2017年にObliteration Recordsからリリースされた。
結成は1997年でフルアルバムより先にディスコグラフィーが出る(つまりアルバム以外の音源はかなりの量リリースしていたアンダーグラウンドな)バンドだったが、待望の1stアルバムを2015年にリリース。2年間というかなり短いスパンで2ndフルアルバムをリリース。結成20周年記念、ということもあるとのこと。
「ブラッケンド・パワーバイレオンス」という枕詞で語られるのだが、この言葉から想像される音とはちょっと異なる音楽を演奏するバンド。
パワーバイレオンスというジャンルはハードコアの先鋭的なサブジャンルで、その音楽性を簡単に一括りにできないオリジンリティのあるバンドがたくさんいる振れ幅のあるジャンルだが、SpazzやInfestのような伝統的なハードコアの激速版みたいな手法が一つと、それから昨今の流行り(なのかはわからないけど)短い曲の中で強烈なストップ&ゴーを取り混ぜたスタイルがあると思う。Su19bの場合はこのどちらにも当てはまらない。ブラッケンドの方も、純粋な音楽として捉えたブラックメタルから抽出した要素を用いる、という用法だとするとやはりSu19bの音楽性に合致しているとは言い難いかもしれない。というのもこのSu19b、ブラッケンド、パワーバイレオンスというにはおもすぎる、強烈すぎる、そしてどろどろしすぎている。これは前作もそうだがアートワークがよく中身を表現していて、モノクロにゾンビ(骸骨)と言うのはなるほどハードコア的だが、よくよく見るとゾンビにしては元気でそしてやはりどろどろしている。この溶解した腐肉感はどちらかというとデスメタルを彷彿とさせる。音に関しても同様で、ファストコアとスラッジを短くひとまとめにした、というよりはそれぞれをそれなりの尺で(といっても真性のスラッジに比較すれば長くはないが)、丁寧に、つまり陰湿にやるのがこのバンドのスタイルであり、「うげええええええ」と吐き出すようなボーカルもデスメタルを彷彿とさせる。ゾンビのうめき声みたいで超かっこいい。当然それをやるにはハードコアを経由した重たくもカラッと乾いてわかりやすい音ではなく、ジリジリ輪郭が撓んで腐りかけた湿っぽく邪悪な音にチューニングされている。外へ外へ突き抜けていくポジティブさというよりは、音が瘴気のように渦巻くネガティブさがあって、わかりやすくヘイトとフロアに混沌をぶちまけるスタイルのパワーバイオレンスとは一線を画していて面白い。もっとこう胃もたれするようないやらしい重たさがあって、それが停滞するのだ。特に遅いパートはデスメタルとスラッジコアを重量と陰湿さという要素でがっちり結びつけており、この表現力はちょっと他のバンドにはないのではなかろうか。遅さから突き抜けるブラストは一見爽快なのだが、これで何処かに行けるわけでもなくひたすら地獄なのが非常に良い。聞きやすさとは無縁で、しかし全編通してかっこいいという、まさにハードコアなスタイル。
Bathoryのカバーはややフューネラル・ドゥーム感も漂い、非常に音楽的な懐の広いバンドだと思った。私はCDを購入したが、今ではBandcampでデジタル版も購入できる。流行りに迎合しないオリジナリティのある音を鳴らすバンド。いわゆるパワーバイレオンスを想像するとびっくりするかもしれないが、底なしのヘイト感なら満載なのですぐにこの瘴気のような重たさと腐臭漂う邪悪さが気に入るのではなかろうか。おすすめ。
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