私的には良かった。(その後すぐにマイクは復帰した。)終始叫んでいるボーカルと対をなすように演奏はとても饒舌。日本あるギターは両方とも勢いがあるが、表現力がとても豊かで厚みのあるリフに絡みつくような中音〜高音がよく出たトレモロや単音がとにかくかっこいい。じんわりと体の奥に火をつけるような”熱さ”を感じるのは曲に感情豊かに奏でられるメロディがあるからだろうか。
ボーカルの方のバンドから一歩出たインタビューも、明るいステージングも、背中を押すような曲も、動き回るメンバーも、全てが赤裸々だ。Friendshipはベールをうまく使うバンドだが(中身がないというわけでは断じてない)、Endzweckは包み隠さずに胸を開いて感情を出して行く。とてもかっこよかった。この日むしろ異質な音楽性だけど、それゆえひときわまっすぐ輝いていた。もう途中で絶対音源買って帰ろうと思った。(実際買って帰りました。)

Endon
続いてはやはり日本からハードコアとノイズをミックスして強烈に放射しているバンド、Endon。ただしこのバンドに関しては出自がノイズではっきりとしたバンドサウンドが前に出てきたのはConvergeのKurt Ballouとがっちり手を組んだ最新作「Through the Mirror」からではなかろうか。
1曲めてっきりとニューアルバムの冒頭を飾る「Nerve Rain」かと思ったら違う。とにかく音の分離が良くて、ノイズもきっちりギターと別れて(このバンドギターは重低音で潰すのではなく、ジャキジャキした艶のあるサウンドにしていることもある)綺麗に聞こえる。とてもバンドっぽいぞ、と驚く。そういえば昨今のライブのお供である強烈な白い光を放つプロジェクターがない。なになにバンドサウンドで勝負かと思いきや、曲が進むについれてノイズ成分を強めてくる。「Your Ghost is Dead」で速くノイジーな真骨頂はその頂点を迎え、そこから一点強烈に速度を落としたスラッジノイズ地獄へ。いろいろな楽曲を連続性を持って変遷して行く様はまさにノイズそのもので、このバンドの出自を意識させる。変幻自在だがどれも強烈にEndonであるのは、このバンドの本質が曲の型にあるわけではない、ということを露骨に証明していると思う。ボーカルの方は相変わらずひたすら感情的に叫んでいる。Endonは言葉に頼らないバンドなので(抽象的であるということにこだわりがあるのではと思うが)、きっとどこの国に行っても通じるだろうなと思う。もやの中を異世界の巨獣がが悠然と歩いているような様から、ノイズはそのままにギターが物悲しいアルペジオを奏でるアルバム終盤の流れに。ここで一回放棄した理性がまた違う形で戻ってくる。落差もあって非常にドラスティック(劇的)でドラマチックだ。ビリビリ震える空気の中で、感動で身も震えた。

The Body
続いてはアメリカからの刺客、The BodyがまずはFull of Hellのつゆ払いをば。The Bodyといえば底意地の悪い、とにかく厭世感に満ちたノイズスラッジが印象的だがこの日はなんとドラムもギターもなし。メンバーの二人がそれぞれノイズ機材にがっつり向き合う特別編成のライブ。普段ならギター/ボーカルのChip Kingもインパクトがあるが、頭をがっつり剃って(長髪のイメージだったものでびっくり)EmperorのロンTに身を包んだドラム担当のLee Bufordもヒゲのせいか陰気なフィリップ・アンセルモ的な危ない空気を放射していた。怖い!
おそらくその場でアナログ音源をいじって音を出しているのだと思うが、ぶちぶちいうノイズを垂れ流す。概ねビートが入っているため思った以上に聴きやすい。しかし重たいそれはダブやテクノという観念からあまりに距離がある陰鬱さ。シンプルかつミニマルなビートにゴロゴロ唸る重低音ノイズが乗る。その上にグリッチめいたノイズが飛び回る。音はでかいし、一部はドローン的に垂れ流されるのだが、音の種類と数は極限まで削られていて、きっちりとエレクトロ方面としての質が担保されている。不穏な人の声のサンプリングも非常に効果的でこれはめちゃかっこいいし、Chip Kingの巨体とは似つかわしくない高いボーカルもバッチリ頻度高めに登場するし、これは確かにThe Body。Endonもそうだが、バンドの本質がどこにあるのか、というのがはっきりしていると多少形を変えても全く軽薄な感じがしない。結構即興的な部分もあったのか、二人のメンバーの間に緊張感があり、それがビリビリ中間で帯電しているような不穏さを生んでいた。

Full of Hell
そしていよいよFull of Hell。ああついにこの日が来たのかとすでに感動と期待でステージを見上げる視線にも熱がこもる。
ボーカルのDylanが卓に据えられた機材のつまみをいじるとヒュンヒュンノイズが飛び回る。彼がマイクを握ってからほんの数秒、そこにマジで本当にわたし的には一番期待感のこもった至福の時があったと思う。まるで爆発したかのような推進力。止まらないブラスト、ギターとベースはかなり運指の激しい複雑なリフを奏でる。そしてそこに乗るボーカル。這いずり回るような低音から耳をつんざくような高音まで、バックの演奏御構い無しに寸断なく移行する。吠えまくる。まるでツインボーカルのように隙間がない。この人は高音と低音をまるで同時に出すように、高音から一転嘔吐するようなえげつない低音に連続性を持って変遷して吐き出してくる。Endonと違ってなんとなく言葉っぽいなとわかるのだが、あまりに早くて、そして異形すぎてこの人にしかわからない言葉を喋っている異星からやって来た人みたいだ。私たちと生きている速度が違うんじゃないのというズレ感。上背のあるからだを独特のやり方で(冒頭の動画を参照ください)動かしまくる。やばい。情報量が多すぎて全く脳が追いつかない。全て別々にすごいスピードで、止まったり爆速で動いたりを繰り返しているように思う。この日どのバンドも非常に極端なハードコアを演奏したが、明らかにFull of Hellが一番振り幅がでかい。Full of Hellはハードコアというよりはやはりパワーバイオレンスだ。それも今風の爆速と低速の間を全力でシャトルランするタイプの。パワーバイオレンスはその極端さからどうしても感情が研ぎ澄まされたピュアになってしまうのだけど、Full of Hellの場合はボーカルの多彩さとそれから何よりノイズに良い意味で”雑念”というか”逆巻く感情”を込めているので、さらに情報量が多く、そしてそれがバンドサウンドのニトロのように作用している。
途中ソロめいたパートもあったがドラムがブラストしまくりで、相当ややこしいことをできているのはこの人の豪腕があってこそなのかもしれない。ごまかしのきかない凄み。この時間が終わらないでくれーと思いつつ轟音に身をまかせる気持ちの良さ。私の言いたくて言えなかったことを全部言ってくれるような、心中の感情が体の外に出ていくような快感。

念願のFull of Hellはもちろん期待のはるか上方をいく凄まじさだったし、意表を突かれたThe Bodyもむしろすげーもん見れたという感じ。一方で相対する日本勢もどのバンドも一歩も引かない堂々たる演奏で本当出てくるバンドがどれもかっこよかった。ハードコア+ノイズでもこんなに多様なバンドがいて一堂に会してそれぞれ異なる音を鳴らすってすごい。主催の方々には本当ありがとうございますという気持ち。
終演後Chip KingからT-シャツを買ったらとっても丁寧で、フィットさせてもらうと「Good!」と言って指を立てて微笑んでくれたのだけど、(Full of Hellもそうだけど)この柔和な笑顔の背後にとてつもない厭世感と断崖絶壁のような感情が渦巻いているのかと思うとなんだかゾクゾクしますね!!長生きして地獄のような音楽を作り続けて欲しいです。
最後にFull of HellのDylan(開演前も終演後も物販にいてニコニコ対応してくれました)に「日本に来てくれてありがとう」と伝えることができて(伝わったか怪しいんだけど)とてもよかった。すごく距離がある極東の異国にはるばるこうやって来てくれるのは本当嬉しいです。
というわけで非常に良いライブでした。寝るとこの感動を忘れそうなのでとにかく今日のうちに書きたかった。
Full of Hellはもう一つ公演が公式にアナウンスされたので行ける人は是非!!!!

2017年7月8日土曜日

FRIENDSHIP/Hatred

日本は千葉のハードコア/パワーバイオレンスバンドの1stアルバム。
2017年にDaymare Recordingsからリリースされた。
「友情」という名のバンドだが、びっしりと刺青の入ったメンバー(おそらくまだとても若い)がタワーのように積み上げたオレンジのアンプから大音量で凶悪なハードコアを鳴らす。活動開始がいつなのかはわからないが、その音の凶悪さはかなり早い段階からSNSなどで話題になり、いくつかの音源も世界のいろんなレーベルからいろんな形でリリースされている。そんなバンドの今回満を辞しての1st。

真っ黒いハードコア。漆黒とは音の凶悪さ、重さ、デカさなどが挙げられるが実はハードコアで漆黒を演出するのは難しいのではと思う。激しい音楽だとなぜだか知らないが大抵暗くなるので、この手の界隈ハードコアだろうがメタルだろうが黒いバンドばかり。しかしハードコアで黒くなろうとすると余計な要素を増やしてしまうので、ピュアなハードコアからは遠くなってしまう。メタルならそれでも良いだろうが、なるべく飾らないことという一つの信条(誇り、ルール、美学、強制されていない分かっこよく説得力がある)があるハードコアでその精神を保ちつつ”黒く”なるということは難しいのではと思うわけだ。(この問題への一つの解決策としてノイズの要素を足すバンドが昨今一つの潮流になっている。)ところがこのバンドはどう聞いてもハードコアなのに確かに真っ黒である。
積み上げられたアンプの異様さに目を奪われるし、出している音は徹底的に低く、そして音量が大きい。しかしやっている曲は徹底的にぶっきらぼうでシンプル。シンガロングやメロディアスさは皆無。かと言ってわかりやすいストップ&ゴーがあるわけでもないし、踊れるモッシュパートが提示されているわけでもない。フィードバックノイズが強調されたハードコアはとにかく無愛想。非人間的と言っても良い。わかりやすい感情、共感が一切排除されている。攻撃力に全振りしたステータスはしかしピュアなハードコアでその魅力を遺憾無く発揮している。疾走するパートの突き抜けるような爽快感、それをミュートで強制的に停止させて、這い回るような低速パートに突入するカタルシス。ツボをきちんと押さえつつ、有り余る膂力(つまり音のデカさ)でハードコアの魅力は倍増している。
精力的にライブ活動を行い色々なイベントにその名を連ねている。私も何回か見たことがあるが、このバンドはドラムがすごい。シンプルなセットだがどのパーツも非常にでかい。これをでかい音で正確に叩く。色々なドラマーがあり、色々なプレイスタイルがあると思うし、すげーと思ったことは数多くある。FRIENDSHIPのドラムは派手に様々なフレーズを叩くわけではないし、むしろシンプルだがそれが異常に正確に続いていく。考えて見てほしいがもし絵を描くなら真円を描くのはすごい難しい。同様にドラムでは同じリズムで正確に叩き続けるのが一番難しいのでは(私はドラム叩けないから違うかもだけど…。)。それをでかい音で軽機関銃の掃射のように続けていくドラミングは本当かっこいい。この音源でもそんなドラムはきっちりその魅力を発揮しているので嬉しい。

思うにこのバンドのかっこよさの一つは寡黙さだ。饒舌な音楽をやっているがその凶悪な曲の中をのぞいてみると厳格にハードコアだ。余計なことは喋らない。MC一切しないし、SNSを見てもフレンドリーさはない。ただブランディングにもこだわりがあり、美学が遺憾なく発揮されたマーチャンダイズ(私もいくつか買っている。)一つとって見ても、結構きちんと考えてセルフプロデュースをしていると思う。結構したたかであると思う。もちろん中身が伴わないとハッタリになってしまうので、それを含めて高い注目度にバシッと叩きつけるのがこのアルバム。素晴らしい出来。激しい音が聞きたい人は是非どうぞ。おすすめ。

2017年6月4日日曜日

The Endless Blockade/Primitive

カナダはトロントのパワーバイオレンスバンドの2ndアルバム。
2008年に20 Buck Spinからリリースされた。
The Endless Blockadeは2003年に結成されたバンドで残念なことに2010年には活動を終えてしまった。確か今Sete Star Septでドラムを叩いている人がメンバーとして在籍していたことがあったのではないかな。パワーバイオレンス(ハードコア)バンドということでスプリット含めてそれなりの数の音源を残している。私はBastard Noiseとのスプリット「The Red List」のみ持っている。なんとなしにデジタル版でこのアルバムを買ってみた。ミックスはPig Destroyerなどで活躍するScott Hullが手がけたようだ。

全12曲を21分で走り抜ける正しいパワーバイオレンスバンド。だいたい1分くらいの短い曲の中を高速〜低速をストップアンドゴーを交えてめまぐるしくシャトルランして行く。基本はしゃがれた高音喚きボーカルでたまに低音ハードコア喚きボーカルが乗る。ややぎろんぎろんした太くて主張の強いベースがMan is the BastardやSpazzを思わせる。ミュートを多用しないギターも非常にハードコア的である。ドラムも速い時は速いが音が軽くて抜けが良い。疾走感というよりは早回ししているような痙攣的で不自然な速さが、いつのまにかトーンダウンして停滞しだす。ストップアンドゴーと言っても速度の止め方というところにこのジャンルの面白さがあると思うけど、このバンドはそこらへんが非常に巧みで短い曲でもあっという間にテンポを転換させて行く。
割と伝統的なパワーバイオレンスを軸にこのバンドのすごいところはさらにノイズの要素をぶち込んできている。不穏なSEはともかく、明らかにハーシュノイズを曲に持ち込んでいる。イントロ的に使う場合もあるが、スラッジ成分を強調した長い尺の曲(基本2分台くらいだがラストは7分40秒ある)ではノイズの登場頻度も増してくる。ハーシュノイズは流動的かつミルフィーユのように多重構造だが、その層をいくつか剥がしてきてハードコアの表面に貼り付けている。(あるいは足元に滞留させている。)分厚いハーシュノイズをそのまま使えば個性の強すぎるノイズゆえにノイズにしかならないだろうから、心得た使い方だと思う。

ハードコア(パワーバイオレンス)にノイズの要素を追加するのが昨今の一つの流れ(Full of HellやCode Orangeあたり。日本のEndonはノイズがバンドサウンドに憧れから接近したとしたらちょっと違うかな。)だと思うけど、この流れは何も今に始まったことではないなと改めて実感。いうまでもないが「The Red List」で共演しているBastard Noiseはパワーバイオレンスの元祖とされることもある元Man is the Bastardのメンバーが始めたバンドであるから、別に今の潮流が単なるリバイバルとは全く思わないけど、きちんとこういうった土壌があるところから最近のバンドがすくすく育っているんだな〜という感じ。
そんなわけで最近のFull of Hellなんかが好きな人たちはバッチリハマると思うので是非どうぞ。個人的には大変かっこよく楽しめた。おすすめ。

2017年5月4日木曜日

Stimulant/Stimulant

アメリカはニューヨーク州ニューヨークのグラインドコア/パワーバイオレンスバンドの1stアルバム。
2017年にNerve Altarからリリースされた。
あまり情報がないバンドだが、それぞれボーカルも兼務するギタリストとドラマーの二人組のバンド。メンバーの名前で検索するとどうやら二人ともタトゥーアーティストの人みたい。(ひょっとして同姓同名の別人だったら申し訳ないです。)
全然知らなかったのだけれどtwitterでオススメされていたのを聞いたらかっこよかったので購入した次第。

「刺激」というバンド名、不穏と悪ふざけの中間のなんとも言えないジャケットアート。なんともつかみどころのないバンドだが、鳴らしている音自体はパワーバイオレンスということになると思う。全部で21曲で29分ほど。ブラストビートを使った早い楽曲はグラインドコアと言っても遜色ないと思うが、楽器の音の作り方がメタル的ではなく軽さを意識していること、それからマッチョなボーカルスタイルは伝統的なハードコア要素が強い。ギャーギャー喚くタイプと野太いクラストタイプ、混合するボーカルの掛け合いなんかもSpazzからの流れを感じさせるし、ストップアンドゴーを短い尺の中で繰り返していくのも昨今隆盛を見せる(?)パワーバイオレンス的なアプローチが感じられる。
面白いのはノイズを使ったアプローチで、Full of HellだったりCode Orangeがハードコアの激しさの一歩先をいくためにノイズを足がかりに使っているのが記憶に新しいけどこのバンドもそれを取り入れている。使い方的にはCode Orange的というか不穏さを不可するためにこっそりノイズを底流に忍ばせる使い方がメインで、よくよく聞いてみるとSpazz的なパワーバイオレンスの背後でキュルキュルノイズが這い回っているのは面白い。ノイズの不穏さを前面に出したインタールードも挟んでくるし結構使い方に思い入れを感じる。ハードコア成分強めなので頭というよりは肉体に聞いてくるような気持ちのよい流れかと思いきや、後半終盤に向けてスラッジ成分を強めに出してくるあたりも個人的には好きだ。このスラッジパートに関してもあくまでもハードコアの音で表現しているのがよいみたい。メタリックなスラッジとは明らかに一線を画す。ラストの手前の曲ではスラッジ成分とともに貼っていた蛇が鎌首をもたげたように存在感をあらわにするノイズ成分が合間って途方にくれるような荒廃が展開されている。

そこまでメタリックではないけど、ノイズを取り入れた今風のパワーバイオレンス。絶妙な温故知新感で結構リピートしている。伝統的なパワーバイオレンスの潮流感じられるので伝統的なマニアの人もどうぞ。

2017年3月12日日曜日

FIGHT IT OUT/MOST HATED

日本は横浜のハードコアバンドの3rdアルバム。
2017年にBOWL HEAD Inc.からリリースされた。
YokohamaCityPowerviolenceを標榜する5人組のバンド。2000年に結成されメンバーチェンジを経て2枚のアルバム、そのたの音源をリリース。(多くは多分現時点ではすでに入手困難。)2011年の2ndアルバム「Talk Shit and Hope」から約5年と半ぶりのアルバムが今作。
私はライブが凶暴という話をtwitterで見ていておっかね〜とか思っていたのがたまたま見たライブ(1月に小岩でみたやつ)が非常に格好良く、物販では音源が売られてなかったので結構この新作はタイミングが良い、というか楽しみにしていた。

1月のライブではとにかくフロアが盛り上がっていたという印象(怖くて前に行けない始末)で肝心の楽曲は割とハードコアっぽいかな?と思っていた。ただトータルの演奏時間からしておそらく曲自体は短いのでは?と。実際に聞いてみると印象とあっているところ、そうでないところがあって面白かった。
アメリカのファッションブランドDickiesのカラーからとったという濃い藍色が印象的なアートワーク。中身の方はというと全部で13曲を14分弱で突っ走るハードコア。ハードコアを基調としながらこの音源の音楽性はほぼパワーバイオレンスに振り切っている。目の覚めるような高速パートから一気に低速に落とすダイナミズムはまさにパワー✖️バイオレンス=無限大の喜び的な勝利の方程式。個人的には乾いているけどファットなドラムとギロギロいうえぐいベースラインだけでエヘエヘしてしまう。(いかにもポーザーな感想ですまない。)EPのタイトルにもなっているが「Locos Only」つまり「バカ(イかれたやつ)だけ」というキャッチがしっくりくるくらい賢ぶらない正しいバイオレンス。ACxDCみたいなハードコアに(グラインドコアというよりは)デスメタルのフックというか禍々しさをテクニックとして取り入れているようなバンドとは一線を画してひたすら技巧なしのフロア一直線サウンド。2Pacの格好でYouth of Todayを、というコンセプトが結成当時はあったらしいのだが、現在の楽曲はかなりピュアなハードコアスタイル。ただメタルもかじる程度に聴く雑食性がラッパーC.O.S.A.という他のジャンルのミュージシャンを招聘している部分に現れている。ただハードコアにヒップホップを混ぜるというミクスチャーな手法というよりは、ヒップホップのトラックとしてインタールードトアウトロに使っているというやり方であくまでもハードコアであり続ける。
FIGHT IT OUTのハードコアとは”悪さ”である。危険さを隠すことなく前面に出していくスタイル。”悪さ”が敬遠されるのは他人(つまり究極的には自分)によろしくない影響を与える(と思われる)ことなので、実は結構これを武器にしていくことは難しいのではと思うが、臆面もなく悪さを前面に出していく。近づいたらやばそうだけど、何か凄いというのはまさに私が見たライブに他ならない。ハードコアは音楽以上になんなのか?というのは深すぎる質問だと思うけど、(ハードコアに限ったことではないけど)激しさを伴う音楽では”悪い”という要素(もしくはストーリー)は常について回る問題といっても良いのではなかろうか。FIGHT IT OUTは誰彼構わず殴るバンドだというのではもちろんなくて、悪さの求心力というのが確かに感じられるなということ。(特に私のようにそういったタフさから一番遠い人種にとっては。)

悪いハードコアである。敬遠されるハードコアかもしれない。なんていっても「最も憎まれている」んだもの。ただ暴力性に身を委ねるのも悪くない、っていうかだいぶ気持ちが良い。激しい音楽を好きな人ならバッチリハマると思う。非常にかっこいい。おすすめ。入手困難になる前にゲットしましょう。

2017年1月29日日曜日

Harm Done/The First 3 Years

フランスはナントのパワーバイオレンスバンドのディスコグラフィー。
2016年に日本のStand For Unityからリリースされた。2016年には来日しており、おそらく連動して作られた音源かなと思う。私は来日ライブに入っていないのだが音源だけ購入してみた。
2013年にSex Prisonerを聴いて衝撃を受けたメンバーを受けた比較的新しいバンドでメンバーチェンジがありつつも(現在は4人体制とのこと。)いくつかの音源をリリースしている。それらの音源をまとめたのがこの音源。

28曲で28分ということで1曲ほぼ平均1分という清く正しいパワーバイオレンスバンド。
目まぐるしく嵐のように暴走してあっけにとられているとあっという間に通り過ぎていくのはパワーバイオレンスなのだが、よくよく聴いてみると結構変わった音楽性をしている。
私高校生くらいの時にミクスチャーという音楽があって、それは過去にもあったのだろうけど(Red Hot Chili Peppersとかを指していたのかな?)、改めてニューメタルというフォーマットでヒップホップとラウドロックを混ぜたりしてミクスチャーなんて言葉がまた使われだしたのだろうと思う。あの頃のミクスチャーとは全く異なった音楽をやっているHarm Doneだが聴いているとなぜかミクスチャー感があるなと思ってしまう。
ボーカルはハリのあるハードコアスタイルで個人的にはこの人は徹頭徹尾ハードコア。かなりマッチョい。こういうタイプは結構高音が出ているのだが強そうで一体それが発声の仕方なのか、勢いなのかはわからない。曲が早いからまくし立てるようなスタイルで普通に考えると単語ごとの力はそんなにかからない(かけられない)と思うのだが、この人の場合はどの言葉も力強い。
がっちり硬質なソリッド(とんがっていて鈍器というよりは刃物のような)な音が特徴的なベースも確かにハードコア。この人はなぜか中速くらいの時に音の数が多くて低速、もしくは高速にしのぎを削るパワーバイオレンスに合間(中間の速度)のかっこよさを投入しているHarm Doneの結構なキーマン的な存在かなと思う。
パワーバイオレンスなのでもちろん速いパートはあるし、それはそれでかっこいいのだがとにかく中速以下にフォーカスしたバンドで被せていくように刻んでいくパートはかなりモッシュに適しているのではと思わせる気持ち良さがある。いい感じにあったまってきたところに(といっても時間的には10秒くらいなんじゃないのかという気がしてきた)満をじして低音パートに移行していく様はもはやあざとい。体感速度という意味で低音を、ダウンテンポを意識させる対象物として高速パートを入れているのではと思うくらい。

パワーバイオレンスというと曲が短いことが多いので当然制限も多いのだが、意外にその中でもできることはたくさんあるなと思う。このHarm Doneというバンドはハードコアの正当進化系というよりは結構いろんな音楽の面白いところを持ってきてハードコアを接着剤に固めましたという感じ。もちろんハリボテ感はなくて鵺みたいな異形のかっこよさ。ミクスチャー世代だった私にはかなりいい感じに突き刺さっている。ライブ行けばよかったなーと思ってしまう。ミクスチャー世代(そんなのあったのか自信なくなってきたけど)の人はぜひどうぞ。オススメっす。