2017年7月8日土曜日

FRIENDSHIP/Hatred

日本は千葉のハードコア/パワーバイオレンスバンドの1stアルバム。
2017年にDaymare Recordingsからリリースされた。
「友情」という名のバンドだが、びっしりと刺青の入ったメンバー(おそらくまだとても若い)がタワーのように積み上げたオレンジのアンプから大音量で凶悪なハードコアを鳴らす。活動開始がいつなのかはわからないが、その音の凶悪さはかなり早い段階からSNSなどで話題になり、いくつかの音源も世界のいろんなレーベルからいろんな形でリリースされている。そんなバンドの今回満を辞しての1st。

真っ黒いハードコア。漆黒とは音の凶悪さ、重さ、デカさなどが挙げられるが実はハードコアで漆黒を演出するのは難しいのではと思う。激しい音楽だとなぜだか知らないが大抵暗くなるので、この手の界隈ハードコアだろうがメタルだろうが黒いバンドばかり。しかしハードコアで黒くなろうとすると余計な要素を増やしてしまうので、ピュアなハードコアからは遠くなってしまう。メタルならそれでも良いだろうが、なるべく飾らないことという一つの信条(誇り、ルール、美学、強制されていない分かっこよく説得力がある)があるハードコアでその精神を保ちつつ”黒く”なるということは難しいのではと思うわけだ。(この問題への一つの解決策としてノイズの要素を足すバンドが昨今一つの潮流になっている。)ところがこのバンドはどう聞いてもハードコアなのに確かに真っ黒である。
積み上げられたアンプの異様さに目を奪われるし、出している音は徹底的に低く、そして音量が大きい。しかしやっている曲は徹底的にぶっきらぼうでシンプル。シンガロングやメロディアスさは皆無。かと言ってわかりやすいストップ&ゴーがあるわけでもないし、踊れるモッシュパートが提示されているわけでもない。フィードバックノイズが強調されたハードコアはとにかく無愛想。非人間的と言っても良い。わかりやすい感情、共感が一切排除されている。攻撃力に全振りしたステータスはしかしピュアなハードコアでその魅力を遺憾無く発揮している。疾走するパートの突き抜けるような爽快感、それをミュートで強制的に停止させて、這い回るような低速パートに突入するカタルシス。ツボをきちんと押さえつつ、有り余る膂力(つまり音のデカさ)でハードコアの魅力は倍増している。
精力的にライブ活動を行い色々なイベントにその名を連ねている。私も何回か見たことがあるが、このバンドはドラムがすごい。シンプルなセットだがどのパーツも非常にでかい。これをでかい音で正確に叩く。色々なドラマーがあり、色々なプレイスタイルがあると思うし、すげーと思ったことは数多くある。FRIENDSHIPのドラムは派手に様々なフレーズを叩くわけではないし、むしろシンプルだがそれが異常に正確に続いていく。考えて見てほしいがもし絵を描くなら真円を描くのはすごい難しい。同様にドラムでは同じリズムで正確に叩き続けるのが一番難しいのでは(私はドラム叩けないから違うかもだけど…。)。それをでかい音で軽機関銃の掃射のように続けていくドラミングは本当かっこいい。この音源でもそんなドラムはきっちりその魅力を発揮しているので嬉しい。

思うにこのバンドのかっこよさの一つは寡黙さだ。饒舌な音楽をやっているがその凶悪な曲の中をのぞいてみると厳格にハードコアだ。余計なことは喋らない。MC一切しないし、SNSを見てもフレンドリーさはない。ただブランディングにもこだわりがあり、美学が遺憾なく発揮されたマーチャンダイズ(私もいくつか買っている。)一つとって見ても、結構きちんと考えてセルフプロデュースをしていると思う。結構したたかであると思う。もちろん中身が伴わないとハッタリになってしまうので、それを含めて高い注目度にバシッと叩きつけるのがこのアルバム。素晴らしい出来。激しい音が聞きたい人は是非どうぞ。おすすめ。

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